石野純也の「スマホとお金」
楽天モバイルの料金は本当に安いのか【新連載】
2022年4月15日 00:00
携帯電話やスマートフォンと切っても切り離せないのが「お金」の話。毎月請求される料金はもちろんのこと、購入する端末の価格や各キャリアが拡大しているポイント経済圏など、モバイルとお金は密接に連携したテーマと言えるでしょう。各キャリアに料金プランを考える専門部署があるのも、料金が収益の源だからこそです。
一方で、あの手この手で“安さ”や“お得さ”を演出する必要もあり、料金や端末代に関する話はユーザーから見て複雑になっているのも事実です。この連載では、そんなケータイにまつわるお金の話を旬なトピックに沿いつつ、優しくひも解いていきたいと考えています。
第1回のテーマは「楽天モバイルの料金は本当に安いのか」です。「日本のスマホ料金は高すぎる」と主張してきた同社の料金プランを、読み解いていきます。
無制限プランとしては破格の楽天モバイル、ただしローミングエリアでは……
結論から言ってしまうと、データ通信が使い放題で3278円という楽天モバイルの「UN-LIMIT VI」は、自社でネットワークを持つキャリアとしては破格の安さです。5Gの導入と前後し、大手3キャリアもデータ通信の容量制限がない料金プランを導入していますが、割引前の価格でおおむね7000円強。家族での契約や固定回線とのセット割を入れても5000円前後のため、1回線から、特に条件なく3278円で使える楽天モバイルの安さが際立ちます。
しかも、この使い放題には、スマホだけでなく、スマホを経由した他の端末の通信も含まれています。
こうした機能をテザリングと言いますが、テザリングまで含めたデータ通信を無制限にしているのはドコモと楽天モバイルだけ。auやソフトバンクには30GB(プランによって異なる)などの制限がつくため、家でネットにつなぐ機器の回線をすべてまかなうといった使い方だと無理が出てきます。
一応、楽天モバイルにも「公平なサービス提供のための速度制御」を行う場合がある旨が記載されており、1日の通信量が10GBを超えると速度が規制されるようです。とは言え、速度を極端に絞るわけではないので、スマートフォンを利用したり、テザリングでパソコンをつないだりして通信するぶんには特に問題なく使えています。データ通信量を気にせず、思う存分使いたい人にとっては、楽天モバイルの主張通り安い料金プランだと評価できます。
ただし、これはあくまで楽天モバイルのエリア内にいればの話で、ローミングエリアでの利用には5GBまでという制限がついています。楽天モバイルは、サービス開始当初からKDDIの一部エリアを借りる形でローミングの提供を受けていますが、このエリア内での通信は無制限ではないというわけです。スマホをよく使う場所がほぼローミングエリアという場合には、実質的に5GBプランと同じになってしまいます。
UN-LIMIT VIは、段階制を採用しているため、1GB超で1078円、3GB超で2178円、20GB超で3278円に料金が上がっていきます。5GB利用時の料金は、2178円です。この場合、他社の料金プランを見ると、もう少し料金が安かったり、同じぐらいの金額で使えるデータ容量が多かったりと、必ずしも楽天モバイルが安くなるわけではない点には注意が必要です。一例を挙げると、UQ mobileの「くりこしプランS +5G」は、データ容量が3GBで料金は1628円。これに550円の「増量オプションII」をつけると2178円で、楽天モバイルの3GB超の料金と同額になります。
UQ mobileには、電気サービスか固定回線とのセットで料金が安くなる「自宅セット割」があり、これを適用すれば増量オプションIIをつけても、料金は1540円まで下がります。楽天モバイルはローミングエリアを段階的に縮小しており、4月時点で47都道府県での自社回線への切り替えを行いましたが、市区町村単位で見ると、依然としてローミングエリアは残っています。同社がローミングからの切り替えを急いでいるのはそのためですが、ユーザー視点で見ると、自分の使う場所がきちんと楽天モバイルのエリアになっているかどうかが重要と言えます。
1GBから20GBまでは他社に近い価格設定、MVNOなら楽天モバイルより安くなることも
この段階制というのが少々クセモノで、利用するデータ通信の量によって、料金が高いか、安いかが変わってきます。
使い放題の料金プランとしては他社を圧倒している楽天モバイルですが、その途中の段階では少々話が変わってきます。先に挙げたUQ mobileの例もその1つで、仮に楽天モバイルの自社回線エリアだけで使ったとしても、データ通信が3GBを超えてしまうと、料金は20GBまで2178円になります。
大手キャリアから回線を借りるMVNOまで視野に入れると、低容量~中容量の料金プランに関しては、より選択肢の幅が広くなります。
