ケータイ用語の基礎知識
第783回:セルラードローン とは
2016年11月29日 12:32
携帯電話の電波を使って操縦
「セルラードローン」とは、携帯電話の回線を活用する無人機のことです。“ドローン”とは、もともと「自律的に機能する無人機」という意味で、飛行するものだけではなく、地形や障害物を判断して地上を走るような機体を含めてドローンと呼んでいました。ただ、2010年にフランスのパロット社が「AR Drone」というクワッドコプター(4つの回転翼を持ったヘリコプター)を発売し、非常にヒットして以来「自律飛行、または地上から遠隔操作できる無人飛行機」という意味で使われることが多くなっています。
多くのドローンの場合、操作データをパイロットの手元にある操縦装置からドローンへ送ります。ドローンで撮影した映像をユーザーの手元へ送ることもあります。たとえば「AR Drone」の場合、スマートフォンが操縦装置となっていて、Wi-Fiを使って操縦・映像データをやりとりしています。
Wi-Fiを使うと、(装置の出力によりますが)電波の届く範囲が限られます。一方、こうしたデータのやり取りを、携帯電話の電波を使って行うのが「セルラードローン」というわけです。
セルラードローンは、携帯電話の電波が届くエリア内であればどこにでも飛んでいける機体と言えます。従来のドローンと異なり、操縦者からはるか遠い距離でも飛行できます。最近になって法規制に変更が加えられ、セルラードローンの遠距離飛行を行い、商用化に向けた実験が行われるようになってきています。
電波法の基本方針に則り、実験飛行が許可された
基本的に携帯電話は、上空で使う用途は想定されていませんでした。そのため、基地局のアンテナから発射される電波は、ユーザーのいる方向、つまり地上へと向いています。もし、セルラードローンのようなマシンが増えると、地上の携帯電話の利用へどの程度、影響を与えるかわかりません。
電波に関する法律である電波法の基本方針は「いずれの機器もお互いに円滑に利用できるように努めなければならない」です。影響を与える恐れのあるセルラードローンのような機器については野放しにはできません。そのため、これまでセルラードローンのような用途は原則として規制されてきました。
しかし、将来的なニーズとして、国内外でセルラードローンの実用化に向けた動きが出てきています。これを受けて、総務省では「無人航空機における携帯電話等の利用」を、既存の基地局の運用などに支障を与えない範囲で、試験的にセルラードローンのような活用を許可する方針とし、2016年7月、実験飛行が可能になる電波法施行規則と審査基準が改正されました。
そこで、今秋になって、実験が開催されています。福岡では、NTTドコモが実験を行いました(※関連記事)。実験では、2.5Km離れた島まで、モバイル通信機能を備えたドローンを飛ばし、荷物を届けるという内容です。
千葉市と楽天、NTTドコモが参画した実験も行われています(※関連記事。
これらの実験では、セルラードローンを使って遠距離での荷物の配送が可能かどうか、また、ドローンの飛行が許される高度150メートルまでの上空での携帯電話の電波の利用がどの程度実用的か、はたまた地上通信への影響がでないかなど、さまざまな検証が行われます。
これら実験結果を踏まえて、今後の技術改良や、法改正などに繋がれば、日本でも商用サービスがいずれ出てくる可能性があります。