スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

Mac Studioを約1カ月弱使ってみて

M1 Ultraチップ搭載Mac Studioを買ったが……まさかの上海ロックダウン!

 2022年3月9日に発表されたAppleの新型デスクトップMacこと「Mac Studio」。“最強のパワースポット。”というApple流ポエムに特殊な目眩を覚えつつ新型Macを見た俺は、その処理性能を知った途端に超欲しくなって超その日に超ズギャッと超絶注文ッ!!!

購入したMac Studioは、Apple M1 Ultraチップ搭載品で、メモリは64GB、ストレージは2TB SSDとした。お値段は54万3800円

 Apple製品を発売日(注文開始日)にポチったのは久々だゼ〜!!! そして……最短でのお届け予定日は2022年4月8日。注文日が3月9日なので、約1カ月後。やや出遅れた感じ? ともあれ、1カ月後には最強に強まったMacで仕事ができる♪

 ご存知のとおり、M1 Ultraチップ搭載Mac Studioはスゴいのである。俺の場合、M1チップ搭載Mac miniで、まずM1チップの凄さを知った。

つい最近まで使っていたMac mini(M1 2020)。Apple M1チップ搭載品で、ユニファイドメモリ16GB、2TB SSDストレージ。アップルストアで18万9800円で購入した

 ↑このM1 Mac mini、外見こそコンパクトでかわいらしいマシンだが、いろいろ爆速。そして超がつくレベルの静音性。詳細は上記リンク先の記事をお読みいただきたいが、「M1チップでApple製コンピュータは別次元へと踏み出した」と実感させる性能があった。

 そのM1シリーズチップにはより高性能なチップがある。M1 Pro、M1 Ma×、M1 Ultraだが、性能順に並べるとM1<M1 Pro<M1 Ma×<M1 Ultraとなる。今回俺が買ったMac Studioは、現在最も処理性能の高いM1チップを搭載している。

M1 Ultraチップは、M1 Ma×のダイを2つ連結して構成されたSoC。2つのダイが連結されてはいるが、UltraFusionによりダイ間は2.5TB / sで高速接続。ソフトウェアからは1つのチップとして認識される。購入したマシンのM1 Ultraチップには、20のCPUコア(高性能コア×16と高効率コア×4)と64のGPUコアと32のニューラルエンジンコアが実装されている

 M1 Ultraチップにどの程度のパフォーマンスがあるかどうかは、GeekbenchのWebサイトを見るとわかりやすい。ここにはベンチマークソフトGeekbenchのユーザーがアップロードしたベンチマークテスト結果が集計されている。Macについては「Mac Benchmarks」のページに掲載されている。↓こんな感じ。

マルチコアでのベンチマーク結果はM1 Ultra搭載のMac Studioがトップ
シングルコアでのベンチマーク結果はM1チップ搭載Macが横並びでトップ。M1チップの性能の高さが感じ取れるので、リンク先でほかの世代のMacを含んだ結果も見てほしい

 ベンチマークテスト結果をニヤつきながら眺めつつ、もうすぐ届くであろうM1 Ultra搭載Mac Studioを待っていた。そしてAppleから「3/28 出荷完了:お届け予定日 2022 / 04 / 05」とのメッセージが。やった! もうすぐ来る! 最短お届け予定日(4月8日と知らされていた)より早い到着じゃないかヤルじゃないかApple!!!

 だが、4月5日には届かなかった。翌日にも、さらにその翌日にも、届かなかった。……ヤな予感。

 これって……あっ! もしかして! 新型コロナウイルスの感染拡大を受けての上海ロックダウンの影響!? 上海全体が2022年3月28日から封鎖されている。きっと流通も……。

 運送会社の記録を調べてみると、「海外荷物受付 03月28日 21:30 上海支店(中国)」とある。キャーッそれロックダウン開始日! 運っ悪ぅ〜俺っ!

