ニュース

ついに始まるマイナポイント第2弾、マイナンバーカード普及のカギはどこに

 マイナンバーカードを発行して保険証利用申込などをすると、合計で最大2万円相当のポイントが獲得できる「マイナポイント」事業の第2弾が、6月30日から本格的に始まる。それを前に、総務省がメディア向けにあらためてマイナポイント第2弾を説明するイベントを開催した。

6月30日から、マイナポイント第2弾が本格的にスタートする

2万円分のポイントがゲットできるマイナポイント第2弾

 マイナンバーカードは、2022年度末までに国民のほとんど全員に配布することを目指しており、そのための施策として実施されたのがマイナポイント事業だ。2020年7月~21年12月末まで実施された第1弾では、カードを取得すると最大5000円分のポイントを付与していた。

マイナンバーカードの申請・交付状況。2021年2月~4月頃に1カ月あたりの申請数が急増しているのは、マイナポイント第1弾の影響

 結果としてカード発行枚数が伸びた。現在は、6月1日までに5802万件の申請があり、5660万枚が発行されている。人口に占める割合は約46.4%と約44.7%で、半数近くまで行き渡ったことになる。

 これを加速するために準備されたのがマイナポイント事業の第2弾。第1弾と同じようにクレジットカードやコード決済、電子マネーといった決済サービス事業者と連携し、新たにカードを発行した人には、購入金額の25%(5000円まで)をポイントなどで還元する。

マイナポイント第2弾ではカード取得だけでなく、健康保険証利用、公金受取口座登録でさらにポイントが提供される

 すでにカードを発行している人でも、マイナンバーカードの健康保険証利用の申し込みで7500ポイント、さらに公金受取口座の登録で同じく7500ポイントが、指定した決済サービスのポイントなどとして配布される。

 これによって、新規発行なら最大2万ポイント、既存利用者でも1万5000ポイントが配布される。また、既存のカード保有者でも、第1弾のマイナポイントの申込をしていなかった場合は、新規発行者と同じように5000ポイント分の還元を受けることができる。

6月30日以降のマイナポイントアプリ申し込みの流れ。健康保険証・公金受取口座の登録.をすでに設定をしている場合も、決済サービスの登録が必要

 9500万人分の予算を確保しており、第1弾の2500億円を超える1兆8000億円の予算をかけた一大事業となっている。第1弾は予算内に収まったとのことだが、第2弾は国民全員への配布達成を目指して、積極的に取り組むのが総務省の方針だ。

 カード新規発行の場合は2022年1月~2023年2月末までにポイントを申し込み、自分で選んだ決済サービスに対して、チャージ金額や購入代金の25%のポイントが還元される。2万円分のチャージまたは2万円分の購入なら、最大の5000円分の還元となる。

 健康保険証と公金受取口座は、2022年6月30日から2023年2月末までに申し込めば、選択した決済サービスに7500ポイントが付与される。いずれも、マイナンバーカードの申請は2022年9月末までに行う必要がある。

 健康保険証・公金受取口座のいずれも、すでに登録は開始されており、事前に登録を実施した人も対象。6月30日の午前中にマイナポイントアプリがアップデートされ、登録した人は決済サービスを選択する画面になるという。

対応決済サービスは7月下旬に92まで拡大へ

 選択可能な決済サービスは、6月30日時点では82の決済サービスになり、7月下旬にはこれが92サービスまで拡大する見込み。今後さらに増えていくとの公算で、普段使いの決済サービスがなかった場合でも、後日対応する可能性があるので確認した方がいいだろう。

 マイナポイントの申込みは、スマートフォンのマイナポイントアプリを使ってスマートフォンにマイナンバーカードをかざすか、カードリーダーを接続したパソコンを使ってブラウザ経由でマイナポータルにアクセスして設定を行う。

 いずれも使いこなせない場合でも、市区町村の窓口や郵便局、携帯キャリアのショップ、家電量販店などで手続き用端末が設置されてサポートが提供される。

 セブン銀行ATMやローソンのマルチコピー機での手続きも可能なので、スマートフォンやパソコンがなくても申し込みは可能。全国約6万8000カ所でこうしたスポットが用意され、広く利用を促す計画。

マイナポイントの申込を支援するスポットは全国約6万8000カ所を準備

自治体独自の還元も可能に

 マイナポイント第2弾では、地方自治体がマイナポイント用のプラットフォームを活用して独自のポイント給付をすることが可能になっている。対象の年齢や所得の制限、子育て世帯限定といった自治体独自の施策が可能で、地域の消費を喚起する、といったメリットがあるとしている。

 イベントに登壇した野村総合研究所コンサルティング事業本部CXコンサルティング部IDエコシステムグループのグループマネージャー冨田勝己氏は、日本人が1年間に獲得する平均ポイント額が推計で1~2万円相当、クレジットカードの新規入会時の特典として獲得できるポイントは最大でも1万円相当、という推計を挙げて、「マイナポイント第2弾の最大2万ポイントはインパクトがある。経済的なメリットは生活者にとってかなり大きい」と指摘する。

1年に獲得する平均相当のポイントが配布されるのでインパクトが大きい
野村総合研究所コンサルティング事業本部CXコンサルティング部IDエコシステムグループのグループマネージャー冨田勝己氏

 最大2万円相当のポイントは、購入に対する還元だけでなく健康保険証利用申し込みと公金受取口座の登録で、直接7500ポイントずつが配布されるので扱いやすいのもメリットだ。

 申込期限が決まっているため、利用したい場合は早期のカード申請、ポイント申し込みを実施した方がいい。特にカード申請期限の9月になると、申し込みが殺到して発行が延びてしまう可能性がある。もともと発行には1カ月ほどが見込まれており、それがさらに延びてしまうと、使いたいときに使えないということにもなりかねないので注意が必要だろう。

