石野純也の「スマホとお金」

「iPhone 17 Pro」も月額1円、ソフトバンク「新トクするサポート+」の注意点は?

 超薄型の「iPhone Air」や、放熱性能を大きく高めた「iPhone 17 Pro」「iPhone 17 Pro Max」の登場から、1カ月が経過しました。改めてキャリア各社の"iPhone商戦"を振り返ってみると、価格面ではソフトバンクのインパクトが大きかった印象があります。Pixel同様、月額1円を打ち出してくることは予想されたものの、その対象機種が想定を上回っていたからです。

 月額1円を打ち出すのはノーマルモデルの「iPhone 17」だけと思いきや、条件付きながらiPhone AirやiPhone 17 Proも月額1円を打ち出していました。価格がここまで抑えられていれば、とりあえず負担額を度外視して好きな機種を選べそうです。とは言え、こんなに安いと落とし穴を疑いたくなるもの。ここでは、そんなソフトバンクの"月額1円iPhone"を検証していきます。

iPhone AirとiPhone 17 Pro。スタンダードモデルだけと思いきや、ソフトバンクはこの2機種も"月額1円"に設定し、販売を行っている

AirやProもまさかの月額1円、これを実現した新トクするサポート+とは

 新型iPhone全4機種中、月額1円を打ち出している機種は3機種になります。ベースモデルであるiPhone 17に加え、iPhone AirやiPhone 17 Proも、条件によっては月額1円になります。さすがに本体価格が高いiPhone 17 Pro Maxはここまで安くはなっていないものの、こちらも毎月の支払いの最低価格は830円と、比較的リーズナブルな金額に抑えられています。

 この仕組みを実現しているのが、いわゆる"残クレ"に近い仕組みの「新トクするサポート+」。8月に導入された仕組みで、1年もしくは2年で端末を回収に出すことで、以降の支払いが免除されます。傾向として、月額1円などの極端に安い価格は、当初12カ月分に設定されていることが多くなっています。また、比較的安価なモデルに関しては、24回目までが1円になっていることもあります。

新トクするサポート+は、24回もしくは36回の支払いを端末の回収で免除するプログラム。これを活用することで、月額1円を実現している

 他社にも近いサービスは存在しますが、共通して言えるのは、使用済みの端末を買い取った金額で残債を相殺して、ユーザーの負担額を抑える仕組みということ。この相殺する金額に割引(と見なされる金額)を含めることもあるため、普通にスマホを買って中古店などに売却するよりおトクになるケースもあります。iPhone 17シリーズやiPhone Airが安く見えるのは、そのためです。

 例えば、iPhone Airの場合、新規契約や他社からの乗り換え(MNP)で、12回目までの支払いが月額1円になります。本体価格は19万3680円に設定されているため、1年で端末を回収に出せば、19万3668円が免除される計算になります。

 1年間激安で使えるiPhoneではありますが、注意点もあります。この新トクするサポート+を使って端末を回収に出す場合には、「特典利用料」がかかるからです。さらに、その期間が1年だと、「早期利用料」も上乗せされます。iPhone Airは、どちらも2万2000円。1年で機種変更すると月額料金の12円以外に、4万4000円がかかるというわけです。

iPhone Airの価格設定。月額1円になるのは、最初の1年間のみ。これを払い終わったあと端末を回収に出すと、2万2000円の特典利用料と早期利用料がそれぞれかかる

 ただし、この2つの利用料のうち、前者の特典利用料は次回もソフトバンクで端末を購入する場合には免除される「買い替え応援割」があります。これを適用すると、iPhone Airが1年間、2万2012円で使える形になります。次回の端末購入が条件になるためか、端末価格が記載されたページには直接的な案内はありませんが、ソフトバンクで機種変更し続けるのであれば、特典利用料のことは考慮に入れなくてもいいと言えるでしょう。

端末購入のページには直接記載されていないが、ソフトバンクは買い替え応援割も実施している。次の機種をソフトバンクで購入すると、特典利用料が免除される仕組みだ

回収での免除額に含まれる割引、安いのは基本的にはMNPや新規限定

 特典利用料と早期利用料が4万4000円かかったとしても、元々19万円以上するiPhone Airが4万4012円で使えるのは、かなり割安に見えます。いくらiPhoneのリセールバリューが高いと言っても、ここまでの金額で買い取られることはほぼありません。回収時に免除される金額の一部は、割引と考えるのが自然です。

