法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」
AI対応でインテリジェントに進化を遂げた「HUAWEI Mate 10」ファーストインプレッション
2017年10月24日 11:00
10月16日、ファーウェイはドイツ・ミュンヘンのOlympiapark Munchen(ミュンヘン・オリンピック公園)内にあるSmall Olympic Hallにおいて、「Huawei Mate 10 Global Launch」を開催。同社のフラッグシップモデル「Mate」シリーズの最新モデル「HUAWEI Mate 10」「HUAWEI Mate 10 Pro」「PORSCHE DESIGN HUAWEI Mate 10」を発表した。すでに、本誌では速報記事が掲載されているが、現地イベントの様子や内容、実機のファーストインプレッションをお送りしよう。
“THIS IS NOT A SMARTPHONE”
国内では各携帯電話事業者向けの端末をはじめ、HUAWEI P10シリーズなどのSIMフリースマートフォンで着実に支持を拡げつつあるファーウェイ。一般消費者が利用する製品だけでもモバイルWi-Fiルーターからスマートフォン、タブレット、ウェアラブル端末、家庭用データ通信端末など、幅広いラインアップを取り揃え、市場に展開している。
そんなファーウェイのスマートフォンのラインアップにおいて、フラッグシップのひとつに位置付けられるのがHUAWEI Mateシリーズだ。国内向けには2014年12月に「Ascend Mate7」を発売したのを皮切りに、2015年12月には「HUAWEI Mate S」、昨年12月には「HUAWEI Mate 9」を発売し、好評を得てきた。
同社のスマートフォンはMateシリーズの他にもPシリーズ、novaシリーズなど、豊富なラインアップが展開を展開。Mateシリーズは、大画面ディスプレイを搭載したハイスペックなフラッグシップモデルと位置付けられている。フラッグシップというと、一般的には1つモデル、1つのシリーズのみを考えてしまうが、多様なニーズに対応することを考慮してか、同社はPシリーズもMateシリーズと並ぶフラッグシップという位置づけで展開している。
Mateシリーズはこれまで、毎年9月頃にドイツ・ベルリンで開催される展示会「IFA」で発表されてきたが、今回はIFA 2017の基調講演において、同社が開発したAI対応チップセット「Kirin970」を取り上げ、その内容を説明し、Kirin 970搭載スマートフォンの第一弾となる「Mate 10シリーズ」を10月にドイツ・ミュンヘンで発表することを明らかにしていた。
今回、発表会場となったのは、1972年に開催されたミュンヘンオリンピックの会場跡地を整備したOlympiapark Munchenで、その敷地内にあるSmall Olympic Hallが使われた。ちなみに、Olympiapark Munchenの広大な敷地内には自動車メーカーのBMW本社があり、博物館の「BMW Welt」などがあるミュンヘンを代表する観光スポットとして知られる。
Mateシリーズの発表に先駆け、ファーウェイはティザーの動画を公開しており、その中で「THIS IS NOT A SMARTPHONE, THIS IS A INTELLIGENT MACHINE(これはスマートフォンではない。これはインテリジェントなマシンだ)」と銘打ち、AI対応のKirin 970搭載による新しいスマートフォンの進化を期待させていた。
HUAWEI Mate 10 ProとHUAWEI Mate 10を発表
Huawei Mate 10 Global Launchのプレゼンテーションでは、おなじみの同社CEOでConsumer Business Group担当のRichard Yu氏が登壇。まず、スマートフォンが人々の生活を変えてきたことなどに触れながら、Mateシリーズは大画面やパワフルなパフォーマンス、ロングライフのバッテリー、プロフェッショナルなカメラ、高速通信などによって、こうした生活の変化をさらに加速させてきたと紹介した。
