スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」
Androidで災害対策するならソフトウェアラジオかも!!!
2021年4月5日 06:00
スマートフォンを高性能ラジオに変身させる!!!
2021年3月は、東日本大震災から10年目の年。という関連もあり、今年3月の本連載では、防災関連記事を2回書いた。モバイルという切り口での災害対策ですな。
そこからずっと考えているのがラジオとワンセグ。ラジオやワンセグに対応したスマートフォンがあれば、やっぱり災害時に役立つよな~、と。
ただ、だからと言ってスマートフォン選びの基軸をラジオやワンセグにするのは……ちょっと難しかったり、無理やり感があったりする。また、これからラジオやワンセグに対応したスマートフォンに乗り換えるとなると、それなりのコストもかかる。
んむむむ~、このモヤモヤ、何とかならないの? と自問を繰り返していたら、アーッ!!! アレってどうなんだろーッ!!! と思い当たるモノが浮上した。
ソフトウェアラジオ(SDR:Software Defined Radio)である。ソフトウェアラジオを大雑把に言えば、ラジオのハードウェアの大半をソフトウェアに置き換えたもの。ラジオに必要な多くの物理的回路をソフトウェアで実現しているので、ソフトウェアの変更でラジオの性能や仕様をダイナミックに変えていけるのが大きなメリットだ。ラジオを構成する一部ハードウェアは必要となるものの、従来と比べると必要になるハードウェアが非常に少なくコンパクトにまとまるのもメリット。
なお、ここではラジオ放送を聴くラジオをイメージして書いているが、ソフトウェアラジオ(SDR)は無線全般の技術と潮流。スマートフォンなどにも広く使われていて、現在の通信においては絶っ対に欠かせない技術となっている。
と、細かい話は、さておき。要するに、パソコンとかが高性能化したため、ラジオをソフトウェアで実現できるようになったョ、と。もう10年前くらいのことだが、あれから10年、スマートフォンは物凄く性能UPしているわけで、もしかしたらスマートフォンでもソフトウェアラジオが使えたりしない? もし使えたら、ラジオ対応スマートフォンじゃなくても、災害時にラジオとか聴けるじゃん!、と。
早速調べてみたら、やややや!!! ヤレちゃうみたいっス!!! もはや当然の如く、スマートフォンでソフトウェアラジオが使える時代になっていた。てなわけで以降、スマートフォンでソフトウェアラジオを使い、災害時に役立てよう~、てな話を。
スマートフォンによるソフトウェアラジオ、何が必要か?
調べて試してヤレた結果から書くが、必要なものはUSBホスト機能(USB On-the-Go:OTG)対応のAndroidスマートフォン、各種アプリ、SDRドングル、アンテナ、といったところ。また、スマートフォンとSDRドングルを接続するOTGケーブルも必要になる。
ソフトウェアラジオ界隈で広く使われているSDRドングルは、モノとしてはUSB接続のデジタルTVチューナーだ。これに内蔵されているRealtek RTL2832デコーダーチップと、Rafael Micro R820Tチューナーチップを利用し、Android端末を広帯域電波の受信が可能な受信機として使う。すなわち、SDRドングルを使うと、Androidスマートフォンが広帯域受信機になる。
広帯域受信機は幅広い周波数の電波を受信できるラジオだが、SDRドングルで受信できる周波数には76MHz~95MHzが含まれている。つまりFMラジオやワイドFMラジオも受信できる。
というわけで、SDRドングルを使えば、AndroidスマートフォンでFM放送や一部AM放送(ワイドFMとして)を聴くことができるのだ。AMもFMも聴ければ、災害時に役立つハズ♪
Nooelec「NESDR Mini 2」でAndroidでソフトウェアラジオ
Android端末とSDRドングルとアンテナとアプリでソフトウェアラジオですよ、とか言われても困ったり引いたりする方が少なくないと思う。そこで、無難に使えると思われるSDRドングルと、その使用手順をザックリとご紹介したい。
