みんなのケータイ
バルセロナで5Gを体験、ただし端末選定には要注意
2023年3月8日 00:00
今年も、スペイン・バルセロナで開催されたMWC Barcelonaを取材してきた。新型コロナウイルス感染拡大を受け、20年はイベント自体が中止になり、21年も2月開催を断念。7月に規模を大幅に縮小し、オンラインの比重を高めたハイブリッド開催で復活した。昨年は、ようやく通常のスケジュールに戻ったが、規模はやや縮小気味だった。アジア圏からの渡航も少なく、日本人の姿はまばらだった。
これに対し、23年のMWCは約4年ぶりにドコモがブースを構えたほか、国内キャリア、ベンダー各社の幹部も参加するなど、かつての勢いをほぼ取り戻していた。22年は必須だったワクチン証明やマスク着用も撤廃され、会場は活況を呈していた。日本でも、5月に新型コロナウイルス感染症が5類に分類変更されるのを受け、各種規制が撤廃されようとしているが、一足先に、“日常に戻った世界”で過ごすことができた。
それはさておき、MWCでは、やはりこれまでと同様、現地SIMを用意することにした。ahamoや楽天モバイルなど、無料の国際ローミングが広がっているが、筆者のドコモ回線は5Gギガホのため、会期前後まで含めたすべての通信をローミングでまかなうと料金が7000円を超えてしまう。楽天モバイルは海外ローミングが2GBまでなので、容量が足りない。
しかも国際ローミングは、その仕組み上、いったん日本のキャリアの設備に接続してからインターネットに抜けるため、遅延が大きくなりがちだ。特に欧州内のサービスにアクセスする際には、これが少々厄介。MWCは、デジタルバッジに完全シフトしているため、会場自体はもちろん、プレスルームや講演、イベント会場えの入場にもアプリが必要になる。Googleのサービスも現地回線からの方がアクセスが速いため、現地SIMはあった方がいい。
今年は、日本でMovistar(テレフォニカ)のSIMカードを調達。現地で、VodafoneのSIMカードが10ユーロ(約1450円)で50GBと安く、同社のショップにあった自販機が手軽だっため“追いSIM”をすることにした。スマホは3台持ち歩いていたため、SIMカードが1枚ぐらい増えても出番は十分ある。
会期中は、メイン端末の「Galaxy Z Fold4」にテレフォニカのSIMを、サブ端末で主に録音用に使っている「Pixel 7」にVodafoneのSIMカードを差して運用した。ところが、両方を使っていると、明らかに「Pixel 7」の方が速度が高く、サイトなどの表示も速い。5Gに接続していることが非常に多いからだ。スピードテストをしてみても、3ケタMbps出る。特にMWC会場ではVodafoneがエリア化をがんばっているためか、屋外で700Mbpsも速度が出た。会場のWi-Fiいらないな……という速度である。
「Galaxy Z Fold4」のMovistarも使いものにならないわけではないが、ワンテンポ、速度が遅い印象があった。4Gまでしか繋がらないからだろう。VodafoneのSIMカードに変えれば、5Gにつながるかと思いきや、やはり4Gどまり。反対に、Movistarを差した「Pixel 7」は当たり前のようにサクッと5Gにつながり、3ケタMbpsの速度をたたき出していた。おそらく、これは、キャリアやSIMカードの対応というより、端末側の仕様の違いが影響している可能性がある。
「Pixel 7」は、欧州でも販売されている。スペックこそ日本版とは異なるが、ソフトウェアはかなりの部分共通しているため、欧州でも5G対応のSIMカードを差せば、きちんと5Gのネットワークに接続する。これに対し、「Galaxy Z Fold4」はドコモ版で、ソフトウェアも日本国内向けにチューニングされている。周波数が対応していたとしても、海外キャリアのSIMカードを差した際の5G接続まで、考慮されていない可能性は高い。
NSAの5Gの場合、いったんアンカーバンドと呼ばれる4Gに接続してから、5Gの電波をつかむ。「Galaxy Z Fold4」の場合、その組み合わせに対応していなかったり、細かな接続シーケンスが異なっていたりする可能性がある。ドコモの5G国際ローミング対応機種が、いまだにiPhoneシリーズだけなのも、サービス側というより、端末の問題が大きいのだろう。グローバルモデルでメーカーであるGoogleが直接販売している「Pixel 7」は、仕様的に言えばiPhoneに近い。だからこそ、同モデルのみVodafoneでもMovistarでも5Gにつながったのかもしれない。
日本並みに4Gが速ければ、正直どちらでもいいが、バルセロナの場合、上記のように通信速度のケタが1つ変わってくる。世代の違いを実感しやすいと言えるだろう。海外キャリアの仕様に1つ1つ合わせていくのはなかなか大変だが、キャリア側も5G国際ローミングを拡大していく必要がある。今後の対応に期待したい。