続いて、今年9月のIFA 2017の基調講演でも触れた新しいチップセット「Kirin 970」を取り上げ、これが世界初のニューラルネットワークを利用したチップセットであり、「NPU(Neural-network Processor Unit)」であるとした。
そして、このKirin 970を搭載した初のスマートフォンとして、「HUAWEI Mate 10」と「HUAWEI Mate 10 Pro」を発表。Yu氏が端末を取り出し、両手に持つと、会場からは大きな拍手が沸き起こった。
Yu氏はこれまでの「Mate 7」「Mate 8」「Mate 9」というMateシリーズが高いパフォーマンス、大画面、ロングライフバッテリーを実現しながら、コンパクトにまとめられてきたことに触れながら、今回のMate 10シリーズのデザインについての説明をはじめた。
まず、「Full View Display」と名付けられたディスプレイは左右の額縁を極限まで小さくし、上下のベゼルも狭くした設計で、「HUAWEI Mate 10 Pro」は6インチのフルHD+(2160×1080ドット)表示が可能なHDR対応OLED(有機EL)ディスプレイを搭載し、縦横比は18:9で、70000:1の高コントラスト、NTSC比112%の彩度を実現している。6インチという大画面ながら、5.5インチのディスプレイを搭載した端末と変わらない持ちやすさを実現していることをアピールした。
「HUAWEI Mate 10」については5.9インチのWQHD(2560×1440ドット)表示が可能なHDR対応RGBW液晶ディスプレイを搭載し、縦横比は16:9で、明るさは従来モデルから30%アップとなる730nitsを実現している。ディスプレイは三原色のRGBに加え、ホワイト(W)を加えてRGBWディスプレイとしたことで、太陽光のもとでも十分な視認性を確保しており、もっとも暗い1.8nitsまでをカバーし、高い省電力性能を実現している。
また、5.9インチという大画面ディスプレイを搭載しながら、同じ5.9インチのディスプレイを搭載したHUAWEI Mate 9よりも幅で1.1mm、高さで6.4mmの小型化に成功しているとした。画面として利用できる面積については、話題のiPhone Xに比べ、Mate 10で18%、Mate 10 Proで16%も広く、本体前面に画面が占める割合もiPhone Xの81.36%に対し、Mate 10で81.79%、Mate 10 Proで81.61%と上回っていることをアピールした。
そして、大画面のディスプレイをコンパクトなボディにまとめながらもバッテリー容量は、iPhone Xの2716mAhに比べ、HUAWEI Mate 10とHUAWEI Mate 10 Proはともに、48%も大容量となる4000mAhのバッテリーを搭載している。さらに、これだけの大容量バッテリーを搭載しながら、両機種とも本体は非常にスリムで、HUAWEI Mate 10が薄さ8.2mm、HUAWEI Mate 10 Proが薄さ7.9mmに仕上げられ、3300mAhのバッテリーを搭載するGalaxy Note8の8.5mmよりも20%以上、スリムであることがアピールされた。
これらにより、iPhone Xの5.5インチよりも大きな5.9インチ(HUAWEI Mate 10)と6インチ(HUAWEI Mate 10 Pro)のディスプレイを搭載しながら、高さと幅は数mm小さく、コンパクトで持ちやすいとした。なかでも本体前面のベゼルについては、HUAWEI Mate 10が前面に指紋センサーを搭載しながら、iPhone 8 Plusよりも上下共に狭く、前面に指紋センサーを持たないHUAWEI Mate 10 Proにも迫るほどに仕上げられている。
指紋センサーの使い勝手についてもHUAWEI Mate 10がワンタップのわずか0.33秒で解除できるのに対し、顔認証を採用したiPhone Xは「持つ」「画面を見る」「スワイプする」という流れが必要であり、時間がかかるという比較を示した。HUAWEI Mate 10 Proは背面に指紋センサーを備えているが、中央のもっとも自然な位置に備えられているため、他機種のようにカメラ部などと間違えたり、指先で探すこともないという。
