石川温の「スマホ業界 Watch」

ドコモが目指すシェア拡大、「ahamo」やポイ活プランで重要になるポイントとは

 NTTドコモが顧客体験の改善に本格的に乗り出したようだ。

 NTTの2024年度第1四半期決算では営業利益が前年比388億円減だったのだが、その要因のひとつとして、NTTドコモにおける顧客基盤強化によるコスト増があったという。

 NTTの島田明社長は「これまでドコモはずっと顧客基盤を減らしてきた。そろそろ限界にきている。しっかりシェアを守るような対策を打っていく必要がある」と語る。

NTT 島田明社長

「ahamo」の契約手続きをリアル店舗でも

 今回、特にコスト増の要因となっているのが、リアル店舗だ。

 島田社長は「量販店での販売をテコ入れするため、店員の強化を始めている。効果は下半期から出てくるのではないか」と説明する。

 ここ数年、NTTドコモはドコモショップの店舗を3割削減すると報道されるなど、オンラインにシフトしてきた印象があったが、ここに来て、リアル店舗にも注力してきた感がある。

 実際、「オンライン専用プラン」として登場した「ahamo」に関してもリアル店舗での対応を改善していく。

 島田社長は「ahamoはリモートで手続きするという不便さがあった。機種変更はしたいが、端末を見ながら買いたいというお客様の声が上がっていた。そのため、8月に入ってから店頭でもahamoの端末の取り替えができるサービスをドコモショップや一部の量販店でも提供していく」

 これまでahamoは「オンライン専用だから安い」という立て付けになっており、ドコモショップで手続きをしたいときは、有料で、店員のサポートを受けながら契約手続きをする手順となっていた。

 島田社長によれば「ahamoの機種変更は、やはりモノを見ながら選びたいというニーズがある。ahamo自体のオンライン対応は原則としてさらに強めていくが、一方できめ細やかなニーズにも対応する。ahamoだからといって、全部リモートで家に送って、自分で設定するというのでは、お客様満足を得られるものではない」という。

 実際、「データ容量はそこそこでいい」という小から中容量を契約したいユーザーのなかには当然、「オンライン契約は心理的なハードルが高い」と敬遠している人が多いのは間違いない。

 その点、ソフトバンクはワイモバイル、KDDIはUQモバイルが、そうしたニーズを受け皿になっている。メインブランドも扱うキャリアショップでサブブランドも受け付けることで、「小中容量」と「使い放題」という二極化する需要に上手いこと応えられる体制になっている。実際、ソフトバンクもKDDIも「サブブランドから定額制のメインブランドへの乗り換えが増えている」として、ARPU向上に繋げている成果が見えている。

 もちろん、ドコモショップにも「irumo」として、小中容量のニーズに応える料金プランが存在する。

 ただ、0.5GB、3GB、6GB、9GBと少容量に寄ってしまっている感は否めない。「irumo」ユーザーが「9GBで足りない」となった場合、いきなりeximoにジャンプアップするよりも、その前段階として、ahamoを契約するというのが望ましいはずだ。

 しかし、現状では、まだahamoはオンライン専用プランと言うことで、一度、オンラインでの契約作業をしなくてはならない。

 ドコモを契約し続けているユーザーに対して、そうした煩わしいことを強要することなく、気軽に「irumo」「ahamo」「eximo」を自在に渡り合えるようするならば、ahamoの「オンライン専用」なんて足かせは取っ払ってしまい、「機種変更時にモノが触れる」なんてみみっちいことは言わずに、ドコモショップ店頭で気軽に契約できるようにすればいいのではないか。

「ahamoポイ活」と「eximoポイ活」に注力

 NTTドコモではdポイントが貯まりやすくなる料金オプション「ahamoポイ活」に続き、8月1日から、新料金プラン「eximoポイ活」をスタートさせている。

 島田社長は「ahamoポイ活は、おかげさまで順調に推移している。こんなことを言っていいのかわからないが、あまりd払いとかdカードとかを使っていない、これからの利用が期待できる人でも入っていてもらっている。eximoポイ活も、決済手段をさらに使ってくれる人が入ってくると期待している」という。

 ahamoポイ活はahamoの基本料金となる2970円に、大盛りオプションの1980円にさらに「オプション」として、2200円を支払うことで、ようやく「4万円のd払い」に対して、4000ポイントが付与されるというものだ。

 普段からd払いのヘビーユーザーであれば、何の迷いもなく契約するだろう。しかし、そんなにd払いを使っていないユーザーからすれば「どれだけ得するか見えないのに、大盛りオプションやポイ活オプションを着けて、本当にいいのだろうか」と結構、迷うはずだ。

 そんなときに、活躍してくれるのがドコモショップの店員さんなのではないか。迷うユーザーに対して、懇切丁寧にオプションのメリットを説明し、徹底的に不安を解消し、満足してユーザーにオプションを選んでもらう。

 ahamoユーザーに対して、大盛りオプションやポイ活オプションを契約してもらいたいなら、その大前提として、ahamoの契約を、ドコモショップで全面的に受け付けるべきだろう。

 個人的にもドコモ回線はahamoを使い続けているのだが、20GBと適量で、必要な時には大盛りオプションが追加でき、海外ローミングも20GBを使えたりと、かなり気に入って使っており、満足度はかなり高い。

 ahamoをオンライン専用として、店頭ではサポートというかたちで有償対応するのではなく、ドコモショップで大々的に売っていけば、NTTドコモの顧客基盤は今一度、復活していくのではないだろうか。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。