インタビュー

「JOJO L-02K」がもたらす“ジョジョニケーション”と“サスペンス”

担当者ロングインタビュー、秘めた想いと開発の舞台裏

 誕生から30年、多くの読者を魅了し続ける荒木飛呂彦氏の人気漫画作品「ジョジョの奇妙な冒険」を題材にしたスマートフォン「JOJO L-02K」が2018年3月下旬に発売される。

 5年前の「L-06D JOJO」に続く2代目“JOJOスマホ”には、いったいどんな秘密と情熱が盛り込まれたのか。開発をリードしたNTTドコモの商品企画担当である鹿島大悟氏、津田浩孝氏を直撃した。

コラボモデル、実は難しかった

――2012年に先代の「L-06D JOJO」がリリースされ、6年ぶりのJOJOスマホになりますね。開発は順調でしたか?

先代のL-06D JOJO(一番右)から6年ぶり

津田氏
 先代モデルは、多くの方に面白がって、興味も持っていただけた。「ドコモとジョジョ」という組み合わせも、当時、意外な驚きをお届けできたと思います。その後、当社はiPhoneを取り扱うようになりました。Androidも含めてスマートフォンのスペックは向上し、買い換えまでの期間も長くなっています。すると、自然と取り扱うスマートフォンの機種数が整理され、バリエーションを多く出す時代ではなくなってきました。コラボモデルを出す企画がすんなり受け入れられたかというと、そうではなかったのです。

 でも実際に動き出すと、社内のさまざまな部門から本当に助けていただきました。

鹿島氏
 先代モデルを出したことで、社内の“ジョジョ好き”が見えてきたところもあります。社内でサインを求められたこともあって、「俺でいいの!?」なんてこともありました。

毎日使えるスマホを目指して

――2013年の「L-06D JOJO」の開発当時、鹿島さんはクレジット事業部という携帯電話の商品企画とは関わりない部署でしたが、2016年に商品企画へ異動されましたね。2012年に取材した身としては「これは次のJOJOスマホが……?」と密かに期待していました。

鹿島氏
 どちらかというと、津田のほうが貪欲だったと思います(笑)。1ユーザーとして「L-06D JOJO」を長く利用していましたので、思案しながら時を過ごしていました。津田とは普段から友人関係ですから、プロジェクト前からちょっと話をすることもあって。

津田氏
 最初からスマートフォン2号機というわけじゃなかったんです。2017年に「ジョジョ」が30周年を迎えることはわかっていましたが、当社だけの都合では進行できません。スマートフォン以外のものもアイデアとしては出ていました。

鹿島氏
 単純に「ジョジョ」が好きですから、ジョジョと何かしたいというモチベーションですね。集英社さんとの協議前から議論をしていて、最初のころには、当時津田が担当していたタブレットで、というアイデアもあった。

津田氏
 セカンドデバイスとして(ジョジョの世界に)振り切ったタブレットというアイデアですね。本当に考えはいろいろあって、スマートウォッチや、月額制の「dジョジョ」といったサービスをやるか(笑)なんて話もありました。

 そうした中でやっぱりユーザーに求められるもの、一番身近なものにあって、アイデンティティを表現するアイテムはスマートフォン以外にはなかなかなくて。

 先代の「JOJOスマホ」はかなりのアイデアが込められましたが、当時の水準でそれでもできること/できないことがありましたので、やはり「究極のスマホを作りたい」と考えるようになったのです。「ACT.2(第4部に登場するスタンド、1、2、3と進化した)じゃなくてレクイエム(第5部終盤に登場。新たに生まれかわり、全てをゼロに戻す、リセットさせるといった力を持つ)だよね」という考えも初期の段階からありました。

鹿島氏
 津田が作った共有フォルダの名称も最初から「レクイエム」です(笑)。まず思ったのは、実用性というか、スマートフォンとしてよく利用する機能を尖らせたいということでした。「もうゲームは作らなくていいな」と考えました。

 先代の「L-06D JOJO」には、「F-MEGA」(作中に出てくるレースゲーム)を収録していました。とことん原作に忠実な仕上がりでしたが、現在は「ジョジョ」のアニメも放映され、スマートフォン向けのゲームコンテンツも登場している。そうした中でドコモが新しいゲームを開発するよりも、それ以外のところに手間をかけるべきだという考えです。僕の中で2号機の初期のコンセプトは“実用性”、つまり「普段使いで(生活に)染みこんでいる」というイメージ。それをブラッシュアップしていったら「コミュニケーション」というワードに結びついたんです。

