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11月施行の「キャッシュレス法」はどんな内容? 車検費用や反則金も現金なしで
2022年8月23日 18:20
生活の中にキャッシュレス決済が浸透する中、税金など国の歳入についてもキャッシュレス化の兆しが見えている。デジタル庁は23日、報道陣向けに「情報通信技術を利用する方法による国の歳入等の納付に関する法律」(キャッシュレス法)やその仕組みについて説明会を実施した。
キャッシュレス化で目指す姿とは
現状の日本のキャッシュレス決済利用率は、必ずしも高くはない。デジタル庁 企画官の占部祥氏は、国内でのキャッシュレス決済の現状をそう説明する。
経済産業省の資料によれば、クレジットカードや電子マネー、コード決済の支払額をもとにした、2020年のキャッシュレス経済比率は29.7%。21年時点では32.5%と徐々に伸びつつある。
新型コロナウイルスの影響により、クレジットカードや電子マネー、コード決済などすべての決済手段で決済金額が伸びたといい、中でもコード決済の成長が著しい。政府は、2025年までにキャッシュレス決済比率を40%程度まで引き上げることを目指している。
一方で、諸外国と比較してみるとどうか。韓国は2018年時点で94.7%、中国は77.3%、シンガポールは57.6%と近隣のアジア諸国は比較的高い数字を示している。
占部氏は、こうした現状を招いている要因としては海外と比べて、ATMの台数が多い、現金の利便性が高い、偽札の流通が少ないといったことがあるほか、手元にある現金ではなく、実態のないキャッシュレス化により「お金を使いすぎてしまう」や情報漏洩の心配をすることが多い国民性もあるのではないかと指摘する。
キャッシュレス法が11月に施行
キャッシュレス決済を一層、浸透すべく行政手続きでもキャッシュレス決済が使えるよう、法整備が進められている。
現状では、市役所など行政機関の窓口に出向き、手続きをする必要がある。会社員の場合、時間がどりづらいことも多く、感染症のリスクなども生じるなど、現金払いのデメリットは大きい。
具体的には、2023年の1月にも自動車検査登録手数料(車検費用)がキャッシュレスで支払えるようになる見込み。このほかにも、パスポート発給手数料や登記関連手数料、交通反則金なども順次キャッシュレスに対応していく予定となっている。
これらを実現するのが、11月に施行される「情報通信技術を利用する方法による国の歳入等の納付に関する法律」(キャッシュレス法)だ。
同法では、インターネットバンキングなどにより、国民が自ら納付する方法とクレジットカードや電子マネー、コンビニ決済など指定納付受託者に委託する方法の2つが定められており、行政手続きでのキャッシュレス活用の促進が期待される。
ただし、この法律が施行されてもただちにすべての行政手続きがキャッシュレス化されるわけではない。「主務省令で定めるものについて」とあるように、それぞれの省庁などが所管する手数料について、キャッシュレス化の対応が完了したものから順次「主務省令」にリストアップ。その後、実際にキャッシュレス対応するという流れになるという。
カード決済で延滞は?
クレジットカードは、決済した瞬間には事業者にお金は渡っていない。決済の審査・処理の後に送金されることになり、これは行政手続きでも同じことになる。
この場合、納付期限ギリギリにクレジットカードで支払った場合、延滞扱いになってしまうのではないかという疑念があるが、同法では、期限までに決済した場合、その日を納付した日としてみなすとされており、上記のような状況では延滞にはならない。
また、指定納付受託者が指定日までに納付しなかった場合、その事業者から徴収するものとされている。
効果が高いもの中心にキャッシュレス化進める
キャッシュレス化を進める手続きは、支払件数が1万件以上のものを中心に進めていく。コストや効果の面での理由で、2022年度中には取り組み方針を示すことが求められており、今後各省庁でその内容が取りまとめられると見られる。
国における支払い件数が1万件以上の手続きは、全部で160あるという。このうち、約50件についてはほかの法令で対応しており、残る110件がキャッシュレス法による対応が待たれるところとなっている。
占部氏はキャッシュレス化にあたっては、システム整備が重要と指摘。デジタル庁内で専門のチームも編成し、CTOを務める藤本真樹氏も加わりながら検討を進めているという。
加えて、現状では、国税をクレジットカードで納付した場合は決済手数料を求められるが、国民年金では国が負担しているなど、対応の差異が目立つ。こうした部分は今後、デジタル庁や関係省庁間の協議で整理していきたいという。占部氏は「統一できれば一番わかりやすいが、それが可能かというところも含めて検討していく」とした。