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ノキアの5G時代の戦略、企業向けソリューションを重視――ミリ波活用の高精度位置情報を武器に
2020年10月16日 06:00
ノキアは、5G時代の戦略を説明する「NOKIA Future Connected 2020」を開催した。
冒頭では、ノキア 代表取締役社長のペッカ・ルンドマルク氏とノキアソリューションズ&ネットワークス 代表執行役員社長のジョン・ランカスターレノックス氏があいさつ。ルンドマルク氏は同社のホログラムソリューション上に登場した。
両氏ともにノキアが掲げるビジョンを説明するとともに、ランカスターレノックス氏は、日本市場の重要なポイントと語った。
5Gの現状は
ノキアソリューションズ&ネットワークス 最高技術責任者の柳橋達也氏によると、2020年8月末時点において、5Gサービスを商用展開している事業者は全世界で92を数える。
そのうち開始したサービスの多くは、北米、アジア、ヨーロッパに集中しており、地域数としては40ほどという。
今後も世界の5G市場は、それら3つの地域がリードしていくことが予測される。2025年のそれぞれの地域の浸透の予測は北米が50%と高い浸透率を示しており、次点でヨーロッパの34%、3番目に24%のアジアという順に並ぶ。ただし、日中韓に限った数字で言えば、北米に並ぶ浸透率になるのではと柳橋氏は予測する。
Opensignalの調査によると、現時点での世界の5Gのスループットの高さでは、米国が2位以下に大差をつけている。柳橋氏の見解では、米国はミリ波基地局の整備に重点をおいて5Gを整備している。そのためスループットのピークではこのように圧倒的な差を示しているのはないかという。
ただし、4Gと5Gのスピード差の比較では、米国の5G環境は4Gと比べて大差がないという結果になっている。これは、Sub6帯の基地局があまり整備されていないためだろうと柳橋氏。
ノキアの5Gビジネスの方向性は
ある空間で情報を伝達する際に伝達可能な情報量の理論値と実際の値が、最近ではあまり差がなくなってきたという。
これは情報通信技術の発達によるところが大きい。これが意味するのは、これ以上の技術の進歩で通信速度を大幅に改善することが難しくなってきたということだと柳橋氏は説明する。
速度は5Gの特徴のひとつでもあり、その解決方法として、さらに高い周波数を活用しより広い帯域を確保すること、スループットだけを重視したビジネスの方向転換図る考えを示している。
現時点ではミリ波は米国が中心に整備を進めているが、今後それらの活動は東南アジア地域に移るだろうとノキアでは予測している。現状ではミリ波はまだ米国以外では利用できないが、iPhoneのような人気端末がミリ波に対応してくると、それに合わせて市場にミリ波対応端末が増えてくるだろうと柳橋氏。
従来に比べて圧倒的な高速通信を可能にするというのがミリ波の特長だが、ではそれを使ったサービスは一体何か? 柳橋氏は「ミリ波帯を使ってどんなサービスを作るかが次の焦点になるだろう」という。
そうした中では、スタジアムなど人口が密集しやすい場所への配置や固定無線アクセスポイントとしての利用などが取り沙汰されることが多い。
ノキアのアプローチは、企業向けに向けたソリューションだ。
高精度位置情報を提供へ
従来、企業向けのソリューションでは、低遅延性を前面に押し出したソリューションが多くを占めていた。
ノキアでは、それに加えて「高精度な位置情報推定」を推していくという。スマートファクトリーのような場所での展開が考えられており、たとえば、工場内での物資運搬などに用いられる自律走行型のロボットの位置情報をより高精度化することなどがある。これによってロボットが従事できる作業の種類も増えていくと柳橋氏。
これを実現するのは、ミリ波のもうひとつの特長である、データの送信間隔の短さだ。
データの送信間隔が短くなるということは、それだけ基地局と密に通信することから、セルラー回線を利用した端末の位置情報推定がより高精度になる。最終的にはcm単位での測位が期待されているという。
柳橋氏は、5Gの大容量、低遅延、多接続に加えて今後は、高精度な位置情報推定が重要になってくるだろうと語る。
グローバルで100の商用5G取引を実施しているというノキア。アジア地域でも日本の3キャリアの名前が並ぶが、トヨタ自動車の工場整備などを担うトヨタプロダクションエンジニアリング(TPEC)など非通信業界との取引もなされている。直近では、ドイツ鉄道(DB)との取引も開始した。
そうした事業者との取引が現在増えており、5Gの浸透とともに今後も企業パートナーとの取引は増加すると思われる。