スタパ齋藤のApple野郎

iPhone 12シリーズの「MagSafe充電器」、ホンモノとパチモンで何が違う?

興味本位でパチモンMagSafe充電器に手を出したら……あれれ?

 iPhone 12シリーズから搭載されたMagSafe。ワイヤレス充電機能(Qi相当)があったり、マグネットでiPhone背面にアクセサリーを装着できたりする新機構だ。なかなか便利なので、俺は現在、MagSafe沼にハマり中♪

 沼ってるってコトで、MagSafe関連品をアレコレ買ったり使ったり。そんな中、Apple純正MagSafe充電器(Apple純正MagSafe充電器)とソックリな偽……パク……コピ……いわゆるパチモンを発見した。↓こんなの。

Apple純正MagSafe充電器と、それにソックリなパチモンMagSafe充電器。さぁ?どちらがホンモノでっしょ~かっ? 正解は左がホンモノだが、パッと見ではわからない

 上の写真のように、まったく同じに見えるホンモノとパチモン。サイズもキッチリと同じで、パチモンMagSafe充電器を、MagSafe対応スタンドに装着したり、iPhone 12シリーズの背面に吸着させて充電したりすることができる。

 そしてお値段。Apple純正MagSafe充電器は税込価格4950円。パチモンはいくつかあるようだが、だいたい税込3000円以下で売られている感じ。パチモンはホンモノの4割以上安く売られている。

 パチモンMagSafe充電器の商品説明では、「iPhone 12シリーズに対応」とか「iPhone 12シリーズに急速充電可能」などと断言しておらず、「iPhone 12」や「マグネット」などの言葉を交えてモヤッとした説明がなされていることが多い。でも一応はMagSafe充電器然として使えちゃうのである。

 iPhone 12シリーズ背面にしっかり吸着するし、充電もできているし、見た目も触った感じもホンモノとほぼ変わらないし……じゃあ安いパチモンでいっか?!!! とか安易に考えつつホンモノとパチモンを併用していたら、ある日、あれれ? と気づいた。

 MagSafe機器にはNFCが内蔵されていて、iPhone 12シリーズにMagSafe機器が装着された時に「どんな機器が装着されたか」が認識できるようになっている。たとえばiPhone 12シリーズにApple純正MagSafe充電器を装着するとこれを認識し、iPhone画面上に緑色の円を描くアニメーションが表示され、MagSafe充電器による充電が始まったことを知らせる。

iPhone 12シリーズにApple純正MagSafe充電器を装着すると、こんな緑色の丸いグラフィックが表示される。充電器側のNFCをiPhoneが読み取って「MagSafe充電器が装着された」と認識したのだ

 で、前述のパチモンMagSafe充電器もNFCを内蔵しているようで、iPhoneにセットすると緑色の円のアニメーションが表示される。のだが、また別のパチモンMagSafe充電器をiPhoneにセットすると、今度は緑色の円のアニメーションが表示されない(充電はされる)。

 ……ん? こっちのパチモンMagSafe充電器にはNFCが入っていないってコト……だと思われるが……んんんん? NFC入りとNFC無しのパチモンMagSafe充電器、どう違うの? てゅーか、ホンモノと、パチモンNFC入りと、パチモンNFC無しのMagSafe充電器、どんなふうに違うの?

ホンモノとパチモンを外見で見分ける

 Apple純正MagSafe充電器、パチモンMagSafe充電器(NFC有り)、パチモンMagSafe充電器(NFC無し)の違いを探っていきたいが、まずはホンモノとパチモンの見分け方から。俺が体験した範囲では、MagSafe充電器がホンモノかどうかは、外見で見分けられる。写真と説明文でご説明。

左がApple純正MagSafe充電器、右がパチモン。充電器のケーブルの付け根に各種刻印が施されているのがApple純正品である。……が、偽刻印が施されたパチモンも存在するのかもしれない

 充電器ケーブル付け根の刻印のほかにも、少々違いがある。Apple純正品の方は、充電器金属部がやや明るい色でよりきめ細かい質感に仕上げられていたり、充電する面の金属と樹脂の間がより細くキレイだったり、あるいはケーブルが少しだけしなやかで明るい色だったり、USB-Cコネクター部が大きめだったり、という違いがある。

 まあ、俺が入手したパチモンでは、という限定的な話ではあるが。とりあえずはご参考まで。

ホンモノとパチモンでは性能差があるのか?

