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2年ほど待った「Poly」がきた

【AXON 7】

 ポータブルDAC・アンプの「Mojo」について、これまで2回ほど本連載で掲載している。そもそもの発端は、Mojoに後付けする、SDカードを読めるオプションが出るという構想を知ったからで、その製品「Poly」が正式に“発表”された2017年1月に、ベースになるMojoを購入した(ちなみにこの時点でMojoは発売から1年経過している)。そこからさらに1年ほど待たされるとは露程にも思っていなかったが、途中、夏頃にポータブルプレーヤーの「Shanling M1」をスマートフォンからコントロールできる「HiByLink」を導入、Polyの先取りともいえるシステムを運用し、「もうこれでいいかも。Polyはまだ発売されないし……」などとテンションは下がりつつあったが、ついに/やっと2017年12月にPolyが国内で発売、晴れて大容量モバイルバッテリーのような独特なサイズ感のポータブルプレーヤー「Mojo+Poly」が実現することとなった。

MojoとPoly

 「Poly」は、接続したMojoの電源ボタン兼ランプの挙動(シグナル)を除けば、実質的に1つのインジケーターLEDを備えるだけ。SDカードスロットはあるものの、かなり純度の高い、DAC・アンプ付きのネットワークプレーヤーという製品だ。Mojoに装着したイヤホンなどで、ネットワーク上あるいはPolyのSDカード内の音楽を再生し聴くという使い方だ。

 LANに参加するという考え方のシステムのため、操作や管理は、スマートフォンのテザリングや、同じLAN内のパソコンなどから行う。設定時を除き、スマートフォンのWi-FiやBluetoothで直接Polyに接続するという使い方ではないのがポイントで、この価格帯のポータブルオーディオ機器としては比較的ユニークな仕組みであり、現時点では課題がいくつかある点でもある。

 メーカーのChordからは、プレーヤーアプリに相当するものは提供されず、MPDやDLNA対応の、既存のアプリを使って下さいという割り切り方も、据え置き型のDACやネットワークプレーヤーを販売しているのと同じスタンスと考えると、理解できなくもない。ちなみにPolyに装着したSDカードからの再生の場合、再生処理はサーバーサイドアプリケーションであるMPDが行い、MPDクライアントアプリはリモートコントロールのみという使い方になる。楽曲データベース、プレイリストなどもPoly内のSDカードに保存される。

 12月14日時点の、ファームウェアバージョン 1.0.6では、Polyは総合的にはまだすこし発展途上の製品だ。Poly本体の設定を確認・変更できるはずの、取扱説明書でも案内されているアプリが、まだ開発中で提供されていないことはマイナス点(別の方法で本体の設定変更は可能)。

 ファームウェアは自動ダウンロード・自動適用する仕組みが備わっているが、いつダウンロードし、いつ適用しているのか、知るすべがないので、最初は大いにつまずいた。通常時の起動にかかる時間も、数十秒から数十分(!)まで幅が広く、そもそも起動中にエラーがあったのか正常だったのかも分からず、掴みどころがない。インジケーターLEDによるステータス表示は、起動中は沈黙しているため、改善の余地はあると感じられる。正直、現時点では、毎日ルーチン的に使うにはちょっと忍耐力が求められる内容だ(笑)。

 先に問題点を書いてしまったが、荒削りな無線の仕様や、Chordののんびりとしたソフトウェア開発に呆れていてもPolyを放り出したくならないのは、その音質が素晴らしいから。Chordは、ハイエンドモデルなら100万円コースの製品がラインナップにゴロゴロしている高級オーディオメーカーであり、音質にこそ本来は期待するべきで、実際にPolyと組み合わせたMojoからは、これまでMojoで聴いていた音はいったい何だったのかと思うほど非常にキレのあるサウンドが出てくることに、ただ驚く。

 運用面でいろいろ“挑戦しがいがある”現状では、使い勝手については想定の7割ぐらいのデキだが、実は音質面でそれほど上げ幅があるとは思っていなかったため、結果的には、期待を上回る内容に感じてしまっている。

 Polyを操作するための音楽プレーヤーアプリ(DLNA/MPDクライアントなど)は、Androidでは選択肢はそれほど多くはないが、スマートフォンと組み合わせるのが前提のポータブルプレーヤーというのも、ユニークで面白いのではないだろうか。