 一応Apple Storeにも電話で問い合わせてみた。担当者さんはハッキリとは言わなかったが、やはりロックダウンの影響を受けているっぽい。まあしょうがない。気長に待とう。

 結局、Mac Studioが届いたのは4月14日であった。配送詳細は上のスクリーンショットのとおりだが、上海で2週間ほど足止めされていたもよう。……あれ、荷物も2週間隔離ってコト? 違うか。いやそうなのかも。ともあれ、無事届いて一安心。

 ちなみに、今回の注文の「お届け予定日」は「2022 / 04 / 08ー2022 / 04 / 15」となっていた。ので、予定日内。ロックダウンを乗り越えて、やるなAppleもしくはヤマト運輸! とか思った。。

クリーンインストール&セットアップ! 速さは……M1 Mac miniと変わらない?

 届いたMac Studioをさっそくセットアップ。使っていたM1 Mac miniから環境を丸ごと移行しようかナと思ったが、そのM1 Mac miniは最近いろいろ調子が悪い。8年前から使ってきたMac Pro→M1 Mac miniへと環境を丸ごと移行してきたため、なんだかんだでソフトウェア的な小さな不都合がたまってきているのだと思う。これを一新していくため、全てクリーンインストールした。

M1 Mac mini(上)とMac Studioを重ねた様子。フットプリントは同じですな。んんん……なんか、この状態で併用するとイイ感じかもしれない。でも併用する用途がないかも。ということで、Mac Studioにはこれまで使っていたソフトウェアなどをイチからインストールした

 そしてMac Studioのセットアップ完了。結果、M1 Mac miniに出ていた細々した問題が解消された。のだが、相変わらずユニバーサルコントロール(1組のキーボードやマウスでMacやiPadを行き来して作業するしくみ)はうまく動かないし、Macがスリープしない問題も少々起きている。

 さておき、M1 Ultra搭載Mac Studioの「速さ」は? 爆速? 超快適?

 率直なところ、俺の使い方では体感として多くの作業にて「M1 Mac miniとM1 Ultra搭載Mac Studioで“凄い差”は感じられない」というものであった。ただ、時々、「あっこのマシン、爆速なんだネ」と感じられることがある。でもまあ、主な俺的用途とM1 Ultra搭載Mac Studioの処理速度を考えると、完全にオーバースペックのコンピュータを使っているという感じである。

 のだが、それは、わかっていたこと。俺の場合、最強に強まったM1 Ultra搭載Mac Studioを買ったのには、理由っていうかポリシーがあった。

 これはも~単なる経験則でしかないのだが、俺の場合、コンピュータを買うとき、強い理由がなければ「そのとき買えるマシンのうちできるだけ高性能なものを買う」ことにしている。そうすると、予想以上に長期間使えることが非常に多いからだ。

 たとえば2015年に買った「Mac Pro」(Late 2013)は2021年までバッチリ使えた。たぶん現在でも(5120×2160ドットでのディスプレイ出力を求めなければ)問題なく快適に使えると思う。

 あるいは、2005年に買ったDELLのハイエンドノートパソコンは、音楽用途においてまだ使ええる。Windows XPマシンなのでここ数年は使っていないのと、バッテリーが終了しているっぽいのでACアダプター運用になるが、高性能マシンは長持ちするのだ。1999年に買ったIBMのハイエンドノートパソコンも、やはり長い期間活用することができた。

 こういうハイエンドマシンに共通することは、上記のとおり長い期間現役で使えることがひとつ。そしてもうひとつ、長い期間フラストレーションを感じずに気持ちよく使えることも大きい。最初の数年は何をやっても快適・快速で、「あぁ買ってよかったなぁ」と何度も思えて満足度が高い。

 毎日使う道具において、長期間使えることと使用時の満足感は非常に大切ッ!!! と思ってやまない俺なのであり、だから「そのとき買えるマシンのうちできるだけ高性能なものを買う」ことにしているのだ。

生活が変わる気がする処理性能

 長持ちするから高性能マシン買うとか言いつつも、M1 Ultra搭載Mac Studioの速さに時おり感謝し、「この先の生活が少し変わるかも」と予感している俺である。というのは、長年溜め込んできた未処理動画が、このM1 Ultra搭載Mac Studioにより次々と処理済みとなっているからだ。

 デジカメやらビデオやらパソコンやらを長く使っているので、撮影した動画もそれなりにたまっている。過去、たま〜に「その気」になって編集して観やすくするが、その都度「やっぱり動画は重いなぁ」と鬱憤がたまる。編集時〜編集後の書き出しや、あるいは動画形式の変換にけっこーな時間がかかるのだ。

 そんな鬱憤は動画が高精細になるにつれてどんどん増し、フルHDになった頃には「動画の処理はそのうち」と、ほぼ完全に後回しにしてきた。溜めときゃいいや、後で……そのうちパソコンの処理能力がぐーんと上がった頃に処理すれば、と。近未来の俺がなんとかするっしょ、みたいな。

 ただ、最近はそうしていても少々鬱憤が。というのは、保存してある動画のけっこう多くが、macOSのクイックルックでは再生できないこと。クイックルックとは、ファイルを選択してスペースバーを押すと内容がフルサイズで表示されるというmacOSの機能。多種多様・多数のファイルをカーソルキーとスペースバーだけでチェックしていける便利機能で、もちろん動画再生も可能。これを使って、たまに古い写真や動画を再生することがある。

 しかしクイックルックを行える動画形式はわりと限られていて、AVCHD特有のファイル形式は不可だったり、Windowsではフツーに再生できるファイル形式が再生されなかったりもする。そんなときは別途再生用アプリが必要になる。

 そして俺の場合、動画ファイルを「単に溜め続けてきただけ」で、大量にある。またその半数以上はクイックルック非対応。再生アプリを使ったとしても、いちいちダブルクリックして再生するのと、パパパッとクイックルックするのでは手間がまるで違う。溜め込んだ動画をチェックするだけでも面倒だし鬱憤。もういいや……じゃあそのうち、の悪循環が続いていた。

 この面倒&鬱憤を解決するには、動画ファイル形式の変換が必要。動画をクイックルックできる形式へとトランスコードするわけですな。

 M1 Mac mini使用開始時に動画のトランスコードを試したことがあった。のだが「M1 Mac miniでもそこそこ時間かかるなぁ、以前のマシンよりはずっと速いけど」みたいな印象になった。結局、トランスコードは後回しにしてしまっていた。

 ……でも、M1 Mac miniよりかなり処理性能が高いハズのM1 Ultra搭載Mac Studio。Geekbenchの「Mac Benchmarks」を見ると、マルチコアのベンチマークでM1 Ultra搭載Mac StudioはM1 Mac miniの3倍くらい速いようだ。

Geekbench「Mac Benchmarks」でのM1 Ultra搭載Mac StudioやM1 Mac miniのスコア。マルチコアのスコアだと、M1 Ultra搭載Mac StudioはM1 Mac miniの3倍くらい速い

 3倍速いとしたらトランスコード時の鬱憤も薄まりそう。時短には確実につながりそう。じゃあ試しに動画のトランスコードとかやってみようかな?

 と思って試してみたら、えっえっえっ? こんな速いの? マジ? マジかッ!!!

 プロセッサのコア数が多く、さらにメモリ容量がM1 Mac miniが16GBでM1 Ultra搭載Mac Studioが64GBだからなのか、体感的には3倍速いどころではない。爆速みたいな感じ。試しに始めたトランスコードがどんどん片付き、溜め込んだ動画が次々とクイックルックで見られるようになっていく!!! スゴっ!!!

動画を複数本まとめてトランスコードしているときのアクティビティモニタ表示。M1 Ultra搭載Mac Studioのプロセッサリソースをガシガシ使っているようだ。画面上部の猫アイコンの「RunCat」アプリが示すCPU使用率は80.3%となっている
変換する動画形式や設定によっては、M1 Ultra搭載Mac Studioのプロセッサリソースをほとんど使い切ってしまうことも少なくない。この状態でCPU使用率は99.9%と表示されている。「RunCat」アプリでは、CPU使用率に応じて猫が走る速度が変わるが、こんなに速く走っている猫ちゃん見たことな〜い♪

 むむむむ! これはイカス! こうなったら現在まで溜め込んできた未処理動画をガンガン処理してゆきたいっ!!!

