石川温の「スマホ業界 Watch」

機種変更から投資・金融サービスへ、ドコモショップが「証券窓口」から“ドコモ銀行”への導線に

ドコモショップ丸の内店(2017年7月撮影)

 ドコモショップが「お金の相談窓口」に変化しようとしている。年齢層が高く、お金に余裕のありそうなドコモユーザーが続々とターゲットになっているようだ。

 NTTドコモと傘下のマネックス証券は1月29日より、ドコモショップにおいてマネックス証券の証券総合取引口座に関する各種設定サポートサービスを開始した。

 これにより、証券総合取引口座やNISA口座の開設だけでなく、dカード積立の設定やdアカウント連携、かんたん資産運用の操作・設定をドコモショップ店頭で行えるようになる。

 当然のことながら、こうした手続きをドコモショップの店員が行うには、それなりの資格が必要だ。

 今回、このサービスを開始するにあたり、ドコモショップの代理店を運営するコネクシオ株式会社がマネックス証券から委託を受け、金融サービス仲介業務を行うという体裁となる。ドコモショップのスタッフは、仲介業務をするにあたり「証券外務員資格」を保有しなければならない。

 サービス開始当初は全国35店舗での展開となるが、早期に100店舗、将来的には1000店舗まで拡大したいという(全国にあるドコモショップは2025年1月末時点で2050店舗)。

 「貯蓄から投資へ」というブームが高まる中、「NISAを始めたい」と思っても、証券会社のリアル店舗に足を向けるというのはかなりハードルが高い。さらにオンライン証券を始めようと思っても、手続きや実際にお金を預けるなど不安要素が多い。

 そんななか、ドコモショップで、機種変更のついでにNISA口座を開設できるとなれば、そうした心理的な不安もかなり取り除かれるのではないか(ただ、実際に機種変更などの手続きで頭がいっぱいのなか、NISA口座を勧められて、すぐに開設する気になるかは、かなり疑問ではあるが)。

 ただ、ドコモの金融事業を見ていると、ドコモショップによって、顧客獲得が上手くいっている様子がよくわかる。

 たとえば、2024年11月に登場したdカード PLATINUMは年会費が2万9700円と高額であるにも関わらず、開始後1年で100万会員を突破している。

 dカード PLATINUMを所有し、年会費以上のポイント還元や特典といったメリットを感じるには高額なカード決済やマネックス証券で積立投資を行う人が中心となる。

 「dカード PLATINUMは持っているけど、まだNISA口座は持っていない」という人をターゲットにするだけでも、ドコモショップ店頭で口座開設のサポートを展開するというのはかなり効率のいい営業と言えるだろう。

 こうした「ドコモショップという顧客接点」がいかに高いポテンシャルを秘めているかに気がついたのは、NTTドコモと銀行業でパートナーを組む三井住友信託銀行だ。

 NTTドコモが住信SBIネット銀行の経営に参画するにあたって、三井住友信託銀行は出資比率を増やした。これまで三井住友信託銀行はSBIホールディングスの顔色をうかがっていたようだが、SBIホールディングスが抜けたことで、住信SBIネット銀行への影響力を強くしたかったようだ。

 三井住友信託銀行としては、住宅ローンなどは住信SBIネット銀行に任せる一方で、資産運用や不動産、相続となった富裕層をターゲットにした商材に注力していくとしている。

 そんななか重要となってくるのが、ドコモショップの店頭なのだ。NTTドコモのラインナップのなかで「らくらくホン」といったようにシニア向けの商品が底堅く人気だったりする。つまり、年齢層がかなり高めのユーザーが多く、三井住友信託銀行の大山 一也社長によれば「死亡解約者が多い」という。

 三井住友信託銀行とすれば、親の死亡解約の手続きにドコモショップを訪れる家族に対して、相続など高い専門性を生かした商品、サービスを住信SBIネット銀行(8月よりドコモSMTBネット銀行)を通じて、アプローチしたいようだ。

 つまり、ドコモショップ店頭はNISAなど資産運用したい人向けの「マネックス証券」、普段の銀行口座や住宅ローンとして「ドコモSMTBネット銀行」、相続や不動産などは「三井住友信託銀行」といった具合に、さまざまな金融機関をおすすめされる場所になりそうだ。

 ただ、ここで心配なのが現場のスタッフたちだ。おそらく、マネックス証券のサポートをするにあたり、ドコモショップのスタッフは「証券外務員資格」の勉強を相当したはずだ。

 ただでさえ、携帯電話の料金やサービス、各スマートフォンの仕様などを覚えなくてはならないなか、これまでとは全く別ジャンルの金融に対する知識を学ぶのは相当、大変だったのではないか。

 銀行法もあり、今後、ドコモSMTBネット銀行の取り扱いをそのままドコモショップ店頭でできるとは限らないが、8月以降、ドコモショップのスタッフはドコモSMTBネット銀行の知識もそれなりに頭にたたき込む必要が出てくるのではないか。

 ドコモショップでお金の相談ができるのは魅力だが、ショップのスタッフは金融商品を売りたくて、ドコモショップのスタッフになったわけではないだろう。

 NTTドコモが金融事業を強化するのは理解できるが、ドコモショップで働くスタッフの努力に対して報いる仕組みがきちんと整備されているか。気が気ではないのだ。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。