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Revolutのメタルカードをスマホに入れてフル活用してみた

 「Revolut(レボリュート)」をご存じだろうか。2015年に英国でスタートした金融サービスで、国内外を含む安価で安全な送金サービスを中心に、決済や金融商品取引など、お金にまつわるさまざまなサービスを世界35以上の地域に提供している。

 従来の金融機関とは異なり支店やATMなどの設備を持たず、モバイルアプリ上で金融サービスを次々と追加していく流れはインターネット銀行そのものだが、こうしたフットワークの軽い新しい金融サービスを提供する事業者を、海外では「Challenger Bank(チャレンジャーバンク)」や「Neobank(ネオバンク)」と呼んでおり、同じく英国ベースのMonzoやドイツのN26などと並び、同種のサービスの代表的な存在となっている。日本には2019年に上陸したが(正式サービスインは2020年10月)、詳細については筆者のインタビュー記事を参照いただきたい。

 今回、このRevolutが今年2022年1月にスタートしたばかりの「Metal(メタル)」プランを試用する機会を得たので紹介したい。

Revolutのメタルカードを試用してみた

Revolutのメタルカードの使い方

 Revolutの基本的な使い方は、AndroidとiPhoneのどちらでもいいのでアプリをインストールしてアカウントを作成し、本人確認を経てクレジットカードまたは銀行口座からアカウントに入金(チャージ)することで各種サービスを利用できるようになる。前述の経緯から外貨両替(口座)や海外送金、海外ATMでの引き出しといったサービスが充実しているが、一番ベーシックな使い方は入金したお金を支払いに充てることだろう。サービス利用開始にあたって最低金額である2000円をチャージすると、インターネットでの支払いを可能にするバーチャルカードの発行のほか、リアル店舗での支払いやATMでの出金を可能にする“リアル”カードの発行も可能だ。

 このようにRevolutは入金のみで基本的なサービスは利用可能となっているが、無料のスタンダードプランに加え、ATMの無料出金枠の拡大などの各種特典が得られる有料プランが存在する。サービス開始当初は月額980円のプラミアムプランのみの提供だったが、このたび日本においても最上位にあたる月額1980円のメタルプランの提供が開始された。

 無料出金可能枠の拡大などの優遇はあるが、メタルならではの大きな特徴としては2つあり、1つは「カード決済での1%キャッシュバック」の常時提供、もう1つは専用の「メタルカードの発行」が挙げられる。前者は特別キャンペーンで今年3月いっぱいまで「カード決済での5%のキャッシュバック」特典があるものの、残念ながら本稿が公開されるタイミングではほぼ終了となっている。後者のメタルカードは、高級感をうたうカード発行サービスにおいて見かけることの多い「金属製の重量感あるカード」が通常のプラスチックカードの代わりに送られてくる。全部で5色あり、アプリで発行を申し込むと1週間ほどで筆者の手元に航空便がやってきた。

申し込みから1週間ほどでメタルカードがやってきた。これはそのパッケージ

 メタルカードは質感がかなりしっかりしており、ずしりとした重さがある。一般にメタルカードといっても「フレームのみ金属」「片面のみ金属」「両面が金属」といった具合にいくつかのグレードがある。触感などで確かめる限り、このカードは少なくとも両面の大部分が金属製になっているようだ。一方で、金属製ということで電波を透過しないため、「非接触のタッチ決済には利用できないのでは?」と思っていたが、そんなことはなかった。表面こそ名前のみが刻印されているが、背面には非接触対応を意味するリップルマークが印刷されており、カード番号や有効期限なども裏面での印刷となっている。よく見ると背面の外周に沿ってうっすらとアンテナ線が這っており、メタルカードでも問題なく非接触決済ができることが確認できる。ICカードとしても利用できるので、非接触非対応の決済端末でも問題ない。ただし、店によっては「メタルカード挿入禁止」と書かれているケースもあるので(Revolutによれば実際には問題ないという回答なのだが……)、その際には気を付ける必要がある。

ラベンダー色のメタルカードでVisaのタッチ決済を行う

Revolutをスマホで活用してみる

 ただ、これだけだと「メタルカードを使ってみた」というだけでスマホとは直接関係ない。決済機能のスマホならではの使い方としては2つあるが、そのうちの1つが「バーチャルカードの発行」だ。バーチャルカードは無料で即発行できるオンサイン決済向けのVisaプリペイドカードという位置付けだが、通常のバーチャルカードのほか、「Disposable Virtual Card」つまり「使い捨て」のバーチャルカードというのも発行できる。1回ぽっきりの利用に限定したバーチャルカードというわけだが、用途としてはズバリ、「海外通販を含む普段利用しないオンラインサイトでの買い物」での活用だ。使ったカードは即破棄されるので、万が一番号が流出したとしても被害は最低限の個人情報で済む。カード自体の悪用が続かないメリットがあるので、Revolutによればこうした用途で活用するユーザーは多いようだ。

