石野純也の「スマホとお金」
auの新料金プラン「マネ活2」は本当にお得? ドコモ・ソフトバンクと比べてわかった“ゴールドカードの重要性”
2025年11月20日 00:00
KDDIが、au向けの新料金プラン「auバリューリンク マネ活2」を発表しました。提供開始は12月になります。これまで、KDDIは23年に「auマネ活プラン」を、24年に「auマネ活プラン+」を投入しており、マネ活プランは今回で3回目。その都度、還元の仕方などを変更し、時代に即したアップデートをしています。
今回の特徴は、傘下のauじぶん銀行との連携を強めつつ、クレジットカードやau PAYでの還元をより分かりやすくしたところにあります。これによって、他社が展開する決済サービス連動の料金プランとの差別化も図れています。
では、auバリューリンク マネ活2と一般的な“ポイ活プラン”との違いはどこにあるのでしょうか。他社の料金プランと比較しつつ、そのお得度を検証していきます。
マネ活2は金融連携のオプション、銀行連携が最大の特徴に
料金プランのように見えるauバリューリンク マネ活2ですが、マネ活2の位置づけはあくまで「auバリューリンクプラン」や「使い放題MAX+」に金融特典をつけるための選択肢。どちらのプランもマネ活2にすることができるのが、その証拠です。各種割引適用前の料金はauバリューリンク マネ活2が9328円、「使い放題MAX+ マネ活2」が9108円です。
通常のauバリューリンクプランや使い放題MAX+との違いは、家族割引の「家族割プラス」やクレジットカード割引の「au PAYカードお支払い割」が適用されなくなる点。割引は、固定回線などとのセット割である「auスマートバリュー」の1100円のみとなり、料金体系はよりシンプルになります。
裏を返すと、 auバリューリンク マネ活2は、割引適用時でも8228円もしくは8008円までしか下がらない ことになります。
この点は、家族で回線を契約したり、クレジットカードを使ったりすることで料金が下がる他のプランとの大きな違いと言えるでしょう。通常よりも高めになる一方で、 金融特典で料金を取り戻せる というのがマネ活2のコンセプトだからです。
その特典は、大きく3つに分かれています。 1つ目が「銀行あずけて特典」 。これは、auじぶん銀行と連動したもので、au PAYゴールドカードとauじぶん銀行への50万円以上の普通預金で毎月550円が還元されます。預金額に応じて還元額は異なり、30万円の場合は330円、10万円の場合は110円になります。
いずれにせよ、年会費1万1000円のau PAYゴールドカードが必要という点には注意が必要かもしれません。
2つ目の特典が「通信料お支払い特典」 です。こちらは、au PAYカードで料金を支払いつつ、その引き落とし先をauじぶん銀行に設定するのが条件。
これだけで、毎月、銀行口座に1650円が還元されます。ここまでの2つの還元を合わせると、還元額は2200円に。auバリューリンクプラン マネ活2の割引後の料金を還元で相殺すると、6028円になります。
これでも通常のauバリューリンクプランよりはややお高めですが、家族で回線をそろえなくても約6000円まで下がる点では、通常の料金プランよりもやや条件が緩めと言えるかもしれません。ここに、 3つ目の特典である「お買い物特典」 を組み合わせると、実質価格はさらに安くなります。
カード、コードのどちらもOKなお買い物特典、上限達成にはゴールドカードがほぼ必須
3つ目のお買い物特典は、他社の決済連動料金プランに仕組みは近くなっています。契約しているクレジットカードで還元率が変わってくる仕組みで、ゴールドカード保有の場合は5%、ゴールドカード未保有の場合は1%になり、どちらも上限は2500ポイント。クレジットカードとau PAYでこの上限を共有します。
つまり、どちらを使っても最大2500ポイントの還元を受けられるということ。支払い方法別に還元額が分かれていた以前のauマネ活プラン+よりも分かりやすくなりました。
上限に到達するのに必要な金額は、ゴールドカードの場合で5万円、ゴールドカード未保有の場合は25万円になります。前者は、生活費をクレカやau PAYに寄せていけばそこまで難易度は高くなさそうですが、後者は毎月の達成がなかなか難しい金額。
1つ目の特典である銀行あずけて特典の条件でもあるため、還元をフルで受けるには、事実上、au PAYゴールドカードが必須と言えそうです。
この点は、他社との違いにもなっています。例えば、ソフトバンクのペイトクは、銀行やクレジットカードと連動した特典は特になく、PayPayの還元率が5%上がるシンプルな仕組みになっています。還元額の上限は4000ポイント。8万円の決済で、上限に到達します。
