石野純也の「スマホとお金」

Pixel 11シリーズ全4モデルの日本価格はなぜ安い――実質値下げと価格設定から見るグーグルの狙い

 グーグルのPixel 11シリーズが、20日に発売されます。現在、予約を受け付けているところです。機能的な進化は他の記事を参照していただくとして、今回、筆者が一番驚いたのは、その価格設定。特に、日本での値付けが海外に比べてあまりにも安い点には衝撃を受けました。

 一方で、ノーマルモデルの「Pixel 11」は最低容量が256GBに上がったことで、“何円から”といった最低価格もアップしています。また、プロモデルは一部、スペックダウンしているところもあり、メモリー高騰や円安の為替環境の中、グーグルが苦心して値付けをしていることもうかがえます。そんなPixelの価格戦略を見ていきましょう。

Pixel 11シリーズが、20日に発売される。写真は手前からPixel 11、Pixel 11 Pro、11 Pro XL、11 Pro Fold

1ドル=138円!? 日本では値下げになったPixel 11

 まずはノーマルモデルのPixel 11ですが、こちらは最低容量が128GBから256GBに上がっています。価格は13万6800円。ストレージが倍の512GB版は直販価格が15万6800円に設定されています。この数字だけを単純に並べてしまうと、「Pixel 10」の12万8900円から値上がりしているように見えるかもしれません。

ノーマルモデルのPixel 11は、カメラバーが薄くなるなど、デザインが洗練されている

 一方で、ストレージ容量を256GBにそろえると、Pixel 10の14万3900円から7100円も値下げされていることが分かります。メモリーが高騰して、各メーカーとも価格を維持することすら難しくなっている中、値下げに打って出たというわけです。しかも、Pixel 11に関しては、メモリーが減るなど、スペックダウンしているところはありません。

各機種の最低価格。Pixel 11は、13万6800円になった。一見すると値上げのようだが、256GB同士では7100円の値下げになっている

 ただし、グーグルのおひざ元である米国では、899ドルのまま価格は据え置きになっています。メモリーの状況を踏まえると、それでも相当のインパクトではありますが、日本市場ではさらに一歩踏み込んできたと言えるでしょう。なぜ、日本では値下げになったのかというと、その答えは適用している為替レートにあります。

 899ドル(税抜き)のPixel 11が13万6800円(税込み)で販売されるということは、1ドル=約138.3円になります。つまり、昨年よりもさらに円高気味に為替レートを設定してきたと言えます。ここ数カ月の為替が、1ドル=160円前後で推移していることを踏まえると、グーグルがいかに日本市場でのシェア拡大を狙っているかが分かります。

打消し線が引かれた899ドルが本来の価格。Pixel 10から価格は変わっていない

 実際、グーグルのPixel製品企画アジア太平洋事業統括 リージョナル ディレクターの阿部和子氏は、Pixel 11シリーズの発表時に「今年は非常に苦しいが、Pixelにとって日本市場は最重要。本当に大事なマーケットと捉えている」と語っており、「特に為替の部分は弊社側で吸収できるところは、できるところまで頑張った」とコメントしています。その頑張りが、値下げという結果につながったと言えるでしょう。

Pixel 11 Proも100円値下げに、ただし256GB版はメモリーも削減

 プロモデルは、画面の大小で2機種に分かれており、価格も異なります。まず、標準モデルと同じサイズ感の「Pixel 11 Pro」は、256GB版が17万4800円、512GB版が19万4800円で、ノーマルモデルにはない1TBも用意されています。1TBになると、さすがに価格は20万を超え、23万4800円まで上がってしまいます。

カメラ機能を強化したPixel 11 Pro。背面のカラーLEDで電話の着信やGeminiの応答を知らせる「HiLight」に対応しているのも、プロモデルだけだ

 Pixel 11とは異なり、先代の「Pixel 10 Pro」には128GB版がなかったため、最低容量は256GBで変わっていません(日本では128GB版が発売されませんでした)。そのため、見かけ上の値上げにもなっておらず、単純比較がしやすくなっています。Pixel 10 Proは、256GB版の価格が17万4900円でした。つまり、Pixel 11 Proでは100円の値下げがされています。

