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バルセロナで5Gを体験、ただし端末選定には要注意

 今年も、スペイン・バルセロナで開催されたMWC Barcelonaを取材してきた。新型コロナウイルス感染拡大を受け、20年はイベント自体が中止になり、21年も2月開催を断念。7月に規模を大幅に縮小し、オンラインの比重を高めたハイブリッド開催で復活した。昨年は、ようやく通常のスケジュールに戻ったが、規模はやや縮小気味だった。アジア圏からの渡航も少なく、日本人の姿はまばらだった。

2月27日から3月2日に渡って開催されたMWC Barcelona。筆者も、本誌にその様子をレポートした

 これに対し、23年のMWCは約4年ぶりにドコモがブースを構えたほか、国内キャリア、ベンダー各社の幹部も参加するなど、かつての勢いをほぼ取り戻していた。22年は必須だったワクチン証明やマスク着用も撤廃され、会場は活況を呈していた。日本でも、5月に新型コロナウイルス感染症が5類に分類変更されるのを受け、各種規制が撤廃されようとしているが、一足先に、“日常に戻った世界”で過ごすことができた。

会場は人がひしめき合うほどの大入り。マスク着用義務もなくなり、かつてのMWCが戻ってきたように見えた

 それはさておき、MWCでは、やはりこれまでと同様、現地SIMを用意することにした。ahamoや楽天モバイルなど、無料の国際ローミングが広がっているが、筆者のドコモ回線は5Gギガホのため、会期前後まで含めたすべての通信をローミングでまかなうと料金が7000円を超えてしまう。楽天モバイルは海外ローミングが2GBまでなので、容量が足りない。

 しかも国際ローミングは、その仕組み上、いったん日本のキャリアの設備に接続してからインターネットに抜けるため、遅延が大きくなりがちだ。特に欧州内のサービスにアクセスする際には、これが少々厄介。MWCは、デジタルバッジに完全シフトしているため、会場自体はもちろん、プレスルームや講演、イベント会場えの入場にもアプリが必要になる。Googleのサービスも現地回線からの方がアクセスが速いため、現地SIMはあった方がいい。

入場には顔認証かアプリのQRコードをスキャンしてもらう必要がある。公式アプリを表示する機会が多く、現地サーバーとのレイテンシが―低い回線は1つ持っておきたかった

 今年は、日本でMovistar(テレフォニカ)のSIMカードを調達。現地で、VodafoneのSIMカードが10ユーロ(約1450円)で50GBと安く、同社のショップにあった自販機が手軽だっため“追いSIM”をすることにした。スマホは3台持ち歩いていたため、SIMカードが1枚ぐらい増えても出番は十分ある。

Vodafoneショップの自販機で、追いSIMをした

 会期中は、メイン端末の「Galaxy Z Fold4」にテレフォニカのSIMを、サブ端末で主に録音用に使っている「Pixel 7」にVodafoneのSIMカードを差して運用した。ところが、両方を使っていると、明らかに「Pixel 7」の方が速度が高く、サイトなどの表示も速い。5Gに接続していることが非常に多いからだ。スピードテストをしてみても、3ケタMbps出る。特にMWC会場ではVodafoneがエリア化をがんばっているためか、屋外で700Mbpsも速度が出た。会場のWi-Fiいらないな……という速度である。

5GにつながったVodafone回線のPixel 7。会場では700Mbps超え
Vodafone SIMを差しても、イマイチ速度が乗らない「Galaxy Z Fold4」。これだけ出ていれば通常は十分だが、100Mbps超えが当たり前になってくると、少々物足りない

 「Galaxy Z Fold4」のMovistarも使いものにならないわけではないが、ワンテンポ、速度が遅い印象があった。4Gまでしか繋がらないからだろう。VodafoneのSIMカードに変えれば、5Gにつながるかと思いきや、やはり4Gどまり。反対に、Movistarを差した「Pixel 7」は当たり前のようにサクッと5Gにつながり、3ケタMbpsの速度をたたき出していた。おそらく、これは、キャリアやSIMカードの対応というより、端末側の仕様の違いが影響している可能性がある。

MovistarのSIMを差した「Pixel 7」。こちらも200Mbpsを超えている

 「Pixel 7」は、欧州でも販売されている。スペックこそ日本版とは異なるが、ソフトウェアはかなりの部分共通しているため、欧州でも5G対応のSIMカードを差せば、きちんと5Gのネットワークに接続する。これに対し、「Galaxy Z Fold4」はドコモ版で、ソフトウェアも日本国内向けにチューニングされている。周波数が対応していたとしても、海外キャリアのSIMカードを差した際の5G接続まで、考慮されていない可能性は高い。

Pixel 7の日本版(左)と欧州版(右)では、接続できる周波数帯がやや異なる。ただ、どちらもグローバルモデルとしてソフトウェアの共通部分が国内キャリアモデルより多いような印象も

 NSAの5Gの場合、いったんアンカーバンドと呼ばれる4Gに接続してから、5Gの電波をつかむ。「Galaxy Z Fold4」の場合、その組み合わせに対応していなかったり、細かな接続シーケンスが異なっていたりする可能性がある。ドコモの5G国際ローミング対応機種が、いまだにiPhoneシリーズだけなのも、サービス側というより、端末の問題が大きいのだろう。グローバルモデルでメーカーであるGoogleが直接販売している「Pixel 7」は、仕様的に言えばiPhoneに近い。だからこそ、同モデルのみVodafoneでもMovistarでも5Gにつながったのかもしれない。

 日本並みに4Gが速ければ、正直どちらでもいいが、バルセロナの場合、上記のように通信速度のケタが1つ変わってくる。世代の違いを実感しやすいと言えるだろう。海外キャリアの仕様に1つ1つ合わせていくのはなかなか大変だが、キャリア側も5G国際ローミングを拡大していく必要がある。今後の対応に期待したい。