ボディについては背面、前面共に、シンメトリカルにデザインされており、背面のカメラ部は左右に帯のようなパターンを施し、アクセントをつけている。背面はメタルボディにマルチレイヤーに重ねたフィルムに、Gorilla Glassを組み合わせることで、美しく仕上げている。形状も両端へ向けて、わずかにカーブさせることで、手にフィットする持ちやすい形状にまとめている。
また、Mateシリーズとしては初めて防水防塵にも対応しており、「HUAWEI Mate 10 Pro」はIP67、「HUAWEI Mate 10」はIP53のそれぞれの規格をクリアしている。防水機能を求めることが多い日本のユーザーにとっては、うれしい対応だろう。ボディカラーは「HUAWEI Mate 10 Pro」がTitanium Grey、Mocha Brown、MIdnight Blue、Pink Gold、「HUAWEI Mate 10」はChampagne Gold、Pink Gold、Mocha Brown、Blackとそれぞれ4色ずつがラインアップされる。
さらに、従来のHUAWEI Mate 9シリーズと同様に、高級ブランド「PORSCHE DESIGN(ポルシェデザイン)」のモデルもラインアップに加わることが発表された。壇上にPorsche DesignのCEOのDr. Jan Becker氏が登壇し、Mateシリーズへの期待やPORSCHE DESIGNモデルのデザインの説明などが語られた。PORSCHE DESIGNモデルはボディ形状などが同じだが、細部のデザインが少し異なり、前面にはPORSCHE DESIGNのブランドネーム、背面にはブランドロゴがあしらわれ、充電器などの付属品もPORSCHE DESIGNの黒を基調としたものに変更されるという。
AI対応チップセット「Kirin 970」を搭載
続いて、HUAWEI Mate 10シリーズのパフォーマンスについて、説明が行なわれた。冒頭でも触れたように、HUAWEI Mate 10シリーズはIFA 2017の基調講演でも取り上げられたAI対応チップセット「Kirin 970」が搭載される。
Kirin 970の内容としては、世界初のニューラルネットワークを利用した「NPU」をはじめ、世界初のARM製GPUIPコア「Mali-G72」、Cortex A73/2.36GHzクアッドコアとCortex A53/1.8GHzクアッドコアのCPUによって構成される。10nmのプロセスルールで製造され、55億個のトランジスタが内蔵されるという。8コアのCPUは従来に比べ、電力効率が20%向上。新たに搭載された12コアのGPUはパフォーマンスが20%向上し、電力効率では50%の向上が図られている。
実際のパフォーマンスについては、100枚の写真の認識速度のベンチマークで比較。iPhone 8 Plusで9秒かかるところをHUAWEI Mate 10 Proでは5秒で完了し、同じテストをGalaxy Note8ではなかなか終わらないシーンを写し出し、会場を沸かせた。
AIによる最適化については、システムのレスポンスが60%向上し、スムーズな操作も50%アップを実現しているという。たとえば、実際のアプリをロボットによるテスト環境でくり返しテストしたところ、写真アプリでは34.6%、ビデオアプリでは26.3%、SNSアプリでは17.9%の高速化が可能になったという。
モバイル通信環境においては、4つずつのアンテナで通信を行う「4×4 MIMO」、5つのキャリアを束ねる「5CC CA(5波キャリアアグリゲーション)」、最新の変調方式「256QAM」をサポートする。LTE Cat.18のに対応し、キャリアアグリゲーションを3CC CAとした環境では、スマートフォンとして世界初となる受信時最大1.2Gbpsでの利用が可能とした。
SIMカードはこれまで同様、デュアルSIMの利用が可能で、デュアルSIM&デュアルスタンバイ(DSDS)にも対応する。これまでの多くのスマートフォンのDSDSは片方が3Gのみに限られていたのに対し、「HUAWEI Mate 10」と「HUAWEI Mate 10 Pro」は世界初のデュアル4G&デュアルVoLTE対応のスマートフォンであることが明らかにされた。