 こちらも、米国での価格は1099ドルで据え置きになっています。計算すると1ドルあたり、約144.6円でこちらもPixel 10 Proの時と同じです。Pixel 11と比べると頑張った感は薄くなっているものの、それでも1ドル=160円前後という為替レートを踏まえると、かなり円高寄り。日本市場向けに、あえて価格を下げていることが分かります。円安が進行した中、価格をほぼ維持できただけでも御の字と言えます。

米国でも、価格は1099ドルで据え置きになっている。ただし、米国ではPixel 10 Proの時に日本未発売だった128GB版がなくなった

 ただし、Pixel 11 Proに関しては、価格維持のためのカラクリもあります。メモリー(RAM)の容量が、それです。Pixel 10 Proは、ストレージの容量に関わらず、メモリーは16GBでした。これに対し、Pixel 11 Proは、256GB版のみ、メモリー容量が12GBへと減少しています。メモリー価格が高騰する中、メモリーを削減して価格を維持したというわけです。

Pixel 11 Proの仕様を見ると、256GB版のみ、メモリーが12GBにダウンしている

 その意味では、メモリー容量を16GBに据え置きにした512GBや、日本市場で初めて登場した1TB版の方がお得感はあります。512GB版も、Pixel 10 Proとの比較で100円安くなっており、1219ドルに対して19万4800円と、為替レートも約145.3円。プロモデルだけあって、どちらかと言えば容量の大きなモデルにコストをかけていることがうかがえます。

XLとFoldは値上げ、Foldは値上げも競合をにらんで1ドル=134円に

 一方で、同じプロモデルでも、大画面版の「Pixel 11 Pro XL」は、やや価格設定が異なっています。こちらは、256GB版が20万7800円。同じく256GB版が最低容量だった「Pixel 10 Pro XL」の19万2900円から、1万4900円値上がりしています。こちらは、米国版も1199ドルから1299ドルに価格が改定されています。

 それでも1ドルあたりのレートは、145.2円と一般的な為替よりも円安気味。値上げは、どちらかと言えば、大元の価格設定が変わったことによるものと言えます。Pixel 11 Pro XL自体の為替レートは、Pixel 11 Proと大きくは変わらないからです。1万4900円値上げされたものの、海外との比較では、やはり割安になっていると言えます。

大画面モデルのPixel 11 Pro XLは、米国版の値上げが反映され、日本でも1万4900円高くなっている

 ただ、Pixel 11 Pro XLもPixel 11 Proと同様、256GB版はメモリー容量が12GBに減少しています。価格が上がりつつ、メモリーが減少したという点では、コストパフォーマンスが下がってしまったと言えるかもしれません。日本での価格設定は頑張ったものの、20万円を超えてしまうと、なかなか手を出しづらいのも事実です。

 同様に、フォルダブルモデルの「Pixel 11 Pro Fold」も、先代の「Pixel 10 Pro Fold」から1万2400円値上がりして、27万9900円になりました。米国でも、100ドルアップで1799ドルから1899ドルになっているため、これを日本での価格にも反映したものとみられます。もっとも、こちらも1ドルあたりのレートは約134円とかなりの円高設定で、米国との価格差はPixel 11より大きくなっています。

フォルダブルスマホのPixel 11 Pro Foldは、27万9900円から。米国では1899ドルで、1ドル=160円だとすると約33万円になってしまう

 1899ドルに、Pixel 10 Pro並みの1ドル=145円を適用したとしても、その価格は30万円を超えてしまいます。フォルダブルスマホ最大の競争相手とも言えるサムスンの「Galaxy Z Fold8」が約27万円、最上位モデルの「Galaxy Z Fold8 Ultra」が30万円弱ということもあり、30万円超えはなんとしても避けたかったのかもしれません。競争も激しくなっているだけに、戦略的に日本での価格を引き下げてきたことが見えてきます。

フォルダブルスマホではもっともシェアの高いサムスンが、Galaxy Z Fold8を約27万円で販売していることも、Pixelの価格に影響を与えている可能性が高い

 このように価格を比較していくと、グーグルが日本市場をかなり重視していることが見えてきます。特に、Pixel 11は戦略的に価格を引き下げている点からも、グーグルが“売りたい”端末であることは間違いなさそうです。また、フォルダブルスマホが盛り上がる中、その価格を引き下げてきた点にもグーグルの意図が見え隠れします。ハイエンドモデルの価格が大きく上がる中、あえての値下げやほぼ据え置きにすることで、日本市場で勝負をかけてきた印象を受けました。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya