スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

8年前のMac ProからM1チップ搭載Mac miniに乗り換えた話

えっ!? 俺のコンピュータ、遅すぎ?

 本連載の先週分にて、40インチの曲面ディスプレイをレビューした。Dell(デル)の「U4021QW」を買ったという話ですな。

 そのディスプレイにはAppleのデスクトップPC「Mac Pro(Late 2013)」をつなごうと考えていた。が、前回の記事に書いたとおり、このMac ProだとU4021QWの最大解像度(5120×2160ドット)で表示できないのであった。まあかなり古いマシンなので仕方ないスね。

つい最近までメインマシンとして使ってきたMac Pro(Late 2013)。2013年12月に発売されたモデルなので、8年前のパソコンということになる。スペックは、プロセッサが3.0GHz 8コア、メモリが32GB(8GB×4)、ストレージが1TB SSD、グラフィクスはデュアルAMD FirePro D500 GPU。購入時の税込価格は87万2080円。

 そこで、U4021QWの最大解像度を使えるであろう新しいMacを購入した。いろいろな思惑があったが、結果、M1チップ搭載のMac miniを購入。

Apple M1チップを搭載したMac mini(M1 2020)。ユニファイドメモリ16GB、2TB SSDストレージとし、アップルストアで18万9800円で購入した。なお、Intelチップ採用のMac mini(2020)も併売されている。

 Mac mini(M1 2020)は、7万9800円から買える。メモリとSSDとEthernetを最大に盛ると20万800円。俺の場合は、メモリとSSDを盛ったので18万9800円。わりと奢ったスペックである。

 じつはこのMac mini、とりあえず的に購入したもの。「とりあえずDell U4021QWの最大解像度で使えるMacならなんでもいいや」的な。しかし、そんなスタンスのわりには奢った仕様で購入したのであった。

なんで奢ったスペックのM1 Mac mini買ったの?

 お手頃価格が売りでもあるM1 Mac miniを、18万9800円も出して買った理由は、M1搭載Mac miniの評判。誰もが「驚くほど速い」と言う。しかし初めて買ったMac miniに対して「あんまり速くない」という印象を抱いていた俺は、「M1 Mac miniがスゲく速いって……ホントかなぁ」と、いぶかしんでいた。

 そこでちょっと調査。使用中だったMac Pro(Late 2013)より、M1 Mac miniはどのくらい速いのか? 具体的な数値はすぐに見つかった。

 ベンチマークソフトGeekbenchのWebサイトに、Mac各機種のベンチマーク結果が掲載されていたのだ。Geekbenchユーザーがアップロードしたベンチマークテスト結果で、「Mac Benchmarks」のページで見ることができる。

 シングルコアでのM1 Mac miniスコアは約1700で、なんとMac各機種中でM1 Mac miniが第2位。ていうかiMac(24インチ M1 2021)やM1搭載MacBookとほぼ同等のスコアなので、M1チップ搭載機種がMac各機種中でシングルコアベンチ最速ということになる。

シングルコアでのベンチマーク結果は、1位から5位までをM1チップ搭載Macが独占していた。M1チップ搭載Macのスコアは約1700。Mac Pro(Late 2013)はリストのずーっと下のほうで、スコアは約800。

 マルチコアでのベンチマークは、上位に新しめのMac Proが並ぶ。ただそのすぐ下にはM1チップ搭載Macがずらりとランクイン。やはりM1チップ搭載Macはホントに速いらしい!!!

マルチコアでのベンチマークテスト結果も、Mac Pro(Late 2013)よりもM1 Mac miniが速いということに。ですかぁ……。

 GeekbenchのベンチマークテストにあるMac Pro(Late 2013)は、俺のよりコア数が多かったりして、マルチコアでのベンチマークがより高スコアになっていると思われる。しかしそれでも、M1 Mac miniのほうが高いパフォーマンスを発揮するという結果になっている。

 マジすか。今でもわりと快適に使えている俺のMac Pro(Late 2013)だが、それをフツーに上回るパフォーマンスとな!!!
 ……でもホントかなぁ。実使用感とベンチマーク結果は、マシンの使い方によっては乖離することもあるしなぁ。

 でも「とりあえず買ったM1 Mac mini」が、もしホントに凄く速くて快適でジョリーグッドだったら? M1 Mac miniは後からメモリやSSDの容量アップとかできないし、じゃあ半分賭けという心意気で、奢ったスペックのM1 Mac miniを注文しよう!!! というわけなのであった。

 結果、買ったM1 Mac miniについては大半が満足。全体的に爆速だし、静かだし、小さいし、大きな満足を感じている。

小さいってイイね♪

 M1 Mac miniの発売は2020年11月17日。発売から1年が経過しようとしている機種なので、細かな仕様については割愛し、「使ってみたらこういう感じだった」という実使用感についてのみレビューしてゆきたいッ!!!