また、GPSからに信号などを利用した位置情報サービスもさらなる機能改良が図られているという。たとえば、GPSだけでなく、Wi-Fiや加速度センサー、ジャイロなどを利用し、GPS信号などが受けられないトンネルや高速道路のジャンクションなどでも正しい位置情報を把握できるようにしている。プレゼンテーションではHUAWEI Mate 10 Pro、iPhone 8 Plus、Galaxy Note8をクルマの中に設置し、トンネルを通過するときのナビゲーションの動作を録画した映像が再生されたが、iPhoneが早々に位置情報を見失ったり、Galaxy Note8も位置がずれてしまっているのに対し、HUAWEI Mate 10 Proはトンネル内でも正しい位置を表示できていた。
バッテリーなどの電力関連については、従来のHUAWEI Mate 9に比べ、30%のバッテリー駆動時間の延長を実現し、ヘビーユーザーで1日以上、一般的なユーザーでも数日の利用が可能であるとした。充電については同社独自の急速充電に対応し、iPhone 8 Plusよりも50%の高速に充電でき、約30分の充電でバッテリー残量は58%まで充電できるという。
そして、充電環境については昨今、スマートフォンの充電の安全性が話題になっていることから、ファーウェイとして、5つのクリティカルテストを含む検査をTUV Rheinland(テュフ ラインランド)で行なったことを明らかにした。TUV Rheinlandはドイツ・ケルンに本部を置く技術や安全、証明サービスに関する認証機関で、プレゼンテーションでは試験の映像が流され、HUAWEI Mate 10シリーズに搭載される急速充電が、同機関による認証試験をクリアしたことがアピールされた。
インテリジェントなデュアルカメラを搭載
今回発表されたHUAWEI Mate 10シリーズには背面にデュアルカメラを搭載している。これまで同社では従来のHUAWEI Mate 9をはじめ、昨年のHUAWEI P9/P9 Plus、今年のP10/P10 Plusと同様に、モノクロセンサーとカラーセンサーを組み合わせたデュアルカメラだが、今回のHUAWEI Mate 10 Plusでは、背面に縦方向に配置される。
イメージセンサーは12MPのカラーセンサー、20MPのモノクロセンサーで構成し、レンズはF1.6の新しいLeica製「SUMMILUX-H」レンズが組み合わせられる。光学手ブレ補正にも対応し、像面位相差やコントラストオートフォーカスを組み合わせた4-in-1 Hybrid Focus、同社独自のHUAWEI Hybrid Zoomにも対応する。プレゼンテーションでは実際にHUAWEI Mate 10シリーズで撮影した写真が投影されたが、いずれも非常に美しく、いくつかの写真では会場から「おぉー」といった歓声が沸き起こった。
現在のスマートフォンのカメラの画質を決める要素として重要となる部品は、イメージセンサーやレンズの他に、さまざまな処理を行う「ISP(Image Signal Processor)」と呼ばれる画像処理エンジンも挙げられる。HUAWEI Mate 10シリーズは同社がデザインした2つの画像処理エンジンを新たに搭載。高速なレスポンスに加え、オートフォーカスの高速化、動体認識、ローライトでの撮影など、さまざまな機能をサポートする。
それぞれの項目について、ライバル機種との比較映像が掲示されたが、動体認識の比較ではステージ上でギターを弾くミュージシャンの写真が使われ、iPhone 8 PlusやGalaxy Note8で被写体がぶれてしまっているのに対し、HUAWEI Mate 10 Proではしっかりと中央に被写体を捉え、ブレを抑えた写真を撮影できていた。
そして、今回のHUAWEI Mate 10シリーズのティザーにも使われていた「インテリジェント」というキーワードを活かした機能がカメラにも搭載される。カメラではさまざまな被写体を撮影するが、HUAWEI Mate 10シリーズのカメラでは撮影する被写体が何であるのかを認識し、カメラの設定をそれぞれの被写体に合わせることにより、誰でも手軽に美しい写真を撮影できるようにしている。
認識可能な被写体は、犬、猫、料理、花など、13種類が設定されている。この被写体認識については、AIによって蓄積された情報を基に、開発されており、一般的なカメラモードの切り替えとは異なるようだ。プレゼンテーションではいくつかサンプルが示されたが、確かにAIによる被写体認識の方がより質の高い写真を撮影できている。このAIを利用した撮影については、ズームにも活かされており、テキストを撮影したときも文字がにじまないように撮影できるという。
