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NTTドコモは6月の大阪地震、7月の西日本豪雨にどう立ち向かったのか
2018年8月29日 20:50
2018年6月18日朝、大阪府北部でM6.1、最大震度6弱の地震が起こった。続く7月には西日本を中心として広い範囲で土砂災害などをもたらす豪雨も発生した。
NTTドコモは、これらの災害にどう立ち向かったのか。29日に開催された同社のネットワーク設備に関する記者説明会で、当時の状況が紹介された。
大阪府北部地震、サービスには影響なし
6月の大阪府北部地震では、たとえばライフライン関連での被害を見ると、一時的な停電、ガスの供給停止が発生したエリアもあった。通信関連では、NTTドコモの場合、同日11時点でサービスには影響がないことを明らかにしていた。
では実際どんな影響があったのか。当日朝7時58分の地震発生により、基地局は最大17カ所が停電などの影響を受け、一時的にサービスを中断した。しかし周辺の基地局でエリアをカバーしたこと、基地局に設置したバッテリーなどから、通信品質に影響は出なかった。
ぶっつけ本番、東西センターで処理を分散
また当時、西日本のネットワークを担当する、大阪・南港にあるドコモの「西日本オペレーションセンター」は、人員交代のタイミングだった。
そこで急遽実施されたのか、ネットワークの運用・監視の一部を、東京・品川にあるネットワークオペレーションセンターでもこなすことになった。
いわば負荷を分散して処理する形になったが、この「負荷分散」はそもそも2018年8月に正式導入される予定だった。トレーニングを重ね、準備はしていたものの、実際に災害が起こったことで急遽本番に挑むことになり、結果、つつがなく災害に対応することができたのだという。
道路寸断、基地局も水没・土砂災害――7月の豪雨
西日本を中心に広い範囲で、洪水や土砂災害が発生した、2018年7月の豪雨では、NTTドコモの設備もまた、水没などで被災した。
台風7号と梅雨前線による大雨が続き、7月8日には375の基地局で、サービスが一時止まる格好となった。しかしその数時間後には、サービス中断の基地局が半減するまで回復した。
このときのサービス中断をもたらし、急激に回復した大きな要因は、伝送路にあった。伝送路とは、基地局に繋がるバックボーン回線のことで、ドコモでは、冗長化、つまりバックアップの通信ルートも用意して運用している。
伝送路はいわゆるリング構成でノードと呼ばれる装置を結ぶ。いくつかの単位で構成されており、サービスエリアをカバーしていく形になるが、このとき土砂災害により2系統あるリングの一部が断たれた。そこへ、さらに別のリングでも、土砂災害の影響で伝送路の一部が切れた。
複数のリングで通信障害が発生したことで、8日15時、最大375の基地局でのサービス中断に至ったが、翌9日5時には代替ルートを用意して伝送路を復旧させたことで、サービス中断局を一気に減らすことができた。
ドコモの復旧は最後だった?
7月の豪雨で、NTTドコモから「完全に回復した」と復旧の報告が発表されたのは、災害発生から約1カ月を経た8月7日14時のことだった。
だが実際には、住む人がいないエリアの復旧を後回しにしたことで、復旧報の発表が遅れたと語るのは、同社災害対策室室長の小林和則氏。
同氏によると、土砂災害で道が断たれ、人が住んでいないエリアをカバーする基地局へアクセスする方法がなければ、他の場所を優先して対応することがあるという。実際に生活に影響がないか確認をし、問題がなければ放置することがあるのだ。
ただ、1カ所でもそうした場所があれば「復旧しました」と発表するわけにはいかない。その結果、7月の豪雨では、8月上旬になってからの完全復旧になったのだという。