「使い捨て」のバーチャルカードを発行できる

 セキュリティ的にはそれ以外にも、カード利用があったタイミングでRevolutはこまめに通知してくれる。買い物した店舗や金額だけでなく、残高が減少していた場合の通知や、決済の失敗理由が説明されたりといった具合だ。1日の利用金額も常にカウントされているようで、使い過ぎを気にする方にはちょうどいいだろう。

残高が一定金額を下回った場合の警告。メッセージが英語だが、筆者の言語モードが英語になってるだけで、普段はちゃんと日本語表示になる
決済を拒否されたと思って通知を見たら、単なる残高不足だった
決済額とともに、1日に使った金額が表示されている
実は利用金額集計機能にはバグがあるようで、キャッシュバックされた金額(マイナス決済)も絶対値が加算されているため、正確な金額になっていない

 そして、スマホならではのもう1つの使い方が「モバイルウォレットへの登録」だ。残念ながらRevolutは日本国内ではまだApple Payに未対応なのだが、Google Payには登録することでスマホを使った「NFC決済」が可能になる。ICカードのみ受け入れる店舗があるのでメタルカードの持ち歩きは必要だが、いざというときに財布ではなく、手持ちのスマホだけで支払いを済ませられるのはやはり楽だ。

 Google PayではNFC決済時に「(少なくとも)ロック画面を表示させた状態でタッチ」する必要があるので、この点だけ注意が必要だ。いろいろ試したが、画面がオフの状態、あるいはオフからオンに切り替えた直後の状態にタッチするとエラーが出て決済が強制終了してしまうことがある。そのため、スマホを決済端末に近付ける前に画面をオンにした状態で準備しておき、“ゆっくり”と落ち着いてタッチ動作を行うことで成功率が上昇する。筆者は最初、時間的余裕のあるセルフレジでは普通に成功していたものの、有人レジでは少し操作を慌てるせいかかなりの確率で失敗していた。後に動作に慣れて有人レジでも問題なくタッチ決済が可能になり、いまのところ明確にGoogle Payによる支払いが通らなかった店舗は見かけていない。

Google PayによるNFCのタッチ決済

 そしてもう1つ、Google Payのようなモバイルウォレットを活用した際のメリットとして「非接触決済におけるリミットを突破できる」という特典がある。通常、ICカードでは「PINを入力」することで、「ICカードを持っている」+「PINを知っている」という2要素認証を突破したと判定され、カード決済を問題なく利用できるようになっている。

 一方で、非接触(CL:Contactless)決済では「タッチするだけで支払いが完了する」というその性質上、PIN入力を要求されない。利便性を考慮しての措置だが、これでは「非接触対応カードを持っているだけで決済できてしまう」という問題があるため、国によっては(より正確にはカードブランドのルールによっては)、非接触決済での上限金額が設定されており、それを超える決済金額の場合にはICカードの利用に誘導したり、あるいは決済そのものを拒否するといった結果となる。この現象はスペインでApple PayやGoogle Payを利用した石野純也氏がレポートしているが、非接触決済特有の事情といえるだろう。

 詳細は今後筆者の連載の中で解説していくが、日本の場合はこの上限金額が1万円に設定されており、これを超える金額の場合には非接触決済は通らない。

 ただし例外があり、スマホで提供されるモバイルウォレットのように「PIN入力」や「指紋/顔認証」といった本人確認の仕組みを使ってロックを解除した状態で非接触決済が行われた場合に、前述のICカードにおける「PIN入力」と同等のセキュリティ対策が施されたと判断し、1万円を超える支払いでもNFCのタッチ決済が可能となるケースがある。「可能となるケースがある」と書いたのは、そもそもこの判定が行われず、無条件で弾くケースというものも存在し、基本的には加盟店(アクワイアラ)やカード会社(イシュア)のルールに則る形で各々の運用が行われているためだ。下記はその1万円を超える金額でGoogle Payが成功したケースだが、必ずしも通用するわけではないので、モバイルウォレットがあっても物理カードの持ち歩きは必須だ。

1万円超の決済でGoogle Payが成功した例。あくまで、それが可能な店舗もある……という認識でいた方がいいだろう