続いて、HUAWEI Mate 10シリーズのインテリジェントなユーザビリティについて、説明が行なわれた。ファーウェイ製端末はAndroidプラットフォームを採用しながら、「EMUI」と呼ばれる独自のユーザーインターフェイスを搭載している。今回のHUAWEI Mate 10シリーズはAndroidプラットフォームとしてAndroid 8.0を採用し、ユーザーインターフェイスについては最新の「EMUI 8.0」を搭載する。
Androidプラットフォームで実現されている画面分割なども、大画面ディスプレイを活かして操作しやすくし、ショートカットなどもワンタップで設定できるように工夫されているという。個人ユーザーにはあまり縁がないが、企業などで利用する端末を制御するMDM(Mobile Device Management)もサポートしており、世界各国の法人向けサービスを提供する企業とのパートナーシップも広げていくという。
オーディオについては384kbps/32bitのハイレゾオーディオをサポート。音声通話などの音声処理についても機械学習による最適化が活かされ、周囲の環境に影響されない快適な音声通話を実現したという。
今回のプレゼンテーションの中でも来場者から大きな歓声が上がったのが「PC Mode」だ。PC Modeは、HUAWEI Mate 10シリーズをパソコンのディスプレイや家庭用テレビのHDMIポートに接続すると、パソコンと同じようにマルチタスク、マルチウィンドウの操作環境を実現する。
キーボードはHUAWEI Mate 10シリーズに表示されているものを利用できるほか、HUAWEI Mate 10シリーズの画面をノートパソコンのタッチパッドのように操作できる機能も搭載される。
同様の機能はサムスン電子もGalaxy S8やGalaxy Note8などでサポートしているが、HUAWEI Mate 10シリーズでは専用の台などを購入する必要がなく、USB Type-C外部接続端子にHDMI変換アダプターを接続し、ディスプレイにつなぐだけで表示される。デモムービーではHUAWEI Mate 10シリーズをプロジェクターに接続し、会議のプレゼンテーションを行い、電話がかかってきたときはそのまま端末を外して、電話に応答するという流れが紹介された。
さらに、HUAWEI Mate 10シリーズにはマイクロソフトが開発した「Microsoft Translator」が搭載される。50種類以上の言語に対応し、音声入力やテキスト入力での翻訳に加え、カメラで撮影して、レストランのメニューなどを翻訳する方法、対話式で翻訳(通訳)をする方法などがサポートされる。オンラインでの翻訳だけでなく、ダウンロード後のオフライン翻訳にも対応する。
そして、HUAWEI Mate 10シリーズでサポートされるAIについては、サードパーティのアプリでも利用できるように、APIなどが公開されることが明らかにされた。
最後に、「HUAWEI Mate 10 Pro」と「HUAWEI Mate 10」の価格と、販売予定の国・地域が発表された。「HUAWEI Mate 10」は4GB RAM/64GB ROMの構成で699ユーロという価格が設定され、11月からオーストラリアや中国、マレーシア、シンガポール、スペインなどで販売が開始される。
「HUAWEI Mate 10 Pro」は6GB RAM/128GB ROMという構成で、価格は799ユーロに設定され、日本、オーストラリア、中国、ドイツ、イタリア、シンガポール、タイ、英国などで11月から販売される。
美しさと機能をバランスさせたインテリジェントなスマートフォン
発表会のプレゼンテーション終了後、会場内に設置されたタッチ&トライコーナーでは、「HUAWEI Mate 10 Pro」と「HUAWEI Mate 10」の実機を試すことができた。同時に、デモ機を借用することもでき、限られた時間ながら、試すことができたので、そのインプレッションをお送りしよう。ただし、今回試用したモデルはグローバル向けのモデルであり、借用した端末も国内では利用できない仕様(技術適合認定を未取得)であるため、現地を発つまでの短い時間のみの試用であることをお断りしておく。