津田氏
 前回「F-MEGA」だったのだから今回は「Oh! That's A Baseball(オー・ザッツ・ア・ベースボール、第3部に登場した野球ゲーム)」なんて話は内部でも出ましたが、とはいえ僕らも「F-MEGA」を最初は遊んだけど、何年も遊んだかというと、そうではなかった。より長く使ってもらえるコンテンツにリソースを集中させようと。

【お詫びと訂正 2018/3/12 12:42】
 記事初出時、「ACT.2」というスタンドが第2部に登場すると注釈を入れておりましたが、正しくは第4部です。お詫びして訂正いたします。

カメラに搭載される2つのモード

――先代モデルでは、スタンドなどでデコレーションできるカメラ機能がとても話題になりました。似たアプリも登場しましたし、スマホカメラでデコレーションという使い方も広まりました。

津田氏
 スマートフォンを通じたコミュニケーションの自然な流れとしてテキストからビジュアル中心の時代になって、よりリッチな表現が求められていますよね。ですから、カメラは外せないな、というイメージは持っていました。とはいえ、「前回と同じじゃない」ものをどう作り上げていくのかは課題でした。

鹿島氏
 今回「JOJO L-02K」に盛り込んだ機能は、いかにコミュニケーションを活発にさせるか、という視点で採用したものが多いのです。デコレーションした後の写真が同じようなものになったとしても、「JOJOスマホ」のほうが、撮りやすかったり、デコレーションのしやすさだったり、あるいはシェアしやすかったりするなど、利便性をアップしました。

津田氏
 具体的な機能のひとつが「スタンドビジョン」です。これはスタンドと一緒に写真が撮れる、という機能ですが……(と言いながら実機を見せる)。

――なるほど、顔認識でスタンドを自動的に調整して配置するわけですか。これは手軽に撮れますね。

津田氏
 発売時点では8体のスタンドを収録します。被写体を捉えるだけ(で撮影できる)という使い勝手を実現できています。

鹿島氏
 撮ってすぐSNSでシェアもできます。前回できなかった地味な改善ポイントとして、オブジェクトを回転させて配置できるようになりました。

オブジェクトも自由自在
さまざまなスタンドで装飾できる

津田氏
 もうひとつ、追加しようとしているのが“スタンド能力を(被写体に)食らわせる”「スタンドエフェクト」という機能です。発売後にソフト更新で追加する予定で、どんなスタンドが収録されるか、まだ固まっていませんが、相手の体に変化を及ぼすような形です。

鹿島氏
 いわば、写真を撮る人がスタンド使い。カメラを通してスタンド能力を被写体に仕掛ける……というコンセプトです。

――「スタンドエフェクト」で収録されるのは原作に登場するスタンドですか?

鹿島氏
 はい、原作のスタンドをうまくビジュアル化する、という。

――「体を変化」となると、原作に詳しい方はすぐ「アレとアレと……」と思い浮かべそうですね。

津田氏
 そうですよね。でもスタンドによって実現するために必要な技術がそれぞれ異なっており、開発にも力が入っています。ご購入いただいてからのお楽しみですね。

ジョジョを通じた「ジョジョニケーション」を

――買ったあとのお楽しみは他にもありますか?

津田氏
 荒木飛呂彦先生の原画展(国立新美術館、2018年夏)が開催される予定ですので、そこに向けて何か盛り上げられたらいいなと考えています。具体的な内容は今しばらくお待ちください。

鹿島氏
 直前まで協議をした上で、何か新しいコンテンツを提供できたらなと考えています。

――そうしたイベントに参加する、あるいはユーザーの手にあるスマートフォンだからこそ得られるコンテンツもあるのでしょうか?