 現行の電気通信事業法では、キャリアに対して端末割引の規制が設けられています。ガイドラインで定められた金額は、iPhone Airの場合だと4万4000円。ただし、回収時の金額は下取りと見なされ、一般的な中古店の平均まではこの割引規制には含まれません。それを超えた分が4万4000円を超えなければOKというわけです。

現状では、税込みで4万4000円までの割引が許容されている。iPhone AirやiPhone 17 Proは8万円を超えるため、4万4000円が上限になる。かつミリ波非対応のため、特例も適用されない。画像は制度を解説した総務省『日々の生活をより豊かにするためのモバイル市場競争促進プラン』から抜粋

 iPhoneの上位モデルであれば、リセールバリューが高いことから、最低容量のモデルでも1年後であれば10万円以上の値が付くことは一般的。ここに4万4000円を足せるため、ザックリ言えば15万円程度の残債を免除することが可能になります。iPhone Airの月額1円は、このようなロジックで実現している形になります。

 ただし、キャリア側も割引はコストになるため、基本的には加入者獲得につなげたいとの思惑があります。そのため、上記のiPhone Airでは、新規契約とMNPのみ、12カ月分が月額1円になります。すでにソフトバンクで何らかの端末を利用している場合には、機種変更の扱いになり、月額料金は4035倍(笑)の4035円に跳ね上がります。

機種変更だと、12カ月目までの支払い額が4035円に跳ね上がる。契約の仕方によって端末価格が変わるのには違和感もあるが、これはプログラムに割引が含まれていることを意味する

 つまり、12回分の4034円は、契約者獲得のための割引として設定されているというわけです。端末価格にダイレクトに含まれてしまっていて、ユーザーには割引額が見えづらくなっていますが、実際には回収される端末の下取り価格に割引が含まれているというわけです。月額1円と聞いて期待したソフトバンクユーザーにはなんとも残念な話ですが、実際にはこのような形で新規契約やMNPの優遇が行われています。

iPhone 17のように機種変が安いケースも、機種ごとに価格戦略を変えるソフトバンク

 ただし、ベースモデルのiPhone 17と、上位モデルに当たるiPhone AirやiPhone 17 Proでは、やや条件が異なります。iPhone 17は「機種変更」で最初の12カ月分が月額1円になるのに対し、MNPや純粋な新規契約の場合は月額415円。他社からのユーザー獲得ではなく、むしろ、既存のユーザーの機種変更を優遇している感もあります。ただし、MNPでは、本体価格に9936円のオンラインショップ割がついて12回目までが月額1円と同額になります。

iPhone 17は、機種変更だと12回目まで月額1円になる
逆に、新規契約だと月額415円になって割高感が出る。既存ユーザーの引き留めを重視した結果と言えるかもしれない

 一方で、必ずしも機種変更優遇と言い切れないのは、2年利用時の価格が逆転するため。iPhone 17を機種変更で購入すると、13回目から24回目までの支払いが月額4439円になり、特典利用料の2万2000円を含んだ実質価格は7万5280円になります。

 これに対し、MNPだと上記のように割引で最初の1年間が月額1円になる上に、2年目にあたる13回目から24回目の支払額も415円に抑えられています。2年使って機種変更しても、2万2024円で済んでしまうというわけです。

 先に挙げたように、特典利用料は再びソフトバンクで機種変更すると買い替え応援割で相殺されます。つまり、MNPの場合であれば、2年、24円ポッキリで済んでしまうということになります。最新機種が出るたびに乗り換えるのであればiPhone AirやiPhone 17 Proが安いものの、じっくり2年程度使いたいのであれば、やはりiPhone 17の価格設定に優位性があると言えるでしょう。

MNPだとさらに追加で割引が適用され、24回目まで月額1円になる

 どちらかと言えばiPhone AirやiPhone 17 Proにすぐ飛びつくのは、スマホ好きのユーザー。最新モデルを次々と買い替えていくため、1年間の価格を安くする方が引きは強くなりそうです。そうでない、より一般層に近いユーザーの受け皿になるiPhone 17は、2年間での価格を抑えているというわけです。機種の特徴に応じて、1年と2年の期間をうまく使い分けているソフトバンクの戦略が垣間見えます。

 もっとも、これらの価格はあくまでも1年ないしは2年で端末を回収に出した場合の金額。うっかり忘れてしまうと、本体価格を払い続けることになります。キャリア版の場合、アップルの販売するオープン版よりも割高に設定されているケースが多いため、長く使うと損をしてしまう構造もあります。こうしたプログラムを使う際には、スマホを定期的に乗り換えるクセをつけておいた方がいいかもしれません。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya