石野純也の「スマホとお金」
「OCN モバイル ONE」からの移行先をリストアップ、「irumo」に移って大丈夫?
2023年11月30日 00:00
NTTドコモの低料金ブランド「irumo」の開始に合わせ、子会社だったNTTレゾナントの提供していたOCN モバイル ONEの新規受付が終了しました。サービス自体が終了したわけではないものの、料金プランの改定などは望めません。
OCN モバイル ONEは、ドコモとの住み分けを図る目的もあって最大のデータ容量が10GBだったため、それを毎月超えてしまうような場合、ドコモを含む他社に移るしかないというわけです。
また、競合のMNOやMVNOが料金値下げをすることで、相対的にOCN モバイル ONEのお得度が下がってしまうケースもあります。ドコモ自身も巻き取り(サービスの移行促進)する意向を示しており、いつまで今のような品質で使い続けられるかは不透明です。
すぐに他社に移る必要性はありませんが、移行先を検討しておいてもいいでしょう。200万を超える回線数を抱えていただけに、他社も虎視眈々とそのユーザーを狙っています。そこで、今回はケース別に移行先をリストアップしてみました。
irumoに移って大丈夫? 料金は値上がりするケースも
OCN モバイル ONEの移行先として真っ先に思い浮かぶのは、後継的なサービスとして登場したドコモのirumoでしょう。
OCN モバイル ONEで人気の高かった「500MB/月コース」と同額の550円で「0.5GBプラン」を用意するなど、 ドコモもirumoを受け皿として想定している ことがうかがえます。ただ、同じ500MBで550円ですが、OCN モバイル ONEとirumoでは、サービススペックが少々異なります。
1つ目が通信速度。OCN モバイル ONEは、500MB/月コースでも特に制限はかけていませんが、irumoの0.5GBプランは 最大速度が3Mbpsで、5Gも利用できません 。
5Gのフルスペックだと、500MBはすぐに消費してしまう容量のため、むしろ速度が遅い方がいいと考えることはできるものの、サブ回線などとしてOCN モバイル ONEを維持していた人にとっては影響が大きい部分と言えます。
また、OCN モバイル ONEの500MB/月コースには、毎月10分までの無料通話がついています。これがirumoにはありません。音声定額をつけると、「5分通話無料オプション」でも880円かかります。
細かなところでは通話料も異なっており、OCN モバイル ONEはオートプレフィックスでOCNでんわにつながるため、料金は30秒あたり11円です。これに対し、irumoはドコモの通常の音声通話料と同じで30秒ごとに22円かかります。通話中心で使う場合も、 OCN モバイル ONEの方が安く上げられる というわけです。
同容量で移行すると、値上げになるケースも。OCN モバイル ONEの3GB/月コースだった場合、料金は990円ですが、irumoは2167円と金額が倍以上に跳ね上がります。
ただし、例外としてdカードで料金を支払い、ドコモ光かhome 5Gをセットにしていれば割引が適用され、料金は880円まで下がります。自宅に引いている固定回線がドコモで、かつdカードを持っていればirumoにすることでお得になります。
ただしこの場合も、500MB/月コースと0.5GBプランの比較と同様、通話料に違いがある点には注意が必要です。
また、OCN モバイル ONEで「OCN光モバイル割」が適用されているケースでは、月額料金が220円割り引かれています。この場合、3GBでの料金は770円。irumoに移ることで、料金は110円ですが上がってしまいます。
さらに、OCN モバイル ONEとirumoでは、データ容量の区分が異なっています。OCN モバイル ONEは500MB、1GB、3GB、6GB、10GBという5段階でしたが、irumoは0.5GB、3GB、6GB、9GBの4段階。
1GB/月コースの人は料金を上げるかデータ容量を下げるしかなく、10GB/月コースの場合もデータ容量はどうしても減ってしまいます。
3GB/月コースや6GB/月コースでドコモの固定回線を契約しているなど、ピタッとはまるような使い方をしていれば移行はしやすいのかもしれませんが、そうでない場合には、 料金、容量的なメリットは薄い と言えるでしょう。
MVNOからMNOに切り替えることで、相互接続点の混雑はなくなるものの、OCN モバイル ONEはお昼休みの時間帯でも比較的速度が速いMVNOとして知られているため、ドコモ本体の回線に変えたところで違いが分かるほど快適になるのかは微妙なところ。
その意味で、まだドコモはOCN モバイル ONEの巻き取りに“本気”を出していないと言えるでしょう。
対抗プランを用意するMVNOも、3GB/月コースならオンライン専用ブランドが有力?
