石野純也の「スマホとお金」

30GB+通話定額で1999円! HISモバイル新料金プランのお得度と意外な弱点

 大手旅行代理店のHISと、老舗MVNOの日本通信がタッグを組んで設立したHISモバイルが、新料金プランの「自由自在3.0プラン」を9月17日に導入します。これまでと同様、容量別の料金体系は変えず、10GB~30GBまでの中容量帯を大きく値下げしているのが最大の特徴。どのプランを選んでも、2000円未満を売りにしています。

HISモバイルは、新料金の自由自在3.0プランを発表した。17日に導入される

 30GBプランの金額は1999円。しかも、HISモバイルの自由自在3.0プランは、20GBプランと30GBプランに、1回6分間の音声定額もつくため、同条件で比較すると、MVNOの中でもトップクラスの安さになります。大手キャリアとは時差がある形で中容量プランが広がってきたMVNOですが、その中でも特にインパクトがありそうです。そんな新プランを解説していきます。

中容量帯を大きく引き下げた自由自在3.0プラン、30GBは大幅値下げに

 自由自在3.0プランは、全プランが月額2000円未満を売りにしています。現行の「自由自在2.0プラン」とデータ容量の区分は変わっていませんが、10GBプラン、20GBプラン、30GBプランの3つを大きく値下げしているのが特徴です。

 逆に、1GBプラン、3GBプラン、7GBプランは料金据え置きで、かつ1GBプランで使用量が100MB未満だった際に280円まで下がる料金体系は変わっていません。その意味では、自由自在2.0プランの基本を引き継ぎつつ、MVNOでも重要視され始めている中容量帯の料金プランを強化したものと言えるでしょう。

中容量帯の価格を下げ、すべてのプランを2000円未満に抑えた

 では、10GB、20GB、30GBはそれぞれいくらになったのでしょうか。自由自在2.0プランでは、10GBが1340円、20GBが2090円、30GBが2970円でした。30GBはドコモのahamoと同額。音声通話定額が6分と、ahamoより1分長いものの、金額的な魅力は薄いと言えます。ほぼ同額、同条件であれば、あえてHISモバイルを選ぶ理由がなくなってしまいます。

 これに対し、自由自在3.0プランでは、10GBが1299円、20GBが1699円、30GBが1999円に引き下げられています。20GB、30GBプランに6分かけ放題がつく点は、自由自在2.0プランと同じ。10GBプランは41円の値下げにとどまっているものの、20GBプランは391円、30GBプランに至っては971円もの値下げになっています。

新料金プランの詳細。10GB、20GB、30GBの価格を改定している

 その意味では、中容量、特に大手キャリアのオンライン専用ブランド/プランで主戦場になっている30GB台の料金に競争力を持たせたと言えるのではないでしょうか。割引などの条件はなく、1回線からで1000円前後月額料が安いとなれば、選択肢として検討する人も増えてくる可能性があります。

競合MVNOとも差別化を図る、通話定額込みなら明確な差も

 この料金プランは、ネットワークの提供元である日本通信を補完する形にもなっています。日本通信SIMのブランドで「合理的○○プラン」を展開していますが、選択できる容量は1GB、20GB、50GBの3択。20GBと50GBには1回5分のかけ放題または月70分の無料通話がついてくる条件になっています。

 50GBの「合理的50GBプラン」は、料金が2178円。データ容量に対しての金額としては、非常に安価な料金プランと言える一方、20GBとの間がかなり空いているため、30GBでちょうどいい人にとっては”帯に短し、たすきに長し”という料金体系になっていたと言えます。HISモバイルの30GBプランは、その間を埋めるような設定になっています。

HISモバイルに回線を提供する日本通信の料金プラン。20GBの上が一気に50GBになっており、その間を埋める料金プランがなかった。30GBでちょうどいい人にとっては、HISモバイルの方が割安になる

 大手キャリアのオンライン専用プランと比べて安いのはもちろんですが、HISモバイルの直接的な競合となるMVNO他社と比較しても、自由自在3.0プランは中容量帯が割安に設定されています。例えば、MVNO最大手のIIJmioは、「ギガプラン」の25GBが2000円、35GBが2400円になっており、ほぼ同額の25GBだと容量が5GB少なく、容量が5GB多い35GBだと料金が401円高くなってしまいます。

