【MWC Barcelona 2022】

コロナ禍からの完全復活を目指すMWC、デジタルフル活用でのコロナ対策も

 2月28日(現地時間)に、スペイン・バルセロナでMWC Barcelona 2022が開幕した。

 例年、2月~3月にかけて開催されるMWCだが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、20年のイベントは急遽中止に。21年は復活を遂げたが、時期を6月に移したうえで、オンラインとリアルのハイブリッド方式となった。コロナ禍の真っただ中ということもあり、出展を見送った大手企業も少なくなかった。

2月28日に、スペイン・バルセロナでMWC Barcelona 2022が開幕した

 22年のMWCは、通常通りの時期に開催されるMWCとしては3年ぶりのイベントになる。昨年同様、オンラインとリアルのハイブリッドがうたわれてはいるが、現地のみでしか体験できないイベントや展示の割合も多く、主体はリアルに置かれていると言えそうだ。

 会期初日に展示ホールを歩くと、数多くの参加者が会場内を歩いていた。2年前のように、人にぶつかりそうになるほどの混み具合ではなく、来場者自体が完全に戻ったわけではないと思われるが、閑散としているといった様子は一切ない。

 ホールにはところどころ“謎の休憩所”があったり、これまでよりホールが減っていたりと、「完全復活」とまでは言えないが、雰囲気はかつてのMWCに戻りつつあることはうかがえる。

コロナ以前と比べるとこれでもまだ人の数は少ないが、勢いが戻りつつあることが分かる
ブースの数自体はコロナ前よりやや縮小しており、出展キャンセルが原因と思われる休憩所もできていた
プレス向けイベントもご覧のとおり、記者でギッシリ

 ただし、中国人や韓国人、日本人と思われる参加者はまばらだ。どちらかと言うと、アジア圏の国や地域は、隔離などをはじめとした出入国の規制が厳しいため、参加が難しかったのだと思われる。

 各イベントでも、東アジアに拠点を構える会社のキーパーソンは、ビデオ出演という形を取っていることが多かった。講演会場に集まり、録画されたプレゼンテーションの映像を参加者みんなで見るというのは少々シュールな光景だが、デバイスメーカーの場合、そのあとにハンズオンイベントを設けることで、リアルなイベントとして価値を出そうとしているようだ。

国や地域によっては渡航が難しかったためか、キーパーソンのプレゼンテーションが動画で流されるイベントもあった。写真はファーウェイから独立したHonor社の会見

 ちなみに、スペインへの入国条件は意外と緩く、成人の場合、最後に打った2回目もしくは3回目のワクチンから9カ月経っていなければ、事前の検査や隔離は一切不要。あとは「Spain Travel Health」というサイトにフライト番号や滞在先を入力し、発行されたQRコードを持参するだけだ。筆者も渡航2週間前にブースター接種を終えていたが、ほぼアプリで発行したワクチン接種証明書は、ほとんど出番がなかった。

 3月1日からは帰国時の水際対策も緩和され、スペインからの場合、ワクチン3回接種で自己隔離も免除されるようになった。待期期間がなくなったことで、ビジネスでの往来はしやすくなったと言えそうだ。帰国前にPCR検査が必要など、まだまだハードルはあるためコロナ禍以前と同じようにとまではいかないが、この程度の規制で済むようであれば、来年は日本からの来場者が増えることは期待できる。

 コロナ禍により、イベントのルールにはさまざまな工夫が凝らされている。デジタルバッジは、そのひとつだ。

 もともとMWCでは、紙のパスが発行され、そこに印字されていたQRコードを読み取って入場する方式だったが、22年は全面的にデジタルに移行。入場時などにはアプリでデジタルバッジを表示させ、QRコードを読み取らせる必要がある。紙のバッジもセルフで印刷できるが、会話相手に所属や名前を示すだけの簡易的なものという位置づけで、パスの役割はない。

入場や各種イベントの参加には、アプリ化されたデジタルバッジを使用する
入場ゲートの様子。顔認証用の改札と、QRコード用の改札に分かれる
旧来のバッジを印刷する自動印刷機もあるが、名前を対面した相手に示すだけの役割にとどまっている

 顔写真を登録しておくと、会場入場時には、顔認証を利用することも可能だ。この方式はコロナ禍以前のMWCから導入されていたが、紙のパスが使えなくなったのは大きな変化と言える。

 デジタルバッジは、毎日、発熱がないなど、健康状態が万全であることを宣誓をしなければ有効にならない仕組み。あくまで自己申告ではあるが、こうしたプロセスを設けることで、入場での混雑を回避しているようだ。

毎日、健康に関する宣誓をする必要がある

 バッジを有効にするもうひとつの条件が、ワクチン接種証明になる。2回目から9カ月以内、もしくは3回目のブースター接種をしている必要があり、証明書はサイトを通じてオンラインで提出する。ワクチン接種ができない場合は、陰性証明や快復証明でも代わりになるが、前者は有効期限が72時間と短く、少なくとも会期前、会期中に2回検査を受ける必要が生じてしまうこともあって、コストもハードルも高い。

 また、会場内では、欧州規格の「FFP2」に準拠したマスクの着用が求められる。マスクの表面には、「CEマーク」が印刷されていることが必須になっている。ただし、こちらに関しては運用が厳密ではなく、CEマークのないマスクをしている来場者や、通常の不織布マスクをしている来場者も散見された。“マスク警察”が会場内を循環して逐一チェックをするわけにもいかないため、運用面は緩くなっているようだ。会場入り口には、マスクを販売する自販機も設置されていた。

マスクはFFP2準拠のものが求められる
マスクは会場でも販売されていたが、筆者が帰宅時に見た際には完売していた
ところどころに消毒液も設置されていたが、使用している人はほぼいなかった

 完全復活に向けて大きな一歩を踏み出したMWCだが、アフターコロナ、ウィズコロナにおけるイベントのあり方として、日本の企業が参考にできることは多そうだ。特に、スマートフォンのアプリをフル活用して効率化を高めている点や、ワクチン接種証明書などを通じてリスクを低減させている点などは、積極的に取り入れてほしいと感じた。