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第597回:WiMAX 2+とは

技術ロードマップ

 「WiMAX 2+」は、モバイルWiMAXサービスを提供するUQコミュニケーションズ(UQ)が、今後導入する通信サービス名の仮称です。「ワイマックス ツープラス」と読みます。UQでは、2013年度下期にWiMAX 2+の導入を目指すとしています。

WiMAX 2+

 現在UQでは、モバイルWiMAX方式(IEEE802.16e-2005)でデータ通信サービスを展開しています。さらに将来的には、「WiMAX 2(WiMAX Advanced)」(IEEE802.16m)と呼ばれる通信方式の導入を目指し、フィールドテストなども実施してきました。

 2012年10月30日、米国シカゴで開催されたイベント「4G World Conference & Exposition」において、業界団体のWiMAX Forumは、WiMAX Advancedを拡張した規格「WiMAX Release 2.1」を発表しました。UQでは、この発表を受けて、現在のモバイルWiMAXの次世代サービスとして、「WiMAX Release 2.1」規格を導入する方向で検討すると発表しました。この規格のUQでのサービス名が「WiMAX 2+」なのです。

WiMAX Release2.1

 WiMAX Release2.1とは、UQがサービス展開しているIEEE802.16e-2005方式にあたる「WiMAX Release 1.0」規格と、WiMAX 2(IEEE802.16m方式)にあたる「WiMAX Release 2.0」を含め、既存のWiMAX規格との親和性を確保し、高速化が図られた無線規格です。

 さらに、Extendedモードとして、W-CDMAやLTEの標準化団体である3GPPが策定する「TD-LTE」の無線とコアネットワークの仕様の一部を「Additional Elements」として取り入れています。

WiMAXとTD-LTE

 LTEには、FDDとTDDの2つの方式があり、TD-LTE方式は、国内でソフトバンクモバイルがサービス展開しており、すでに対応端末も発売されています。この方式では、PHSなどのように上りと下りの通信を時間で分割し、同じ周波数帯を使って通信を行う特徴があります。ロシアやインドなどでサービスが始まっており、また、中国の中国移動通信(チャイナテレコム)も次世代網として導入を検討しているなど、世界でも広く使われようとしている規格です。

 TD-LTE、FDD-LTEともにOFDMAという変調方式に基づく無線通信方式となり、この点ではWiMAXと同じです。したがって、もともとWiMAXとTD-LTEは近い通信方式であると言えます。ただし、似ている通信体系であっても、接続手順などは異なるので、TD-LTEネットワークでWiMAXを運用できるわけではありません。

 そこで、もともと同一体系の技術に基づいているので、WiMAXの手順に従って接続でき、データ通信の接続手順などをTD-LTE互換にしようというのが、「TD-LTE」のコアネットワーク標準の一部を「Additional Elements」として参照する、という意味です。

 WiMAX 2+は、名称こそWiMAXですが、実際の通信手順はTD-LTEと互換性があります。このため、基地局や端末はTD-LTEからの転用が比較的容易になるでしょう。ここが、WiMAX 2+の魅力ということになります。

 ちなみに、WiMAX 2+は既存WiMAXサービスを包含した仕様であり、現在のWiMAXユーザーが利用しているWiMAX機器およびサービスは継続して利用可能となる予定です。

サービス開始の鍵は、周波数の割当時期

 なお、UQでは、新たな周波数帯域でWiMAX 2+を提供する方針です。この帯域は、かつてモバイル放送(モバHO!)が使っていており、現在は空き領域となっている帯域です。UQでは、WiMAX 2の提供を目指し、20MHz幅を利用する申請を総務省に出していました。

 WiMAX 2は、WiMAX ForumのWiMAX Release 2.0という仕様に準拠する通信規格でサービスインする予定でしたが、総務省の周波数割り当て審議が進まず、現在もサービスは開始されていません。

 2012年10月、新しいWiMAX Forumの仕様であるWiMAX Release 2.1が発表されたため、申請中の新規周波数の割り当て20MHz幅を獲得した場合、このRelease 2.1を利用したWiMAX 2+で使う、と発表したわけです。

 通信速度などに関しては未定ですが、WiMAX 2では、4G(4th Generation、第4世代)世代の移動体通信として、規格上、下り最大330Mbps、上り最大112Mbpsを目指していたことから、WiMAX 2+も同様に現在より大幅に速度が向上するものと期待されます。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)