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「Pixel 4」と「畳」の意外な関係――グーグルが新製品のデザインを解説

 グーグルは10月16日、新型スマートフォン「Pixel 4」や完全ワイヤレスイヤホン「Pixel Buds(第2世代)」、スマートスピーカー「Google Nest Mini」などの新製品をニューヨークで発表した。いくつかの新製品は、日本市場での発売もアナウンスされている。

 発表から一夜明けた10月17日、同社のハードウェア製品のデザインを統括するアイヴィ・ロス氏が来日。新製品のデザインに関する記者説明会が開かれた。

「人間的」「楽観的」「大胆」なデザイン

 グーグルのデザインチームにとって、大きな転機となったのは4年前の2015年。この年、グーグルは初めて自社開発したAndroidタブレット「Pixel C」を発表した。翌年の2016年にはスマートフォンでも同ブランドの「Pixel」「Pixel XL」が発売され、4世代目のPixel 4シリーズに至る。

 「グーグルブランドのスマートフォン」という意味では、かつてAndroidの開発者向けリファレンス端末として展開されていたNexusシリーズまで遡ることができるが、これらは端末メーカーの協力を得て開発・製造されていた。

 Pixelシリーズは単にNexusシリーズを代替するものではなく、グーグル自身がハードウェアとソフトウェアの両方を手掛け、ターゲット層を広げたコンシューマー向け製品だ。スマートフォンのほかに、海外ではChrome OSを搭載するラップトップの「Pixelbook」シリーズも展開されている。

 Pixelシリーズのほか、2019年現在では「Nest」ブランドに統合が進むスマートスピーカー、スマートディスプレイといったスマートホーム製品にも、グーグルのハードウェア事業は拡大している。

アイヴィ・ロス氏

 コンシューマー向けのハードウェア事業への取り組みが本格化した2015年に話を戻すと、当時のデザインチームに与えられた課題は、それまでWebサービスやアプリなど「画面の中」にあったグーグルのデザイン思想を、いかに物理的な製品に落とし込むかということだった。

 その結論として導き出されたハードウェアにおけるグーグルのデザイン思想は、常に「人間的」「楽観的」「大胆」なデザインであることだとロス氏。この考え方は、最新のPixelシリーズやNestシリーズのデザインにも共通している。

「Pixel 4」のデザインに隠れた和の要素

Pixel 4とPixel 4 XL

 「Pixel 4」のデザインに注目すると、過去3世代のPixelシリーズとは少し変わったデザインであることに気付く。

 初代Pixelでは背面の上部(カメラ付近)がガラス素材で残りはアルミ素材、日本でも発売されたPixel 3では、同じくカメラ付近が光沢のあるガラス素材、残りはすりガラスのような加工が施されていて、Pixelのデザインといえばこのようなツートーン仕上げというイメージが付いている人も少なくないのではないだろうか。

マックス・ヨシモト氏

 Pixel 4のデザインを手掛けたチームの一員であるマックス・ヨシモト氏は、同機種をデザインするにあたって、大胆な刷新を意識的に行ったと語る。

 先述のデザイン思想に基づき、メタルフレームとガラスを組み合わせたボディは形状も含めて、ソフトで手に持った時に心地よい「人間的」なフォルムとした。カラーバリエーションには新色の「Oh So Orange」を加え、他のカラーでも電源ボタンに遊びのある差し色を入れる工夫などで「楽観的」、ポップな世界観を表現した。

Pixel 4の黒いフレーム、由来は日本の文化

 Pixel 4の外観で目を引くのが、ボディカラーを問わず黒色に塗り分けられたフレーム部分。Pixel 4のデザインは日本の文化にインスパイアされた部分があるとヨシモト氏は語り、このフレームはデザインを引き締めてシンプルに見せる手法として、畳や障子から着想を得たという。

 フレーム部分と同様に、2つのカメラとフラッシュライトなどが収まる正方形のカメラ部分も黒色に塗り分けられている。昨今のハイエンドスマートフォンでは高度なカメラ機能を実現するために複数のセンサーを搭載するケースが増えているが、外見上はひとつにまとめてクリーンな造形に見せるために、このようなデザインとなった。

 背面の左上にカメラ関連のパーツを集め、正方形の枠に収めたデザインは、奇しくも近い時期に登場した「iPhone 11」シリーズに似ているのではないかと問われると、ヨシモト氏は「デザインは1年以上前に考えられたもので、真似たわけではなくどちらも知り得なかっただろう。お互いにとってサプライズだったかもしれない」としながら、競合製品が新機種の特徴であるトリプルカメラやデュアルカメラを強調する形状となっているのに対し、Pixel 4はあえてカメラを目立たせず外側の正方形を見せていることを説明。より洗練されたデザインへの自信をのぞかせた。

ペットボトル1本=「Nest Mini」2台?

 グーグルのデザインチームには、エレクトロニクス分野だけでなくファッションや自転車など、さまざまなジャンルで活躍してきたデザイナーが集まっているとロス氏。1年ほど前に開設されたデザインセンターの中には、世界中から集めたさまざまな素材が揃うライブラリーのような場所もあり、デジタル機器の枠にとらわれないデザインのための環境が整う。

「Nest Mini」(左)にも「Nest Hub Max」(右)にも、ファブリック素材が使われている

 スマートホーム製品のNestシリーズ、あるいは以前のGoogle Homeシリーズは、ファブリック素材で覆われ、機械らしさを前面に出さないソフトなデザインが共通する特徴となっている。

 持ち歩いて使うスマートフォンとも少し性質が異なり、世界中の家庭にインテリアの一部となって置かれるものであることから、生活に溶け込むデザインにするべく、リサーチを重ねた。

 Nest Miniの外観は従来のGoogle Home Miniと似ているが、同じファブリック素材のように見えて、Nest Miniではリサイクル素材を採用。企業の社会的責任、サステナビリティ(持続可能性)の取り組みとしての側面もある製品となっている。

 Nest Miniに使われているファブリック素材はペットボトルから作られており、ペットボトル1本が2台分のファブリック素材になる。ロス氏は新しいファブリック素材について、「感触もよく、我々が望む色をしっかり出せた」とコメント。デザインを犠牲にせず環境負荷の低い素材を導入できたようだ。

Pixel Budsの色候補
Nest Hub Maxのデザイン候補