津田氏
 原画展でJOJOスマホを持っている人だけが、という形のものはありません。ただ、「スティール・ボール・ラン(SBR)トラッカー」というアプリには歩数計と連動した機能があります。

スティール・ボール・ラン トラッカー
同じJOJO L-02Kユーザーとすれ違えば何らかの条件で勝負する

 これは“スタンド使いはひかれあう”という劇中のエピソードをイメージしたもので、すれ違ったユーザー同士でちょっとした勝負をします。歩数や距離などを用いている機能ですが、1万台限定ということもあって、普段はなかなか他のJOJOスマホユーザーとはすれ違えないかもしれません。でも、原画展のようなイベントであれば、他のJOJOスマホユーザーの存在を実感できるのではないかと。

鹿島氏
 先代モデルを手にして、カフェやバーなどを訪れた際、同じものを手にしている人が居たら驚きがありましたよね。あのときの想いを機能として落とし込めないかと。これもひとつのコミュニケーションだよねと考えたのです。

 これを僕の中で「ジョジョニケーション」と呼んでいました。先に「コミュニケーション」がコンセプトとお伝えしましたが、提案の資料では「ジョジョニケーション」と表現していて……(と開発時の資料を披露)。

――この企画書には、ユーザー自身が自己紹介の情報を設定する機能が示されていますね。

津田氏
 それは搭載していません。最終的に個人を特定する要素は排除することにしました。いつすれ違って、勝ったか負けたかわかる、といった程度です。

 「SBRトラッカー」は、スタンド使いとすれ違う機能だけではなく、歩いた距離に応じて、第7部と同じようにレースを進めることができます。まず劇中のキャラクターを選ぶのですが、「ポコロコ」というキャラクターを選べば、作中の設定にあわせてラッキーイベントも発生して、わりと楽にレースをクリアできます。でも他のキャラクターのなかには、作中、全て歩くということで、「SBRトラッカー」でもゴールまで6000km歩く必要があります。

鹿島氏
 いわゆるゲーミフィケーションのように思えるかもしれません。でもそうではなく、これも日常的なツールのひとつという位置づけです。

津田氏
 1日一回確認する程度で楽しめます。位置情報を使ったARゲームを楽しんでいる方でも、一緒に進めていただけるかなと。

もうひとつの軸「サスペンス」

――SBRトラッカーでは、歩けば歩くほど新たにアクセスできるコンテンツが増える、といった仕掛けはありますか?

津田氏
 そういったアンロック式のものはありません。

鹿島氏
 何かを達成しないといけないアンロック式はありませんが、いたるところに隠れているコンテンツはあります(笑)。

津田氏
 それがもうひとつのコンセプトの……。

鹿島氏
 「コミュニケーション」が大きな軸なのですが、もうひとつ「サスペンス」と呼んできた要素を入れています。これは何らかの機能というよりも、日頃使う中で、良い意味で「違和感を与えたい」と考えた結果、取り入れたものです。

津田氏
 全編に渡って、何か雰囲気を感じてもらえるようにならないかと。

鹿島氏
 先代の「L-06D JOJO」では、ユーザー側が能動的にコンテンツへアクセスする形が中心でした。たとえばライブ壁紙もユーザーがタッチすることでアクションを楽しめる。でもずっと使う中で、頻繁にライブ壁紙を変更することが少なくなっていく。どちらかというと、ユーザーは受動的なのに変化があるようなものを入れていきたいなと……。

――具体的にはどんな内容ですか。

鹿島氏
 やっぱりホームアプリです。画面の点灯/消灯するたびにイラストがちょっと変わります。ホームアプリのデザインテーマは、ジョジョの1~8部と、総集編的なもの、そして主人公とボスという組み合わせのものがあります。各テーマのイラストの1枚目にはちょっと変化がでる形なのです。ランダムなので同じイラストが続くこともありますが、数~5パターン程度で変化を楽しんでいただけます。

 たとえばディアボロ(第5部の最終ボス)だったのに、ごくまれに「ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム」になるんです。

 ベースとなったV30+には、ピンチイン/アウトでアイコンの表示/非表示を切り替えられる機能があります。これが地味に良くて……。

――ああ、壁紙のイラストを好きなタイミングで堪能できるわけですか。

第5部のテーマを設定するとラスボスのディアボロがホーム画面に
ふとしたときに、ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムが登場する

