ケータイ用語の基礎知識

第906回:完全分離プラン とは

 今回ご紹介する「完全分離プラン」とは、携帯電話を利用する際、通信料と端末代金を完全に分けた料金プランを指す言葉です。

 2019年5月、「電気通信事業法の一部を改正する法律案」が国会で成立しました。2019年秋頃にガイドラインなどが制定され、施行される見込みとなっているこの法律では、完全分離プランが義務化されることとなりました。

 これによって「端末購入を条件に通信料金割引」「一定期間の継続契約を条件とした端末代金の割引」が禁止されることになります。

 2019年5月現在、大手3キャリアは完全分離プランを前提とした料金プランを提供、あるいは発表しています。NTTドコモの「ギガホ/ギガホライト」、auの「新auピタットプラン」など、ソフトバンクの「ウルトラギガモンスタープラス/ミニモンスター」などがそうしたプランとされています。ただし、今後導入される省令やガイドラインの内容によっては、これらのプランの内容は調整される可能性があります

 完全分離プランの導入により、いわゆる「端末購入補助」と呼ばれる仕組みはなくなることになりました。NTTドコモの「月々サポート」は5月で終了しますし、auの「毎月割」は適用可能な従来の料金プランが8月末で受付を終了します。ソフトバンクの「月月割」も既に終了しています。

 完全分離プランの導入にあわせ「通信契約の一定期間の継続利用を条件とした、端末代金の割引」も禁止となります。

 なお、完全分離プランでは、あくまで料金プランと紐付く割引がNGとされており、端末自体の値引きが違反となるわけではありません。

 たとえば新規契約のユーザーに対して、より多くの端末代金の割引を適用する、あるいは、ポイントでの還元といった特典も問題ないとしています。ただし、一部の機種だけ通信が「3GB多く使える」というような特典は、通信料の割引と見なされるのでNGです。

 あくまで、「購入する端末によって通信料金が異なる」ことが違反となるという制度です。

完全分離制の「完全」とは

 「完全」分離とわざわざ“完全”と呼ばれるのは、料金プランに紐付く端末代金の割引だけでなく、長期契約の継続によるユーザーの行きすぎた囲い込み、ユーザーが比較しやすい料金体系の単純化なども含まれているためです。

 現在の状態を、総務省では「ユーザーが自由かつ適切にサービスを選ぶことが阻害されている」と指摘しています。そしてその原因を、たとえば「2年単位での高額な違約金を伴う縛り」や、「自動更新」、「10年以上の継続利用者」といった契約継続に伴う通信の割引が行きすぎた囲い込みになるとしており、これを禁止することとしました。端末購入を条件として、見かけ上の通信費用を複雑化する元だとし、分離することにしたのです。

 そして完全分離プランを実効力をもって実現するため、あわせて販売代理店の届出制も盛り込まれています。

 法律では販売店に関しても、事業者と同様、適正な競争を阻害するおそれがあるような契約条件での縛りなどを禁止する規定を準用すること、としています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)