インタビュー

ソフトバンク5Gサービスはどんな理由で開発された? 寺尾本部長インタビュー

 5日、ソフトバンクが、いよいよ5Gサービス「SoftBank 5G」を発表した。ついに料金、新機種、サービスが揃って発表された今回、ソフトバンク常務執行役員でプロダクト&マーケティング統括 Y!mobile事業推進本部 本部長 兼 サービス企画本部 本部長の寺尾洋幸氏がグループインタビューに応えた。

 ワイモバイルブランドの事業をリードする寺尾氏だが、今回はサービス企画本部長として、5G関連のサービスについて、同社の戦略や狙いを語った。

寺尾氏

――5G LABのコンテンツは、どのような体制で継続的に供給するのか?

寺尾氏
 これまでも「バスケットLIVE」や、「スポナビライブ」(終了済)といった形でスポーツコンテンツを提供してきました。またグループには、ヤフー系列で映像配信サービスの「Gyao」がいます。ヤフーには、「スポーツナビ(Sportsnavi)」も提供されています。それらを担当するチームと一緒に(5G LABで)やっていこうと。

 有料、無料をうまく組み合わせられるんじゃないかと思います。VRコンテンツもあれば、多視点もある。一般的な2Dのコンテンツも手がけていくことで、継続的に提供できるのではないかと思います。そうじゃないと最初の打ち上げ花火だけで終わりますよね。

 これまでワイモバイルを担当してきて、ヤフー側との関係を構築してきました。彼らの力をうまく活用する。動画メディアの価値をすごく感じています。今まで広告だけ、課金モデルだけでリクープ(損失や費用の回収)ができなかったところを、両方あわせることでコストもシェアできます。うまくいくんじゃないかなという見通しでやっています。

――5Gだけを意識したコンテンツというわけではないと。

寺尾氏
 2019年からやっているJO1(ジェイオーワン、男性アイドルグループ)が良い例だと思います。Gyaoで配信して、ものすごく配信数が伸びました。そして投稿型の「マイスタ」(タレントがコンテンツを投稿、発信するサービス)にも参加してもらった。そしてワイモバイルの広告にもJO1を起用しました。

 ひとつのコンテンツがいろんなメディアで使えるようになってきたなと思うんです。ひとつの素材をいくつかのビジネスモデルに変えられる。これをうまく広げることです。コンテンツの調達はどうしてもコストがかかります。これは大きな取り組みになるかと思っています。

――2020年1月からAKB48グループの劇場VRライブ配信サービスが提供されています。手応えは。

寺尾氏
 (料金が税込3300円と)高いので、数はまだまだです。

 でも劇場へ来る方は強いですね。お土産キット(劇場VRパック、4500円)がかなり売れているんですよ。VRグラスと1カ月分の視聴権がセットになったパックなんですが、購入いただける割合が高い。これは強烈にショックでした(笑)。

 動画コンテンツは確かに難しいです。でもその場へ足を運ぶ方にはものすごく刺さりますよね。いかにコストを膨らませず、適正なコスト配分にするか、少しずつわかってきたところです。

――新型コロナウイルスの影響でそうしたライブ会場やスポーツの試合会場のVR配信はニーズがありそうですね。

寺尾氏
 そうですね、ライブや試合が開催していただけるのであれば……。ちょっと今後のことは不透明です。我々としては野球、バスケットボールなどでの無観客試合に備えて設備の増強は進めています。

――5G LABは、「AR SQUARE」「VR SQARE」「FR SQUARE」「GAME SQUARE」の4つのカテゴリーがあります。今後どうなりますか。

寺尾氏
 サービス名のLABはラボラトリー(研究所)だと思っています。広げることもあれば、見直すこともあります。大きな意味では、5G、AI、IoTといった技術の進化が撮影技術をどんどん変えていると思っています。

 アイドルグループの中でも、ユーザーが好みのアイドルだけを指定して観る、ということが実現しています。現在はカメラマンがたくさんいますが、裏側人が要らなくなるのが見えてきています。より本格的なものは別にして、今後は劇場にカメラを常設するだけで実現するようになっていきます。顔認識を使うAIカメラであれば、撮影する人、スイッチする人がいなくても済むわけです。

――そうした設備をソフトバンクが整えて、さまざまな企業に利用してもらい、コンテンツを増やしていくこともあるのでしょうか。

寺尾氏
 福岡PayPayドームが好例になるかもしれません、60台のカメラを設置したのです。まだ何も決まっていませんが、野球だけに限らず、コンサートにお使いになりたければどうぞ、となる。いわば福岡PayPayドームの価値を上げたことになります。

 バスケットもホームアリーナがあれば、設備を導入することで実現していきます。コンシューマー向けで始めたサービスをパッケージ化して、当社の法人事業で提供していくことがあり得る。拡張する余地が十分ありますね。

――GeForce Nowは、5G LABでも異質な印象です。どれくらい利用できるものでしょうか。

寺尾氏
 “本当の格闘ゲーム”まではいかないと聞いています。いわばフレーム単位では戦うようなものには適していない。でも、レンダリングエンジンを回すものには強い。NVIDIAさんのGPUがガンガンに動いてますから。向き不向きはあります。とはいえ、いろんなことできるかなと思います。

――5Gエリアとそれ以外での違いは?

寺尾氏
 今の段階では同じです。でも5Gが本当にスタンドアロンになって、MECサーバーが展開されていけば差がついていくと思います。それでもフレーム単位で操作を競い合うゲームにいけるかというと別だと思います。

――「GAME SQUARE」にGeForce NOW以外のコンテンツは?

寺尾氏
 今後は乞うご期待、です。

――5G LABのコンテンツは、Wi-Fiでも利用できると思います。今後は5Gだけになりますか?

寺尾氏
 今日の時点では、4GでもWi-Fiでも利用できます。将来はまだ決めていませんが、できるだけ多くの方に使っていただけるほうが、コスト的にも経営的にも良いのかなと思います。ただし、象徴的なもの、すごいものが出てくれば、5Gでの先行提供はあり得ると思います。

 本当に5Gで何がいいかはこれからなんですよね。ご指摘の通り、どの回線でも今はいい。でも5Gが広がれば、もっと楽になるかもしれない。たとえば有線ネットワークで実現するようなシステムも、その物理的なケーブルの引き回しが本当に大変です。AIカメラも5Gであれば、より手軽に導入しやすくなるのではないかと思います。

――ちなみに5G LABはキャリアフリーですか?

寺尾氏
 はい、その通りです。Yahoo! IDを用いて開発しています。8月からは有料サービスとして月額500円となりますが、ソフトバンクの5Gサービスユーザーであれば、そこは無料という仕組みです。iPhoneでもご利用いただける予定です。