たとえば、MVNOでトップシェアのIIJmioは、「ギガプラン」で4GBの料金を990円に設定しており、楽天モバイルの「1GB超3GB以下の1078円」より割安で、かつ使えるデータ容量も多くなります。データ容量の設定が細かい分、最適なプランを選べば、ギガプランの方が安くなる可能性は多分にあります。
同様に、20GBギリギリまで使った場合も楽天モバイルは2178円ですが、この容量帯だと、大手キャリアのオンライン専用プラン/ブランドが視野に入ってきます。
ドコモのahamoは2970円、ソフトバンクのLINEMOは2728円で、いずれもデータ容量は20GB。さらに、KDDIのpovo2.0の場合、90日(約3カ月)使える60GBトッピングを購入すると、1カ月あたり20GBで約2163円となり、わずかですが楽天モバイルより安価になります。
金額とは別の角度の話として、段階制という仕組みにも注意しておく必要があります。使ったデータ量に応じて料金が変わる仕組みは、一見便利にも思えますが、1カ月に携帯電話の回線に使う予算が決まっている人は常にデータの使用量を気にしなければならないからです。Androidの場合、一定のデータ量で通信を止める機能があるため、これを活用すれば使い過ぎを防げますが、iPhoneにはこうした機能がありません。
毎月の料金が変動せず、一定容量まで使いたいという場合は、3GBプランだったり5GBプランだったりの、容量別料金プランを採用しているキャリアを選んだ方がいいでしょう。段階制の料金プランの中には、ドコモの「ギガライト」のように、使用量に制限をつけて金額をコントロールできる料金プランもありますが、楽天モバイルのUN-LIMIT VIにはこのような機能はありません。段階制にも良し悪しあることは、念頭に置いておきたいところです。
「ただより“安い”ものはない」――1GB以下で0円の衝撃
小容量~中容量では、他社と比べたときのお得度が相対的に下がってしまう楽天モバイルのUN-LIMIT VIですが、逆にデータ使用量が1GB以下のライトユーザーにもお勧めできるのがおもしろいところです。1GB以下の料金を、0円に設定しているからです。1人1回線までという制限はありますが、1GB以下であれば、ユニバーサルサービス利用料なども含め、一切お金はかかりません。
「ただより“安い”ものはない」というわけで、この容量帯でも楽天モバイルは最安です。povo2.0も、基本料は0円ですが、あちらはトッピングで何かしらのデータ容量を購入するのが前提。買い物をしてもらえる「ギガ活」を駆使することで楽天モバイルより安く使う手はありますが、キャンペーンを除いた正規の料金プランとしては、UN-LIMIT VIが最安です。
ここまで言及してきませんでしたが、楽天モバイルの場合、「Rakuten Link」というアプリを使った電話であれば、通話料もかかりません。スマホの利用が少なくなく、電話が中心というユーザーであれば、本当に1円も払わず、使い続けることができます。かく言う筆者も、楽天モバイルをサブ回線として契約していますが、少なくとも数カ月間は1円も料金を払わず使い続けられています。
しかも楽天モバイルを契約すると、楽天市場でのポイント還元率が1%上がる特典がついてきます。とりあえず契約しておくだけで買い物をしたときのポイントが通常より多くもらえてしまうというわけです。1GB以下ならお金を払わないで済むどころか、むしろ通常より多くポイントをもらえてしまうのは驚きです。メイン回線として使うかどうかはさておき、とりあえず契約しておいて損はない料金プランは非常に珍しいと言えるでしょう。
このように見ていくと、楽天モバイルのUN-LIMIT VIは、ほとんど使わないか、逆にデータ通信をとにかくたくさん使う人にとって、非常にお得な料金プランになっていることが分かります。言い換えれば、両極端なユーザーをターゲットにした料金プランです。一方で、そこそこ使う中容量帯に関しては、他社が対抗策を繰り出してきたこともあり、お得感が薄くなるのも事実です。今契約している料金プランやデータ使用量によっては、わずかですが高くなってしまうことすらあります。
「料金が安い」というイメージの強い楽天モバイルですが、自分がどの程度データ通信を利用するのかで、感じ方が変わってくると言えるでしょう。裏を返せば、1GB超20GB以下の価格競争力をさらにつけることが、他社からユーザーを獲得する近道になるはずです。もし「UN-LIMIT」を「VII」に改定するとすれば、1GBまでの0円と使い放題の3278円の“間”を埋めるような手を打ってくることが想像できます。ローミングエリアが大幅に減り、収益性が改善する見通しを立てているだけに、料金競争での次の一手にも期待したいところです。