スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

秋夜の月とニコン「COOLPIX P950」

83倍光学ズームで月を撮ってゆきたいッ!!!

ニコン「COOLPIX P950」。

 急に涼しくなったという印象の2021年の9月。ある肌寒い晩、俺の最強に強まった欲望が熱く爆発炎上した。すなわち「月を撮影するためのカメラが欲しいッ!!!」であり、ニコンの光学83倍ズーム・コンパクトデジタルカメラ「COOLPIX P950」を購入した。

 発端はキヤノンの「EOS R5」である。EOS R5で空を流れる雲を撮るのが趣味化している俺だが、そこであることを試みたのがきっかけ。

 夕暮れのエモーショナルな雲を撮っていたら、あら月が出てきた。使っているレンズは「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」で、月をアップで撮るには望遠性能が全然足りない。だが、EOS R5による写真は高画素で解像感も高いし、レンズも高品位。撮って月だけトリミングすればどうにかなるかも……と考えて月を撮影。

EOS R5とEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM(マウントアダプター使用)で撮った月。最大限にズームアップしてもこんな感じ。
月が画面いっぱいになるようにトリミングしたもの。
ドットバイドットにしたもの。

 お〜ヤルじゃんEOS R5。手持ちでここまで撮れるのも大したモンだし、トリミングしてもけっこうキレイなあたりEOS R5の画質的性能を物語っている。ドットバイドットだと微妙に……とは思うが、イイよイイよイイ感じ♪

 と最初は喜んでいた。が、何度も月を撮っているうちに「んぬ〜やっぱり画面いっぱいに月を撮ってカメラの画質性能を全て月の描写に注ぎたいなぁ」と思うように。

 ……月を大きく撮るのには、2000mm以上の超望遠レンズが必要という。EOS R5の場合なら、超望遠レンズ「RF800mm F11 IS STM」とその焦点距離を2倍にする「EXTENDER RF2x」を組み合わせれば、1800mmとなるので、けっこうデキる。のだが、レンズとエクステンダーで18万円くらいする。

 その後、モヤモヤしつつアレコレ考えて、ニコンが『気軽に持ち歩ける迫力の2000mm相当、肉眼では見えない世界を切り取る、光学83倍の超望遠ズーム』とアピールしている8万円台で買える「COOLPIX P950」をズギャッとポチるに至ったのであった。8万6189円で購入した……アーッ!!! 今見たら8万5000円になってたーッ!!! まあいいけどーッ!!!

月への欲望は金銭でアッサリと解決!!!

 8万6189円を振り込んだ数日後、気絶してないのに目の前に新品COOLPIX P950が出現した瞬間、光に近い速度でカメラを充電してセットアップして夜を待ったものの、光に近い速さのつもりが4時間くらい待たされてようやく月が現れたので、なにはともあれとにかく月を激写。結果、素晴らしく素晴らしい感じに写った。

COOLPIX P950で撮った満月。撮影設定は全てカメラ任せのオート撮影で、露出補正のみ行っている。画像はリサイズのみ適用。月が少し左に寄ってしまった。
同じ画像をトリミングしてリサイズしたもの。
ドットバイドット。
トリミングしつつ月を中央に移し、画面左を黒く潰し、シャープネスを少し上げてコントラストを高めてリサイズしたもの。

 有効画素数は1605万画素、撮像素子は1/2.3型原色CMOS。コンパクトデジタルカメラの小型撮像素子ということで、ドットバイドットにすると解像感がいまひとつだったりはする。が、だいたい全部カメラ任せで、手持ちで月を十分ズームアップして撮れるのが凄い。そして少し画像処理を施せば、けっこう鑑賞に耐える月の写真にまで美化可能。素晴らしい。

 てゅーかアレっスね、「月をキレイに撮りたい!」という欲望を8万6189円で昇華させたって感じスね。まあハードウェアとはそういうモンですな。

 でも20万円くらい払ってレンズとエクステンダー買ってEOS R5で撮れば……。とか考え始めることはヤバい沼の始まりなので、とりあえずは考えないことにしてゆきたいッ!!!
 なお、素朴な疑問として「COOLPIX P950使えば誰でも上にあるような月の写真撮れるの?」という考えが出るかもしれない。これについては「誰にでも撮れる」と思う。

