ケータイ用語の基礎知識
第982回:ケータイ回線だけど家で使える? 工事なしでネットにつながる「ホームルーター」とは
2021年10月27日 06:00
ホームルーターって何?
ホームルーターとは、電源コードをコンセントに挿すだけで、建物内をWi-Fiインターネットエリアにできる、家庭用Wi-Fiルーターのことです。
インターネットへの接続には携帯電話の5Gあるいは4G LTE/WiMAX2+といった携帯電話/モバイル回線を使用します。
ルーターですから、複数台のWi-Fi接続する端末が、この機器を経由してインターネット接続を利用することができるわけです。通信速度は、たとえばドコモのhome 5Gの場合下り最大理論値速度4.2Gbpsで、これを接続台数で分け合うというような形になります。
固定回線のルーターとの違いは、固定回線の場合基本的にONU(終端装置)があり、WAN側インターネットの回線はあって、その先にルーターが接続されるのに対し、ホームルーターでは回線装置とルーターそのものが一体化していることでしょう。
ホームルーターでは回線に接続する装置、そこからWi-Fiで分配する装置が一体化しており、一台でWANへの接続、LANの構築を済ませることができます。本当に、一個の装置があれば、手軽に「コンセントに電源をつなげば」Wi-Fiインターネット接続環境ができあがるわけです。
こう書くと、ホームルーターはモバイルルーターにとてもよく似ているものにも思えます。ホームルーターとモバイルルーターとの違いは、ホームルーターが基本的に「届け出住所以外の利用はできない」ということです。
モバイルルーターはどこにでも持って行けますが、ホームルーターは、WAN側回線に5Gや4GLTEといった携帯電話回線を使う機器でありながら、屋外に持っていって使うということができません。
工事いらず、手軽さが魅力ホームルーター
インターネットを家庭に引くとなれば、固定回線、たとえばフレッツ光などを利用しようとすると光配線の工事が必要になります。自宅まで配線の必要があるため、日程的には申し込みをしてから3週間以上かかるのが普通です(2021年10月現在)。
その点、ホームルーターは、自宅が携帯電話のカバーエリアでさえあれば、工事不要ですぐに利用が可能です。そのため、コラボ光事業者のなかでは、「ソフトバンク光」のように固定回線を申し込むと開通するまでホームルーター、またはモバイルルーターを無料貸し出しすることをうたっている業者もあります。
ただ、ホームルーターは、携帯電話回線を使うため、有線の光回線などを使う場合と比べて若干、通信速度が遅くなる場合もあります。特に5Gエリア境界線上にある場合などはそうでしょう。
固定回線の場合、通信容量的には、基本的には制限などはありませんが、ホームルーターの場合、物によっては、はじめから容量制限のあるものがあります。これは契約時に注意して確認してください。
似てるようで違う? ホールムーターとモバイルルーター
モバイルルーターもホームルーター同様に使用エリアが携帯電話のカバーエリアでありさえすれば、工事などは不要ですぐに使えます。この点で、ホームルーターと、モバイルルーターは似ていると言えます。
一方でその両者の違いは、モバイルルーターがバッテリーを内蔵しており屋外でも利用できることでしょう。逆にいえば使用しながらバッテリー切れの心配をしなくてはならないということでもあります。
モバイルルーターは、ホームルーターに比べてコンパクトに作られており、ホームルーターの方が「アンテナセレクション」といった技術で快適に端末が電波を利用する技術を盛り込んでいることがありますが、モバイルルーターでは難しいようです。
また、最大接続台数も、たとえばモバイルルーターではPocket WiFi 5G A101ZTで64台なのに対し、ホームルーターはソフトバンクのAirターミナル5で128台と多くなっています。
キャリア3社が提供するホームルーターは?
ここでは2021年10月26日現在、携帯電話キャリア3社が提供しているホームルーターを紹介します
ドコモ:home 5G HR01
NTTドコモが、2021年8月に提供を開始したホームルーターです。
対応する通信速度は、WAN側5G接続で下り最大 4.2Gbps、上り最大 218Mbpsとなっています。
LAN側は、Wi-Fi 6をサポートし、最大通信速度は1201Mbps(5GHz帯)、同時接続端末台数は最大で64台です。また、有線接続もサポートしており、ギガビットイーサーネットのポートが1個備えられています。
料金プランはホームルーター専用のものとなりますが、月々の使用データ容量制限はありません。
au(KDDI) :ホームルーター 5G ZTR01
KDDIがauブランドで2021年8月に提供を開始したホームルーターです。
WiMAX2+、5G、4G LTEに対応しており、下り最大2.7Gbps、上り最大218Mbpsに対応しています。
LAN側は、Wi-Fi 6をサポートしていますので、最大通信速度は1201Mbps(5GHz帯)、Target Wake Timeに対応したスマートフォンなどではバッテリーを長持ちさせることが可能です。同時接続端末台数は最大で30台です。
また、有線LANポートはギガビットイーサーネット2口が備えられています。専用アプリ「ZTELink JP」を利用すると、データ通信量やデータ通信速度、電波強度、LEDのON/OFFの切り替えといった便利な機能を利用することもできます。
auではほかにも「Speed Wi-Fi HOME 5G L12 NAR02」という機種も提供しています。
auのホームルーターの特徴は、料金体系が2つになっていることでしょう。スタンダードモードとプラスエリアモードとなっています。
スタンダードモードとは「WiMAX2+と同じエリアで使用する」ときで、この場合は、月間データ容量制限上限なしで使用できます。一方、プラスエリアモードはこれより広い「「auサービスと同等エリアで使用する」ときになります。この場合は、月間30GBまでのデータ使用量制限が課せられます。これを超えると月末まで通信速度128kbpに落ちるという厳しい制約が課せられます。
ソフトバンク :Airターミナル 5
ソフトバンクは、以前から「SoftBank Air」という名称で、ホームルーターを展開してきました。いわば、このジャンルでは先駆者ともいえる事業者です。AirターミナルシリーズはこのSoftBank Air用ターミナルの端末なのですが、2021年10月に最新版のAirターミナル5が提供開始されました。
ソフトバンクでは、多くの5Gネットワークで使われている、4G LTEのコアネットワークに5Gの無線接続ネットワークを組み合わせたノンスタンドアローン方式5G(5G NSA)方式だけでなく、専用コア設備に5G基地局を組み合わせたスタンドアローン方式5G(5G SA)方式での商用サービスを提供開始しています。
Airターミナル 5は、この5G SA方式にも対応したホームルーターとなっています。
カタログスペックではWAN側通信速度は、下り最大2.1Gbps、4G LTEエリアでは下り最大838Mbpsとなっています。同時接続端末台数は最大で128台です。
LAN側はWi-Fi 6に対応しています。
また、有線LANポートとしてギガビットイーサーネット2口が備えられていて、有線LANでのパソコンなどとの接続も可能になっています。
月々の使用データ容量制限はありません。