M1 Mac miniのサイズは約幅197×奥行き197×高さ36mmで、質量は1.2kg。机上で邪魔にならないサイズ感だ。電源内蔵のユニボディなので、その気になればモバイルできそうなサイズ&質量でもある。
M1 Mac miniの後方。ボタンやインターフェース類は、左から電源ボタン、ACジャック、Ethernetポート、Thunderbolt 3ポート×2、HDMIポート、USB Type-Aポート×2、3.5mmステレオヘッドフォンジャック。中央下には排気口がある。

 買ってすぐ、セットアップ中、その後使用中まで通して、非常に良いと思ったのは、その小ささと軽さ。置き場所を選ばず邪魔にならず、とてもいい!!!

 この小ささから、M1 Mac miniをディスプレイスタンド(モニタースタンド)に設置してみた。机上スッキリ作戦である。

小さいM1 Mac miniをディスプレイスタンドに固定すべく、Sabrent「Mac mini VESA Mount / Wall Mount / Under Desk Mount(BK-MACM)」というMac miniマウントを購入。壁や机の裏、VESAマウント部にMac miniを固定できる。Amazonで1699円だった。
Mac miniをホールドしてくれるマウントだ。Mac miniの向きは自由。手前下の出っ張りでMac minibの抜け落ちを防ぐ。
こんな向きでセットすることにした。
マウントはディスプレイ固定用のポールにあったVESAマウント互換のプレートに固定。
そこにM1 Mac miniをセット。
机上からデスクトップPCが消えた♪ スッキリである。

 じつはM1 Mac miniの置き場所は何度か変えた。のだが、机上に平置きしたり立てたりすると、「硬いケーブルなどによりM1 Mac miniが容易に動いてしまう」という事態に。

 じゃあどこかに固定……あっMac miniサイズだったらそういうマウントが多々ありそう!!! と思ったら多数存在し、上記マウントを買って固定したという次第。俺的デスクトップ史上において、最もスッキリ感の高いデスクトップPC設置スタイルとなった。

多くのアプリは十二分に高速で動作するが、そうでない場合も

 M1 Mac miniのパフォーマンスだが、なるほどなるほどと何度も頷けるくらい「爆速の噂はホント」であった。俺が多用するなかでは「重め」と思われるアプリの多くが軽快に動作する。

 たとえばAdobe Photoshop。起動は2秒くらいで完了し、使用中に「待たされる」「つっかえる」というような状況がまずない。Photoshopを長年使ってきたが、こんなに軽快に使えたPhotoshopは初めてである。

 ただ、PhotoshopをM1 Mac mini上で使う最初の1度目の起動時だけ、ミョーに遅かったと記憶している。次回に起動したら一瞬で立ち上がったので「えっえっ? 何が起きた?」と驚いたくらい、その起動時間に差があった。

 M1チップ(Appleシリコン)でアプリを動かす場合、M1チップに最適化されたアプリが最速で動作する。従来のIntelチップ採用のIntel Mac用に作られたアプリは、Rosetta 2によりいったんAppleシリコンで動作するように変換される。変換には少々時間がかかるものの、この変換は最初の一度だそうで、キャッシュされ、その後はキャッシュからアプリが起動するそうだ。

 で、もしかすると、Photoshopが最初の一度だけ起動が遅かったのは、このキャッシュ動作が入ったからかもしれない。しかし調べてみると、PhotoshopはUniversalアプリで、AppleシリコンMacでもIntel Macでも、どちらでも最適(最速)で動作するハズ。M1 Mac mini上で動かした場合、Appleシリコン用のコードで動くため、Rosetta 2は介在しないと思われる(変換にかかる時間もないと思われる)のだが……。

アプリの情報を見てみると、Photoshop(最新のMac版)はUniversalアプリ(AppleシリコンMac用とIntel Mac用の2つのコードを持つアプリ)となっていた。右のAdob BridgeはIntel Mac用なので、こちらを動かす場合はRosetta 2を介することになる。なお、Universalアプリ(のIntel向けコード)を敢えてRosetta 2を介して使うこともできるようだ。

 あ。もしかしたら、Photoshop起動時に読み込むプラグインがIntel向けコードで書かれていたとか? まあよくわからないが、その後のPhotoshopは爆速。あまり深く考えないことにしてゆきたいッ!!!

