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「5G」活用の新たなスポーツ観戦スタイル、ドコモが五輪に向け提案

東京パラリンピック1000日前イベントで披露

5Gの低遅延・大容量通信をスポーツの多元中継で活用

 NTTドコモは11月29日、東京スカイツリータウンで開催された「東京2020パラリンピック」1000日前記念イベントに出展し、5G時代に向けたスポーツ中継システム「多視点ライブビューイング」を披露した。

 LTEよりも遙かに高速で、大容量の通信が可能になる次世代のモバイル通信技術「5G」。NTTドコモは5G時代に向けた通信技術の開発とともに、5Gを活用した新たなサービスの検討を進めている。

 今回は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、5Gを活用した新たなスポーツ観戦スタイルを提案した。それは、多くのカメラの映像を同時に配信し、視聴端末から視点を自由に切り替えながら観戦できるというもの。5Gの特徴の1つ、大容量通信を生かしたシステムだ。

 ドコモはパラリンピックの競技「車いすフェンシング」で、このシステムのデモンストレーションを実施。イベントのために行われたベアトリーチェ・マリア・ヴィオ選手と元フェンシング選手の太田雄貴氏による試合の様子を、東京スカイツリータウンにて中継した。

「車いすフェンシング」は一瞬のせめぎ合いが見所で勝負が決まるスポーツ。中継では選手の剣の動きを光の動きで表現していた。観客からは「スター・ウォーズみたい」という感想も

 カメラは選手を囲うように配置され、さらに選手が着用するマスクにも取り付けられた。9点のカメラはすべて2K解像度で、送信されるデータ量は200Mbps程度。この大容量の映像データを、会場に設置された5G基地局から、実験用の5G端末まで、28GHz帯の5G通信で伝送していた。

どのタイミングでもアングルの切り替えが可能
舞台を囲うようにカメラを配置。3Dモデルからアングルを選べる
中継会場には舞台をイメージして各カメラ位置をモニターを配置していた
太田雄貴氏(中央左)とベアトリーチェ・マリア・ヴィオ選手(中央右)

 今回のテストで5G通信が利用されたのは、会場内の約10mの距離。端末側として、本棚ほどの大きさがある大型の装置を使用していたが、これが2020年にはスマートフォンほどの大きさに小型化し、より高精細な伝送も可能になるという。

5Gの基地局(左)と端末(右)は、エリクソン製の機材を使用していた。端末側に表示されるスループットは最大で10Gbit/程度だった。
ドコモのWebサイトではマルチアングルのストリーミングで配信も実施。5Gではこれがより高精細になる
NTTドコモ 5G推進室長 中村武宏氏

 NTTドコモの5G推進室長 中村武宏氏は、「5Gのネットワーク技術開発と並行して、コンテンツ面も拡充させていく。その中で、映像コンテンツはコンシューマーでも法人においても重要になってくる。さまざまなパートナーとコラボレーションして、あらゆるチャレンジをしていきたい」と語る。

 今後もさまざまな形で5Gの活用例を披露していくというが、特に「来年(2018年)は5Gにとって重要な年になる」(中村氏)とのことで、2018年5月に開催される展示会「ワイヤレス・テクノロジー・パーク」でより進化した5Gの姿を披露すると明らかにした。

 なお、この「多視点ライブビューイング」が実際に2020年の大会で採用されるかは未定となっている。今回はドコモが5Gを活用した“新しい観戦スタイル”として提案した格好だ。