本日の一品

SIMカード絶滅の日まで続けたいSIMピン・コレクション

 ちょうど1年ほど前に“もうすぐなくなるかもしれない「SIMピン」の話をしよう”と題して、いずれ地上から姿を消す可能性の濃厚なSIMピンへの思いを書いてみた。レガシーなフィーチャーフォンや裏蓋をパチンパチンと爪先で開けてバッテリー交換、大きなSIMカードを交換していた初期のスマホのころにはSIMピンという言葉はなかったと記憶している。

 家族が保管していた、約20台ほどの携帯電話や初期のスマホの中を覗いてみた。古い時代の携帯電話は、バッテリー交換で裏蓋を開けることはあったが、独立したSIM(Subscriber Identity Module)と呼ばれる物の存在はなかった。2000年前後以降に登場したフィーチャーフォン(ガラケー)やその後の多くのスマホは裏蓋を開けるとSIM(標準SIM)を挿抜できるSIMカードトレイやスロットのあるものが多かった

 本題の“SIMピン”というモノが登場するのは、SIMカードのサイズが標準SIM→microSIM→nanoSIMと縮小化が進んだころだ。超小型化されたnanoSIMが登場して、スマホ内蔵のバッテリーの技術革新とパワーマネジメントが進み、もうユーザーが裏蓋を開ける必要がなくなりだして、スリムなスマホが登場した2012年以降だという記憶がある。

 技術革新でユーザーが裏蓋を開けるという手間はなくなったが、SIM交換の必要性は相変わらず必要だった。結果的に従来は本体内部に存在したSIMカードスロットやトレイを、裏蓋を開けることなく外部から早く簡単に交換できることが望まれた。

 昨今では、nanoSIMカードトレイはスマホの側面でクールなツライチ(面一)となるように100%押し込まれている。トレイを再度引き出すにはSIMピンの先をあらかじめ用意されたSIMトレイ末端の小穴に押し込みSIMトレイを押し出すことが必要な端末が多い。

 SIMのサイズは前述したように標準SIM→microSIM→nanoSIMと縮小化が進んだ。今後は物理的なABS樹脂モノではなくSIM機能の多くはインターネットからダウンロードして使用する「eSIM」となってしまうらしい。

 筆者は未だにWi-Fiとイーサネットの両方があれば、有線のイーサネットを選び、BluetoothとUSBケーブル接続の両方がサポートされているキーボードがあれば間違いなく有線接続を選ぶ、疑い深いレガシー派タイプだ。

 なので偉そうなことを言っているが、本当の意味でeSIMを使ったのは今年行ったホノルルでの使用が最初だった。実は3年ほど前にeSIMにトライしたスマートフォンでの失敗がトラウマになっている。今回も国内でセットアップはできたものの、ホノルル空港で実際にネットにつながるまでは超不安だった。

Skyroam Solis。クラウドSIM技術を採用しておりSIMカードを必要としない

 話がSIMピンを通り越して過去~現在~未来のお話になってしまった。話をSIMピンに戻そう。SIMピンの誕生はnanoSIMが登場した2012年ごろなのは自明だ。ただ終わりがいつになるのかはなかなか予測が難しい。今後eSIMの普及により、nanoSIM対応スマホの発売がなくなり残ったわずかなnanoSIM搭載のスマホが無視できるくらいに少なくなるころまでだろう。

 SIMピンは初めてnanoSIMスロットを搭載して発売されたスマホには標準付属品としてパッケージに同梱されていたはずだ。そして現在もnanoSIM対応のSIMトレイを搭載しているスマホには同梱されることが多い。

 昨今では、以前から見慣れたレガシーデザインのSIMピンだけではなく、ユニークなデザインのSIMピンを同梱しているスマホメーカーもありなかなか楽しい世界だ。最近のSIMピンの多くはステンレス製で直径20mmほどの二重リングが付属するものが多い。従来のように財布やポシェットに入れるだけの収納ではなくチャーム的に露出しても楽しいデザインに変わってきている。

 より新しいところでは、SIMピンを裸で財布などに収納して小銭を探す時にうっかり指先などを刺して怪我することのないようにパーソナルなつまようじでも前例のある鞘(さや)に収めて収納するタイプのセーフティファーストなモデルも登場してきている。

 昨年の8月、EU(欧州連合)では家電製品などに対する新しい規制として「バッテリーを簡単に交換できる設計とすること」が決まったらしい。なので今後EUでは、バッテリー交換が容易に行えるレガシーな裏蓋付きのスマホが復活するかもしれない。

 これを時代に逆行と見るか、ユーザーの選択の自由の進化と見るかは人それぞれだが、今も残るイーサネットやUSB有線接続のようにSIMピンもこの波に相乗りしてeSIM化のスピードが減速したり、nanoSIMとeSIMの併存が長引けば、SIMピン単体もますます楽しい展開を見せてくれるかもしれない。まだ死滅しそうにない小さな巨人のSIMピンのこれからが楽しみだ!

製品名発売元実売価格
SIMピン-170円~770円