必要な決済額はauマネ活プラン2のお買い物特典より高め、かつクレジットカードの利用はカウントされない一方で、ゴールドカードを持つ必要がありません。
契約するクレジットカードによって還元率が異なってくる点は、ドコモの「ドコモ ポイ活 MAX」と似ています。ドコモの場合、dカード PLATINUMで10%、dカードGOLD/GOLD Uで5%、それ以外で3%の追加還元を受けられます。
支払い方法はクレカだけでなく、d払い残高でもOK。クレカ、コード決済と支払い方法を問わない点は、KDDIのauマネ活プラン2と同じです。
還元額の上限は3社の中でもっとも多い5000ポイント。dカード PLATINUMなら5万円、GOLDなら10万円、通常のdカードもしくはdカードなしのd払いなら16万6667円の支払いで上限に到達します。こちらも、KDDIと同様、還元を受け切るにはゴールドカード以上が必須になりそうな一方で、そうでない場合の条件はやや緩いと言えるかもしれません。
また、ドコモは現在、終了期間未定のキャンペーンとして条件を問わずに一律で10%還元を実施しています。仮にdカードがなかったとしても、d払い残高で5万円支払うだけで、満額の5000ポイントが還元されるというわけです。
その意味では、現状、3社の中でもっとも還元を受けやすい料金プランに仕上がっています。逆に、 auバリューリンク マネ活2は“ゴールドカード縛り”がもっとも強くなっている と言えます。
ゴールドカード重視が吉と出るか凶と出るか、とは言え安い実質価格
こうした点から、KDDIがau PAYゴールドカードの契約を伸ばしていきたい思惑が見え隠れします。
実際、決算説明会などで挙げられるKPI(重要指標)にも、ゴールドカード契約数が入っており、同社が決済事業の要と考えていることがうかがえます。年会費として1万1000円が入ってくる上に、決済額も上がりやすいので、収益的にここを重視するのは必然と言えるかもしれません。
とは言え、ドコモやソフトバンクと比較すると、その思惑が思惑を通り超えて前面に出すぎているような印象も受けました。ソフトバンクはPayPay一辺倒、ドコモはdカード PLATINUMをプッシュしたい一方で、どこまで踏み込んでいいのか分かりかねてキャンペーンでお茶を濁しているような形の中、auマネ活プラン2は直球を投げてきた感があります。
ただ、あまりにゴールドカード推しが強すぎると、逆に料金プランの魅力をそこなってしまう心配もあります。年会費のかかるクレジットカードは、通信キャリア以外にも多種多様なものがあるからです。
マイルを貯めたい人は航空会社の、店舗で割引を受けたい人は百貨店のといった形で、メインにするカードは人それぞれ。最近ではOliveなどの銀行系クレジットカードも還元率が高く、すでに支払いをまとめてしまっていると乗り換える手間も発生します。
ソフトバンクのペイトクやキャンペーン中のドコモのドコモ ポイ活 MAXは、こうした他社クレカとも併用がしやすい構造になっています。
一方で、この点さえクリアすれば還元方法は銀行口座へのキャッシュバックで、ポイント充当などの手間は不要。通貨としてもらえるため、どの決済サービスよりも利用の幅が広いのは事実。こうした点をどう捉えるかで、その価値が変わってきそうな料金プランと言えるかもしれません。
ちなみに、キャッシュバックされた現金やPontaポイントを料金に充当した場合の実質料金は、auバリューリンク マネ活2で3528円。Pontaポイントは料金充当時に上限などの制約がありますが、いったんau PAY残高にチャージしてからauじぶん銀行に払い戻せば、現金化ができるため、ポイントとしての使い勝手は悪くありません。
また、Pontaパスが不要な場合には、使い放題MAX+ マネ活2にすれば、実質価格は3308円まで下がります。
KDDIの他の料金プランとの比較では、お得感もあります。サブブランドであるUQ mobileの場合、データ容量が35GB、1回10分の通話かけ放題がついた「コミコミプランバリュー」が3828円。各種割引適用後の「トクトクプラン2」が、5GB超30GBまでで2728円になります。
音声通話定額の有無などの違いはありますが、auマネ活プラン2の実質的な料金水準はここに近いと言えるかもしれません。
還元を受け切るにはau PAYカードゴールドが必要になる縛りはあるものの、それを許容できるのであれば、サブブランドに近い料金でデータ容量が無制限になり、かつ「au 5G FastLane」や国際ローミングの15日間無料といった特典もついてきます。
銀行口座の開設やゴールドカードの契約といった“マネ活”を手間だと思わない人にとっては、サブブランドから乗り換える意義もありそうです。