 そうして作業を始めつつ仕事もしつつ大量の動画トランスコードを行う日々。いや、日々っつっても3日くらいで全動画のトランスコードが完了して、全動画ともクイックルックでチェックしていけるようになったんスけどね。そっかー、過去の俺が「近未来の俺がなんとかするっしょ」と無責任に託していた俺って、2022年春の俺だったのかー。

 ちなみに、M1 Ultra搭載Mac Studioの動作音だが、負荷が非常に少ないときでもある程度ファンが回っていて、その音がかすかに聞こえる。近づいて耳をすませると聞こえる程度の音だ。

 また、負荷が100%に近い場合、ファンの音が少し大きくなるような感じ。でも非常に静音と言えるレベル。Mac本体もほんのり温かい程度(室温25〜27度の場合)。

 俺的な使い方において、M1 Ultra搭載Mac StudioやM1 Mac miniの騒音を比べると、M1 Mac miniのほうが静か。どちらも十分パフォーマンスがあるマシンなので、静音性にとりわけこだわるのなら、M1 Mac miniのほうがいいのかも。まあどちらもシッカリと静音なマシンと言えるが。

 じつはM1 Ultra搭載Mac Studioで大量の動画トランスコードを連続的に行なっていたとき(プロセッサ使用率はいつも80%以上のような状況)、密かに「さすがに連続的に高負荷がかかったらM1 Ultraマシンでもそこそこファン音が出たり熱くなったりするのでは?」と予想していた。また「高い負荷が連続的にかかると音も熱も増すゼ」って記事に書けるかな、とも考えていた。だが、いい意味でそれら期待は全部裏切られたのであった。スゲいなM1 Ultra搭載Mac Studio。

 なんか、M1 Ultra搭載Mac Studioにより生活が少し変わるような気がしている。いやすでに「溜め込んだ未処理動画を一気に処理済みとした」ことにより、俺的コンピューティングの快適さがグッと増した。今後も「やってみたけれど、処理が重くてかったりぃから中止」として諦めてきたことが、M1 Ultra搭載Mac Studioによりどんどん実行されるような予感がする。まあ動画関連だとは思うが。

まとまりのいいデスクトップMac

 最後に、M1 Ultra搭載Mac Studioのハードウェア的な使い勝手などを。デスクトップパソコンとしてどうなのかな、的な。写真とともにササッとレビューしてみたい。

サイズは、幅19.7×奥行き19.7×高さ9.5cm。重さはM1 Ultra搭載Mac Studioが3.6kgで、M1 Ma×搭載Mac Studioが2.7kg。ノートPCよりもフットプリントが小さいので、わりと狭い場所に設置するのも現実的
上面にはAppleマーク。黒で光沢。本体全体はシルバーで、マットな質感の80%再生アルミニウム製
手前には2つのThunderbolt 4(最大40Gb/s)ポート。SDXCカードスロット(UHS-II)もある
Mac Studioの底面には一応滑り止めラバーがあるが、ややサラサラした表面質感の机だと少々滑りやすい。なので、机表面材質によっては、片手でUSB-CケーブルやSDカードの挿抜を行えないことがある(Mac本体が滑るため)。俺の場合は机上からの落下も考慮し、両面テープ的なものでMacを机面に固定している
後面のポート類。左から、Thunderbolt 4ポート×4、10Gb Ethernet、電源、USB-A×2、HDMI、3.5mmヘッドフォンジャック。USB-Aポートは最大5Gb / s
後面丈夫には排気口。右下に見える電源ボタンは実用的であるものの、本体表面から出っ張っても引っ込んでもおらず、手探りでは探しにくい
底面には吸気口。リング状の黒い部分は滑り止め。左上に見えるのは盗難防止用セキュリティスロット。Mac Studioをロックするためのアダプターが発売予定だそうだ
仕事場にMac Studioを設置。右奥に置いてある
あまり場所を取らない。外見的にもスッキリ
後ろから見た様子。Mac Studio導入を機会に、周辺機器接続インターフェースを整理。なるべくThunderbolt 4を使うようにしたら、少しスッキリした。左に見えるのはSSDだが、これも机に貼ってある。Thunderbolt 4ポートは、Thunderbolt 4(最大40Gb / s)/DisplayPort / USB 4(最大40Gb / s) / USB 3.1 Gen 2(最大10Gb / s)として使える

 前面にあるThunderbolt 4ポートとSDXCカードスロットは非常に便利。後面のポートも豊富で便利。そしてコンパクト。しかも爆速なのに静音。デスクトップMacとして非常にまとまりの良いマシンだ。税込24万9800円からとなるが、さまざまな角度から見て魅力的で実用的なデスクトップMacが、Mac Studioだと思う。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。