石野純也の「スマホとお金」

5Gも光も使えて通信障害に強い、すぐにネットが使える新サービス「auひかりプラス」の隠れた魅力と裏側

光回線と5G SA対応のモバイル回線をハイブリッドで使うauひかりプラスが、9月17日にスタートする

 KDDIが、新たな固定通信サービスの「auひかりプラス」を導入します。これまでの光回線(FTTH)に加え、4Gや5Gといったモバイル通信にも対応しており、1つの契約で両方を使えます。ルーター側で両方の通信をサポートし、これを実現しています。ユーザー側の大きなメリットは、ルーターを持ち帰ってすぐに通信を始められるところにあります。

 また、光回線が何らかの事情で利用できないときにも、モバイル回線がバックアップとして役に立ちます。モバイルを入れ込んでおくことで、簡単に冗長化が図れるというわけです。料金面では大きく変わらないため、ユーザーにメリットのあるサービスといえるでしょう。ただ、筆者はそれ以上に、光回線を選べる柔軟性にこそ、このサービスの真価があると見ています。その理由を解説します。

即時開通+冗長化が魅力、料金はauひかりよりやや高めに

 auひかりプラスは、固定回線に加えてモバイル回線が“プラス”されたサービス。両対応のルーターを使うことで、光回線が引かれる前や、障害などで光回線が使えないときにモバイル回線に切り替えられるようになっています。モバイル回線側は5G SAに対応しており、エリア内であれば、高速かつある程度遅延を抑えた通信ができます。

5G SAにも対応したハイブリッドルーター

 モバイル回線が加わったことで、料金もプラスになってしまうのでは……と思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。完全に据え置きとまではいかないものの、どちらか一方を使うことになるためか、料金は従来と大きく変わらない金額に設定されています。

 現状のauひかりは、戸建て向けの10Gbpsプランである「auひかりホーム10ギガ」が3年契約の「ずっとギガ得プラン」で、ネットのみの場合は月額6468円~。4年目以降は、料金が6798円に上がります。ここに電話サービスをつけると、1年目の料金は7238円、4年目以降もauスマートバリュー加入限定の割引を受けると7018円で利用できます。いずれも、ルーターなどのレンタル料は込みになっています。

戸建て向け10Gbpsのホーム10ギガは、電話とセットで7018円。4年目以降は、auスマートバリュー適用でこの金額になる

 これに対し、auひかりプラスはやや料金体系が異なっており、ルーターのレンタル料などが別途設定されています。また、auひかりはどのプロバイダーを選択しても料金は一律でしたが、auひかりプラスはプロバイダーごとに料金が異なっているようです。ここでは、参考としてKDDI傘下のBIGLOBEを例に、上記の料金と比較していきます。

 BIGLOBEでは「BIGLOBE光プラス by auひかりプラス」として、このサービスを提供する予定。上記の戸建て向け10Gbpsプランは、ネット利用料が6380円、電話サービスを含むWi-Fiパックが770円、ハイブリッドホームルーターレンタル料が858円になっており、合計すると8008円で利用できます。

 一見すると、ネット利用料が安くなっているようには見えますが、auひかりプラスでは、ホームルーターのレンタル料が外に出されているため、トータルでは料金が1000円弱、高くなります。

auひかりプラスの料金。一見すると安くなったように見えるが、ルーターレンタル代が外に出ており、合算すると今より1000円前後値段が上がっている

セット割やクレカでの還元も、固定回線はシームレスに

 これは1Gbpsの回線でも同じ。auひかりは、ずっとギガ得プラン適用時の料金が6160円(3年目以降)なのに対し、BIGLOBEを選択した際のauひかりプラスは割引なしで7348円と、やはり1000円前後料金が上がっています。

 片方をスタンバイにしておくとはいえ、固定とモバイルの両方を使うため、料金は上がってしまう形になります。それを緩和する割引も用意されています。

 1つ目が、電気サービスのauでんきとセット契約した際の、「auひかりプラスでんきセット割」です。割引額は、36カ月目まで330円。それ以降は110円になります。この割引は、電話サービスなどを含んだWi-Fiパックに対してのものです。

 また、au PAY ゴールドカード特典として、10%の還元を受けられます。ただし、こちらはauひかりでも同様のため、auひかりプラス特有のものというわけではなく、差額が埋まるわけではありません。