まずSDRドングルだが、Nooelecの「NESDR Mini 2」がイイんじゃないかナ? と思う。Amazonで2995円で売られており、さらにこのSDRドングルにアンテナなどがセットされたものが3495円で売られている。ソフトウェアラジオにおいてNooelecはわりと定番ブランドで、このドングルは比較的に安価なので、とりあえず手を出すには無難かな、と。
上のセット品を買うと、他に必要なのはUSBホスト機能(OTG)対応AndroidスマートフォンとOTGケーブルとアプリとなる。アンテナは絶対に必要だが、こういったドングルに接続しようとするとMCXコネクターへの変換など細かな知識が要るので、最初からセットの方が手っ取り早いと思う。OTGケーブルは、片端がUSB-A(レセプタクル)、もう片端は使うスマートフォンのUSBポートに合わせたUSBプラグのものを用意しよう。
これらのハードウェアが揃ったら、続いてAndroidスマートフォンにアプリをインストールする。なお、なぜAndroidスマートフォンなのかと言えば、SDRドングルを使ってソフトウェアラジオを構成するアプリは(スマートフォン用としては)Android版しかないからだ。
さて、アプリだが、まずSDRドングルを動かすためのドライバーアプリ「SDR driver」をインストールする。続いて、放送聴取用アプリとして使う「RF Analyzer」をインストールする。
その後、スマートフォンのOTG機能を使ってドングルを接続・認識させるわけだが、事前にOTG機能が使えるように設定されているかチェックをしておこう。
OTG機能が使える状態なら、あとはSDRドングルをつなぎ、放送聴取用アプリとして使う「RF Analyzer」を起動する程度。それだけでAndroid端末がラジオになる♪
Androidスマートフォンを災害時にFM/ワイドFMラジオ化して役立てよう!!! という場合、記事的には以上までとなる。SDRドングル一式があれば多くのAndroidユーザーが手軽に試せるので、ソフトウェアラジオに興味がありつつSDRドングルを買う気があれば、ぜひお試しを。
Androidスマートフォンが広帯域受信機になってるってスゴくない?
スマートフォンによるソフトウェアラジオの話が初めてでありつつ受信機というモノをある程度知っている人は、前出のSDRドングルで受信できる周波数(25MHz~1750MHz)を知り、アプリが対応している受信モード(AM/narrow-band FM/wide-band FM/LSB/USB)を見て、ワクワク感が増幅させられちゃったのではないだろうか? しかもスペクトラム表示。電波の様子が可視化されちゃってるぅ♪
電波のスペクトラムとかウォーターフォール表示とかできちゃって、一瞬で「どの周波数で電波が出ているか」がわかっちゃっう。しかもバンド幅をタッチ操作で自由に変えられたりもする。全部ハードウェアで構成されている広帯域受信機から考えたら、夢のような機能性を備えているじゃないです……くわッ!!! と、思わず目を見開いて血圧が上っちまいますな。
スマートデバイスによるこんなソフトウェアラジオをですね~、Androidタブレット端末とかでヤッたらですね~、サイコーじゃないかと思うわけっスよ。まあ机上に吸盤で立てるアンテナだと受信できる電波が限られるので、よりしっかりしたアンテナを使えばって前提もあるわけだが。
なお、前出のSDRドングルの対応周波数は25MHz~1750MHz。AM放送や短波放送は受信できない。が、受信した電波の周波数を上げてしまうUP CONVERTERなどを使えば、こういったSDRドングルでも普通一般のラジオ放送を聴けるのであった。
↑こういうコンバーターを使えば、手元のAndroidスマートフォンが長波/中波/短波ラジオに!!! おもちろ~い♪
スマートデバイスって、もうラジオとか受信とかBCLとかと全然関係ない世界へ向かっていってるデバイスなのかな~と若干の悲しみとともに考えていたのだが、ソフトウェアラジオで結びついていたんスね~。非常に愉快な時代である。興味があれば、ぜひAndroidスマートフォンでソフトウェアラジオを♪