インタビュー
CIO代表取締役の中橋氏に聞く、「多機能×最新技術」でワクワクする製品づくり
2022年4月19日 00:00
大阪に拠点を置き、充電器やモバイルバッテリーなどの企画・開発・販売を手がけるCIO。
CIOが立ち上げられたきっかけは、少々ユニークだ。同社代表取締役の中橋翔大氏がもともと個人事業主として始めた卸売事業が軌道に乗り、事業を拡大するなかで設立。現在は100%自社製品として、多彩なラインアップを展開する。
今回は同氏へのインタビューを実施し、現在の人気製品や、卸売事業から自社製造に切り替えたきっかけ、今後の展望などを聞いた。
現在の人気製品
――さっそくですが、今売れている製品を教えてください。
中橋氏
モバイルバッテリーと充電器が、CIOのなかでも人気製品です。
まずモバイルバッテリーに関しては、「SMARTCOBY Pro」という、小型でありながら30Wの出力に対応したモバイルバッテリーが一番売れています。リリースしたのは昨年5月で、これまでで10万台近くを販売しました。
充電器に関しては、マルチポートで65W出力の「CIO-G65W2C1A」が人気ですね。リリースから1年半くらい経ちますが、今までで20万台くらい売れています。
――これらの製品のセールスポイントはなんでしょうか。
中橋氏
我々の企業理念やコンセプトは、「多機能×最新テクノロジーでワクワクする未来をつくる」というものです。ですから、それぞれの製品になんらかの“ワクワクポイント”があります。
「SMARTCOBY Pro」は、小型化や高出力に加え、残量のデジタル表示やパススルー充電などの機能などを備えています。
「CIO-G65W2C1A」は、サイズ感、高出力、マルチポート充電の3つをかけ合わせて製品化したものです。
製品を気に入って使っていただきたいという思いに加えて、「手に取ってワクワクしていただきたい」という思いが我々にはあります。
卸売事業からスタート→自社製造に
――今では自社製品を展開されていますが、CIO立ち上げの前、もともとは卸売事業をされていたんですよね。
中橋氏
はい。スタートは2015年で、私が個人事業主として、米国からスマートフォン本体やアクセサリー類を仕入れて販売するようなことをしていました。
そのときに、本体を欲しがる方もいらっしゃったんですが、充電器やケーブルに対する需要が高いということに気づきまして。
――需要の高さに気づくきっかけはなんだったんですか。
中橋氏
ECサイトで販売していたころ、ユーザーの方から「充電ケーブルだけ売ってくれないか」みたいな問い合わせがあったんですね。
私としては「それってそんなに需要あるの?」と思ったんですけど、本体と付属品をセットで売っていたときよりも、バラして売ったときのほうが高く売れて。「アクセサリー単体でも、これだけ需要があるんだ」と気づきました。
――たしかに、たとえばフリマアプリなどを見てみても、アクセサリー類の出品は数多くある印象です。では、そういったアクセサリー類の卸販売を、自社製造に切り替えた理由はなんでしょうか?
中橋氏
アクセサリー類への需要に気づいた当初は、「純正の充電器でこれだけニーズがあるのなら、便利な充電器があればもっとニーズは高いはず」と考え、サードパーティー製の充電器などを中国で仕入れて日本で販売していました。
で、それを購入された方のレビューなどを見ると、「こういう機能があったらいいのに」という声が結構あって。我々としても「こんな製品があれば」というような発想が広がっていたのですが、なかなかそういった製品が見つからず……。
「じゃあ、自分たちで作れるかな?」と考え始めたのが、自社製造に切り替えたきっかけです。
卸売事業をしていたころの難しさは「品質コントロール」
――中国からの卸販売をされていたころは、どのような苦労があったのでしょうか。
中橋氏
「品質担保」です。たとえばBluetoothイヤホンを大量に安く仕入れたときも、その半分くらいが機能せず廃棄することになったり……しかも、文化の違いでそういったことが向こうに理解されない。これは衝撃でしたね。
尖ったものや珍しいものにチャレンジしようとすると、品質の点で問題にぶち当たる可能性が上がるので、結局無難なものしか仕入れられない。
そこで、自分たちで製品を作れば品質コントロールも容易になる、と考えました。これは、先ほどの「自社製造に切り替えたきっかけ」にもつながります。
――現在は100%自社製品ということで、品質もコントロールできるようになったということですよね。
中橋氏
はい。運用面でかなり苦労はしていますが自分たちの責任で品質を担保しつつ、ユーザーの方へ製品を届けられるようになりました。
自社製造における課題とは
――品質コントロールという課題は解消されましたが、逆に自社製造だからこその難しさはあるのでしょうか。
中橋氏
ひとつは、「相性問題」です。充電器をはじめとしたスマートデバイスには、「この機器はちゃんと充電できるけど、一部の機器では不安定」みたいなことが、一定の割合で存在します。
そうした問題は、製品をリリースする前にできるだけ気づかなければいけない。
そこで、すごくアナログなんですけど、たくさん機器を買ってテストしたりとか、端末をたくさんお持ちのユーザーの方に先行サンプルをお送りしたりして、実機の相性問題は解消するようにしています。