鹿島氏
 前回は「杜王町」などの切り口ごとに収録していましたが、今回は10テーマ収録できるということで、各部のテーマをご用意することにしました。

10のテーマを収録

津田氏
 ペインごとに違う壁紙が設定されています。

鹿島氏
 本みたいなイメージでペインをめくっていただけるんです。めくると、「擬音モード」で“パラリ”という擬音のイラストが表示されます。

擬音モードの企画書
上部ツール設定で擬音モードのON/OFFができる。こうした部分にメニューが仕込まれているのも「JOJO L-02K」ならではの要素

津田氏
 「擬音モード」ではたとえば目覚まし時計は非対応です。当初のアイデアにはあったのですが、画面上にアラームの擬音を出しても起床できないだろうと(笑)。

鹿島氏
 擬音モードは、企画の後半になって出てきたもので、スマートフォンとして新たな表現がないかというところで採用しました。多くの方がスマートフォンを使う際、サイレントやバイブレーションをONにしていると思います。画面がある程度広い中で、擬音で何かを伝えるというのは面白いです。ジョジョに限らず、これからのスマートフォンにおいて何らかの可能性があるのではないか、と個人的には感じています。

津田氏
 ポップアップで擬音が出るのは、電話着信やペインを切り替えるときです。また、音楽プレーヤーで擬音とスタンドが一緒に出るといった場面があります。スマートフォンのホーム画面ではアイコンやウィジェットを増やしていくと、複数の画面を切り替えられますよね。JOJOスマホとなれば、アイコンにもこだわりますし、イラストも楽しんでいただきたい。ユーザーとしても数ペイン使うだろう……ということで壁紙をご用意しました。

変換辞書は作り直し

――前回から引き継いだものは?

鹿島氏
 辞書は作り直しました。今回も本当に大変でした。途中で「なんで差分だけ作ることにしなかったんだろう」と後悔することもありましたが、「ACT.2じゃなくてレクイエム」精神なので。

津田氏
 例として「だが」と入力するところがわかりやすいですね。先代では「だが」と入力し終えると「断る」「メス猫だ」という候補が出てくる形でした。今回は「だが」と入力途中で「だが断る」などの予測候補が出てきます。

「だが」と入力した場面
先代モデル(右)との比較
「おまえ」から予測するワードが充実しすぎていて怖い

鹿島氏
 2倍~3倍の量になっていると思います。たとえば「おまえ」というワードから始まる予測変換の候補文も、本当にたくさんあるんです。

津田氏
 語彙をどこまで増やせるかはチャレンジでしたが、搭載自体は最初から決まっていました。これだけ予測候補を盛り込んでいても、サクサク使えることはぜひお伝えしたいです。

鹿島氏
 サクサク使えるかどうかは心配でしたからね。

思いがけず垣間見えた荒木飛呂彦氏の考え方

――予測変換がここまで多岐にわたると、LINEにおけるスタンプのようなコンテンツも使いたくなりますね。

津田氏
 そこでご紹介したいのが「JOJOエディター」です。2つ機能があって、1つはセリフを書き込んで、カスタマイズできるというもの。NGワード設定はありますが、フォントサイズも変更できますので、多少長い文章に変えても、それなりにマッチします。購入後、無限にコンテンツを生み出せる機能です。

JOJOエディター

鹿島氏
 今回目指した「コミュニケーション」の真骨頂と言える機能ですね。

津田氏
 このあたりは、一歩間違えると作品の世界観を壊しかねない機能です。たとえば、カスタマイズしたセリフ部分は、テキストの背景色が変わるようにしています。集英社さんにも「これはユーザーから求められる機能だ」ということを丁寧にお伝えしていきました。

自由にセリフをカスタマイズできる
コマの形は荒木飛呂彦先生の意見から、原作そのままに

鹿島氏
 当初は“スタンプ”なので、トリミングしてデザインし直すこともあり得るかなと考えました。でも実際には原作のコマの形そのままにしています。これは荒木先生がそのコマの形にも意味があると考えていらっしゃるからなんです。

津田氏
 どんなコマ割で、背景にどんなオブジェクトがあるか。それらを含めてのシーンなので変えないで欲しい、というお話をいただいて。

鹿島氏
 これには感動しました。コマの形にまで考慮しているのかと。

無限に「新たなジョジョ」を生み出せる

津田氏
 そしてもうひとつが「新たなコマを作る」機能です。画像コンテンツとして作中のキャラクター、場面、セリフを収録しており、そのキャラクターが口にしたセリフから選択して組み合わせられます。これは先ほどとはまたコンセプトが異なります。

