自由な再生環境が楽しいAndroidウォークマン「NW-F800」


Android 4.0を搭載したウォークマン「NW-F800」シリーズ

 ソニーから、OSにAndroid 4.0を搭載したウォークマン「NW-F800」が発売された。音楽プレーヤーの刷新を考えていた筆者はさっそく64GBモデルを購入してみた。

 個人的なことを書けば、ウォークマンブランドの製品の購入は「D-EJ1000」という10年以上前に購入したCDウォークマン以来だ。一方、世間におけるAndroid搭載のウォークマンはすでに「Z1000」シリーズが登場していたものの、音楽プレーヤーとしては多機能すぎてサイズも大きかったので購入を見送っていた。2012年に入り、10月下旬になって発売された今回紹介する「F800」シリーズは、持ちやすいサイズで音楽プレーヤーとして気軽に使えそうだったのがまず好印象だった。CPUはTegra 2、メモリ(RAM)は512MBなどとなっており、最新のスマートフォンと比べれば一世代前のスペックだが、音楽プレーヤーとしては十分な性能だろう。

 「F800」に触れると、Android 4.0を搭載したスマートフォンから3Gの通信機能を省いたWi-Fiモデルといった印象を受ける。起動画面、ロック解除画面、壁紙などはさすがにオリジナルとなっているが、ユーザーインターフェイス(UI)の多くの部分は、Android 4.0の標準的なものを採用しているようだ。もっとも、音楽再生に関わる部分は音楽プレーヤーらしくしっかりと構成されており、アンプなどのハードウェアにもこだわっている。付属のイヤホンはノイズキャンセリングに対応しているほか、付属イヤホンの特性に最適化して高音質化を図るモードもある。10代のユーザーでシェアが拡大しているというウォークマンだが、こうした音にこだわるユーザーにも注目すべきポイントは多いようだ。

 ではプレーヤーとしての使い勝手はどうだろうか。音楽データは基本的にパソコンから転送するとはいえ、例えば端末に標準搭載されるプレーヤーアプリ「W.ミュージック」では、プレイリストの作成はパソコンの「X-アプリ」から転送できるのみで、ウォークマン本体上では作成できないなど、首を傾げたくなる部分は残っているが、それも後述するAndroidというプラットフォームの上でカバーできるので、大きな問題にはならずに済んでいる。

 標準搭載のプレーヤーアプリ「W.ミュージック」のユニークなポイントは、12音解析により「アクティブ」「メロウ」など雰囲気で楽曲を分類する「おすすめチャンネル」機能だ。分類後にユーザーがカスタマイズできる部分は少ないが、「一歩進んだランダム再生」といった塩梅で、聞きたい曲に迷った時に重宝する。12音解析は本体上でも行え、10曲程度なら10分程度で終了するとはいえ、何百曲も一気に解析しようとすると数時間は必要なので、解析だけは予め済ませておく必要がある。


「W.ミュージック」のアルバム選択画面「W.ミュージック」の「おまかせチャンネル」「W.ミュージック」の設定画面

 

 「F800」はGoogle Playに対応した端末としての側面もあるので、Android向けに提供されているさまざまな音楽プレーヤーアプリをインストールして利用できる。ある意味ではこうした自由度がAndroidウォークマンの最大の醍醐味ともいえる。しかも、Android向けの音楽プレーヤーアプリは提供が開始されてからそれなりに時間が経過しているものが多く、大抵の不満点は解消済み。有名・人気アプリともなると、プレーヤー部分はもとより、イコライザー、ウィジェット、スワイプによる選曲、ロック解除画面での多彩な操作など、完成度は非常に高い。前述のプレイリストが作成できない問題なども、こうしたほかのプレーヤーアプリを中心に使えば解決するのだ。

 ファイル形式も、「F800」では「W.ミュージック」アプリが高音質なFLAC形式に対応することがひとつのトピックなのだが、ほかのアプリではすでに再生が可能。中には24bitファイルなど、より高音質を謳うファイルの再生に対応したアプリもある。「高音質配信」「ハイレゾ音源」などと呼ばれる、FLAC形式を利用した音楽配信サービスを利用している場合、モバイル環境でも特別な変換無しに気軽に持ち出せる。もっとも、ハイレゾ音源は1曲で300MBを超えるなどファイルサイズは巨大なので、必要に応じて入れ替えるなどの工夫が必要かもしれない。

 こうしたAndroidアプリを追加してできる部分というのは、要するにAndroidスマートフォンで実現できる部分なのだが、ただでさえ減りやすいスマートフォンの電池を節約するため、また気兼ねなく音楽を楽しむという意味でも、音楽再生は専用機に任せるというのは現実的な手段だろう。前述の高音質化技術や、WM-PORTによるラインアウトでポータブルアンプと組み合わせたい場合も、Androidウォークマンは魅力的な選択肢ではないだろうか。


UIはAndroid 4.0の標準的なものを採用している完成度の高い音楽プレーヤーアプリ「PowerAmp」のメイン再生画面。背景はアルバムジャケットの色や柄を反映させたものになっているe-onkyoで購入したハイレゾ音源。アプリ「Neutron Music Player」は24bit/192kHzのFLACファイルをそのまま再生できる。ただしアプリからの出力は16bitだ

 

製品名製造元購入価格
NW-F807(64GBモデル)ソニー3万7800円

 

 




(太田 亮三)

2012/10/31 06:00