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ソフトバンク、人流と気象データを組合わせた小売・飲食向け需要予測「サキミル」

 ソフトバンクと日本気象協会は、人流や気象データを活用した小売・飲食店向けのAI需要予測サービス「サキミル」の提供を開始した。月額利用料金は5390円。

人流と気象からAIで需要予測

 サキミルは、ソフトバンクの持つ人流データと日本気象協会が持つ気象データを組み合わせて「来店客数予測」の機能が利用できるサービス。これにより、店舗では商品の発注数や従業員の勤務シフトなどを柔軟に調整でき、経営の効率化につなげられる。

 利用には難しいプログラミングの知識などは必要なく、店舗で持つデータをアップロードすることで利用できる。現状ではAPI連携が必要だが、将来的にはウェブダッシュボード機能の提供を予定しており、中小規模の事業者でも使いやすくなることが見込まれる。

 提供に先駆けて、バローホールディングスと行われた実証実験では、食品ロスは3%、機会ロスは15.6%減少するという結果がでており効果が期待される。同社では、展開している店舗1200店舗を対象に順次導入の予定という。

安価かつ高精度の新たな市場

 サキミルの需要予測には、ソフトバンクの携帯電話基地局から取得する端末の位置情報データをもとにした人流統計データと日本気象協会が保有する気象データが組み合わされて用いられている。

 人流統計データは、500mメッシュで性別、年代・訪問者区分などが活用される。一方の気象データでは、天気だけでなく1kmメッシュで気温や日射、風速、降水量、湿度、降水確率など、14日先までの予報を利用できる。

 これらを、サキミルを導入する企業がもつ店舗ごとの売上や来店客数などの各種データと合わせ、AIで分析する。数百種類の飲食店や小売店に特化した特徴量を備えており、高精度な需要予測アルゴリズムを構築していることが特長。月に1回、モデル更新されるため常に最新のデータを利用できるとしている。

 ソフトバンク 法人事業統括 デジタルトランスフォーメーション本部の福元貴浩氏によれば、この仕組みを用いることでサイエンティストへの依存度を軽減できるという。特徴量設計など分析前の前処理で多くの時間を占めていたが、サキミルではそれらを汎用化・自動化することで、効率的な分析を実現した。

 「人流・気象データを使うことで、安価で高精度な新しい市場を開拓していきたい」と福元氏。現状ではCSVなどを用いた低価格で簡易的な予測と、高精度なインテグレーションサービスの2つの市場に別れているが、ソフトバンクではサキミルで低価格・高精度な第3の市場を切り開く構えだ。

IT化停滞の飲食・小売

 飲食・小売業界では、IT関連への投資が進まず、労働生産性の低さやフードロスといった課題が発生しているという。

 さらに人件費や食材費などがコストの多くを占め、利益が薄いという収益構造上の課題もあり、中でも、オペレーション部分はスタッフの経験や勘を頼りにした需要予測により、無駄な工数や人件費が発生していると福元氏は指摘する。

 農林水産省によると2030年には全国で644万人にのぼると見られているが、小売・サービス業界での人手不足はこのうち460万人と全体の7割を占める見込みという。そこで、ソフトバンクと日本気象協会では、AIを活用したソリューションを提供することで省人化を促し、フードロスや労働人口低下、脱炭素といった課題解決につなげる。

 ゴディバジャパンとも連携しており今後、スタッフのシフトの最適化や食品の製造量や仕入れの調整に利用できる「商品需要予測」も開発中という。