――なるほど。

津田氏
 たとえば第三部の対象キャラクターは承太郎さん(第3部の主人公)とポルナレフなのですが、ここではあくまでも第三部のセリフのみを選択できるようにしています。そして別のキャラクターが口にしたセリフは組み合わせられない。1キャラクターにつきイラスト3種類×セリフ10種類を基本とし、背景のパターンがまた数種類、背景のカラーも選択できるようになっています。作成した画像は、コマ、キャラクター、セリフとユーザーが選んだ順でGIFアニメとして保存され、SNSへ投稿するなど、自由にお使いいただけます。

鹿島氏
 いわゆるスタンプと趣が違うものとしてこういう形になりました。有名なシーン、人気のあるキャラクターは本当に多い。それらを全て収録するのは不可能です。でも、「新たなコマを作る」機能にすることで、使いたいセリフをいわば救済できるわけです。

津田氏
 承太郎さんのセリフをひとつだけ選べ、と言われても無理ですよね。先ほどの「コマの形を活かす」という話からは一歩離れたものですが、同じキャラクターという制約にすることで、世界観を守っています。

「シャボンレンズだ!」

鹿島氏
 各アイコンも、各部のテーマにあわせています。

津田氏
 たとえば第5部のテーマにすると、通話アイコンは、ドッピオ(第5部のキャラクターの1人)が手にしていた電話です。第4部のテーマとすれば東方仗助(第4部の主人公)が、ハイウェイスターという敵とバトルした結果、吉岡さん(携帯電話が奪い取られるシーンだけに登場)の携帯電話が通話アイコンです。

――アイコン選びだけでも楽しそうですねえ。

鹿島氏
 楽しいですよ、時間はとてもかかりますけど(笑)。「この部って電話出てきたっけ?」「この時代ってカメラあった? 2部にカメラないね」なんて話があって、そこで「シャボンレンズだ!」と思いついた瞬間があったり。

津田氏
 夜中にね……あれをひらめいたのは天才的だった。「まっ黒に感光しろ!」(第2部のキャラクター、シーザーがシャボンレンズという技を用いたときのセリフ)とか言ってて。

鹿島氏
 あの晩はシーザーが降臨しましたね……。といった形でアイコン1つずつそれなりに選定しています。「これはどこのコマだ?」と原作を読み返していただくのもオススメです。

 たとえば第6部のテーマで「ギャラリー」のアイコンは、おとぎ話を現実にしていくエピソードを元にしています。

――そのエピソードは覚えていますが、このアイコンがそこから、というのはまったくわかりませんね……。

津田氏
 スマートフォン側のアイコンから、原作のどの場面か逆引きしていくのは難しいかもしれません(笑)。

鹿島氏
 アイコン選定作業などを含めて、原作を何度も読み返したのですが、先代モデルと違って今回は全て手元のスマートフォンに原作の電子コミックがありました。たしかこの場面で電話してたよな……と。これで作業時間はずいぶん短縮できましたね。使いたいアイコンがどのページにあるかきちんとわかります。これが紙だと、ページによってはページ数が書いていないことも多いんです。アイコン探しのエピソードは、今回初めてお話ししていますね。