まず、今回発表された2機種の位置付けについて、少し確認しておこう。今回は「HUAWEI Mate 10 Pro」と「HUAWEI Mate 10」の2機種が発表され、デザインモデルとして、PORSCHE DESIGN HUAWEI Mate 10がラインアップされている。両機種のスペック上の主な違いは、ディスプレイのサイズとパネルの種類、指紋センサーの位置とそれにともなうデザインの違い、メモリーとストレージなどが挙げられる。
また、販売される国と地域を見てみると何となく想像できるが、「HUAWEI Mate 10 Pro」が日本をはじめ、欧州各国や中東、南米、アジアなど、さまざまな国と地域で販売されるのに対し、「HUAWEI Mate 10」は販売される国と地域が絞り込まれている。
おそらく、ファーウェイとしてはHUAWEI Mate 10 Proを主力モデルと位置付け、HUAWEI Mate 10はもう少し安い価格帯の端末も求められる国と地域向けと考え、少し価格もスペックも抑えた構成に設定したようだ。
ちなみに、HUAWEI Mate 10 Proはすでに国内向けに販売されることがファーウェイ・ジャパンで端末部門を統括するデバイス・プレジデントの呉波氏からも明らかにされており、12月にも店頭にお目見えすることになりそうだ。価格はまだわからないが、799ユーロという欧州向けの価格設定を鑑みると、当初は10万円近い価格になってしまうかもしれない。
さて、実機(HUAWEI Mate 10 Pro)に話を戻そう。まず、実機を手にして、最初に感じるのは、全体的に非常に質感が高く、高級感のあるデザインや仕上げにまとまっているという印象だ。ここ数年、ファーウェイ製端末は本体のデザインや仕上げが着実に良くなってきたとされるが、今回のモデルは背面のガラス仕上げが非常に美しく、両側面へ向けての緩やかなカーブにより、手にフィットする印象だ。
もうひとつのフラッグシップであるHUAWEI P10やHUAWEI P10 Plusがメタルボディを強調したソリッドなイメージであるのに対し、HUAWEI Mate 10 Proはガラスの質感も相まって、落ち着いたイメージの端末に仕上がっている。ただし、光沢感のある背面は指紋の跡が残りやすいため、美しく使うにはクリーンに使うように心がける必要がありそうだ。ちなみに、グローバル向けのパッケージにはHUAWEI Mate 10 Pro用のクリアカバーが付属する。
ボディ全体のイメージとしては、これまでのMateシリーズがどちらかと言えば、画面の大きさが強調されたデザインだったのに対し、今回のHUAWEI Mate 10シリーズは「Full View Display」と銘打たれたディスプレイが本体前面のほとんどのエリアをカバーするデザインになり、ボディもスリムに仕上げられたことで、大画面ではあるが、標準的なサイズ感に収められたという印象だ。ディスプレイは縦横比18:9だが、Galaxy S8/S8+のような妙な縦長感はなく、自然なデザインだ。
次に、今回の注目機能のひとつであるカメラの被写体認識だが、タッチ&トライコーナーでは花や食べ物などが用意されたほか、犬や猫の写真に本体をかざして、被写体認識をさせるデモも行なわれた。実際に試してみると、それぞれに被写体をすばやく認識し、撮影することができた。ただ、実際に撮影した画像の比較はできていないため、現段階では本来の実力が見極め切れていない。このあたりは国内向け製品が発売された段階で、あらためて確認したい。
また、全体の操作のレスポンスも非常に快適で、標準で搭載されているアプリなどを快適に使うことができた。実際のユーザビリティについては、ナビゲーションキーの割り当てが気になるところだ。Mate 10 Proでは、前面のナビゲーションキーは画面内の表示する設定が標準となっているが、設定を切り替えることで、ナビゲーションキーの表示をオフにして、画面内に浮いたように表示される丸いアイコンをタップしたり、スライドさせることで、同様の操作を再現する「ナビゲーションメニュー」が用意される。