 COOLPIX P950の手ぶれ補正は強力を超えて強烈なので、最大倍率(35mm判換算24-2000mm相当/光学83倍ズーム)でも手持ちで撮影可能。最大倍率にすると画面内に月などの被写体を収めるのに最初は苦労するかもしれないが、少し練習すればうまく撮れるようになると思う。また、露出補正(被写体が写る明るさの調節)を行えば、より良好な画像が得られるだろう。

COOLPIX P950の場合、レンズ左側のダイヤルで露出補正(被写体が写る明るさの調節)を行える。満月などを撮るときに過度に明るく写る場合は、マイナス側(暗くするよう)に露出を補正する。
COOLPIX P950は電子ビューファインダーのほかに3.2型バリアングル画像モニターがある。角度を自由に変えられるバリアングル画像モニターを使えば、天頂の月をラクな姿勢で撮影できる。また、手を手すりなどに置いた状態でカメラを持ち、バリアングル画像モニターを見ながら撮影すれば、月などをより安定して撮ることができる。

 超望遠ということで、被写体を画面内に収め続ける練習や工夫が必要ではあるが、ほかはほぼ全部カメラ任せでOK。ラクかつカンタンに驚異的な超望遠撮影ができるCOOLPIX P950なのであった。

広角から超望遠までイケる、何を撮っても楽しい

 COOLPIX P950のズームレンズは35mm判換算で24-2000mm相当。光学ズーム倍率は83倍となる。さらにデジタル処理によるダイナミックファインズームだと約4000mm相当まで、電子ズームだと約8000mm相当までズームできる。どういうズーム域なのか、写真で見てみよう。

広角端は35mm判換算24mm相当。風景を広く写し込むことができる。中央に見える案内板をズームアップしていこう。
300mm相当でズームアップ。
1000mm相当。
2000mm相当。これが光学ズームの限界となる。
これはダイナミックファインズームで約4000mm相当。デジタル処理でのズームだがけっこうキレイ。
電子ズームの約8000mm相当。画質はやや落ちるが、使いどころは多々ありそう。

 2000mm相当のズームでも「凄い!」という感じだが、さらにダイナミックファインズームや電子ズームを使えば、もっと「凄まじい望遠撮影」ができる。前出の月の撮影でダイナミックファインズームや電子ズームを使えば「画面いっぱいが月面」という写真も撮れる。

 しかも手持ちでこういう超望遠撮影ができるのが凄いし、楽しい。いつもは間近で見られない対象を間近で観察できるので、「何を撮っていても楽しい!」という気分になる。以下、いくつか超望遠撮影の作例を。

これは広角端24mm相当。遠くに見える水道橋の一部をズームアップしてみる。
600mm相当。肉眼ではほとんど認識できていなかったモノが見えてくる。
2000mm相当。構造物を固定しているボルトの本数まで見えてくる。
今度は遠くに見える林のあたりをズームアップ。肉眼では立て札のようなものが見えるような……。
600mm相当。交通標識が見えてきた。
2000mm相当。どういう交通標識かがハッキリ見えた。あっ横に人が!

 こんな感じで遠くが見えまくりなのである。一般的な双眼鏡よりもずっと倍率が高くて遠くのモノが超絶よく見える。それに加えて手ぶれ補正が非常に強力なので、かなり安定した映像を見ることができる。COOLPIX P950はデジタルカメラとして静止画や動画を撮るのも楽しいわけだが、単に「超遠くをバッチリ見るための望遠鏡」としてもかなりツカエる。

今度は鉄塔を。これは広角端24mm相当。矢印のあたりをズームで見てみよう。
鉄塔のてっぺんを300mm相当で。
2000mm相当にすると鉄塔てっぺんを詳細に観察できる。
鉄塔の上方を300mm相当で。
2000mm相当にすると……足を乗せる棒とかあるけど、えーっ人が登るの? そうか登るか。こわっ。

 COOLPIX P950で撮り歩いていたら、突如上空にヘリコプターが!!! そうだCOOLPIX P950なら航空写真なんかも撮れるだろう。そう思って撮ってみたが……。

撮り歩いていたら上空にヘリが!
2000mm相当で何枚も撮ってみて、いちばんマシだったのがこれ。

 航空機を望遠レンズで狙って撮るってのはほぼ初めてだったが、いやー難しいっスね! ゆっくり移動するヘリコプターを画面内に収めるのすら難しい。COOLPIX P950では、超望遠ズーム時に被写体を見失った場合、一時的に見える範囲(画角)が広がって被写体を画面内に収めやすくするクイックバックズーム機能がある。だが、ソレを使っても航空機の追尾は非常に難しく感じられた。練習が必要ですな。