 ここから取る!? みたいなものもありますが、たとえば通話アイコンには緑色を使うなど、アイコンのデザインは変わっても共通化している部分はあります。

「スグ電」初?のカスタマイズ

――そうなると、最新の第8部(ジョジョリオン)のほうがやりやすいのでしょうか。

鹿島氏
 それが、まだ連載中の作品ですので、カラー版がまだ用意されていないところが……。

――あ、白黒だとアイコンにしづらいですね。

鹿島氏
 そういう意味で、「ジョジョリオン」のほうが逆に制約があったと言える部分があるかもしれません。

津田氏
 白黒でもハマるところであればいいのです。たとえば当社のスマートフォンに搭載する機能のひとつ「スグ電」です。

ちゃんと似ている構図でカスタマイズ

――スグ電は、電話着信時、手で持って耳に近づけるだけで電話に出られる、といったジェスチャー操作ができる機能ですね。

鹿島氏
 もしかしたらスグ電にとって初めてのカスタマイズかも。

津田氏
 作中であらゆる電話をしているシーンを探して、似ているポーズを見つけていきました。

――○○の写真から、似た構図の別の写真を……みたいなヤツですね(笑)。

鹿島氏
 買っても気づいてもらえないかもしれないですね。

津田氏
 2年後くらいに気づいていただければ。

指紋スキャンの場面では、第8部で指紋に関わるスタンド能力を持つキャラクター「田最環」が登場

鹿島氏
 スマートフォンを使っていると、時々使い方を教えてくれる「おすすめ使い方ヒント」というポップアップが出てくることがあります。

津田氏
 ヒントを(進むべき方向へ導く能力を持つ)「ペイズリー・パーク」という第8部のスタンドが表示してくれることがあります。

「1万台」と価格

――前回は1万5000台、今回は1万台ですね。

津田氏
 1つは、スマートフォンの売り方、買われ方の変化です。価格面で2極化しているところもあります。

――月々サポートが付かないのは正式な形でしょうか。

津田氏
 価格面には2つのお話があります。1つは端末自体の価格。もう1つが販売手法です。

 今回、僕らは「末永く使って欲しい」と考えてきました。収録するコンテンツも膨大で、その中にはある程度メモリを占有するものもある。ディスプレイの表現力でも妥協はしたくなかった。低廉なスマートフォンとハイエンドの機種では、処理能力に差があります。その上で台数が限られています。その分、この価格でなければ実現できなかったという形です。正直に申し上げると、端末販売での利益はほとんどありません。

 それと別の話である販売施策、月々サポートについては、総合的な判断があり、僕らからはっきりと申し上げることが難しい部分があります。一般的な話として、サポート額を多くして競争力を発揮させる機種もあれば、価値がわかる方に吟味していただいて買っていただくことがある。

鹿島氏
 月々サポートがないという部分も含めたことで、「JOJO L-02K」が実現できた、とご理解いただいたほうがいいかなと思います。

やりたいことリストで開発

――前回に続き、今回も端末メーカーはLGさんですね。

津田氏
 前回、対応いただいたことと、今回の開発は、実は直接関係はしていないのです。

鹿島氏
 僕らのほうで、やりたいことをリストアップしていました。それにどこまで対応していただけるのか、メーカーさんへ何社か相談差し上げたのです。

やりたいことをまとめた企画書

津田氏
 LGさんもかなりの「覚悟」をもって開発に携わってくださいましたね。

時計の細かなところまでカスタマイズ。ちなみに世界時計の都市がカイロ、ローマとなっているのは津田氏が設定したもので、デフォルトでは空欄

鹿島氏
 単なるアプリの追加ではなく、ネイティブの部分もかなり手を入れてくださっています。

津田氏
 でも「前回より辛い」というのは何回か言われましたね(笑)。どうしても修正が多くなりますので。

鹿島氏
 集英社さん、荒木先生の監修を受けることで、すんなり決まる部分もあれば、そうでないところもあります。柔軟に対応していただけるか、機能を変えられるか、といったところがご相談ポイントになってきます。正直、開発途上で変わってきた機能もあります。

津田氏
 通常では考えられないスケジュールで開発していますね。

V30+になった理由

――ベースモデルとしてV30+を選定されたのは、いつごろだったのでしょう。

鹿島氏
 (2017年の)夏くらいかな……。直前には、違うモデルにするか、というくらいのところもあったんです。

津田氏
 今回のプロジェクトは2年ほど前からスタートしていますが、結果的にV30+になったことは本当に良かったと思います。カメラ、ディスプレイなどのトレンド感が今まさに新たな要素が広がる中で、一歩、先取りしたスペックを備えているんですよね。

鹿島氏
 僕ら自身がスマートフォンに妥協したくない性質です。ジョジョであればなおさら、カクカクとした操作感になるようなことは避けたかった。荒木先生のイラストを最大限に魅せられるディスプレイも重要です。消灯時にも何らかのコンテンツを表示する「Always On display」も有機ELの部分発光を活かした機能です。

――V30+だから、あるいはハイエンドだからこそ実現できたものはありますか?

