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ゲオの中古スマホ事業拠点「名古屋プロセスセンター」レポート

名古屋プロセスセンターにストックされた数多くの中古携帯電話

 ゲオホールディングスは、中古携帯電話の売買を手掛ける子会社のゲオがスマートフォンの大量仕入れ(買取)・商品の再生とEC化率を向上するため「名古屋プロセスセンター」の本格稼働を始めた。24日、報道陣向けに同センターの内覧会が開催された。

これまでの機能をさらに強化

 名古屋プロセスセンターは、1億円を投じて愛知県名古屋市に開設された、延べ床面積4360平方メートル(1379坪)、オフィス区画と個人識別ICカードにより入退室が管理された高セキュリティー区画を擁するゲオのモバイル事業の中核施設。

 ゲオでは全国のゲオショップと、同グループで幅広い中古商品を手掛けるリユースショップ・セカンドストリートで携帯電話の買取を行っている。

 従来はこれら店舗で仕入れ(買取)た中古携帯電話を全国4拠点(携帯電話部門の拠点数、総合リサイクル拠点がさらに2か所)にある「ゲオ流通センター」に送り、携帯電話内の個人情報を消去、検査、商品化し、再び仕入れた店舗に出荷していた。

 名古屋プロセスセンターではそれらの機能に加え、法人からの大量仕入れ、宅配買取にも対応し、EC専門組織が常駐することで、プロセスセンターからゲオモバイルのオンラインストアを通じてインターネットで中古携帯電話を販売できる施設となっている。

 買取から商品の再生、EC機能の集約・一元化ができたことで、従来は中古携帯電話の買取後、店頭で販売するまで4週間ほどかかっていたが、名古屋プロセスセンターでは商品のセンター到着後、最短2週間ほどでオンラインストアで販売できるという。

2016年の中古販売実績100万台の内訳は

ゲオマルチプロダクト事業部ゼネラルマネージャー富田浩計氏

 ゲオのモバイル事業について、ゲオマルチプロダクト事業部ゼネラルマネージャー富田浩計(ひろかず)氏より現状の説明があった。

 2009年6月にゲオは3店舗で中古携帯電話の取扱いを開始。2013年にはゲオ全店で展開し、現在は格安SIMも手掛ける。2016年3月には中古携帯電話の販売台数が100万台を突破した。

ゲオのモバイル事業の変遷
ゲオの中古携帯電話の販売台数。なおこの携帯電話の内訳にはスマホ、ガラケーのほかタブレットも含まれる

 今回、中古携帯電話の販売台数の内訳が初めて明かされた。2016年に販売された中古携帯電話約100万台のうち、61万3000台は店頭販売だが、残りの45万2000台は中古携帯電話としてではなく、マテリアル(金属素材)として業者に販売されているとのこと。

ゲオの中古携帯電話の買取台数

 2016年は買取台数も100万台を突破。グラフのなかで2016年に店頭買取が減少したことについて富田氏は「総務省の指導によるキャリアのキャッシュバック終了の影響で、買い替えが一時抑えられたのでは」とのこと。しかし携帯電話はいずれ買い替えるため一時的なものと考えているという。

Eコマース事業の拡大について
自宅に眠っている埋蔵携帯電話の総額価値は1兆7013億円と試算されている(8月22日発表)

 名古屋プロセスセンターはEコマース事業の強化となる。センターの商品はオンラインストア「ゲオモバイル」で販売され、宅配買取も行っている。梱包材が送られ集荷されるので利用者は在宅のままでよく、この買取品はプロセスセンターへと送られる。またゲオでは30店舗でiPhoneの修理も行っているが、ゲオモバイルからネット予約が可能。部品が足りずに修理ができないといった事態を避けられる。

携帯電話の下取り(買取)について、2016年9月にゲオアプリのユーザーにアンケートを行い、1万7274人から回答を得た。その結果、48%が興味はあるが下取りはしたことが無いとのこと
さらに2017年5月にアンケートを行ったところ、7860人が回答し、下取りに踏み切れない理由として、男女ともに個人情報が心配だから、がトップとなった。とくに女性はデータの消し方が分からないという
そんな消費者の不安を解消するため、従来から全国に4拠点の流通センターを設け、今回名古屋プロセスセンターも加わった。これらのセンターでは世界基準のデータ消去ソフトを使用、クリーニングを行い、品質を保証している
また中古携帯電話の啓蒙活動として専門スタッフを配備、積極的にCM宣伝活動も行っている

名古屋プロセスセンターで実現できるスピーディな対応

ゲオマルチプロダクト事業部マネージャー鈴木亨氏

 続いて名古屋プロセスセンターの概要について、ゲオマルチプロダクト事業部のマネージャー鈴木亨氏より説明があった。

 名古屋プロセスセンターの目的について、鈴木氏はセキュリティの厳重な施設で買取から販売までがスピーディーに行える点、既存の店舗では難しかった大口の売買、法人との取引が可能になる点、ECサイト(ゲオモバイルオンライン)での販売が拡大することを挙げる。

名古屋プロセスセンター設立の目的
ゲオ物流センターの役割は、店舗から送られてきた携帯電話(買取在庫)のデータ消去などを行い商品化して送り返すこと

 なお、名古屋プロセスセンターでは従来の流通センターとも綿密にやり取りしており、たとえば各ショップの店頭で余剰となっている携帯電話を名古屋プロセスセンターに送り、ECサイトで販売することもあるとのこと。

