スタパ齋藤のApple野郎

iPadをトレース台に! 「トレーシングマット」アプリで塗り絵が捗るぅぅぅ

 iPadってトレース台になるよねえ……なるなる、画面を白表示にすればトレースボードになる! あ、でもアレか、画面タップするとジェスチャーとかが機能しちゃうのか? と思ったのは、100円ショップ大手「ダイソー」店頭であった。

 ダイソーに「大人の塗り絵」があった。ソレ見て「あーねー塗り絵おもしろいよねー」とか思いつつ次に目に入ったのが「トレースボード A5サイズ」だった。「あー出来合いの塗り絵の次は自分で写真とかをトレースしての塗り絵なのかー」と思ったと同時に「こうして客を新たな世界に引き込んで商品を売るのか、商売うまっ!」と。

ダイソーで見かけた「大人の塗り絵」はこんなのだった。下絵つきのポストカード? に自由に着彩して楽しむ、という商品。税込110円。※画像はダイソーネットショップより抜粋。
ダイソーで見かけた「トレースボード A5サイズ」。下絵などの上に紙を置き、トレースボードの光で下絵の線などを透過させ、それをなぞって下絵を写し取るというツール。税込550円。※画像はダイソーネットショップより抜粋。

 っていうかA5のトーレスボードが税込550円って安っ! と思ってウッカリ買おうとし、「待てよ、iPadをトレースボード(トレース台)として使えばいいのか」、「下絵にする写真だってiPadとかなら一発で表示できるし拡大縮小も自在だし」、「画面の明るさもそーとー明るくできるし」と考えたのであった。

 ちなみに、ここでいうトレースというのは下絵を描き写すこと。写真や印刷物や絵などを、ペンなどでなぞって描き写すことだが、写真などなら薄いトレーシングペーパーを乗せて写真の輪郭などをなぞり写すことができる。

 また、上記のようなトレースボードを使えば、下絵を置く面が明るく光るので、トレーシングペーパー以外のやや厚手の紙に写し取ることも可能になる。

 って、一応説明を書かないと、「トレースって? コード実行の追跡?」ってなる時代なのかもしれない。いまや紙の原稿を手動でトレースする必要性が激減。「紙の写真をiPhoneで撮ってお絵描きアプリで輪郭抽出すればよくない?」と。「必要なら輪郭抽出画像をコンビニでプリントすれば?」みたいな時代なのであった。

 ともあれ帰宅後、さっそくiPadに白色画像(写真)を表示してトレース。iPadの画面にトレーシンペーパー敷いて写真の輪郭をなぞろうとすると……。画面に触れると反応して次の写真になったりメニューが出たりして、そのままではiPadをトレースボードにするのは無理っぽい。ですよね~。

 ところでiPadOSやiOSには、特定のアプリのみ動作させ、さらにそのアプリの特定領域に触れても反応しないようにできるアクセスガイド機能がある。「設定」→「アクセシビリティ」→「アクセスガイド」で設定できる。

「設定」→「アクセシビリティ」→「アクセスガイド」から、特定のアプリ以外は使えなくするアクセスガイド機能を設定できる。また、アクセスガイド機能内では画面上の指定領域(変更可能)へのタッチに対して無反応にすることができる。

 アクセスガイド機能を使えばiPadなどをトレースボードとして使うことが現実的になる。だが、トレースボード用途でアクセスガイドを使うのは、操作上いろいろとメンドクサイ。なので、素直にトレースボード系アプリを使ってみることに。

「トレーシングマット」アプリが便利♪ いろいろな紙にトレース可能

 iPadなどをトレースボードとして使うためのアプリはいくつかある。「iPad トレース」で検索すればすぐ見つかるだろう。何本か試してみたが、シンプルかつ無料で使える「トレーシングマット」というアプリが便利だった。

「トレーシングマット」アプリの表示例(13インチiPad Proで横表示)。明るさや画像サイズは自由に設定できる。トレース時は枠やアイコンを消すことができ、画面タッチに対してiPadなどをほぼ無反応にできる。ただし、下に見える広告アイコンに触れると広告表示となる。
複数の画像を表示し、それらを元絵としてトレースすることもできる。

 このアプリを使って描き写したい絵や写真を表示したら、画面上にトレーシングペーパーなどの紙を敷き(マスキングテープなどでの紙位置固定をお忘れなく)、ペンなどでなぞって手動でトレースするというわけだ。

 iPad上の写真を自由自在に好きなだけトレースできる! 手動トレース需要は激減したものの、手動トレースをするにおいてスゲく便利な時代になったとも言えよう。

 なにしろ、拡大トレースが可能なのにトレスコ(トレーススコープ/トレーシングスコープ)が要らない! 暗幕かぶらなくてヨシ! てゅーかそれ以前にポジフィルム(以下略)。

 なお、このアプリ、表示が素っ気ないので、使用に戸惑うかもしれない。なので、App Storeのスクリーンショットを抜粋しつつ、少しご説明。

トレーシングマットを起動すると白紙の初期画面が表示される。右上のアイコンをタップすると設定画面に移行する。
これが設定画面。左下の2つのボタンから、既存の写真を読み込んだり、新たに写真を撮ったりして、それをトレースの下絵として使える。この画面で表示明るさ=トレースボードとしての光量も設定できる。なお、既存の写真を読み込む場合、ライブラリなどが表示されるまでに若干のタイムラグがある。
読み込んだ写真をタップすると、写真が黄色の枠で囲まれる。この状態で写真の拡大縮小回転や反転や削除などを行える。ただし、写真が黄枠で表示された状態から、各種操作は1度ずつのみという仕様だ。拡大縮小したい場合は、写真をタップして黄枠表示とし、ピンチ操作で拡大や縮小を行う。それが終わると黄枠が消えるので、再度拡大縮小や位置移動などの操作をしたい場合は、また写真をタップして黄枠表示にする必要がある。一度に複数の要素を変えられると、実際のトレース作業時に表示を変更したときに、つい元絵の状態を変えすぎて「なんかよくわからない表示になっちゃった」ということになると思う。1度に1つだけの状態変更は、そういう混乱を防ぐための仕様だと思われる。
写真などの調整が終わったら、つまり「この状態をトレースしたい」という表示にしたら、画面左上の「←」をタップしてトレース作業用表示に移行する。
これがトレース作業用表示。この表示では、右上の歯車アイコンや画面下の広告アイコン以外になら、触れてもiPad画面は何ら反応しなくなる。

