ケータイ用語の基礎知識

第782回:ターボ機能 とは

高速・低速通信を切り替え

 今回紹介する「ターボ機能」とは、データ通信の速度を、高速モード(制限なし)か低速モード(制限あり)に切り替えられる機能のことです。MVNOでよく用意されている機能で、異なる名称になっていることもあります。たとえば「OCN モバイル ONE」や「UQ mobile」などが「ターボ機能」という名前を採用しています。

 格安SIMと呼ばれるMVNO(仮想移動体通信事業者、大手キャリアの回線や設備を利用して自社サービスを提供する企業)の携帯電話サービスの料金プランでは、月あたりの通信料があらかじめ決まっています。

 もし低速モードにしておけば、通信をしているときも、料金プランに含まれるデータ通信料にカウントされない、つまり消費しません。たとえば通信しないでだろう就寝中などは、あらかじめ低速モードに変えておくと切り替えておくとデータ通信料を節約できるわけです。このような使い方をするときに、この「ターボ機能」があると非常に便利です。

 MVNOのサービスでは、アプリで簡単にターボ機能を利用できるケースが増えています。このようなアプリを利用すると、切り替えたいときにいつでも何度でもターボON/OFFを切り替えできて便利です。事業者によってはアプリではなく、データ使用量の表示とターボ機能の切り替えスイッチがついたウィジェットなどを配布しているケースもあります。

 アプリやウィジェットからターボ機能の切り替えを行うと、通信速度は即座に高速モード、あるいは低速モードに切り替えることができます。MVNOにとってMNOとの契約帯域に合わせてトラフィックを制御することは必須の技術ですから、通信速度の切り替えもこの一環としてほぼリアルタイムに制御可能になっているのです。

 家族で複数のSIMカードをシェアするようなプランになっていても、ターボ機能で通信速度の高速化/低速化を、SIMカードごとに設定することができます。たとえば、あるスマートフォンがひとりで使用容量を食いつぶしてしまわないように、この端末だけ低速モードに、というようなこともできるわけです。

OCNモバイルONEホームページの説明より引用。スマートフォンアプリの「ターボON/OFF」と書かれた箇所をタップするだけでいつでも何度でも高速/低速通信モードに切り替えられる

 IIJmioでは「クーポンスイッチ」、mineoでは「mineoスイッチ節約ON/OFF」という名前になっていますが、これらも同じ機能です。

スマートフォンはユーザーの見てないときも通信をする

 一般的に、スマートフォンでは、ユーザーが操作していないときでもデータ通信を行います。たとえばLINEやFacebook、Instagramなどを使ってもジワジワとデータ通信は使われていきます。

 このようにユーザーがスマートフォンを操作しないときでもデータ転送は行われていて、これを「バックグラウンド通信」と呼んでいます。バックグラウンドとは「背景」のことですが、簡単に言うとユーザーの見えない、裏側で行う通信ということです。

 そうした通信も、料金プランに含まれるデータ使用量としてカウントされます。データ使用量を節約するために、ユーザーがアクティブにスマートフォンを使用しない場合、あるいは高速な通信が不要な場面などで、ターボ機能を使って低速モードにして、データ使用量の節約を図るというわけです。

 MVNO事業者のなかには、「バースト転送」という機能を提供しているところもあります。これはデータ転送の利用が始まってからわずかな時間だけは速度が落ちない機能です。低速モードにしていても、LINEのメッセージのように軽量なデータであれば、バースト転送でさっと読みだして使えます。低速モードの遅さをさほど感じずに利用できます。

 Instagramのように写真など、大きめなファイルサイズのデータをやり取りする場合はバースト機能では物足りなくなるでしょうが、場面場面にあわせて「ターボ機能」「バースト転送」を組み合わせていけば、より少ないデータ使用量の契約、つまり手頃な価格でスマートフォンを使えわけです。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)