 このくらいの望遠倍率があると、運動会やスポーツイベントなどでも幅広く使えそうだ。実際にどの程度ズーム撮影ができるか、ご参考までにサッカーゴールを撮ってみた。

サッカーゴールの10mくらい後方から。これは広角端24mm相当。
400mm相当。反対側のサッカーゴール全体が収まった。
2000mm相当にすると反対側のサッカーゴールの右上、ゴールポストとクロスバーの接続部を観察できてしまう。

常用カメラとして画質もいい、スマートフォンとの連携も好印象、ただし「大きめ重め」

 前述のとおり、COOLPIX P950の撮影設定は全てカメラ任せのオート撮影としている。で、その画質は予想以上に良好。良いレンズなのだと思うが、「えっコンパクトデジカメってこんなに高画質なものだったっけ?」という驚きがある。月ばかり撮っているので、ほかは作例にふさわしい写真がなかったりするが、何枚か。

欠けてきた月。画像処理はトリミングとリサイズのみ。言わなければコンパクトデジカメで撮った写真とわからないかも。
鉄塔と雲。画像処理は暗部を少し持ち上げて、リサイズ。ニコンの映像製品らしいヌケの良さを感じた。
中華定食。画像処理は明るさを少し増して、リサイズ。
ラーメン(広東麺)。画像処理はリサイズのみ。

 2枚の食べ物の写真は、店舗内の照明が“けっこう撮影に厳しい光源”だった(白色蛍光灯と電球色LEDと少々の外光)。だが「そうそうこのとおり、こういう美味しそうな色」というのがバッチリ再現されていて非常に好印象である。食べ物が美味しそうに写るカメラって、ほか多くのシーンも美しく写るような気がしているが、COOLPIX P950もそういう良い傾向があるカメラだと思う。

 それからCOOLPIX P950はスマートフォンとの相性もよく、スマートフォン連携が使いやすい。アプリは「SnapBridge」(iOS/iPadOS/Android)を使用。俺の場合はiOS用アプリを使っているが、スマートフォンの操作だけでCOOLPIX P950が連携に応じてくれて、手間がかからずラクでナイス。

iOS版SnapBridgeアプリを使っている様子。最初に一度接続設定を済ませれば、以降はアプリの操作だけでCOOLPIX P950と連携できる。COOLPIX P950側は電源がオン(機内モードはオフ)であればいいので、スマートフォン連携時にCOOLPIX P950に触れる必要はない。カメラからスマートフォンへの画像転送がかなりラクだ。
SnapBridgeアプリからライブビューを使ってのリモート撮影も可能(横表示にも対応)。カメラの撮影設定なども行える。

 スマートフォン連携にコナレ感があり、画質も良好。手ぶれ補正も強力だし、超望遠撮影も広角撮影もこなせる。色々な意味で最強の側面を多々持つコンパクトデジカメだと言えよう。

 た、だ、し。けっこーデカいのであった。また、少々重くもある。サイズは、約幅140.2×高さ109.6×奥行き149.8mm(突起部除く)で、質量は約1005g(電池・メモリーカード含む)。

左はEOS R5とRF24-105mm F4 L IS USMの組み合わせ。右がCOOLPIX P950。重さはEOSのほうがずっと重いが、嵩張り感は似たようなもの。
約1kgのCOOLPIX P950なので、重さ的には1日中撮り歩いても苦にならないが、そこそこ嵩張るカメラを持ち歩くことになる。

 大きめ重めなので、軽装で気軽に……というカメラではないのであった。まあレンズが立派な感じのものなので、こういうサイズ感になるのは仕方ないんでしょうけどネ。あとカメラってある程度大きい方が撮影しやすいんですけどネ。ともあれ、COOLPIX P950は、一眼クラスサイズのコンパクトとは言えない超望遠コンパクトデジタルカメラなのであった。
 しかしまあCOOLPIX P950、スゲくおもしろいっスよ! 写真はもうスマートフォンでいいんじゃない? と思う人でも「あっこのカメラは愉快だね」と楽しめるだろう。また汎用デジタルカメラとしての実用性が高い1台でもある。今、買う価値のある1台とも思える。なので、興味がある方はぜひ、密を避けてマスクして手指消毒して実機に触れてみてほしいッ!!!

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スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。