irumo以外のMVNOにMNPで移ることで、月額料金を抑える手もあります。MVNO各社も料金プランを徐々に改定しており、OCN モバイル ONEの新規申し込み終了後も、相場は徐々に落ちているからです。
たとえば、11月にはNUROモバイルが「バリュープラス」に15GBの「VLLプラン」を追加しましたが、こちらの料金は1790円。「Gigaプラス」というサービスで、3カ月に1回、9GBの追加データ容量も付与されます。3カ月目以降は、1カ月平均で18GBになる料金プランです。
OCN モバイル ONEの場合、10GB/月コースの料金が1760円。NUROモバイルのVLLプランは、30円ほど高くなりますが、 データ容量は5~8GBも増える 形になります。
また、NUROモバイルでは10GBの「VLプラン」も用意しており、こちらの料金は1485円。データ容量据え置きなだけでなく、Gigaプラスで3カ月ごとに6GBのデータ容量がもらえる上に、料金まで下がります。
また、3GB/月コースの990円も、ほかのMVNOならよりデータ容量が多いプランが利用できます。
一例を挙げると、MVNOトップシェアのIIJmioは、990円の5GBプランを用意しています。IIJmioは、1GBあたり220円で追加できるため、6GBに増量したとしても1210円しかかかりません。OCN モバイル ONEの6GB/月コースのユーザーが移っても、 料金はこれまでより安くなります 。
また、10GBプランが1500円、15GBプランが1800円であり、10GB/月コースを契約していたユーザーの受け皿にもなります。
500MB/月コースからの移行先に向いているのが、日本通信の「合理的シンプル290」。その名のとおり、月290円の料金プランですが、データ容量は 倍の1GB に増えます。
先に述べたとおり、OCN モバイル ONEの500MB/月コースには10分間の無料通話がついていますが、日本通信の通話料は30秒11円と安いため、10分通話しても220円で済みます。基本料と10分間の通話料を合計すると510円。わずかながら、OCN モバイル ONEの500MB/月コースより安く維持できます。
通話の時間がより短ければ、さらに料金は割安に。安さ重視で選ぶのであれば、お勧めな料金プランと言えるでしょう。
一方で、MVNOの場合、その会社が借りている帯域の総量やアクティブに使っているユーザーの数によって、速度などの通信品質が左右されます。
OCN モバイル ONEはドコモ自身が運営していることもあり、この点はかなり優秀。品質を落としたくないというような時には、MVNOではなく、MNOのオンライン専用ブランドを検討してみるのも手です。MNOであれば、少なくとも接続点の総帯域によって速度が左右されることはないからです。
ドコモのahamoには小容量プランがないため、検討するなら povo2.0かLINEMOが候補 になります。
povo2.0は有効期間30日の3GBトッピングが990円。LINEMOの「ミニプラン」も3GBで990円です。OCN モバイル ONEのようにセット割はありませんが、3GBプランは同額のため、移行はしやすいかもしれません。
また、楽天モバイルも3GBまでなら1078円と、OCN モバイル ONEに近い料金で利用できます。ただし、キャリアを変えてしまうと、エリアも変わってしまいます。自宅や職場といった普段使う場所で必ずしもしっかり電波が入るとは限らないため、注意が必要です。この点はMVNOへの変更よりもハードルが高いと言えそうです。
既存ユーザーのコース変更は可能、対抗サービスが出てくるまで使い続ける選択肢も
料金を是が非でも下げたいという場合は他社に移るのが最適解ですが、データ容量が不足しているときには、 OCN モバイル ONEでのコース変更 も検討してみる価値があります。
新規申し込みの受付は終了しているものの、既存の契約者はマイページ内で簡単にコース変更が可能だからです。
500MB/月コースと1GB/月コース、3GB/月コースの差分はそれぞれ220円。3GB/月コースから6GB/月コースへは330円、6GB/月コースから10GB/月コースへは440円の追加でアップグレードできます。
他社に移って容量を上げる場合、新規契約の事務手数料がかかります。キャンペーンで数カ月間料金が安くなったり、端末割引がついたりするのはMNPのメリットと言えますが、コストが発生してしまうのが難点。
MNPの手続きなど、手間もそれなりにかかるうえに、MVNOに変えた場合は通信速度、povo2.0やLINEMOといったオンライン専用ブランドにした場合はエリアの違いもあるため、この金額差であれば、OCN モバイル ONEを使い続けるのもアリと言えるでしょう。
実際、筆者もサブ回線として契約しているOCN モバイル ONEは、いまだに500MB/月コースで使い続けています。
確かに、上記のように日本通信の合理的シンプル290に移れば料金は安くなりますが、筆者の回線はIP電話サービス「050 plus」(こちらも新規申し込みは終了済み)の基本料330円が無料になっていたときに契約しており、その状態が現行の料金プランでも継続しています。
050 plusは国際ローミング時の着信や、可能な限り発信したくないナビダイヤルに電話しなければならないときに活用しているため、なかなか解約しづらいのが現状です(ナビダイヤルの通話料は3分8.8円と、ケータイからの発信の1/10以下になります)。
この回線を日本通信の合理的シンプル290に移したとすると、料金は290円に下がる一方で、050 plusは0円から330円に上がってしまいます。
irumoにした場合、料金は据え置きで速度に3Mbps制限がかかり、なおかつ050 plusは値上げに。新規契約の事務手数料も発生するため、なかなかほかに変えづらいのが実情です。
IP電話アプリはほかにもありますが、ナビダイヤルの料金が安くなるという条件だと代替になるサービスがないのが悩ましいところです。代わりになるようなIP電話をドコモが提供してくれればいいのですが……。
こうした料金差やサービスの違いもあり、事実上の後継プランとして登場したirumoに巻き取っていくのは、今のままでは難しいような気がしています。
OCN モバイル ONEのマイページにログインすると、irumoへの乗り換えでdポイントが6カ月、計6600円ぶんもらえるバナーが表示されますが、0.5GBプランは対象外。Amazon経由では3000ポイント手に入りますが、こちらはOCN モバイル ONEが対象外になっています。
こうした施策を見る限り、まだまだ巻き取りに本腰を入れていないような印象を受けます。
ただ、新規申し込みが終了している以上、今後、サービス内容がアップデートされる望みは薄いと言えるでしょう。ほかのMVNOのような料金値下げなり、データ容量の増量なりは見込めないというわけです。サービス内容とコストが自分に合わなくなってきたと感じたら、乗り換え時と言えるでしょう。
ここで示したように、料金プランによっては競合より見劣りすることもあるため、他社のサービス改定はしっかりチェックしておきたいところです。