津田氏
 カメラ機能もそうですし、Always On Displayも“ジョジョナイズ”しています。表示するコンテンツはユーザー自身の手で選んでいただく形で、石仮面などを用意しています。

Always On Displayのカスタマイズ

鹿島氏
 端末ありきではなく、やりたいことリストを作って進めていきましたが、このAlways On Displayの活用はわりと後半になってから実現することになった機能ですね。

――V30+はグーグルのVRプラットフォームである「Daydream」に対応しています。ジョジョ関連のVRコンテンツはいかがでしょう?

鹿島氏
 VRコンテンツは収録しません。

――VRなしですか。誘惑はありませんでしたか?

鹿島氏
 誘惑自体はありましたよ(笑)。でも開発リソースは限られています。VRコンテンツは楽しいと思うのですが、日常的には楽しめないのではないか、あるいはVRコンテンツを選ぶことで何割かの機能をあきらめなければならないのではないかと。

背面のイラスト、今回も荒木飛呂彦氏

――先ほど、JOJOエディター関連で荒木飛呂彦先生のこだわりが垣間見える話を教えていただきました。他にも荒木先生が直接関与された部分は?

鹿島氏
 やっぱり外観だよね。

津田氏
 持ってきたものがあるんです。背面デザインの候補のバリエーションの一部です。イラストは荒木先生が描き下ろしたものです。ただ、それをどう配置するのか。あるいはボディカラーも最終的に白になって、先代モデルを踏襲した形になりましたが、実は別のボディカラーも検討していたんです。そのあたりをいくつかのパターンで検討していたんです。

イラスト配置の案。配置する場所、サイズ、パーツなどでさまざまなアイデアがあった

 サイズ感もいろんなバリエーションがありました。これは今回初めてお見せするものですね……。最終的には荒木先生が決めた形です。

鹿島氏
 カメラと指紋センサー、そして背面イラストの距離感を意識した、といった話は伺っています。本来ならFeliCaのマークも印刷しなければいけないのですが、実は特別に省いています。もちろん機能としては搭載しており、イラストのハートマーク周辺がFeliCaマークのあるべき場所になります。

先代モデルとの比較。ハートマーク(テントウムシの下)あたりがFeliCaマークがあるべき位置

――「JOJO L-02K」のコンセプトが、第五部のキャラクターでたとえて「レクイエム」と表現されておられましたね。背面イラストは、そのレクイエムが進化する前の段階のスタンド(ゴールド・エクスペリエンス)ですが、これは意図されたものですか?

津田氏・鹿島氏
 いやいや、それは全くの偶然なんです。

鹿島氏
 イラストについては、こちらから何も申し上げていません。荒木先生のチョイスです。

津田氏
 選べないよね……。

鹿島氏
 「キービジュアルをフルカラーでいただきたい」というリクエストと、背面イラストはフルカラーでは色がでない可能性を踏まえたリクエストを出していました。すると話が進む中で、エンブレム調にしたいということになって。

――背面イラストのキャラクターは荒木先生が決めた、というのは先代モデルでも同じ経緯ですね。しかしこのスタンドになったのはなぜなんでしょうね。

鹿島氏
 まずスタンドということに驚きました。先代モデルでは人のキャラクター(第6部の主人公、ジョリーン)でしたから。

津田氏
 JOJO L-02Kの開発中、荒木先生が描き下ろしたイラストはスタンドが多かったようですので、そのあたりのインスピレーションがあった時期だったのかもしれません。結果的にブランドのロゴマークのような仕上がりになりました。

dポイントクラブまでカスタマイズ

――2時間近くインタビューさせていただいていますが、まだまだ聴き足りない感がありますね。言い残したことはないですか?

鹿島氏
 1つ1つご紹介していったら本当に時間が足りないですよ! 最後にまだ発表していなかった「dポイントクラブ」のアプリをお見せしますね……。JOJO L-02KのWebサイトでもご紹介していないのですが、アプリ内のイラストは、“重ちー(しげちー)”(第4部に登場。あらゆるところから小銭や情報など何かを集めてくるスタンドを使う)です。