あとはやはり「安全性の担保」ですね。温度などの安全性を100%クリアしながら、小型化や高出力化を実現する難しさはあります。
ただ、我々としては、安全性を100%担保するのは大前提。そのうえで、製品にワクワク要素を追加できればと思っています。
――今は自社で工場をお持ちなんですか。
中橋氏
いえ、我々はファブレスでやっていて、工場自体は持っていません。
ただ、エンジニアや工業デザイナーは抱えているので、自社内で企画・設計したものについて、組み立てや部材調達を現地工場が担うかたちです。製品の品質などの確認は我々が一貫して行っています。
――現地工場とやり取りするうえでの苦労はありますか。
中橋氏
現地の情勢に左右される部分が大きい点です。たとえば最近では、半導体不足による調達能力の低下や部材高騰などが挙げられます。
対策としては、現地従業員を工場に常駐させ、状況をリアルタイムで把握するようにしています。現地工場をブラックボックス化せず、透明化するための取り組みです。
――現地工場との定期的なミーティングなども実施されているのでしょうか。
中橋氏
はい。我々には10以上の工場との付き合いがあり、そのうちの主要ないくつかの工場と定期的にやり取りをしています。
基本的にはテクノロジー色が強い工場としか付き合いはないので、開発会議なども積極的に実施しながら、新規性の高い製品を作り上げています。こうしたミーティングには私も参加しています。
ですから、実態として自社工場はありませんが、工場との関わりはかなり濃密かなと思います。
クラウドファンディングについて
――販路のひとつとして、クラウドファンディングも積極的に活用されていますよね。クラウドファンディングを始めたきっかけを教えてください。
中橋氏
我々にとって最初の自社製品となった「SuperMobileCharger」で、クラウドファンディングを活用しました。
そのときから「多機能×最新テクノロジー」という考えはありましたが、世の中の反響がどこまであるのか、市場ニーズとどこまでマッチしているのかがわからなかったんです。
そんな状態でいきなり新製品を作るのはリスキーだったので、資金調達の目的に加えて反響を見たい思いなどもあり、クラウドファンディングを活用しました。
――なるほど。現在も同じような目的でクラウドファンディングを活用されているんですか。
中橋氏
いえ、目的は少しずつ変わってきています。現時点では、資金調達のフェーズは終えていて、どちらかといえば「革新的な製品を待っているユーザーの方の声にお応えする場所」として活用しています。
おかげさまで、我々のやっていることをユーザーの方にも少しずつ認知いただいてきました。手前味噌になりますが、「我々が出す製品=ワクワクする」といったイメージが定着してきたなかで、ユーザーの方の期待に応えられる場所はクラウドファンディングだと思っています。
クラウドファンディングは、世の中にないものが新しく生まれるプラットフォーム。そこへ我々の製品を出すことで、「革新的な製品を生み出すべく常にチャレンジし続ける姿勢」をご紹介できるかなと。
――クラウドファンディングに関しては一部ネガティブな見方もありますが、それについてはどうお考えですか。
中橋氏
一部ネガティブな見方はあると認識していますが、我々としては、それは基本的にプラットフォーム側が是正すべきことだと感じています。ですから、これまでもプラットフォーム側へ働きかけてきました。
また、自分たちはそういったネガティブな見方に当てはまらないということをお見せしてきたいと思っています。
我々は、クラウドファンディングを、「ユーザーの方々と交流する場所」としてとらえています。製品化の過程などもお見せしつつ、プロダクトひとつひとつを我々のストーリーとしてとらえていただき、CIOのことを好きになっていただける。
こうした体験は、一般的なネットショッピングではなかなか味わえないのかな、と思います。
――今後もクラウドファンディングは積極的に活用される予定ですか。
中橋氏
新たな製品ができて、ストーリーも含めてお知らせしたいと思ったときには、今後もクラウドファンディングを活用したいと思っています。
「資金調達する必要がないからクラウドファンディングをストップする」ということは特に考えていません。
製品のみならず、我々の理念を伝えていく場としても、クラウドファンディングを重要なタッチポイントとして活用していきたいです。
今後の展望
――それでは最後に、今後の展望などについて教えてください。
中橋氏
まずプロダクトの話をすると、我々は充電器やモバイルバッテリーにこだわっているわけではないので、「多機能×最新テクノロジー」でワクワクするような製品を作っていきたいと思っています。
あと、日本市場にとらわれる必要も特にないかなと。「日本発の企業」というマインドを持って、まずは国内のユーザーに満足していただきつつ、その先として海外も見据えています。
最終的には国内のみならずグローバルに広く認知された状態で、CIOの世界観をより多くの方に感じ取っていただくために会社としては上場を目指したいですね。
――ありがとうございました。