ケータイ用語の基礎知識

第927回:LPAとは

eSIMのプロファイル読み込み・切り替えを行う機能群

 LPAとは、コンシューマー向けeSIMを利用する、スマートフォンやPCが搭載している機能群のひとつです。名称は、英語の「ローカルプロファイルアシスタント(Local Profile Assistant)」から来ています。

 「第676回:eSIMとは」でeSIMとは何かを取り上げました。最近ではeSIMを搭載し、ダウンロードして内部にバーチャルなSIMを内蔵できるスマートフォンも増えてきました。

 第676回で取り上げたようにeSIMには、コンシューマー向けのバーチャルなSIM、それとIoTなどで使うM2M向けのeSIMがあります。

 通信事業者が、ユーザーの要求に応じて回線を利用できるようにする一連の作業工程のことを「プロビジョニング」と呼ぶのですが、eSIMは、物理的なSIMを使うのと異なり、通信を使って遠隔地にあるスマートフォンを開通させる「リモートプロビジョニング」ができることが大きな特長です。

 コンシューマー向けのeSIM搭載機器は、プルモデルといって、eSIMを利用したいユーザーやデバイスの動作が起点となって「プロビジョニング」が行われるようになっています。これに対して、IoTなどM2M向けのeSIMはサーバーが起点となってプロビジョニングが行われることから、プッシュモデルと呼ばれます。

 LPAは、プルモデルでプロビジョニングを行うeSIM搭載スマートフォンやタブレット、PCのOS内部プログラムやアプリとして存在します。

 そして、プロファイルをネットワーク上のサーバーからeSIMの本体であるeUICCにダウンロード(ローカルプロファイルダウンロード機能)や、ダウンロードされたプロファイルを管理するデバイスのユーザーインタフェース(ローカルユーザーインタフェース機能)として、あるいはほかのサーバーに自分あてのイベントがないか確認する(ローカルディスカバリサービス)機能があります。

SIMの切り替えなどユーザーインタフェースとしての面も

 コンシューマーモデルでのeSIMを扱うひとつの典型的なモデルとしては、たとえば、こんな風に表すことができます。

 ネットワーク上にeSIMプロファイルを保管・管理するサーバーがいます。このサーバーは、SM-DP+(Subscription Manager Data Preparation+)と呼ばれています。

 デバイスはたとえばWi-FiやeSIM内のブートストラッププロファイル(デバイスメーカーが提供する初期動作専用のプロファイル)を使った通信でSM-DP+につながるようになっています。

 LPAはユーザーインタフェースを持っていて、ユーザーの指示を得て、eSIMのプロファイルの読み込み・アクティベーションを行うことになったとしましょう。

 携帯電話回線を提供する事業者は、eSIMアクティベーション用のQRコードを印刷しユーザーに提供します。デバイス上のLPAは、QRコードの読み取り機能、プロファイルを適切にSM-DP+からダウンロードして、スマートフォンがその事業者の回線で使えるようになる、というわけです。

 また、これはeSIMの大きなメリットのひとつなのですが、eSIMは、ひとつのデバイスに複数のプロファイルを持つことができます。ですから、ユーザーは今、どの事業者のSIM(プロファイル)を使うのかを選択することができます。

 そのため、LPAは、eSIM上にいくつ、どんなSIMデータがデバイス上に入っているかを認識し、どのSIMを利用するのかをユーザーに指示させるユーザーインタフェースの機能も持っているのが普通です。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)