 さて、刻印があれば、とりあえずホンモノ。そして刻印無しだとパチモンで、パチモンは2種類で、NFC入りとNFC無し。これらの3種類、もしかして性能が違うのか? 充電中の電力を比べてみた。

 まずiPhone 12 miniでテストしてみた。Apple公式ページ「MagSafe 充電器を iPhone 12 モデルで使う方法」を参照し、「20W USB-C 電源アダプタ」を電源として充電した。

Apple純正「20W USB-C 電源アダプタ」。5V/3Aと9V/2.22Aの出力が可能で、MagSafe充電器を使ってiPhone 12シリーズの高速ワイヤレス充電を行える

 電池残量が数%のiPhone 12 miniを充電しつつ、かかる電圧と流れる電流を市販のUSB電圧電流チェッカー的な機器で計測。なお、iPhone 12 miniをMagSafe充電器で充電した場合、ピーク時最大12Wでの充電となる。

 ちなみに、スマートフォンの充電時などに使用される電力はW(ワット)で表される。W数は電圧(V/ボルト)×電流(A/アンペア)で計算される。USB-ACアダプターを見ると、たとえば「5V/2A」といった刻印があるが、そのアダプターは5V×2Aで最大10Wの出力があるということがわかる。

こんな簡易的なテスターで計測。数値は目で追っていた程度なので、あくまでも大雑把な参考値として見てほしい

 結果。Apple純正MagSafe充電器を使った場合、電圧が約9Vで、電流は1.23A~2.00Aの間で変化した。11W~18Wの範囲で充電が行わていることになる。電流値は1.7A~1.9Aくらいの時が多く、15.3W~17.1Wということになる。ワイヤレス充電の電力ロスを考えると……ピーク時最大12Wの高速ワイヤレス充電が行われているように思える。てか、ワイヤレス充電のロスってこんなに大きい? テスターの精度も関係している!? まあ目安ってことで。

 次に、NFC有りのパチモン充電器でiPhone 12 miniを充電。電圧は約9Vで、電流は0.98A~1.03Aの間で変化した。8.82Wから9.27Wということになり、あらま!!! パチモンだとAppleが言うところおの「高速ワイヤレス充電」ができてナーイ!!! ……iPhone側は「MagSafeだな」と判断して9Vでの給電を許可した状態であるものの、充電器側の出力が追いついていない……ってコト? ともあれ、NFC有りのパチモンMagSafe充電器は、Apple純正MagSafe充電器に対してかなり劣った給電能力ということになった。

 さらに、NFC無しのパチモン充電器は? 電圧は約5Vで、電流は0.93A~1.12Aの間で変化。ふゴっ!!! 4.65W~5.6Wでの充電。Qi充電の主な給電パターンは5W、7.5W、10W、15Wだが、Qiでの最低充電速度ということか。充電器がNFC無しなのでiPhoneが「単なるQi充電器がセットされたようだ」と判断したってコト?

 しかしまあ、NFC無しパチモンMagSafe充電器は、コストパフォーマンスが非常に悪いという結果になった。まあiPhone 12シリーズの背中に吸着するからちょっとは便利ってのはあるんスけどネ。

NFC無しのパチモンMagSafe充電器は、高出力でないQi充電器と見なされたもよう。5W程度でiPhoneを充電し続けたのであった

 さて、今度はiPhone 12 Pro Maxに各充電器をセット。こちらも電池残量数%からの充電。iPhone 12 miniを除くiPhone 12シリーズは、MagSafe充電器による最大15Wの高速ワイヤレス充電に対応する。どんな結果が出るだろうか?

 Apple純正MagSafe充電器の場合、電圧が約9Vで、電流は1.60A~2.00Aの間で変化。14.4W~18Wの範囲での充電となる。ワイヤレス充電のロスを考えると、iPhone 12 Pro Maxに15Wの高速ワイヤレス充電が行われているように思える。

 次に、NFC有りのパチモン充電器でiPhone 12 Pro Maxを充電。電圧は約9Vで、電流は0.96A~1.03Aの間で変化した。8.64W~9.27Wとなり、ん~むむむ、やはりパチモンだと高速ワイヤレス充電不能って感じ。

 ダメ押しで、NFC無しのパチモン充電器も、一応。電圧は約5Vで、電流は0.84A~1.14Aの間で変化。4.2W~5.7Wでの充電で、高速ではないQi充電って感じに。Apple純正MagSafe充電器には全然及ばない結果になった。

 ん~やっぱりパチモンはパチモンなんスね。MagSafe充電に高速ワイヤレス充電を期待するなら、俺的経験からは「Apple純正MagSafe充電器一択ッ!!!」という結果であった。

 単にワイヤレス充電できればいい、MagSafeでiPhone 12シリーズの背中にピタッと吸着させる利便があればいい、というならパチモンも……アリかも!? でも保証外だし自己責任での利用になるし、考えるほどに割高な気もしてくるしで、やっぱりパチモンはビミョーかも、みたいな。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。