ニュース

通信インフラの維持整備にモバイル網やNTN活用、総務省の報告書案

 総務省は、「電気通信事業分野におけるユニバーサルサービスの確保の在り方 報告書(案)」を10月17日に公開した。

 報告書案では、今後の情報通信インフラは、無線技術の進展やメタル回線設備の縮退などを視野に入れ、衛星通信などを含めた非地上系ネットワーク(NTN)を補完的に活用しつつ、固定網とモバイル網によって全国どこでも、電話とブロードバンド通信が利用できる環境を実現すべきとまとめている。

基本的な考え方

 また、変動の激しい通信分野で、10年以上先の2035年頃のメタル回線設備の縮退後の動向について見極めることは困難なため、制度設計は2030年頃までをターゲットとし、今後の環境変化に応じて適時柔軟に見直すほか、政策手段として国民負担が大幅に増加するような手段は避け、予算や税制上の支援措置、ユニバーサルサービス交付金制度などを組み合わせることが適当としている。

移動通信のユニバーサルサービス保障

 報告書案は、国民生活に欠かせないことから日本全国で提供されるべきサービスとして定める、基礎的電気通信役務(ユニバーサルサービス)として、現時点では移動利用を保障対象とする必要性は高いとは言えないため、保障対象は固定電話および固定ブロードバンドなど、固定利用の形態に限定する方針が示された。

 一方で、固定電話の確保には効率化やメタル設備の縮退促進などの点からはモバイル網の活用が必要であり、ワイヤレス固定電話については、不採算地域に限定する規律を緩和し、モバイル網固定電話は、効率的な提供を確保するために、一定の技術基準を検討した上で、ユニバーサルサービスに位置づけることが適当とした。

 ここで言う、モバイル網固定電話における技術基準には、警察や消防など緊急機関への通報時に、住所情報や通報者が使用する0ABJ番号および氏名が通知される機能の実現などが含まれる。たとえば、NTTドコモの「homeでんわ」では、普段使う電話番号には「03」から始まる電話番号が利用できるが、緊急機関への通報時には、携帯電話などに割当される「070」などで始まる番号が相手方に通知されるなど、固定電話とは一部仕様が異なる。

NTT東西のワイヤレス固定電話と、モバイル網固定電話の差異(総務省)

モバイル網の維持・整備

 また、報告書案ではインフラとしてのモバイル網については、利用者に継続的な負担が発生するユニバーサルサービス交付金制度などによる支援はできる限り避け、電波の有効利用を図るための電波法などに基づいた措置や整備費などへの予算支援などを行い、事業者同士の競争的な整備や維持、インフラシェアリングなどを含む協調的な整備・維持を両輪で進めることが適当としている。

 一連の議論の背景には、NTT東西などの意見として、現在は固定利用に限って保障対象とするユニバーサルサービス制度について、利用者の利用実態や利便性向上を踏まえた上で、居住地域によって移動利用についてもユニバーサルサービスとして保障すべきという主張がある。

 既にご紹介の通り、携帯電話はユニバーサルサービスの保障対象外だが、携帯電話の契約者はユニバーサルサービス制度に基づく料金を負担しており、2024年1月時点でその負担額は1電話番号あたり月額2.2円。