インタビュー
TSUTAYAのSIMフリースマホ販売、その背景や狙いを聞く
TSUTAYAのSIMフリースマホ販売、その背景や狙いを聞く
CCCとNTT Comに共通するリアルチャネル重視の戦略とは
(2014/7/8 17:04)
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は、都内の「TSUTAYA」の1店舗で、SIMロックフリーのスマートフォンの販売を開始した。OCNのSIMカードとセットで提案しており、端末はモバイルWi-Fiルーター1機種を含む4機種を「Recoスマホ」としてラインナップ。スマートフォンは比較的性能の高いモデルから、2万円を切るコストパフォーマンスの高いモデルまで3機種を用意している。7月8日時点では1店舗でしか販売されていないが、ラインナップは幅広い店舗で販売することを見越した内容になっている。
販売方法を検証、「TSUTAYA」ならではの取り組みは今後検討へ
CCCとしての取り組みについては、商品本部 携帯チーム Leaderの小柳出公仁氏、同社 BOOK部 ecobooksユニット 携帯事業担当の橋詰輝正氏の2名に話を伺うことができた。
「TSUTAYA」では、2011年の9月から一部の店舗で“中古ケータイ”の取り組みを開始し、買い取りや販売を行ってきている。これは、「TSUTAYA」で提供しているようなエンターテイメント関連への支出が、通信費にとってかわられるようになったという分析に基づいたものだ。端末を安く購入できることで、エンタメ関連にお金を使ってもらえるようになる、という考えだ。
一方で、小柳出氏によると、当時は“中古ケータイ”に対するさまざまな面での不安の声は多く、新品の販売についての問い合わせも多いとのこと。「TSUTAYA」には新品の販売やレンタルという店舗のイメージもあり、「SIMロックフリーのスマートフォンの販売に、チャレンジしようということになった」という。最近になって、SIMロックフリーのスマートフォンが端末メーカーから提供されるようになったことも追い風になっているようだ。
従来の中古ケータイの取り扱いでは、端末を販売するのみで、通信サービスはユーザーが別途用意する必要があったが、今回の「Recoスマホ」の取り組みでは、通信サービスを提供するSIMカードも一緒に販売する。販売コーナーにはOCN(NTTコミュニケーションズ/NTT Com)の「OCN モバイル ONE」が選ばれているが、これはNTT Comから提案があったという。
小柳出氏は、「TSUTAYA」を訪れるユーザーは、必ずしもITリテラシーが高いわけではないとし、安心感を求めるユーザーが多いという予想や、NTT Comが独自のプロモーションでそうしたハードルを下げる取り組みを行っていることなどに共感したことも大きいとする。また、NTT Comが、具体的な商品の提供だけでなく、SIMカードや通信サービスの提供でどういった生活シーンを提案できるかといったスタンスで取り組んでいることも、CCCのユーザーに対するスタンスと重なっているという。
中古ケータイの取り組みを踏まえた上で、今回の取り組みの課題についても語られた。販売方法では、専任の販売スタッフを育成して常駐させるのか、あるいはユーザー側で操作・選択してもらうことを前提に、自動化を進めたシンプルな販売形態にするのかといった点だ。
「TSUTAYA」では本やレンタルDVDをユーザー自身が選ぶのが基本であるため、店員がその場で相談に乗ったり、提案したりといった取り組みは、店舗運営やスタッフ教育の面を含めて、従来とは異なる取り組みになる。そうした課題の把握や見極めが、神谷町駅前での販売を元に実施されるという。仮にユーザー側にある程度操作や選択を任せることになる場合は、SIMカードの装着や通信設定といった導入部分のハードルを下げる取り組みも必要になるだろうとの認識だ。
また、「Recoスマホ」を販売していくにあたり、専属のスタッフを配置できるなら、4機種などのラインナップを展開し、そうでない場合は機種を絞って展開することもあり得るとしている。
橋詰氏は、今後の端末ラインナップについて、新機種が登場すれば、順次検討していく方針を明らかにしている。また、現在は“素”のメーカー製スマートフォンを販売している形だが、ゆくゆくは特徴を出せるアプリのプリインストールなども検討していくという。コンテンツを豊富に扱っている「TSUTAYA」ならではの取り組みが、家電量販店などで販売されるスマートフォンとの差別化要素になるという考えだ。
「OCN モバイル ONE」リアルチャネル重視の“身近に感じる”戦略
「Recoスマホ」とセットで提案・販売される「OCN モバイル ONE」については、NTTコミュニケーションズ ネットワークサービス部 販売推進部門 担当課長の新村道哉氏に話を伺うこともできた。
新村氏によれば、「OCN モバイル ONE」の取り組みが競合他社と異なるのは、今回の取り組みのように、NTT Comからの直販よりも、パートナー企業が商材として販売できるように提供している点だという。
一方で、SIMカードの販売そのものは、Webサイトでの販売から、家電量販店や今回のTSUTAYAのようなリアル店舗にも広がりを見せており、「私達を含めて、パイを広げるためにシフトした結果」とする。
「リテラシーの高くないユーザーが、“自分にも身近に感じる時”というのは、身近に行ける場所で買える時です。我々の商品はプリペイド型がローソンでも販売されていますし、リアルチャネルを重視しているのは、そういうことです。身近なものだと思ってもらうことが大事です」(新村氏)。
同社ではまた、いわゆるマジョリティ層に販売するなら、まず生活シーンの提案があり、その次に端末があり、結果としてOCNのSIMカードが利用されているという形になるといい、ITリテラシーの高いユーザー向けとは180度違うアプローチになるともしている。
「OCN モバイル ONE」ではまた、OCNやNTTのブランドも効果があるとみている。「NTTだというのは、(ユーザーの不安に対し)少なからず効いてくる」。逆に“即日開通”といったサービスには、品質面などから現時点では慎重に検討していく方針だ。
「OCN モバイル ONE」のサービスのラインナップのうち、約8割を占めるのが、1日50MBまでで月額900円のプランだという。OCNの光回線を契約していれば200円引きの月額700円になる点も大きいようだ。一方で、コールセンターでの提案や光回線のユーザーに丁寧に説明することで、月間の通信容量が2GBのプランのユーザーが増え、これが全体の約1割を占めるまでに拡大しているとのこと。外出先でもしっかりと使いたいというニーズが、ユーザーのリテラシーを問わず増えているという。
大手の通信キャリアは相次いで新料金プランを発表し、音声通話もかけ放題の、フルパッケージとでも言うべきプランが拡大している。新村氏は、「通話のかけ放題があっても、ユーザーの立ち位置で決まるのでは。(キャリアのプランと)棲み分けができているのは、この1年で見えてきた」と分析しており、当面は“2台目需要”としての動向が中心になるとの考えだ。もっとも、パートナー企業が“1台目”として販売する方針については「問題ない。どんどん活用していただきたい」としている。
新村氏は、個人的な考えと断った上で、「OCNの光回線の販売窓口と、『OCN モバイル ONE』を近づけていくことも考え、サポート窓口として検討してもいい」とも語っており、サポートを含めてリアルな接点の増加は幅広く検討していく方針のようだ。
「最近言っているのは、“格安”は言わないようにしよう、というものです。“格安”だと、安かろ悪かろうのイメージをどうしても払拭できない。それを取り払う取り組みを始めています」と今後のプロモーションの方針についても新村氏は語っており、「安くする方法がある、ということではなく、(今までが高く)これが標準」という考え。また、既存のキャリアのプランでも安くする方法はあるものの、選択肢を駆使する難しさがあり、安さと同時にシンプルであることも支持される要因としている。