インタビュー

「TORQUE G01」担当者インタビュー

「TORQUE G01」担当者インタビュー

北米生まれのタフネススマホ、日本で生まれ変わる

 auの夏モデルとして8月にも登場する「TORQUE(トルク) G01」は、米国防総省の規格、いわゆるMILスペックをクリアし、タフネス性能を備えるAndroidスマートフォンだ。

 開発を担当した、商品企画担当の辻岡正典氏とデザイン担当の播磨隆太氏は、もともと北米版では業務用途として受け入れられていたところ、今回は一般的なユーザー、コンシューマー向けとして、タフネス性能とスタイリッシュさを両立させたことが大きな特徴であり、ユーザーの利用シーンにあわせて、機能やデザインを作り込み、最終的なスペックに繋がったと語る。

G'zOneが去った今、タフネスを求めるユーザー向けに

 三洋時代を含め、京セラの携帯電話事業では、2003年よりタフネス(高耐久)モデルの携帯電話を北米市場向けに提供してきた。かつてはフィーチャーフォン、そして最近ではスマートフォンとして開発され、2013年に米スプリント向けに登場したのが「TORQUE」というシリーズ。2014年3月には、SIMロックフリーのモデルとして、NTTドコモのネットワークでも利用できる「TORQUE SKT01」が日本国内でも登場したが、その機種までは基本的に法人向けという位置付けで、建設現場などで働く人たちに向けた機種だった。

 しかし今回の「TORQUE G01」は、あくまでコンシューマー向けだ。この背景として、これまでNECカシオが手がけてきた「G'zOne」という機種の存在がある。日本でタフネスケータイと言えばG'zOneシリーズと呼べるほど、長い年月にわたってさまざまな機種が登場し、少なくないユーザーから支持されてきたシリーズだが、そのNECカシオが昨夏、スマートフォン開発から撤退。辻岡氏は、そうした機種を使ってきたユーザーが存在する中で、後継モデルに対するニーズを意識して「TORQUE G01」を開発してきたと説明。型番の「G01」もG'zOneを意識したものかもしれない。

デザイン担当の播磨氏(左)と商品企画担当の辻岡氏(右)

 また普段使いの上でも、うっかり落としてディスプレイを破損してしまった経験があるユーザーも増えてきたとして、スマートフォンが普及してきた現在だからこそ、タフネスという個性を持った「TORQUE G01」が支持されるような市場環境の変化があった、とも語る。

ユーザーの利用シーンにあわせて

 一度使うと離れられない、ぜひ一度手にして欲しい、と辻岡氏がアピールする「TORQUE G01」ならではの機能はいくつかある。たとえばグローブを装着していても、多少の水しぶきがかかっても操作できるタッチパネル、ディスプレイ下部のハードキー、そして左側面に用意され、好みのアプリをワンタッチで起動できるダイレクトボタン、騒がしい場所でも相手の声が聴き取りやすい「スマートソニックレシーバー」、スピーカーでの通話に切り替えられるハンズフリーキー、タフネスな腕時計「G-SHOCK」との連携、といったあたりだ。

グローブしながら操作も

 いずれもユーザーの利用シーンを意識して搭載されてきた機能。ディスプレイは海外で登場していた先代モデルよりも大型化して4.5インチになったものの、ボディの幅は1mm、細くなった。一方で、WiMAX 2+やキャリアアグリゲーションに非対応と、一部スペックは夏モデルのハイエンド機種と比べれば、やや見劣りしているように感じるところがあるかもしれない。こうしたタフネス機種、あるいはシニア向け機種など、特定のユーザー層に向けた機種はこれまで何らかの機能がトレードオフとなって、スペック的には最先端ではない、ということになることがあった。今回の「TORQUE G01」もそうした考えなのか? と問うと辻岡氏はきっぱり否定する。

「今回は、高耐久性を求めるユーザーにとって何が必要な機能なのかという視点で、さまざまな機能を盛り込んだ。大きめのハードキー、ダイレクトボタン、グローブを装着したまま操作できる――といった点は、ユーザーに対するソリューションを追求した結果、搭載することになった。これらの機能は、TORQUEでしかできないことであり、他のスマートフォンとはっきり違う点」(辻岡氏)

 auの2014年夏モデルのうち、京セラ製のスマートフォンとしては、「TORQUE G01」だけではなく「URBANO(アルバーノ) L03」も用意されている。URBANOシリーズといえばシニア層のユーザーを意識した機種だったが、今回の「L03」はそうしたユーザーに加えて、もっと幅広い層にも利用できるような機種としても仕上げられている。5インチ、フルHDといった要素を重視するユーザーには「URBANO L03」を、そしてバイクや自転車に乗ったり、山や海でのレジャーをとことん楽しんだりするアクティブなユーザー、あるいはファッション性としてタフネスという要素に関心を持つユーザーには「TORQUE G01」をどうぞ、という格好だ。

