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サブブランド問題や端末割引を大手キャリアにヒアリング――総務省の有識者会合

 30日、日本の携帯電話市場が抱える課題について考える、総務省での有識者会合「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会(第4回)」が開催された。大手キャリアの意見を聞いた前回に続き、追加の質問に答える形で再び大手3社へのヒアリングが実施された。

 これまでの流れを踏まえ、今回はいわゆる「サブブランド問題」のほか、中古端末、端末割引といった点が取り上げられた。

MVNOとサブブランド、ユーザー数と帯域幅は

 MVNOから「同じ料金では同じ通信品質は実現できない」と指摘が挙がっていたUQコミュニケーションズやワイモバイル(Y!mobile)といったサブブランドは本当に優遇されているのか。前回会合で、KDDIやソフトバンクは「優遇していない」と反論していたが、今回の会合では、MVNO10社から「1ユーザーあたりの帯域幅」、つまりユーザー1人あたりどれくらいの電波を使えるのか、というデータが披露された。

 ただしこの資料は、有識者とヒアリング対象の通信事業者だけとされ、一般には非公開。それでも「UQ mobileの1ユーザーあたりの帯域幅は他社に比べ約○倍」と紹介する記述があり、UQは他社よりも広い帯域を確保していることがうかがえる。KDDIでは、UQもMVNOも、10Mbpsあたり月額85.8万円という同じ値付けで提供していると説明。他社よりも多い帯域を使うUQは、素直に考えれば他社よりも多くの投資をして、KDDIから回線を調達していることになる。

UQ、WCPを第二種指定電気通信事業者にすべき?

 日本の通信事業者には、市場シェアが高い場合、第一種、あるいは第二種に指定される企業がある。第一種は固定通信のNTT東西、第二種はNTTドコモ、KDDI、沖縄セルラー、ソフトバンクといった携帯電話会社が指定されている。

 第二種事業者に課される義務のひとつが、MVNOに対してネットワークを貸し出すというもの。接続約款で掲げる料金(接続料)と接続条件、つまり透明性が確保された形で、各MVNOが公平に大手キャリアのネットワークを利用できるようにしている。これまでの本会合では、WiMAX事業を手がけるUQコミュニケーションズや、AXGP事業のWireless City Planning(WCP)も第二種指定通信事業者に加えては? という意見が寄せられていたが、今回、UQはau経由で、WCPはソフトバンク経由でMVNOへネットワークを提供しており、「自社に市場支配力がない」「交渉上の優位性がない」などと主張し、第二種指定通信事業者へ加えるアイデアに反論した。

 また、KDDIはUQと個別協議でWiMAXネットワークを借り受け、MVNOには、KDDIのモバイルネットワークとWiMAXをセットにして提供している。この仕組みについて、KDDIは「(au LTEとWiMAXの)キャリアアグリゲーションは適正な料金で、各MVNOへ同条件で提供している。検証が必要であれば協力する。UQからの借受では、ビジネスとして、仕入れ価格が安くなるよう協議した」と説明する。

 これに有識者のひとりである関口博正教授(神奈川大学経営学部)は「複数の事業を束ねて1つのサービスを作り上げるのが当たり前の時代に、本来の第二種指定の趣旨と異なるが、(競争環境を)正確に把握するためには、(UQやWCPといった)BWA事業者を第二種に指定するのは有効だ。透明性を担保することは必要だと思う」と持論を展開。こうした提案に同じく有識者の大谷和子氏(日本総研法務部長)は、「二種指定は手っ取り早いかもしれないが、規制が技術の進展に追いつかないのであれば、現在の技術にあわせ、本当に必要な部分を探っていく必要があるのでは」と提案する。

 KDDI側も「規制を厳しくするよりも、(現行のガイドラインや規制で)、必要最低限の項目をチェックすることで事足りる」と主張。ソフトバンクは「現状で十分と言うつもりはない。改善すべきは積極的に対応する。ただ、その答えが第二種指定ではないということ」と述べていた。

中古端末、メーカーからの拘束はなし

 大手各社では、iPhoneを中心として、下取りサービスを展開している。機種変更時に、それまで使っていたスマートフォンを買い取るというもので、その分、ユーザーは新機種を割安に入手できる。

 その大手キャリアが仕入れた中古スマートフォンは、流通業者に渡った後、主に海外へ輸出されている、というのがこれまで本会合で示された見解。ちなみに大手キャリアは「流通事業者に渡した後の先まで関与していない」とにべもない解答だ。前回は「日本国内の中古端末の流通に、メーカー側から何らかの拘束があるのか?」と大手キャリアに質問があったものの、その場にいたキャリアの担当者はいったん持ち帰って事実確認する、という状況だった。そこで今回、あらためてその質問に回答することになったが、各社いずれも「メーカーからの拘束はない」というシンプルな答え。

 有識者側から、この回答を受けて、さらに深掘りする質問は寄せられたなかったが、北俊一氏(野村総研)は「おそらく拘束はないだろうが、端末ディストリビューターからすると、iPhone 8が一括0円で販売される国よりも、高く売れる海外のほうがいいと考えるのが当たり前」と述べ、過剰な端末割引(端末購入補助)が課題であることを示唆する。

auのスマホユーザー、1/4が「ピタット」と「フラット」

 NTTドコモとauが2017年に導入した料金プランでは、端末割引がない代わり、月額利用料を安くするものが用意された。このうちNTTドコモの「docomo with」は2017年12月29日付けで100万件、KDDIの「auピタットプラン/フラットプラン」は1月21日付けで500万契約に達している。

 「auピタットプラン/フラットプラン」の利用率は、auのスマートフォンユーザーのうち1/4(約25%)に達しているという。

過剰な割引、業界での取り組みに前向き

 4~5年ほど前、春の商戦期を中心に多額のキャッシュバックが携帯電話ショップの店頭で案内された時期があった。その後、総務省での議論を経て定められたガイドラインにより、携帯電話会社による割引は抑制されてきたが、現在でも一部の店頭では最新機種である「iPhone 8」が一括0円で販売されることもある。これは携帯電話会社ではなく、販売代理店自身によるキャンペーンとされ、総務省が定めたガイドラインの対象外とされている。

 こうした状況を改善する姿勢は、前回会合でソフトバンクから示されていたが、今回の会合でNTTドコモ側も「ソフトバンクの提案はドコモも以前から提案してきたが、ガイドラインを見直してもその外側を突く手法で、イタチごっこが続くことが懸念される」と説明。電気通信事業法だけではなく、景品表示法などでの総合的な対処が必要では? と問いかける。

 これを受け、ソフトバンクは「実現性はともかく、景表法はひとつの視点として重要」と賛意を示す。一般的な商慣習として値引きそのものは認めあれるべきであり、全て規制されることは受け入れがたいが、キャッシュバックは景品なのかどうか、携帯電話ショップでは端末だけではなく回線も手がけていることはどう考慮するのかといった論点はあるものの、いわゆる懸賞は景品表示法で金額の上限が定められている。こうした点を踏まえ、景表法をもとに度を超した多額のキャッシュバックを規制できないか――という意見が明らかにされた。

 さらにソフトバンクからは「キャリアだけで取り組めば価格統制になるかもしれない。消費者庁か公取委かわからないが、キャッシュバック問題は毎年繰り返しており、前向きに取り組む課題として検討していただければ。結局どこから(キャッシュバックの)原資がくるのか。キャリアがやり方を変えて出ているところがあったりする。いくつかアプローチがある。たぶん簡単ではないんだろうけど、ちょっと議論することが業界で必要ではないか」と建設的な姿勢を示していた。