 ほか、全体的にこーゆー感じで爆速なM1 Mac miniとアプリ。インターフェースが新しいので、これまで外部ドライブを保存先に使ってきたTime Machineバックアップもかなり速くなった。だがまだ最適化していないので、ドライブ周辺を見直すことでさらに速くなりそう。

 ただ、これまでより遅くなったアプリもある。それはAdob Bridge。Adobe関連アプリで作成したファイルを一元管理できるアプリだが、俺の場合は主に画像ブラウザとして使っている。

 で、このAdob Bridgeのサムネイル生成がヤケに遅くなってしまったのだ。起動は(2度目からは)速いが、新たに写真を読み込んだりフォルダ名やファイル名を変えたりしたときのサムネイル生成が「昔のパソコンかっ!」というほど遅い。最初はアプリがストールしたのかと思ったほど。その後ほっといたらサムネイルが生成されたので「えっ処理が遅かったんだ!」とヘンに驚いたのであった。

 それと、特定の自動起動アプリの立ち上がりが遅いような気がする。たとえば「カーソルセンス」が機能し始めるまで、以前より時間がかかる。まあ10秒程度なので「そういうものになった」と諦めがつく程度なのだが、M1 Mac mini内で何が起きているのだろう?

もんのスゲく静音、熱くもならない

 M1 Mac miniに搭載したユニファイドメモリは16GB。もうちょっと増やせるともっと快適になるのかもな~とは思うが、大きな問題ではないので大きな不満とはなっていない。ほか不満と言えば、前述のAdob Bridgeサムネイル生成激遅問題があるものの、M1 Mac miniの問題ではないような気がしている。なので、M1 Mac miniに対して不満と言えるものはナイ。

 ナイどころか、M1 Mac miniは爆速で快適なのに加えて、静音性がヒッジョーに高くてビックリする。一応ファンは回転しているようだが、顔を近づけたくらいだと排気音が聞こえない。排気口近くに耳を当てると、耳にボーという風切り音が聞こえるが、そうしないと何も聞こえないレベル。

 また排気がかなり少ない。夏場には多少増えるのかもしれないが、今の季節だと吐息程度って感じ。排気の温度も低く、手のひらにハーッと息を吹きかけたときよりも排気温度が低い。なお、本体表面銀色のアルミ部分からも排熱しているようで、本体はわずかに熱を持つ感じ。でも注意深く触れないと「熱を帯びている」ということに気づかないレベルだ。

 実際にプロセッサの温度を表示できるアプリを使っても、50℃を上回ることはほとんどないようだ。前のMac Proだといつも55~60℃だったが、M1 Mac miniはそこまで上がらず、36~38℃くらいであることが多い。人間の体温みたいですな。

猫が走る速さでMacのCPU使用率を教えてくれるアプリhttps://kyome.io/runcat/「RunCat」を使用中。最新版RunCat Plugins Managerをインストールすると、CPU温度を表示できるようになる。M1チップに対応しているのかわからないが、排気温度などから考えると正しい表示のように見える。ていうか一生懸命走る猫カワイイ!!!

 ……いろいろ試してみた結果、画面表示が大きく推移するときにプロセッサの温度がポンと上がるような気がする。M1チップのユニファイドメモリはGPUのメモリともなっているあたり、そういう温度的挙動になるのかもしれないが、よくわからない。

 ともあれ、抜群に静音かつ低温なM1 Mac mini。それだけ省電力ということでもありますな。小さくて速くて静かでエコで、一種の理想的デスクトップコンピュータと言えよう。

 いやぁAppleシリコン凄い。M1 ProチップやM1 Maxチップを搭載したMacBook Proも凄いんだろうし静かなんだろうしサイコーっぽいし、いろいろな手持ちAppleデバイスを下取りに出してガスッとM1 MacBook Proを購入したい気分で満タンの俺なのであった。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。