マイナンバーカード、取得しない理由は

 すでに国民の約半数にまで広がったマイナンバーカードだが、2021年8月の時点でカードを取得していない人について、野村総研がその理由を調査している。最も多い回答がカード申請の必要性を感じない、保有のメリットが分からない、というもので、半数以上が回答していた。

野村総研の調査によるマイナンバーカードの普及率とカードの申請しない理由。普及率は実際の発行数より多いが、調査が20~70代を対象にしており、特に普及率が低い10代以下が含まれていないため

 次いで申請に行く時間がない、申請が面倒という人が4割弱。マイナンバーカード取得で個人情報漏えいのリスクがあると心配する人も25%いた。こうした理由に対して、政府がいかに対応できるかが、マイナンバーカード発行拡大の鍵となるだろう。

 マイナンバーカードの健康保険証利用は、保険証をマイナンバーカードに統一でき、マイナポータルで検診情報や薬剤情報、医療費が確認できるようになる。確定申告時の医療費控除も容易になるなどのメリットもあるが、肝心の医療機関でのマイナンバーカード対応は21.5%にとどまっている。

医療機関におけるマイナンバーカード対応状況

 健康保険証利用の登録も、カード発行枚数に対して15.9%にしかなっておらず、マイナポイント第2弾でこれがどれだけ伸ばせるか、登録が増えることで自主的に医療機関側の導入が進むかは未知数だ。もともと、2023年4月からは医療機関などの導入を原則義務づけする政府方針だが、強制するからには医療機関、患者双方に対する目に見えるメリットが必要だろう。

 たとえば、運転免許証との一体化が実現すれば、マイナンバーカードだけを持ち歩くだけでよくなるため、「車で病院に行く」場合に保険証と免許証が不要になってマイナンバーカード1枚で済む、といったメリットはあるかもしれない。

セキュリティやプライバシーの懸念は

 公金受取口座の登録では、政府が預金口座を把握することに対する懸念の声もあるが、総務省大臣官房地域力創造審議官の馬場竹次郎氏は、「銀行口座の中身を覗けるわけではない」と説明。あくまで口座番号などの情報を登録し、「プッシュ型で公的な給付を振り込む」(馬場氏)ためのものだという。

公金受取口座の登録のメリットは、本人が申請書や添付書類を準備して窓口に届ける、といった手間もなくなる

 コロナ禍における10万円給付のように、予算と人手をかけて苦労して給付するのに比べれば、公金受取口座を政府が把握していれば、即座に予算をかけずに振り込めるメリットがあり、受取側にとっても、確実にタイムリーに給付が受け取れるのはメリットだろう。

 総務省では、ほかにもマイナンバーカードが利用できるサービスを拡大することで、利便性を高めて利用を促進したい考え。医療や就労、各種公的証明書などの公的サービスの拡大を図るとともに、民間サービスへの拡大も図る。

マイナンバーカードのICチップ内には空き領域があり、そこにカードアプリケーションを搭載することで、各種民間サービスでの利用も可能になる
一部では入室管理などに活用している
口座開設の本人確認での活用事例
すでに実現しているものに加え、様々な用途への拡大が検討されている

 マイナンバーカードは顔写真付きの公的身分証明書として対面での本人確認にも使えるが、ICチップ内に電子証明書が保管されており、オンラインサービスでの本人確認にも利用できる。これを民間事業者が活用することで、確実に本人確認が取れる点で期待も寄せられている。

 現時点でも、民間事業者159社がマイナンバーカードを使ったサービスを提供しており、今後、これが拡大することで多くの国民に恩恵のある、デジタル社会が実現できる、というのが総務省の目論見だ。

総務省大臣官房地域力創造審議官の馬場竹次郎氏

 セキュリティ上の懸念については、顔写真付き身分証明書のため、これまでの運転免許証などと同等のセキュリティ強度と言える。券面の氏名、年齢、住所、性別の基本4情報が漏えいしても、オンラインの本人確認に電子証明書を使っていればなりすましはできない。

総務省による安全性の説明
盗難・紛失、スキミング、盗み見といったリスクに対しては対策が存在している

 問題は券面のマイナンバーとICチップ内の電子証明書だが、マイナンバー自体の利用には制限があり、マイナンバー単体が漏えいしても「その時点で何らかの支障があることがないようにさまざまな対策をしている」と馬場氏。一意の番号というのはそれだけでプライバシーリスクはあり、対策にも限界はあるが、馬場氏自身は、「基本的には(マイナンバーは他人に)知られない方がいいというのが基本的な考え方」と話す。

券面に記載された情報は多いが、他のクレジットカードなどの決済手段と同等かそれ以上の対策、と冨田氏は説明する

 他人に易々と住所を明かさないように、マイナンバーも人に簡単に教えるようなものでもない、という位置づけのようだ。「個人情報の管理は(本人にも)しっかりやってもらうことを前提にさまざまな対策をしている」と馬場氏。

 電子証明書に関してはカード自体に加えてパスワードが必要。申請すれば利用停止もできるので、紛失・盗難時でもすぐに気付けば問題は起きづらいという設計だ。

マイナンバーカードは国民に行き渡るか

 今年度中にも国民のほぼ全員にマイナンバーカードを行き渡らせたい政府。その先には、利便性の高いデジタル社会が実現できるとしており、「より良い行政サービスや民間サービスが多く登場してくるようになる」というのが総務省の考え。

 そのためには、政府・行政のさらなるデジタル化も必要になる。カード普及後のボールは政府・行政側に渡されるわけで、総務省をはじめとした関係省庁には、デジタル化に向けたさらなる施策が求められるだろう。