ゴールドカードの10%還元や、auでんきとのセット割も用意

 すぐに使えることや、障害発生時の保険として差額を許容できるのであれば、ユーザーにとってはメリットのある仕組みといえるでしょう。既存のauひかりもサービスを終了するわけではないため、その選択はユーザー次第といえます。バックアップも込みで2回線使える方がよければ、auひかりプラスに切り替える手もあるというわけです。

 こうした点以上にauひかりプラスがおもしろいのは、固定側の回線をすべてひっくるめて1つのパッケージにしているところにあります。auひかりは、KDDIの光ファイバーを使うことが大前提のサービスですが、auひかりプラスには、KDDIの光ファイバーだけでなく、モバイル回線オンリーの「タイプ2」や、競合であるNTT東日本・西日本の光回線を使う「タイプ3」も用意されており、これらがすべてauひかりプラスというパッケージで展開されます。

プレスリリースなどにはあまり大っぴらに記載されていないが、マンションタイプは当初、NTT東西の光コラボでのみ提供される

 しかも、マンションなどの集合住宅向けは、すべてタイプ3。NTTの光コラボを使っています。KDDIでパーソナル事業統括本部 事業戦略本部 事業推進部長を務める相原円氏は、「タイプ(回線)の違いを意識せずに使っていただけることを目指した」と語っています。そのため、ユーザー側からは、KDDIの光回線であろうが、NTT東西の光コラボであろうが、auひかりプラスとして認識できるよう、パッケージ化されています。

KDDIの相原氏は、回線を意識せず、シームレスになっている点を強調した

 また、電話サービスもNTT東西のひかり電話ではなく、基本はauのVoLTEになります。ユーザーが回線を転用する場合などには、ひかり電話を引き継ぐこともできるといいますが、回線を問わずKDDIのサービスとして電話を提供できるのは、このような仕組みだからです。迷惑電話対策などを盛り込めているのも、そのためです。

提携事業者以上にプッシュしやすくなるか、モバイルユーザーの魅力は?

 NTT東西の光コラボも取り込んだことで、「全国的に、シームレスなサービス展開をできるプラットフォームになった」(相原氏)というauひかりプラス。5Gや4Gなどのモバイル回線だけでなく、NTT東西の光コラボもauひかりの中にプラスされたというわけです。特にこの恩恵にあずかれるのは、auやUQ mobileを使っているモバイルのユーザーやクレジットカードの契約者です。

 これまでのauスマートバリューは、auひかりのようなKDDIの光回線に加え、eo光、BBIQなどの提携事業者、さらには傘下のJ:COMをはじめとしたケーブルテレビ事業者の固定回線が対象になっていました。また、BIGLOBE光やSo-net 光、@nifty光といった光コラボの回線でも、auスマートバリューを組むことができます。

これまでも、提携事業者を通じて光コラボの回線とauスマートバリューを組むことはできたが、あくまで他社のサービスという位置づけだった

 一方で、他社の光コラボ回線は、あくまでKDDIのサービスではないため、上記のようなauでんきとのセット割や、au PAY ゴールドカードでのポイント還元はありませんでした。音声サービスも、ひかり電話になるため、固定電話からauやUQ mobileなどの携帯電話に発信した際の通話料が無料になる「auまとめトーク」も対象外です。

 auひかりプラスはもちろんauスマートバリューの対象で、かつau PAY ゴールドカードのポイント還元やauまとめトークなども利用可能。これまでもBIGLOBE光などはauひかりがエリア外のときの選択肢として提案されていたようですが、提携事業者以上にKDDIのサービスとしての色合いが濃くなったことで、正式なサービスとしてプッシュをしやすくなったといえるかもしれません。

音声回線にVoLTEを使っているため、auまとめトークの対象になる

 タイプ1からタイプ3まで、どこの回線なのかが分かりづらくなっていますが、それはあえてということでしょう。auスマートバリューが適用されれば、auの料金プランでは基本的に各回線、1100円の割引を受けられます。

 また、UQ mobileも一部のプランで自宅セット割(インターネットコース)の対象になります。こうした柔軟性の高さが、auひかりプラスの隠れた特徴であり、モバイル回線を使えること以上の魅力かもしれません。

 ただし、現時点ではプロバイダーがBIGLOBE、So-net、@niftyの3社に限定されており、タイプ3ではSo-netが選択できません。このバリエーションを広げていくことが、普及の条件になりそうです。これまでのauスマートバリューでの提携先以上に拡大できれば、固定回線を拡大しつつ、それをフックにモバイル側の魅力をさらに高められそうです。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya