本日の一品

書き手の好みに合わせてペン先の角度を調節できる万年筆

 本誌のオトナな読者の皆様であれば、それぞれに筆記具へのこだわりがあることでしょう。こだわりのポイントは、筆記具の見た目やインクの発色だけでなく、紙の上に書くときの筆記感、そして欠かせない要素の一つに、「その筆記具を使って書いた自身の字が好きになれた」瞬間があるのではないかと想像します。というのも、筆者自身が主力の筆記具として万年筆を選んだ理由が、万年筆で書いた字がキレイに見えたことにあるからです。

 なぜ万年筆で書くと自分の字が(あくまで主観ですが)キレイに見えるのかという理由は、おそらくペンを走らせる際に指先に力で強弱をつけるので、書いた文字に筆で書くときに似たリズムが生じているからではないかと考えています。そのため、各社の製品をいろいろ試す中で、ペン先はなるべく柔らかく、指先に込める力を伝えやすい万年筆を好むようになりました。そんな中で久々に「これはいいぞ!」と思えるものに出会えたので、ご紹介させてください。

セーラー万年筆の「TUZU(ツヅ)」。全5色のカラーラインアップからグリーンを選択しました。
ペン先はステンレス。細字・中字・太字の三種ある中から中字を選択しています。

 ご紹介するのはセーラー万年筆の「TUZU(ツヅ)」という製品です。一見普通の万年筆に見える本製品は、「ペン先を10度ずつ回転させて調節できる」というアジャスト機構を備えています。調節の仕方も簡単で、本体の上部カバーを回して外し、グリップの留め具を回して外し、指先のグリップを少し上にずらしてはめ直すだけです。なので、ペン先を回転させるというより、グリップ部分を回転させて角度を調節できると言ったほうが正しいかもしれません。

このようにグリップ部分を取り外せます。
グリップ内部にあるミゾに沿う形で10度ずつグリップの角度を調節できます。

 筆者の場合、ペンを持つ際の人差し指の向きに対して、ペン先の向きが微妙に左方向にズレているのが好みです(これはLAMY Safariを長い間使っていたからだと思います)。そこで、求める角度に合わせて調節を繰り返し、「これだ!」というポジションにたどり着きました。もちろん、万年筆業界の老舗たるセーラー万年筆の製品だけあって、筆記具合は極上に感じます。

実際に握りながら、こうかな? いや違うな……と少しずつ調整を繰り返します。
インクを入れて実際に書いてみたりしつつ調整を続けます(結局このあと再び調整して最適解にたどり着きました)。

 円筒形の万年筆だと指先の力の強弱が付けにくく、指先グリップ付き万年筆だと好みの角度が合わなければ使いにくい。このような万年筆の好みの合いにくさに対して、この調節機構は見事な解決方法だと思いました。同時に、グリップの角度が変えられるということは、左利きの方でも違和感のないようペン先の角度を調節できるということです。「左利き用万年筆」があるほど左利きの方にとって不遇の筆記具である中、この配慮は素晴らしいと言わざるを得ません。加えて、最初からインクコンバーターが付属していて、好みのインクを吸い上げて使用できるなど、万年筆好きのツボを抑えています。

カートリッジインクに対応。プスッと挿して使うスタイルです。
インクコンバーターも付属するので、お好みのインクに合わせて使えます。

 ちなみに、万年筆としてご紹介してきた本製品ですが、同様の機構を備えたボールペンの製品もラインアップされています。ボールペンのインクには、ぺんてるのボールペン「エナージェル」が採用されており、交換用のリフィルもエナージェルのものを使う仕様になっているとのことです。ボールペン版はまだ手にしていませんが、エナージェルはそのスッと伸びる滑らかなゲルインキの書き心地の良さで気に入っているボールペンの一つです。TUZUのボールペン版も、近いうちに購入してみたいと思います。

販売・贈呈用のパッケージも超オシャレなので、プレゼントにも最適だと思います。
製品名購入場所価格
TUZU(ツヅ)ヨドバシカメラ4950円
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