インタビュー

プラススタイルが「SIMフリースマホコーナー」を提供する理由、近藤社長が語る未来像

 11月10日、ソフトバンク系列のプラススタイルが、自社のECサイト「+Style」内に「SIMフリースマホコーナー」をオープンした。

 ホームIoT製品を多く手掛けつつも、これまで個性のあるSIMフリーの携帯電話をラインアップしてきた「+Style」で、どうして、今、「SIMフリースマホ」というコーナーが立ち上げられることになったのか。

 プラススタイル取締役社長の近藤正充氏は、ホームIoT製品を求めるユーザー層とSIMフリースマホの親和性を挙げつつ、「将来像としてオリジナルスマホの開発などを視野に入れている」とも語る。

ホームIoT求めるユーザーとの親和性

――11月に始まったSIMフリースマホコーナーですが、これまではIoT製品を手がけられてきたわけですよね。いつごろから検討を始めたのでしょう?

近藤氏
 今年に入ったあたりから検討を開始しました。しかし構想は前々からあったんです。

 というのも、2016年に「+Style」を立ち上げ、これまでさまざまなジャンルの製品を販売し、実際に売れ行きを伸ばしてきました。4年半経ち、あらためて分析したところ、スマートフォンが売れていたという事実があったのです。

――発表会でも紹介されていましたね。

近藤氏
 そうです。そして「+Style」を立ち上げた当時、SIMフリースマホ市場はまだまだこれからという時期で、「スマホはキャリアのショップで購入する」というのが一般的な状況でした。

 そこで「+Style」では、個性が強いモデルを取り扱ってきたのです。IoT製品を提供するなかで、スマートフォンや携帯電話は扱ってきたのですが、そのポリシーは「他社で買えないもの」といった形でした。

 それが、一番売れたクラウドスマホの「Robin」でしたし、機能を削ぎ落とした「Punkt. MP02」でした。特徴がしっかりある製品であれば、お客さまに選んでいただけるであろうという。

近藤氏
 スマホでコントロールできるホームIoT商品を中心に取り扱ってきましたが、スマホもまたIoT製品のひとつなんですよね。

――以前からスマホを扱うこと自体、当然のことと考えていたわけですね。

近藤氏
 はい。そして今回は、SIMフリースマホに対し、もう少し積極的に、ということでコーナーを立ち上げることにしました。これまでの「ちょっと尖った」に加えて、より多くの方に選んでいただけるような商品をラインアップを加えたのです。

機種価格(税込)
TCL 10 5G3万9800円
ROG Phone 312GB版:13万1780円
16GB版:14万2780円
HUAWEI P40 Pro 5G11万9680円
OPPO Reno3 A3万4780円
Redmi Note 9S4GB+64GB版:2万4800円
6GB+128GB版:2万9800円
Palm Phone4万5630円
Punkt. MP024万4880円

「TCL 10 5G」の狙い

――確かに支持されそうな機種がラインアップされています。この品揃えにはどんな狙いがあるのでしょうか。

近藤氏

 さきほど、「もっと幅広い方」と表現しましたが、ラインアップで言えば、値ごろ感のあるベーシックなモデルを揃えたところに表れているかと思います。

――そうしたなかで「TCL 10 5G」は、同日発表で、一時期、独占的な取り扱いでした。

近藤氏
 現時点では一番売れている機種です。3万9800円(税込)で、6.53インチのディスプレイ、クアッドカメラというスペック。そして5G対応ですから、注目されましたね。

 尖った商品は、最初どんと売れる傾向があるのですが、「TCL 10 5G」は息の長い商品になるだろうと感じています。

 ちなみにその尖った商品の代表格である「Punkt. MP02」はこれまでも提供してきたフィーチャーフォンですが、今回、SIMフリースマホコーナーを立ち上げたところ、あらためて売れ行きが伸びました。こうした製品を探しているお客さまがやはりいらっしゃるんだなと。

――ああ、なるほど。これまで気づいていなかった人にリーチできたというわけですね。話を「TCL 10 5G」に戻しますが、いわば目玉製品として紹介された形ですね。

近藤氏
 発表のタイミングはすり合わせしたのですが、実はその程度でして、「SIMフリースマホコーナー」としては、偶然そうなったんです。

――あ、そうなんですね。

近藤氏
 5Gのコスパスマホという点は、“尖った”ポイントです。幅広い方にわかりやすく伝わる部分かなと思います。

 ただ、コストパフォーマンスに優れる他の機種とまったく同じように捉えられるかというと、尖った点があって、ちょっと異なるかなと見ています。

――今後のラインアップはどういうものになりますか?