MILスペックをクリア、そしてデザイン性も追求

 「TORQUE G01」では、防水防塵といった一般的なスマートフォンでもサポートされている性能に加えて、耐日射性能、防湿性能、温度耐久性能などの試験をクリアしている。

TORQUEがクリアしているMIL-STD-810Gの内容
項目内容
防水性能30分間にわたる降雨、浸水に対する性能
防塵性能6時間にわたる粉塵環境試験をクリアする性能
耐衝撃性能高さ約1.22mから26方向での落下衝撃性能
耐振動性能1時間におよぶ3方向での振動試験をクリアする性能
耐日射性能24時間、計1120W/平方mという日射条件をクリアする性能
防湿性能連続10日間、高湿度環境での放置試験をクリアする性能
温度耐久性能-21℃~50℃で3時間で動作、-30℃~60℃で4時間保管する試験をクリアする性能
耐低圧性能2時間にわたる低圧環境(57.11kPa)をクリアする性能
塩水耐久性能24時間、塩水を噴霧した後に24時間放置する試験にクリア)

 先述した通り、ディスプレイは大型化しているが、横幅はほぼ変わっていない。これは、狭額縁化とも呼ばれ、最近は他のスマートフォンでもよく見かける進化の方向だが、タフネスモデルでは強度・剛性をいかに保ちつつ、狭額縁を実現するか、というのも工夫のポイントの1つ。さらに「TORQUE G01」では、角の部分や背面カメラ周辺をウレタン素材のバンパーで補強しつつ、カメラとバンパーの間を塗装して個性を打ち出した。

 デザイン的には、無骨さよりもスタイリッシュさを打ち出した外観でありつつ、ウレタン素材で覆っていない塗装部分も、内部構造を工夫したことで剛性を担保。京セラ独自のノウハウを活かして、デザイン性とタフネス性を両立させた、象徴的なパーツと言えそうだ。デザイン担当の播磨氏は「バンパー部分は、仮に落下させても、塗装ではないので、剥げない。もし傷がついてもそれが味になる。背面の塗装部分は平たいままでは弱々しく感じられがちだが、パキッとした尾根のような形状にすることでスポーティな精悍さを演出した。個人的にもこの背面の形状と赤色はマッチしていて、気に入っているポイント」とも語る。

 ちなみにバンパー部分も、部分的にテクスチャーが異なっており、指があたる部分は凹凸のある粗いテクスチャーでグリップ感を得られるようにしている。細かな部分だが、ホールドしたときの手の馴染みと、しっかりと持てるという2つの要素を両立させた。ホーム画面に並ぶウィジェットも、気圧計などTORQUEならではのものが揃う。

これまでのスマホで味わってきた「迷い」を取り払える

 ユーザーの利用シーンにあわせた機能を、強靱なボディとスポーティな雰囲気のなかに取り込んだ「TORQUE G01」。辻岡氏は、アクティブスポーツの趣味を持っているような人がスマートフォンを使う場合、頑丈なケースに入れる、ということになるだろうが、と前置きした上で「楽しい時間を過ごす中でスマホは大丈夫? と気にするのは、もったいない。そこを気にせず、目いっぱい遊んでもらえる。それがTORQUE G01の魅力」と語る。

 クアッドコアCPUに、16GBのストレージ、2GBのメモリ、そしてAndroid 4.4というスペック面でも「ユーザーからすると、スマートフォンをストレスなく利用できることが大事。かつては電池持ちが一番の不満点だったが、TORQUE G01では3100mAhというバッテリーを搭載。さくさく使いたいというニーズにも、クアッドコアやAndroid 4.4で遜色ないレベルにある」(辻岡氏)と自信を見せる。

 タフネスという他にはない個性をこの夏、唯一実現するスマートフォンとして、「TORQUE G01」がまもなく登場する。こうしたスペックが魅力になる人にとってはこれ以上ないほど“深く刺さる”機種になりそう。一部の最先端機能は、サポートされないものの、今夏、注目機種の1つだろう。

関口 聖