IIJmioのギガプランは、25GBが2000円。HISモバイルは30GBでほぼ同額、かつ6分のかけ放題もつく

 しかも、IIJmioの場合、音声通話定額はすべてオプション。5分の通話定額は500円かかるため、25GBと35GBのどちらを選んでも、HISモバイルの方が安くなります。同様に、mineoの「マイピタ」も30GBで2178円と安価ですが、音声通話定額はオプション扱い。「10分かけ放題」が550円のため、HISモバイルとの差は729円まで開きます。

mineoも30GBが2178円と安いが、音声通話定額はオプション扱い

 対MVNO他社と比較すると、1GBあたりの容量単価は大きく変わるわけではないものの、音声通話定額まで含めてみると、その差が大きくなると言えるでしょう。元々、料金の安さや柔軟さを売りにしていた日本通信ともきっちり差別化が図れており、競争力が高まった格好です。

HISモバイルらしさは旅行特典で、海外eSIMの無料化も

 もっとも、HISモバイルは単なる料金競争ではなく、MVNOならではの価値を提供する方向に舵を切っています。同社が強いのは、やはり旅行。現行の自由自在2.0プランでも、契約者限定特典として、海外・国内旅行最大3000円オフのクーポンや、ハワイの「LeaLeaトロリー 1日無料券」や、同じくハワイの「LeaLeaラウンジ最大7日間」の利用特典など、さまざまなサービスが用意されています。

HISモバイルには、国内外の旅行で使えるさまざまな特典がついている。こうしたサービスは、他のMVNOにない特徴だ

 また、通信と連携した特典としては、海外Wi-Fiレンタル無制限プランが50%オフになったり、海外で利用できるTrip SIMが20%割引になったりといったサービスもつきます。こうした特典の数々は、HISが親会社だからこそ提供できるものと言えるでしょう。料金の安さだけがHISモバイルの売りではないというわけです。

 さらに、自由自在3.0プランでは、有効期間が15日間、データ容量が4GBの海外用eSIMを年1回、無料でユーザーに提供します。ワイモバイルや楽天モバイルのように、低料金のブランド/プランで海外ローミングを無料にするキャリアが増えている中、HISモバイルもここに対抗した格好です。

自由自在3.0プランでは、15日間、4GBの海外eSIMを年1回無料で利用できる。こちらの特典は、10月にスタートする

 キャリアの無料海外ローミングは、毎月利用できる一方、HISモバイルの特典は年1回という制限はありますが、年1回海外旅行に行くといった頻度であれば十分。むしろ、1回あたりの容量が4GBと多い点は、“無料枠”が2GB(ワイモバイルは秋以降に2GB化)のワイモバイルや楽天モバイルと比べた時の優位性になります。途中で容量切れが起きづらくなり、1回の旅行を丸々まかなえるからです。

 eSIMのみで提供されるため、対応端末が必要など、制限はあるものの、年1回程度、海外に出かけるユーザーにはうれしい特典と言えるでしょう。旅行会社のブランドを冠したMVNOの面目躍如といったところです。

 ただ、日本通信がMVNE(MVNO支援事業者)ということもあり、現状、HISモバイルではドコモ回線しか選択できません。マルチキャリア化しているMVNOと比べ、回線の選択肢が少ないのは課題と言えるでしょう。同社では、100MB未満で月額料金が280円になることから、ローミングを縮小する楽天モバイルの「サブ回線」としての提案もしていますが、つながらない時に出番が来る回線には、回線品質を求めたいところ。

100MB未満では280円と激安になるため、サブ回線利用も提案している。ただ、混雑時に快適な通信をしたいという観点だとドコモ回線のみという点が障壁になりそうだ

 エリアの補完という観点ではいい組み合わせかもしれない一方、どちらも混雑しがちなエリアでの評価がイマイチなため、都市部で少々お勧めしづらい組み合わせです。HISモバイルがドコモ回線だけなのは、日本通信の接続先が限られているためです。料金が安く、特典も魅力的なHISモバイルですが、回線を選択できない点は同社の弱点と言えそうです。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya