スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

Androidで災害対策するならソフトウェアラジオかも!!!

スマートフォンを高性能ラジオに変身させる!!!

 2021年3月は、東日本大震災から10年目の年。という関連もあり、今年3月の本連載では、防災関連記事を2回書いた。モバイルという切り口での災害対策ですな。

 そこからずっと考えているのがラジオとワンセグ。ラジオやワンセグに対応したスマートフォンがあれば、やっぱり災害時に役立つよな~、と。

 ただ、だからと言ってスマートフォン選びの基軸をラジオやワンセグにするのは……ちょっと難しかったり、無理やり感があったりする。また、これからラジオやワンセグに対応したスマートフォンに乗り換えるとなると、それなりのコストもかかる。
 んむむむ~、このモヤモヤ、何とかならないの? と自問を繰り返していたら、アーッ!!! アレってどうなんだろーッ!!! と思い当たるモノが浮上した。

 ソフトウェアラジオ(SDR:Software Defined Radio)である。ソフトウェアラジオを大雑把に言えば、ラジオのハードウェアの大半をソフトウェアに置き換えたもの。ラジオに必要な多くの物理的回路をソフトウェアで実現しているので、ソフトウェアの変更でラジオの性能や仕様をダイナミックに変えていけるのが大きなメリットだ。ラジオを構成する一部ハードウェアは必要となるものの、従来と比べると必要になるハードウェアが非常に少なくコンパクトにまとまるのもメリット。

ソフトウェアラジオと言えば、俺的には「PERSEUS」。2012年に購入した短波受信用のソフトウェアラジオのハードウェア部分だが、この箱にアンテナをつなぎ、WindowsパソコンとUSB接続して専用アプリを使うと、もの凄い性能の短波ラジオが構成される。それまで使っていたハードウェアのBCLラジオが、このPERSEUSにより凄い勢いで過去の遺物感をまとってしまい、俺のBCLライフを一変させてくれた。
PERSEUS専用ソフトウェアの表示例。スペクトラムにより「どの周波数に電波(放送など)が現れているか」がわかる。そこにカーソルを合わせてクリックすればチューニング完了。目的の電波のすぐ近くに強力な別の電波があっても、その「邪魔な電波」を避けるようにバンド幅を調節してのチューニングも容易だ。
こちらはウォーターフォール表示。強い電波が出ている周波数が目立つ色で表示される。このほかPERSEUSでは、特定の帯域の電波を全て記録してしまうことも可能。記録した電波を後から再生してチューニングすることができるので、特定の帯域で同時刻に放送された複数の番組を後からそれぞれ聴くようなことも可能だ。電波そのものをHDD上に保存するような感覚なので、事前に放送の有無を知らなくても、放送が何十何百とあっても、後からチューニングして聴ける。凄~い♪

 なお、ここではラジオ放送を聴くラジオをイメージして書いているが、ソフトウェアラジオ(SDR)は無線全般の技術と潮流。スマートフォンなどにも広く使われていて、現在の通信においては絶っ対に欠かせない技術となっている。

 と、細かい話は、さておき。要するに、パソコンとかが高性能化したため、ラジオをソフトウェアで実現できるようになったョ、と。もう10年前くらいのことだが、あれから10年、スマートフォンは物凄く性能UPしているわけで、もしかしたらスマートフォンでもソフトウェアラジオが使えたりしない? もし使えたら、ラジオ対応スマートフォンじゃなくても、災害時にラジオとか聴けるじゃん!、と。

 早速調べてみたら、やややや!!! ヤレちゃうみたいっス!!! もはや当然の如く、スマートフォンでソフトウェアラジオが使える時代になっていた。てなわけで以降、スマートフォンでソフトウェアラジオを使い、災害時に役立てよう~、てな話を。

スマートフォンによるソフトウェアラジオ、何が必要か?

 調べて試してヤレた結果から書くが、必要なものはUSBホスト機能(USB On-the-Go:OTG)対応のAndroidスマートフォン、各種アプリ、SDRドングル、アンテナ、といったところ。また、スマートフォンとSDRドングルを接続するOTGケーブルも必要になる。

まずはUSBホスト機能(USB On-the-Go:OTG)対応のAndroidスマートフォンが必須。これとSDRドングル(USB接続)をつなぐOTGケーブルも必要。俺が使ったAndroidスマートフォンはGoogle PIXEL 3 XL。
SDRドングルを機能させるドライバーアプリ「SDR driver」と、放送を聴取するためのアプリが必要になる。ここでは放送聴取用アプリとして「RF Analyzer」を使っている。ちなみに、このスクリーンショットで受信中の周波数は90.5MHz。関東エリアのワイドFMでTBSラジオ(AM放送だと954kHz)を聴いている状態だ。
USB接続のSDRドングルも必要になる。SDRドングルは購入することになると思うが、例えばAmazonで「RTL2832U R820T」で検索するといくつかヒットする。「RTL-SDR」で検索しても、このテのドングルが多数ヒットするだろう。こういったドングルに接続するアンテナも必要になる。

 ソフトウェアラジオ界隈で広く使われているSDRドングルは、モノとしてはUSB接続のデジタルTVチューナーだ。これに内蔵されているRealtek RTL2832デコーダーチップと、Rafael Micro R820Tチューナーチップを利用し、Android端末を広帯域電波の受信が可能な受信機として使う。すなわち、SDRドングルを使うと、Androidスマートフォンが広帯域受信機になる。

 広帯域受信機は幅広い周波数の電波を受信できるラジオだが、SDRドングルで受信できる周波数には76MHz~95MHzが含まれている。つまりFMラジオやワイドFMラジオも受信できる。

 というわけで、SDRドングルを使えば、AndroidスマートフォンでFM放送や一部AM放送(ワイドFMとして)を聴くことができるのだ。AMもFMも聴ければ、災害時に役立つハズ♪

Nooelec「NESDR Mini 2」でAndroidでソフトウェアラジオ

 Android端末とSDRドングルとアンテナとアプリでソフトウェアラジオですよ、とか言われても困ったり引いたりする方が少なくないと思う。そこで、無難に使えると思われるSDRドングルと、その使用手順をザックリとご紹介したい。

 まずSDRドングルだが、Nooelecの「NESDR Mini 2」がイイんじゃないかナ? と思う。Amazonで2995円で売られており、さらにこのSDRドングルにアンテナなどがセットされたものが3495円で売られている。ソフトウェアラジオにおいてNooelecはわりと定番ブランドで、このドングルは比較的に安価なので、とりあえず手を出すには無難かな、と。

Nooelecの「NESDR Mini 2」は比較的に安価なSDRドングル。USB-Aコネクタでパソコンに接続し、パソコン用のソフトウェアラジオアプリを使って広帯域受信を行える。ここではOTGケーブルを使ってAndroidスマートフォンに接続する。
Amazonで売られていたアンテナなどが付属するNooelec「NESDR Mini 2」。左がロッドアンテナで、右下のアンテナ台座(マグネット付き)にねじ込んで使う。このアンテナ台座から伸びるケーブル先端にはMCXプラグがありSDRドングルに直接接続できる。下中央は吸盤付きの台座で、アンテナ台座(マグネット付き)を安定的に吸着できる。中央上がSDRドングル本体。その手前の金色のものはSMA→MCX変換プラグで、外部アンテナからの信号をSDRドングルに送るために使える。

 上のセット品を買うと、他に必要なのはUSBホスト機能(OTG)対応AndroidスマートフォンとOTGケーブルとアプリとなる。アンテナは絶対に必要だが、こういったドングルに接続しようとするとMCXコネクターへの変換など細かな知識が要るので、最初からセットの方が手っ取り早いと思う。OTGケーブルは、片端がUSB-A(レセプタクル)、もう片端は使うスマートフォンのUSBポートに合わせたUSBプラグのものを用意しよう。

 これらのハードウェアが揃ったら、続いてAndroidスマートフォンにアプリをインストールする。なお、なぜAndroidスマートフォンなのかと言えば、SDRドングルを使ってソフトウェアラジオを構成するアプリは(スマートフォン用としては)Android版しかないからだ。

 さて、アプリだが、まずSDRドングルを動かすためのドライバーアプリ「SDR driver」をインストールする。続いて、放送聴取用アプリとして使う「RF Analyzer」をインストールする。

 その後、スマートフォンのOTG機能を使ってドングルを接続・認識させるわけだが、事前にOTG機能が使えるように設定されているかチェックをしておこう。

設定>システム>詳細設定>開発者向けオプション>デフォルトのUSB設定で、OTG機能が使えるかをチェック。「開発者向けオプション」が表示されていない場合。設定にある「デバイス情報」を何度かタップすると「開発者向けオプション」のメニューが表示される。なおAndroid OSバージョンにより表示に違いがある。

 OTG機能が使える状態なら、あとはSDRドングルをつなぎ、放送聴取用アプリとして使う「RF Analyzer」を起動する程度。それだけでAndroid端末がラジオになる♪

こんな感じで、アンテナ、SDRドングル、Androidスマートフォンを接続する。エラーが起きるなどしたら、スマートフォンにハードウェアをつないだまま、スマートフォンを再起動するといいかもしれない。それでダメだったら、スマートフォンにハードウェアをつないだまま、ドライバーとアプリをアンインストールし、再インストールするといいかもしれない。
「RF Analyzer」を起動した様子。赤矢印の先に見える再生ボタンをタップすると受信状態になる。
波形が動き出せば無事に受信し始めた様子。最初は音が出ないと思うが、その場合は赤矢印の先に見える「OFF」をタップし、電波の変調の方式を指定する。
FM放送を聴く場合は「wide-band FM」をタップする。なお、このSDRドングルで受信できる周波数は25MHz~1750MHz。普通一般のラジオ放送としてはFM放送しか受信できない。
周波数は指で画面を左右にスクロールさせて変更できる。画面上部の「Hz」ボタンをタップすれば、周波数を直接入力することもできる。
例えば東京のFMラジオ放送局J-WAVEの周波数は81.3MHz(東京スカイツリー)。テンキーで周波数を入力したらチェックマークをタップ。
入力した周波数を確認したら「SET」ボタンをタップ。
受信できた♪

 Androidスマートフォンを災害時にFM/ワイドFMラジオ化して役立てよう!!! という場合、記事的には以上までとなる。SDRドングル一式があれば多くのAndroidユーザーが手軽に試せるので、ソフトウェアラジオに興味がありつつSDRドングルを買う気があれば、ぜひお試しを。

Androidスマートフォンが広帯域受信機になってるってスゴくない?

 スマートフォンによるソフトウェアラジオの話が初めてでありつつ受信機というモノをある程度知っている人は、前出のSDRドングルで受信できる周波数(25MHz~1750MHz)を知り、アプリが対応している受信モード(AM/narrow-band FM/wide-band FM/LSB/USB)を見て、ワクワク感が増幅させられちゃったのではないだろうか? しかもスペクトラム表示。電波の様子が可視化されちゃってるぅ♪

ソフトウェアラジオアプリの「SDR Touch」。実質、有料アプリだが、表示がキレイで機能性も高いアプリだ。

 電波のスペクトラムとかウォーターフォール表示とかできちゃって、一瞬で「どの周波数で電波が出ているか」がわかっちゃっう。しかもバンド幅をタッチ操作で自由に変えられたりもする。全部ハードウェアで構成されている広帯域受信機から考えたら、夢のような機能性を備えているじゃないです……くわッ!!! と、思わず目を見開いて血圧が上っちまいますな。

 スマートデバイスによるこんなソフトウェアラジオをですね~、Androidタブレット端末とかでヤッたらですね~、サイコーじゃないかと思うわけっスよ。まあ机上に吸盤で立てるアンテナだと受信できる電波が限られるので、よりしっかりしたアンテナを使えばって前提もあるわけだが。
 なお、前出のSDRドングルの対応周波数は25MHz~1750MHz。AM放送や短波放送は受信できない。が、受信した電波の周波数を上げてしまうUP CONVERTERなどを使えば、こういったSDRドングルでも普通一般のラジオ放送を聴けるのであった。

UP CONVERTERの一種「RTL-SDR対応HF UP CONVERTER」。長波/中波/短波の周波数を+100MHzアップし、SDRドングルで受信できるようにする周波数コンバーターだ。電源はUSB。専用の金属製ケースも売られている。

 ↑こういうコンバーターを使えば、手元のAndroidスマートフォンが長波/中波/短波ラジオに!!! おもちろ~い♪
 スマートデバイスって、もうラジオとか受信とかBCLとかと全然関係ない世界へ向かっていってるデバイスなのかな~と若干の悲しみとともに考えていたのだが、ソフトウェアラジオで結びついていたんスね~。非常に愉快な時代である。興味があれば、ぜひAndroidスマートフォンでソフトウェアラジオを♪

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。