 現在のゲオのモバイル事業においてECサイトを通した中古携帯電話の販売・EC化率は、2016年度で全体の4.9%だが、名古屋プロセスセンターが一部稼働し始めた4月には6.1%に、そしてこの8月には13.7%に達する見込み。冒頭述べた通り、名古屋プロセスセンターは8月に本格稼働が始まっているが、4月から4か月間、準備期間として一部稼働し、後述のデータ消去などの業務を行っている。

名古屋プロセスセンターの役割はさらに広く、大口の社外取引と、ECサイトを通じた取引が加わる。なお青い矢印は今後の計画で、中古携帯電話のレンタルサービスや、社外取引先とはデータ消去などの商品化業務の請負、ECサイトではiPhoneのリペア、パーツ交換が検討されている
EC化率の推移
名古屋プロセスセンター長・栗真喜朗(くりまきろう)氏

 名古屋プロセスセンター内を実際に案内したのは名古屋プロセスセンター長・栗真喜朗(くりまきろう)氏。前述したように通常はセキュリティー用ICカードが無いと入れない高セキュリティー区画も案内して頂いた。

 まず買取で仕入れた携帯電話は高セキュリティー区画の仕入品ラインへと送られる。ここでデータ消去ソフトを使用し、携帯電話の個人情報を消去する。ソフトはiPhoneとAndroidスマートフォンは政府機関でも採用されている「blancco(ブランコ)」、ガラケー(フィーチャーフォン)は「Re-secure(リセキュア)」を使用。なおガラケーの取扱いは全体の1割程度で、見学時はスマホのみがデータを消去されていた。

blanccoでデータ消去の作業中。なおセキュリティの都合で従業員の顔など一部ボカシをかけている(以下同じ)
blanccoの画面。消去の進捗状況を示し、緑の円になると完了とのこと。1度に最大20台の接続が可能

 各携帯電話にはゲオが発行している管理用シールが貼られており、13ケタの番号とIMEI(携帯電話の識別番号)を紐付けし、データの消去履歴が残っている。データを消去していなければ、そもそも売ることができない仕組みとなっている。

データ消去ではFeliCa対応の携帯電話に残金が無いかもチェック
フロアの様子

 検品ではblaancoの検品用アプリを携帯電話にインストールし、動作テストを行う。1台に要する時間は1分半~3分程度で、端末に20台ほどの携帯電話を接続することができるものの、手作業になるため実際は同時にテストを行うには1人4台までが限度だという

検品チーム
さらに第三者によるチェック
プリイン作業。中古携帯電話にゲオやセカンドストリートのアプリをプリインストールする
ライン名に注目。色分けされておりブルーは通常の仕入れ品ライン。オレンジは事故品ラインだ

 なおこのあと中古携帯電話をクリーニングするのだが、これはデータ消去をしていることもあり、社外取引先で行っているとのこと。

 作業ラインはブルーとオレンジに色分けされている。ブルーは通常の買取品を扱い、オレンジでは事故品、クレームなどで店舗から送られてきた携帯電話を扱っている。

 さらにフロアには携帯電話だけでなく、パソコンのラインもあり、携帯電話と同じくデータ消去・リカバリを行い商品化している。パソコンの買取販売はゲオショップではなく、同グループのセカンドストリートで行っている。

リカバリ中のパソコン群
筐体が大きいためパソコンのラインは大変だという

 ECコマースフロアもあり、ネットを通じて買い取った携帯電話の査定が行われる。査定結果を販売したユーザーに案内、了承を得られるとゲオの在庫となり、検品され、前述の高セキュリティー区画のデータ消去ラインへと送られる。

ECコマースフロア
査定、検品を行う

 名古屋プロセスセンターではゲオモバイルオンラインにアップされる中古携帯電話の画像も撮影しており、専用の撮影スペースがある。同じ画像を使いまわしているECサイトもあるが、ゲオの場合は、各携帯電話固有の画像が1点1点撮影されている。傷があればその画像も撮影、サイトに掲載されている。

撮影の様子
ストックの一部
壁側にもズラリ

 そんな販売可能な中古携帯電話が、見学時点で約1万点ストックされていた。フロアの収納量としては3万台までを計画しているとのこと。

 センター内の見学終了後には質疑応答が行われ、そのなかで富田氏によると中古携帯電話の買取は現在店頭での買取が多く、法人からの買取は「1割いくかいかないかくらい」だが、商品の在庫量を確保するためにもB2Bの取引に力を入れていきたいようだ。

 現在は閑散期だが、繁忙期には名古屋プロセスセンターから週約6000台を出荷、今後は「企業の決算期である3月、9月は買取が増えるのでは」という。またiPhone 6は社用ケータイとして需要があったそうで、iPhone 6の販売から2年経過し、法人で使われていたiPhone 6はリースの終了により買取の声が増えているという。逆に法人が中古携帯電話を買うケースもあり、「中古のiPadを200台、300台ほしい」といった機種指定の注文が増えているそうだ。

 富田氏は「ゲオの事業全体では昔からのゲーム、レンタルのウエイトがまだ大きい」としつつも、中古携帯電話市場は伸びており、都市部だけでなく地方にも広く拠点を持ち、同じサービスを提供できるゲオの強みを活かし、「安心安全の商品を提供することで中古携帯電話を盛り上げていきたい」と語る。

 最近増えつつあるC2C、フリマアプリやネットオークションなどの取引では個人同士のトラブルもあると指摘。企業であるゲオには「(消費者が)きちんとクレーム、苦情を入れられる」点も強みとし、携帯電話を売ったあとだけでなく、中古携帯電話を「買ったあとも安心」と締めくくった。