Mate 10 Proは元々、画面サイズが大きいため、画面内にナビゲーションキーが表示されていても気にならないが、画面をより広く使いたいユーザーには便利な機能のひとつと言えそうだ。一方、Mate 10についてはHUAWEI P10/P10 Plusなどと同じように、前面に搭載された指紋センサーのフリック操作などにナビゲーションキーを割り当てる機能が用意されている。
もうひとつ気になるのは、HUAWEI Mate 9など、これまでのMateシリーズと比較して、いくつか基本的な仕様が異なる点だ。従来のHUAWEI Mate 9はデュアルSIMを採用し、排他利用ではあるものの、microSDメモリーカードにも対応していた。これに対し、HUAWEI Mate 10シリーズは両機種ともデュアルSIMに対応するものの、microSDメモリーカードには対応しておらず、SIMカードトレイもnanoSIMカードの穴が2つ並ぶのみとなっている。HUAWEI Mate 10 Proは128GBのストレージが搭載されているが、音楽や動画、写真などを数多く保存しておきたいユーザーは、オンラインストレージサービスなどを積極的に活用する必要がありそうだ。
また、HUAWEI Mate 10 Proは3.5mmのイヤホンマイク端子を備えておらず、今回はUSB Type-Cコネクターから3.5mmイヤホンマイク端子に変換するアダプタが用意されていた。部品の削減によるコスト減や薄型化、防水防塵への確実な対応などを意図した判断と推察されるが、音楽や映像コンテンツを楽しむときはBluetoothヘッドセットなどと組み合わせて利用する必要がある。
ネットワークの対応については現地で借用した端末も数時間しか利用できなかったため、まだ未確認の部分が多いが、「デュアルSIM&デュアルVoLTE」は国内のネットワーク対応次第ではかなり魅力的な機能になるかもしれない。あらためて説明するまでもないが、片方に既存のMNO(主要3社)のSIMカードを挿し、もう片方にMVNOのSIMカードを挿した状態でもどちらでもLTEによる通信、VoLTEによる通話が利用できることになる。例えば、SIMスロット1はNTTドコモ、SIMスロット2はNTTドコモの回線を借り受けたMVNOという組み合わせで利用できるわけだ。
気になるところとしては、auのネットワークに対応していれば、さらにその組み合わせは広がることになる。ファーウェイ製端末ではチップセットにQualcomm製Snapdragonを搭載したモデルがUQモバイルやmineoなど、auのネットワークを利用したMVNOで利用できているのに対し、チップセットにファーウェイ製(HiSilicon製)のKirinシリーズを搭載したモデルはauのネットワークに対応していなかった。今回のHUAWEI Mate 10シリーズに搭載されているKirin 970は、新たに開発されたチップセットであるため、こうした制限が解消されていることが期待される。
端末そのものの機能として、意外に面白そうなのがHUAWEI Mate 10をHDMIケーブルでディスプレイに接続し、パソコンのように利用できる「PC Mode」だ。同様の機能はサムスンのGalaxy S8/S8+やGalaxy Note8の「DeX Station」で実現されており、国内向けにもようやく正式に販売されることになったが、HUAWEI Mate 10シリーズの場合、USB Type-C外部接続端子からHDMI端子に接続するアダプタやケーブルを用意するだけで利用できるため、手軽に使うことができる。
たとえば、出張先のホテルのテレビに接続して、パソコン代わりに利用したり(キーボードは必要になるが……)、パソコンと併用して、マルチウィンドウの環境で仕事をする、プレゼンテーションはHUAWEI Mate 10シリーズに任せて、パソコンは会議のメモに使うなど、さまざまなスタイルで活用が可能になる。USB Type-CとHDMIの変換アダプターは、有名なメーカーの製品でも5000円前後で数多く販売されており、環境を整えやすいのも魅力的だ。
この他にもHUAWEI Mate 10シリーズにはさまざまな魅力的な機能が搭載されており、この冬以降、国内でも人気モデルになることが期待される。国内向け販売の正式発表を楽しみにしながら、待つことにしたい。