ケータイ用語の基礎知識

第928回:デジタル手続法とは

手続きをデジタル・ワンストップ化

 デジタル手続法とは、2019年5月に成立した法律で、正式名称は「情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律」といいます。

 簡単に言うと、行政手続きを電子申請にして「パソコンやスマートフォンなどを利用してオンラインでできるようにする」「同じ情報が必要な手続きは繰り返さず一度で済ませる」「情報提供は一度だけで済むようにする」ことで、ユーザーの利便性を高めるとともに、行政の効率化につなげることを目的とした法律です。

 たとえば、相続、介護の手続きなどの際、市町村役場に行かなければならなかったものがオンラインでできるようになり、引越などでの住所変更などの際、これまで市町村役場、電力会社、ガス会社、水道公団などに別個に届け出をださなければならなかったのが、これも「ワンストップ」で完結するようになります。

行政手続きと同時に、関連する民間手続きのワンストップ化も

 さらに詳しくこの法律を見ていきましょう。デジタル手続法では「行政のデジタル化に関する基本原則などを定める」とともに「行政のデジタル化を推進するために、各個の施策を講じ」ています。

 まず「基本原則」に関してですが、これは「国、地方公共団体、民間事業者、国民その他の者があらゆる活動において情報通信技術の便益を享受できる社会の実現」を目標としています。そして、そのために、以下の3つの基本原則を定めるとしています。

1.デジタルファースト:個々の手続・サービスが一貫してデジタルで完結する

2.ワンスオンリー:一度提出した情報は、二度提出することを不要とする

3.コネクテッド・ワンストップ:民間サービスを含め、複数の手続・サービスをワンストップで実現する

 これらの実現のために、「行政手続きを原則オンライン化(ただし、地方公共団体などに関しては努力義務とする)し、本人確認や手数料納付も電子署名や電子納付などでオンラインで実施、行政手続きに関連する民間手続きもワンストップ化、法令に基づく民間手続きについて支障がないと認める場合にはオンライン化を可能とする法制上の措置を実施する」とされています。

 たとえば、携帯電話事業者の場合、契約者本人が亡くなったときに死亡届と同時に契約を止めるということができるようになるのかもしれません。

 また、「行政のデジタル化を推進するための各個の施策」ですが、これに関しては、関連法として「住民基本台帳法」「公的個人認証法」「マイナンバー法」がそれぞれ改正されています。

 具体的には、主に以下のような点が変わりました。

1.国外転出者による公的個人認証(電子証明書)・個人番号カードの利用

 →これまでは住所が海外にある方にはマイナンバーカードが発行されませんでしたが、今後は国外転出者にも発行され、公的個人認証(電子証明書)・個人番号カードを活用してオンライン手続・本人確認を行えるようになります。

2.罹災証明書の交付事務等の個人番号利用事務への追加

 →災害などの際に罹災した証明の交付事務等にマイナンバーを使えるようになりました。

3.社会保障分野の事務の処理のために、情報連携の対象の事務や情報を追加:介護などの福祉の事務処理のために情報連携

 →これも(今までしていなかったのが不思議ですが)役所内でのマイナンバーの使える範囲が広がります。マイナンバーカード一枚あれば、ワンストップでその人に関する必要な情報が必要な部署に分かるようになるわけです。

 電子証明書に関しては、改正された「公的個人認証法」「マイナンバー法」で利用者証明用電子証明書の利用方法の拡大(暗証番号入力を要しない方式)がうたわれているので、今後何らかの電子証明に関して追加措置や変更などがあるのかもしれません。現行のマイナンバーカードについてはそのまま利用できる方針とのことです。

 また、注意が必要な点として、これまでマイナンバーカードの代わりに使っていた人の多い「通知カード」が廃止されることが挙げられるでしょう。移行措置として今まではこれも使用可能でしたが、これからはマイナンバーカードのみが正式な個人番号カードとなります。

 これらの法律の施行期日は、ものによってバラバラですが、たとえば国外転出者の個人番号カード・公的個人認証の発行など(マイナンバー法・公的個人認証法改正)は5月24日の公布から5年以内で政令で定める日、マイナンバーカードへの移行拡大(通知カードの廃止)は1年以内で政令で定める日などとなっています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)