本日の一品

3Vで時空を超える? なんちゃってフラックス・キャパシター腕時計を買ってしまった

 近年、腕時計では“本来の機能とは無関係な造形をあえて前面に押し出す”デザインが静かに増えている。メカ好きにはたまらないが、一般の時計ファンには理解不能な、いわゆる“謎の造形物”が外装を支配するモデルも登場している。

 大型時計好きの筆者は、過去にDEVONやRSWといった異形の大型モデルを集めてきたが、今回Temu散策中に偶然出会ったのが、巨大すぎる外観に“TIMEKEY”と刻まれた一本である。にもかかわらず商品のタイトルは「ティムックス」と表記される点は今なお謎だ。当コラムでは文字盤表記に合わせ“TIMEKEY”と記すことにする。

巨大すぎる外観と不思議なバランス

 まず驚かされるのは、TIMEKEYの“存在感”だ。一般的な36mm径のTIMEXと並べると、その差は圧倒的である。ベゼルとストラップは一体化したシリコンモジュール構造で、白・黒・赤・黄・青・シャイン黒の6色展開。筆者が選んだ白モデルは、その大きさと相まって“やっちまった感”がもっとも強い仕様だ。

 文字盤は直径約26mmのインダイヤルで、巨大な外装に比して異様に小さい。この左右非対称バランスがプロップ(小道具)的な雰囲気を生み、腕時計というより映画セットで俳優が装着する“雰囲気アイテム”に近い印象すら受ける。

 3時位置にはデイトの代わりに「3V」の表記。これはCR2016電池の電圧表示をそのまま印字したものに過ぎないが、こうした“意味のなさ”こそ本機の魅力と言えるだろう。

疑似電子回路と“なんちゃってフラックス・キャパシター”

 次に目を引くのが、文字盤周囲を囲む金属パーツとチューブ状造形である。9時位置には“CURRENT FLOW”と電子回路記号、上下には青色と銀色で彩られたパイプ状パーツが配置されている。

 明らかに機能してはいないが、この“いかにも何かの機構”っぽいあしらいが、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のフラックス・キャパシターを連想させる。

 本物のフラックス・キャパシターは3本の発光ラインだが、本機は2本。それでも視覚的には“雰囲気だけしっかり”持ち帰ってきており、知らない人が見れば確実に「これ何? 時間でも跳べるの?」と聞いてくるだろう。デロリアンが必要とした1.21ジゴワットに対し、本機が必要とするのはたった3V。省エネすぎる時空移動装置としては最高だ。

ブルーLEDが生み出す“タイムスリップ感”

 暗所で時刻を読みたい場合、3時方向のリュウズ横にある小ボタンを押すと、鮮烈な青色LEDが発光する。これがまた妙にSF的で、デロリアン発進前の閃光を思わせる。単なる“光るギミック”に終わらず、視認性も良好。明るい場所ではアクセントとして、暗い場所では劇的な視認性向上として機能する。

 6時位置には“30M WATER RESIST”の印字があるが、これは潜水30mではなく、汗や雨などの日常生活防水の意味である。裏蓋を開けるとわかるが、防水構造は必要最低限に留めてある。

内部は意外に誠実なつくり

 見た目がここまで“なんちゃって”だと、内部もそれなり…と想像してしまうが、裏蓋を開いた瞬間、思いのほか真面目な、いや普通の構造に驚かされる。搭載されていたボタン電池は、MaxellのCR2016(Made in Japan)。

 外観こそ賑やかながら、ムーブメント部は標準的かつ安定した作りであり、最低限の時計としての信頼性はきちんと確保されている。今のところクォーツの誤差も少ない。

 しかし今回のなんちゃってフラックス・キャパシター腕時計は、時計としての精度や実用性を追求するモデルではなく、“デザイン的演出を最大化したプロップ系アイテム”である。

 にもかかわらず、外装テキストに“LITHIUM BATTERY”など一般的な用語が使われている点は惜しい。ジゴワット級の謎単位や、もっとSF世界観に寄せた表記があってもよかった。

 価格はタイミングにより大きく変動し、筆者は安く入手したが、時期によっては1万円前後まで跳ね上がる。価値判断は人それぞれだが、この“時空を超えそうで超えない”絶妙なビジュアルに心が動いた瞬間が、最適な買い時だろう。

 見れば見るほど「これは一体なんなのか?」という謎が深まる、他人とカブりたくないスノッブ効果を期待する人に向けた不思議な愉しさに満ちた一本だ。

商品名発売元実売価格
なんちゃってフラックス・キャパシター腕時計Temu1万円前後