近藤氏
 引き続き特徴をしっかり備える機種を揃えていきたいと思いますし、売れ筋機種もしっかり押さえたいですね。

 最初の段階では、国内メーカーの製品がありませんでしたが、今後、扱いたいと思います。

 大切にしたい点としては、ほかのショップさんとは違いを打ち出したいですね。+Styleだけで提供するカラーバリエーションですとか、中のソフトウェアがちょっと違うですとか。

 最終的には、当社がメーカーとしてSIMフリースマホビジネスに参入することも想像しています。遠い未来になるかもしれませんが……。

――オリジナルスマホ! そこまで視野に入れいてるとは思っていませんでした。

通信回線との連携は

――プラススタイルはソフトバンクのグループ企業です。今回、SIMフリースマホコーナーではグループ内の連携もあるのかな? と疑問に思うところもあったのですが、いかがでしょう。

近藤氏
 ソフトバンクと何か話をしているわけではなく、独自の取り組みなんです。

 これまでもSIMフリースマホは扱っており、真面目に注力していく、ということですね。環境の変化で、キャリアショップ以外でのスマートフォンの販売が伸びてきているという状況もあります。IoTを掲げる事業者としては、スマートフォンはあくまでそのラインアップのひとつなんです。

 つまり、スマートフォンと言っても、ガジェットと同じような取り扱いなのです。ユーザーの皆さんにとっては、シンプルに「モノ」をご購入いただいているだけ、という形です。

――今回はLINEモバイルのSIMカードも販売されています。このあたりの連携は……。

近藤氏

 今はあまりリンクはしていないです。SIMフリースマホコーナーを立ち上げるならば、SIMカードも買えたほうがいいよね、という考えでご用意しました。

SIMフリースマホを売るということ

近藤氏
 とはいえ、今後は、「+Style」だけでしか買えない商品を早いタイミングでご用意する、ですとか、オリジナルの家電をセットにするですとか、ホームIoT/家電といった商材とシームレスにご提供できるようになればいいかなとも考えていますね。それが見えている将来像であり、現状はまだまだその手前です。

――たとえばMVNOやSIMフリースマホ販売事業者のなかには、認定整備済のiPhoneを扱うところもあります。

近藤氏
 はい。でも「+Style」で今後目指していくのは、「人気が出そうなアイテムを売る」というよりも、IoT家電との連携なのです。

 「+Style」では、世界中のIoT製品をご提供する取り組みと、自社のオリジナルIoT家電を提供するという両輪があります。

 SIMフリースマホのご提供は、両輪のうち「世界中の~」と同じ扱いなんです。グローバルで登場するIoT製品を盛り上げてくれる、ひとつの要素です。

ホームIoTを広げるためには

――その点で行くと、ホームIoTそのものがまだまだこれから、という状況ですよね。

近藤氏
 はい、まだまだ行き届いていませんね。現にいま、この瞬間もホームIoT製品が売れ続けていますから(笑)。IoT製品をコントロールする当社のアプリもダウンロード数がどんどん伸びています。ただ、急激な伸びではない。

 当社が手掛けるオリジナルのホームIoT商品は、IoTを普及させるためのフックになればと思っています。

 ですので、スマート電球も2980円という価格でのご提供です。こうした製品は、「ガジェット大好き!」という方だけではなく、スマホをお持ちであれば、すぐ導入できます。

 いわばIoTのキャズムを超えるための商品ラインアップです。

 そうした視点で、スマートフォンのコスパモデルも売れるかもしれないとも考えています。スマホコーナーへのアクセスがきっかけになって、ホームIoT商品を手にしていただけるのではないかと。

――なるほど。

近藤氏
 「スマートホームが広がる」ことと「SIMフリースマホが売れる」という両輪がうまく回ってくれれば、「SIMフリースマホコーナー」を立ち上げた甲斐があったと言えるようになるんでしょうね。

――そのために「セット割」などは検討されているんでしょうか。

近藤氏
 今はまだ、ですね。ただし、ある程度、幅広い方が当社のアプリを利用されるようになってくれば、セットなどの効果が発揮できるようになるかなとは見ています。

――しかしホームIoTは、まだまだ道半ばですね。

近藤氏
 そうですね。どうやれば「キャズムを超えられる」のか、本当に知りたいですよ(笑)。いまも、当社商品の問い合わせを受け付けるコールセンターでは、問い合わせの1/3が接続、つまりどう繋げれば良いのかという内容です。まだまだ設定が難しいんですよね。

――そういう意味では、ちょっと未来すぎるかもしれませんが、5G通信がホームIoTに搭載されるようになれば、と考えてしまいます。

近藤氏
 はい、自宅に届いてポンと置いたら使える、というのは、多くの方にとって簡単ですよね。キャズムを超え得る理由のひとつになるでしょう。

――最後に「+Style」としての今後の展開について教えてください。

近藤氏
 毎月何かしら、世界中のIoT商品を追加していきます。SIMフリースマホも、今年度内にひとつ“大きなもの”を追加したいと思っています。

――ありがとうございました。