 といった感じでトレーシングマットアプリを使える。何度か使ったが、ヒッジョーに便利。前述のアクセスガイド機能を使いiPadをトレースボードとするより1024倍くらい実用的なので、画像を紙にトレースしたい人にはこのアプリがオススメ。

 なお、13インチiPad Proでトレースできた「紙」、つまりペンなどで下絵を写し取った側の用紙だが、トレーシングペーパーやコピー用紙だと元画像の輪郭や細部まで実用的なレベルでトレースできた。

 また、水彩向けの用紙(ワトソン紙)やキャンバス地(一般的な下地処理済)でも、元画像の輪郭をトレースすることは可能で、元画像のコントラストが高ければディテイルもある程度トレースすることができた。

少し厚手のトレーシングペーパーの場合、元絵の細部までトレースできる程度透過する。猫耳部分がボケているのは撮影時にトレーシングペーパーが「画面から浮いてしまった」から。テープで止めて密着させればクリアに透過する。
ワトソン紙(300g)の場合、元絵の輪郭はそこそこトレース可能。元絵のコントラストが高ければ細部もある程度トレースできる。元絵が写真ではなく、黒く濃い線で描かれた線画ならよりトレースしやすい。
キャンバスの場合、ワトソン紙とだいたい同様もしくはより快適にトレースができる。このキャンバス地は下地処理済みの、わりとフツーの油絵・アクリル絵用のキャンバス地だ。

トレーシングペーパーにトレースしてみる

 水彩ワトソン紙とか下地処理済みのキャンバス地とかに直接トレースできちゃうって、けっこうスゴいかも。まあiPadをトレースボード・下絵表示としてのトレースなのでサイズは限られるが、一発でトレース作業が完了するのが効率的だ。

 というのは、多くのケースで「手動トレースからの手動描画」は、同じ絵を2度なぞり描くことになるから。1度目は、元絵をトレーシングペーパーなどになぞり描く。2度目はなぞり描いた絵を、描画する用紙になぞり描いて転写する。「写し取り」と「転写」が必要になるのだ。具体的には↓のような流れ。

iPadとトレーシングマットアプリで「普通のトレースでよく行われる2度のなぞり描き」を再現してみる。まずは下絵を用意。
下絵にトレーシングペーパーなどを乗せてテープなどで位置を固定する。薄いトレーシングペーパーなら発光するトレースボードは必要なかったりする。
ペンなどで下絵をトレースする。必要に応じて輪郭のみとか細部までしっかりとか。
下絵を写し取ったトレーシングペーパーを、描く用紙に乗せ、トレーシングペーパー上をなぞり描くことで、用紙に線を転写する。転写時は、トレーシングペーパーの裏を鉛筆で塗るとか、トレーシングペーパーと用紙の間にカーボン紙やチャコペーパーを挟む。それを上からなぞると、なぞった跡のみが用紙に写るというわけだ。原始的~♪
トレーシングペーパーに写し取った輪郭などが、実際に描画する用紙に転写された。

 という感じで、実際の手動トレース作業~手動描画手前までのプロセスは、二度手間感があってちょっとメンドクサイのである。でもトレーシングマットアプリだと、描画する紙に直接トレースすることも可能なので、1度のトレースだけで描画作業に移れる。あらお手軽♪ みたいな?

 ただ、いったんトレーシングペーパーなどにトレースしておくのも、場合によっては便利。写し取った線なり図案などを同じサイズで何度か再利用する場合、トレーシングペーパー上の線などをなぞって転写するだけでいいからだ。多数転写が必要な場合、最初にトレースしたトレーシングペーパーをコピー用紙などにコピーして使うのもいい。

 アプリを使って同じことをするとなると、同じサイズでの転写はちょっと面倒。用紙に直接トレース(元絵を転写)できるとはいえ、「アプリ上の表示を再度じっくり見つつ慎重にトレースする(のを何度か行う)」というのはかなり疲れると思う。

 さておき、上記アプリを使い、キャンバス地にトレースした線画に着彩してみた。ザックリした塗り絵だが、ご参考までに。

トレースの元となった写真。
黒猫化してみた。使ったのは黒、薄緑、白の3色(アクリル)。
同じトレーシングペーパーから再度転写したもの(斜めの猫やグレー楕円は無視で)。もとのグレー猫に塗って「毛も描こう!」と思ったがメンドクサくなりつつ塗りムラを発見したりして途中でやめたの図。使ったのはグレー、薄緑、白の3色(アクリルガッシュ)。

 当然なのだが、トレースからの塗り絵なので、形状がしっかりしていて破綻が少ない。モトの形状がわりと正確なので、アドリブで描き足してもバランスが崩れにくく、お手軽お絵描きには好都合だ。

 ちなみに、トレースにかかる時間は人それぞれ・目的もよるとは思うが、たぶん数分。塗り絵にかかる時間もひとそれぞれだと思うが、きっと十数分から数十分。iPadと無料アプリと画材があれば、30分くらいの時短お絵描きを楽しめたりもするので、興味がある方はゼヒ!

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。