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「水冷基地局」など持続可能性を実現する製品を公開、「Nokia Future Connected 2022」
2022年7月21日 00:00
ノキアは20日、同社の戦略を説明する「NOKIA Future Connected 2022」を開催した。
冒頭では、ノキアソリューションズ&ネットワークス 代表執行役員社長のジョン・ランカスターレノックス氏があいさつ。通信業界は多くの電力を消費するとして、ランカスターレノックス氏は、より少ない消費電力の製品の開発や輸送、原材料などでも省エネルギーの重要性を訴える。
持続可能性を掲げる
ノキア モバイルネットワーク事業部 RANプロダクトライン 製品管理部門責任者であるブライアン・チョー氏は、同社が世界のネットワーク市場を牽引するとともに、サステナブルの観点でもまたリーダーであると語る。
チョー氏は、ノキアの戦略の重点部分として「ワイヤレス分野における持続可能なリーダーシップ」をかかげる。持続可能性とともに、製品の性能向上も続けていることも紹介。クラウドベースのRANの実現などに向けても積極的に投資していることをアピールした。
同社では、オペレーターのニーズに合わせてさまざまな製品群を展開。ブロードコムとの協業で開発されたチップセットは、日本で現在商用展開されており、ほかにもモジュラー構造を採用するBBU(ベースバンドユニット)「AirScale」や無線製品群も取り揃える。
特にに無線製品は、260種類以上が展開されている。チョー氏は、日本でのニーズはすべてカバーしており、オペレーターは必要な容量やカバレッジに応じて最適な製品を選択できるとする。
加えて「製品の持続可能性」も同社の強みとチョー氏は語る。市場に出ている500万台の製品はそのほとんどがソフトウェアアップデートのみで5Gに対応できるという。これにより、オペレーターはネットワーク更新のために機器を入れ替える必要がなく、LTE周波数を5Gへ転用する際に効率的に機器を再利用できる。
リリース時期を明確に
同社の製品のリリースサイクルは四半期ごとになっている。従来、ロードマップが不正確な部分があったとするチョー氏。2021年1月からスタートした「リリースプログラム2.0」ではSingle RANやLTEと5Gの統合とリリース時期の予測が可能なことを目指したという。
ソフトウェアの統合はすでに達成されており、リリース時期も「日本の鉄道システムのように正確」と評価した。
5Gでも技術開発
チョー氏は、5G技術についても言及。同氏は、5Gをウェディングケーキのようなものと表現。ミリ波、Sub6、FDDと大きく3つの周波数帯に分け、その中でも2.5GHz~4.9GHzの中間の周波数帯がもっとも重要な層という。
Sub6は、今の5Gのもっとも主流な周波数帯であり、それをより低い周波数帯でカバレッジを広げることができる。ミリ波を受信できれば、4~5Gbpsほどのスピードを出せるが、伝搬性が低い課題がある。
そのため、チョー氏はミリ波についてはホットスポット的な利用や企業向けの小規模な展開が適しているという見解を示す。同社では、5G関連の技術として、世界初の5Gでの3CC/4CC キャリアアグリゲーションやVoNR、フィンランドの通信事業者エリサとアップリンクで約2.1Gbpsを達成するなどしている。
通信障害時の他社のローミングは可能?
KDDIによる通信障害でも一部で話題となった、他社の回線にローミングすることで障害を回避しようという試みは現実的なのだろうか。
ノキアの担当者によれば技術的には可能という。しかし、無線アクセス装置側が共有できてもコアネットワーク側の共有は、現状でなされておらず、すぐには難しいのではないかという。
一部地域でKDDI回線を「パートナーエリア」として展開する楽天モバイルとKDDIのような関係性があれば実現の可能性はあるが、調整でなんらかの不具合が発生してしまうと通信障害につながる場合もあり、慎重な作業が求められる。
水冷技術を開発
エネルギー効率の面でも同社は技術を注いでいる。新しい半導体を開発し、電力効率を向上させており、ハードウェアのリリースごとに15%、4Gから5Gなど技術が移行するごとに10倍ほどもエネルギー効率を改善させているという。
その一環として、同社では水冷技術を展開している。通信機器の冷却では、空冷が一般的だが、機器の性能向上とともに難しくなっているという。チョー氏は「高性能なパソコンでは、すでにCPUを液体で冷やしている。ファンの音が大きくなりすぎるからだ」とゲーミングパソコンを例にたとえる。
参考値としつつも、水冷システムを導入することで、CO2排出量を80%、エネルギー消費を90%ほども低下させられるという環境性能の高さが明かされた。