スタパ齋藤のApple野郎

Macを万能受信機へとグレードアップしてゆく!!!

Apple野郎的ソフトウェアラジオ、とりあえず夢敗れる!?

 ケータイ Watchの連載記事、スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」にて、ソフトウェアラジオについて書いた。Android端末をラジオにしちゃうという話である。

 Android端末にSDRドングルと呼ばれるモノをUSB接続すると、ラジオになっちゃうんスよ。詳細は上記リンクにあるが、手持ちのAndroid端末でいろ〜んな電波を受信&聴取できるようになるのだ。

Android端末(写真はGoogle PIXEL 3 XL)にSDRドングルをUSB接続した様子。ラジオの大半の回路をソフトウェアで実現したのがソフトウェアラジオで、写真ではSDRドングルとAndroid端末およびアプリがラジオを構成している。左に見えるアンテナで放送を受信してアプリでチューニングして音を出す。もちろん、ネットに一切接続しないでラジオ放送を聴くことができる
「RF Analyzer」アプリでFM放送を聴取している様子。どこに強い電波が出ているかを可視化でき、指でタッチして操作できる

 唐突にソフトウェアラジオに注目した理由は、モバイラー的防災グッスを考えよう→スマートフォンでワンセグやラジオが使えると役立つハズ→でもそのためにワンセグやラジオ対応スマートフォンを買うのはコスト的になぁ……→あっソフトウェアラジオって手が使えるかも、という流れ。で、Android端末で試してみたら、デキた!!! Androidがソフトウェアラジオになった!!! というわけである。

 じゃあじゃあじゃあ、iPhoneもソフトウェアラジオ化できない?
 アレコレ調べた結果から書くと、ネット経由でソフトウェアラジオのハードウェア部分にアクセスする方法だとデキそう。

 だがしかし、防災という観点ではネット経由でのソフトウェアラジオ利用はあまり意味がない。ネットにつながるんだったら、フツーにradikoとか使えばいいっスよね。通信不可能状態つまりネットにアクセスできない状況下でラジオが聴けるということに、防災観点での意味と実用性がある。

 ともあれ、調べた範囲では、上記Android端末のような感じで、iPhoneをソフトウェアラジオ化することは、できなさそう。ん〜こういう部分の自由度の高さでは、やはりAndroidの環境はグレイトだなぁと思った次第。

 ちなみにソフトウェアラジオ(SDR:Software Defined Radio)とは、電波を受信して放送を聴くあのラジオの大半の回路をソフトウェアに置き換えたものだ。ラジオ聴取に必要な多くの物理的な回路と同等の機能をソフトウェアで実現しており、ソフトウェアの変更でラジオの機能や性能を変えていくことが可能。

 ほかにもメリットがあり、たとえば従来のラジオの回路(部品)は温度変化などで性能が変わったりする。が、ソフトウェアで回路を再現しているソフトウェアラジオにはそういった問題が存在しない。

 身近なメリットとしては、スゲく低いコストで最強に強まった性能のラジオを使えることだ。上記のAndroidソフトウェアラジオは、3000円くらいのSDRドングルと無料のアプリ×2本で実現している。アンテナ代とかまで含めても1万円かからず電波スペクトラム表示対応の広帯域受信機が利用できてしまうのであった。

 まあともかく、iPhoneでは残念ながらソフトウェアラジオを使えないっぽい。iPhoneにSDRドングルつなげてアプリでラジオ聴取とかできたら、iPhoneを防災端末として(も)活用できるんだけどなぁ……。

じゃあMacは? Macでソフトウェアラジオは?

 ソフトウェアラジオはWindowsでも利用できるっていうか、Windowsこそソフトウェアラジオのメインストリートって感じだ。SDRドングルの類は多々あり、それらと組み合わせてソフトウェアラジオを実現するためのアプリも多数あるが、その大半がWindowsで利用できるアプリだったりする。

短波受信用のソフトウェアラジオのハードウェア部分(ソフトウェアラジオのフロントエンド)こと「PERSEUS」。パソコンとUSB接続し、パソコン上のアプリと組み合わせてソフトウェアラジオとして使う。要アンテナ
専用アプリで放送を受信している様子。電波状況がスペクトラム表示されるので、どのあたりの周波数で放送がされているのかひと目でわかる。電波の山をクリックすればチューニング完了
こちらはウォーターフォール表示。見えている電波を丸ごと保存することもできる。音なら録音、映像なら録画だが、電波の帯域の丸ごと保存は……録電? 録波? たとえば中波放送を全部、好きな時間分保存し、後からその電波を再生し、じっくりとチューニングしたり解析したりできる

 BCL野郎にとって夢と希望のソフトウェア短波ラジオことPERSEUSであるが、しかし、コレもまたMacでは使えないのであった。iPhoneやMacだと、こういうディープ気味な趣味的アプリはやはり……。