重ちーがdポイントアプリに登場するのも意味がある
dポイントのデジタルカード

――いろんなところからポイントを集めてくる、ということですか。

鹿島氏
 そんなイメージです。これを「オーソン(作中で登場するコンビニエンスストア)」で使っていただきたいですね。

――こんなアプリまでカスタマイズとは思っていませんでした。ポインコ兄弟にジョジョのかぶり物、といったアイデアも出てきそうですよね。

鹿島氏
 JOJO L-02Kの開発にあたって、社内のいろんな部署に「どこまでカスタマイズできるのか」と行脚したんです。ちなみに「オインコポインコ」(第3部にオインゴ、ボインゴという兄弟の敵キャラクターが登場する)といったアイデアも考えはしたんですが。ちょっと難しそう、ということもあって、こういう仕上がりになりました。

――なるほど……他にもこうしたカスタマイズがたくさん仕込まれているのですね。

鹿島氏
 細かいところですが、音楽プレーヤー機能では操作するたび画面上にさまざまなスタンドが登場します。そこに「ミュート」ボタンを用意したんです。

音楽プレーヤーアプリ。アートワークがない楽曲を再生するときには原作のコマが表示される

――音楽プレーヤーに要らないですよね、ミュートボタンは(笑)。

鹿島氏
 開発チームからは「理解不能、理解不能」と言われたんですが、最新シリーズである第8部の「ソフト・アンド・ウェット」(シャボン玉を作りだし、弾けた瞬間に何かを奪う能力を持つスタンド)をどうしても入れたかったんですよね。

津田氏
 ちなみに、第6部の主人公が使う「ストーン・フリー」も音楽プレーヤーに含まれているんです。

理解不能なミュートボタンで出てくるソフト・アンド・ウェット

鹿島氏
 好みの楽曲に印を付けるフェイバリット機能が星形ということで、そこをタップすると表示されるようになっています。

津田氏
 このプレーヤーは、スタンド編以降の歴代ジョジョとラスボスのスタンドがさまざまな場面で登場します。

鹿島氏
 音楽プレーヤー以外にも、スタンプや壁紙に、有名なモブキャラクターなど、幅広く収録しています。先代のときには「第5部の暗殺チームがなぜ居ないんだ」という意見もいただいたりしましたし。

――お話を伺っていたらもう一度最初から読み返したくなってきました。

鹿島氏
 実はそれが最大の狙いですからね。もう一度原作に帰っていただくと。

 LGのスマートフォンに備わっている「Qメモ+」という機能のアイコンもカスタマイズしているんです。

津田氏
 スクリーンキャプチャーへ書き込む機能で、筆の種類を選べるのですが、ここのアイコンは最新シリーズの第8部で東方常敏というキャラクターがクワガタで決闘する際に使った筆です。

ごく最近のエピソードに登場した筆も
ファイラーのアイコンも

――そのエピソードは本当に最近のものですよね。そこまで収録されているのですか。読んだはずなのですが、その筆だとはまったくわからないですね……。

「ドコモのロゴ、邪魔だな!」

津田氏
 パッケージは、透明な外装箱に、イラストと荒木先生のサインがプリントされた白い箱という2層構造です。透明な箱のほうには、携帯電話のパッケージで一般的に記載されている事項がプリントされています。

鹿島氏
 ドコモのロゴとか邪魔だな! 絵を邪魔するものは要らない!! と考えて、箱単体を絵として飾れるというのもひとつの狙いでした。

――邪魔と思われる気持ちはよくわかります! しかしパッケージ上で機種名はどこに?

津田氏
 ガイドライン上、箱に機種名の記載は必須なんですが、荒木先生の直筆サインの一環として含めていまして「ここにあるからいいでしょ」ということで。

荒木先生直筆で機種名まで
左が先代モデル、右が今回のJOJO L-02Kのパッケージ

鹿島氏
 無謀にも荒木先生に機種名も書いてください、ってお願いしちゃいましたからね。

――直筆サインであれば、これはもう間違いないですね。さて発売はいつになりますか。

津田氏
 3月下旬です。それまでに少しでも多くの方に体験できるよう、タッチ&トライの場を用意します。ぜひご体験ください。

鹿島氏
 ノベルティとしてタトゥーステッカーを用意しています。

――なるほど、本日はありがとうございました……!

ノベルティのタトゥーステッカー
数日はもつとのこと。鹿島氏の腕にあった跡。タッチ&トライは3月10日に大阪、21日に東京で開催される

鹿島氏(左)と津田氏(右)