 でも、PERSEUSにこだわらないとしても、Macでソフトウェアラジオはデキないんだろうか? 調べてみると「Gqrx」というアプリを使うと可能らしい。Grqxは有名どころの多くのSDRハードウェアに対応しているようだ。Macでソフトウェアラジオを使うにおいて定番のアプリがGqrxらしい。じゃあコレで♪

Macがソフトウェアラジオになった〜♪

 Mac(macOS)でのソフトウェアラジオ、先達の情報をもとにいろいろ試した結果、いちばん良さそうなパターンをご紹介してみたい。まずはアプリ。GqrxのサイトのダウンロードページからmacOS X用バイナリパッケージをダウンロードしてインストールするだけでアプリが使えるようになった。

ダウンロードしてインストール。アプリを開けない場合はAppleの「開発元が未確認のMacアプリケーションを開く」をご参照あれ
アプリを開いた様子
アプリ左上の基板のようなアイコン「Configure I/O devices」をクリックし、「Device」で接続したドングルを選択する
FM放送を受信している様子。実際にアプリを使うには電波形式や周波数などの知識が必要になる。「Frequency」に目的の放送局の周波数をkHz単位で入力し、「Mode」はFM放送なら「WFM」でAM放送なら「AM」とする。受信を開始するには画面左上の再生ボタンをクリック。音量はDSPの「Gain」で調節する

 いろいろなSDRドングルに対応しているGqrxアプリだが、今回使ったのは「RTL-SDR Blog V3 R820T2 RTL2832U 1PPM TCXO SMA Software Defined Radio」という製品。Amazonでは「RTL-SDR.COM V3」として3372円で売られている。

RTL-SDR.COM V3は24〜1700MHzの電波を受信できるSDRドングル。アルミ製ケースに入っている。USBメモリー的サイズのSDRドングルは使用中にかなり熱くなるが、このドングルは放熱性がなかなか良好である

 このSDRドングルを選んだ理由は「ダイレクトサンプリングモード(HF Direct Sampling Mode)」が使えるから。このSDRドングルをそのまま使うと24MHz以上の放送を受信できるので、ラジオ放送としてFM放送なら受信できる。だが、それ以下の周波数となるAM放送(中波放送/周波数526.5kHz〜1605.5kHz)や短波放送(3MHz〜30MHz)は受信できないorごく一部しか受信できない。

 だが、ダイレクトサンプリングモードを使うと500kHz〜24MHzの範囲を受信できるようになる。で、Gqrxアプリではこのモードでの受信も行えるらしい。

 つまりRTL-SDR.COM V3をSDRドングルとして使えば、通常の動作モードでFM放送を聴けて、ダイレクトサンプリングモードに切り替えれば中波放送や短波放送が聴ける、と。中波〜短波〜FM放送までをMacで(ネット接続不要で)聴けるって楽しくないスか?

 ともあれ、そのダイレクトサンプリングモードを試してみる。これもまた先達の情報からだが、キモとなる設定は以下のとおり。

通常モードで使用中の「Configure I/O devices」
ダイレクトサンプリングモードで使う場合、「Device string」に「rtl=0,direct_samp=2」を入力する。ほかの項目の設定はよく理解していないので間違っているかもしれず、すまんす。なお俺の環境の場合だが、「Device string」などの設定を変更後、いったんアプリを終了して再起動しないと正しく受信できないようだ
ダイレクトサンプリングモードにしたら中波放送が受信できた♪
短波放送も受信できた。他意はないのだが、偶然「朝鮮の声」放送の日本語放送を受信した。周波数は11865kHz(11.865MHz)。音声はクリアだった

 あら〜Macが中波・短波・FMラジオになっちゃった〜♪ ていうかMacの広帯域受信機化っスね。

 ただし、普通のラジオにせよSDRドングルによるソフトウェアラジオにせよ、電波の受信にはアンテナが大切。AM放送やFM放送、それから近い国の短波放送なら、小型で携帯可能なロッドアンテナなんかでまあ十分だったりはする。が、よりクリアに遠くの放送を受信したいなら、本格的なアンテナが欲しくなるかもしれない。俺の場合、今回の受信では↓これらのアンテナを使った。

AM放送や短波放送の受信用に使っているApexRadio「303WA-2 長中短波用受信アンテナ」。30kHz~30MHzの電波を受信するのに向く
短波帯より高い周波数受信用に使っている第一電波工業「スーパーディスコーンアンテナD-130」。受信用としては25MHz~1300MHzの帯域で使える

 本格的なアンテナはさておき、MacBookにプラスして、こういったSDRドングルとコンパクトなアンテナを常時携帯すると、災害対策としてひとつの安心が得られますな。

 いつものMacがラジオに変身。ネットにつながらなくてもさまざまな放送から情報をゲット可能。興味があれば、ぜひ♪

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。