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ドコモの決算は増収減益 シェア拡大などで改善目指す

 NTT(持株)は、2025年3月期第1四半期決算を発表した。傘下にあるNTTドコモは売上が1兆4769億円、利益が2754億円で前年同期比で増収減益のスタートを切った。

NTT 島田明社長

増収減益のドコモ

 ドコモのコンシューマー事業では、売上が1兆989億円で、前年同期比2.5%の増収となった。 一方で営業利益は2067億円で前年同期比 で6.8%の減益となった。EBITDAは3479億円と前年同期比で3.9%の減益。

 決済や金融事業が含まれるスマートライフ領域は前年同期比126億円の増収。通信事業では276億円の減収。その内訳は、モバイル通信で155億円の減収、販売施策費用の増加で121億円の減収だった。法人事業では固定電話のIPネットワークへの移行(PSTNマイグレーション)が53億円の減収要因になるなど、74億円減収したこともあり、全体では前年同期比で173億円の減益となった。

 金融・決済取扱高は3兆5000億円と前年比で14%成長。うち、dカード取扱高は2兆4600億円と同じく11%増を記録した。ドコモではdカード還元率が上がるなどの特典がある「eximo ポイ活」の提供が始まっている。

NTTも同様

 NTT全体での2024年度第1四半期の業績は売上が3兆2400億円、利益が4358億円で前年同期比で増収減益となった。

 売上としては第1四半期として過去最高。地域通信事業は減収だったが、総合ICT事業やグローバルソリューション事業などが売上増を牽引した。利益としては地域通信事業やドコモの顧客基盤強化のためのコスト、設備関連の投資のほか、災害の影響があり前年から388億円減益した。

 株主数は株式分割前と比較して2.5倍増の226万人で過去最高を更新した。年齢構成も70代以上が過半数を占めていた2020年12月時点と比較して20代や20代が大幅に増え、バランスが改善されたことがうかがえる。

 NTTが独自に開発したLLM(大規模言語モデル)「tsuzumi」は3月から商用利用を開始した。現在、400以上の導入提案を行っておりヤマト運輸や福井県庁が含まれる。今後、マイクロソフトのAzure上でもtsuzumiの提供が始まるという。

 AI関連では新たにNTT AI-CIX(エーアイシックス)を設立。法人に向けた「連鎖型AIサービス」を提供するとしており、コンサルティングからAIモデル開発、プラットフォーム提供までを手掛けるという。

 会見終了後、島田社長はNTTソノリティのオープンイヤーのヘッドホン型スピーカー「nwm ONE」を装着。「音質いいでしょ? 画期的な商品だと思うんですよね。3万9600円ですから。よろしくお願いいたします」と笑顔で話した。

質疑応答

――ドコモの顧客基盤強化に向けた投資とは具体的になにか?

島田氏
 量販店での販売強化です。販売員の強化を行っており、下半期から効果が出てくると考えています。irumoも競争対抗上しっかり販売しているのでARPUは減少傾向ですが、予想以上にeximoを選ぶユーザーが増えているので、そう遠くないうちに均衡するのではないでしょうか。

 ahamoでは今まで実店舗で端末を取り扱っていませんでしたが、端末を実際に見ながら買い変えたいという声もあるのでそういったサービスをドコモショップと量販店でも始めています。8月1日からはeximo ポイ活が始まったのでマーケティングを強化していくつもりです。

――ドコモの前田社長は銀行の設立に前向きだが、NTTとしてはどう進めていくのか?

島田氏
 証券やローンは順次M&A(買収・合併)で拡大しています。ユーザーの利便性を考えると銀行口座があるほうが利用しやすいです。競合他社もそういう方向性です。M&Aなのか、自ら作っていくのかいろいろな選択肢があると思います。いずれにしても金融で総合サービスを展開するための必要要素は一段と強化していきたいです。

 dカードや決済取扱高は利益がしっかり出ています。金融ビジネスの拡大は前田社長がいろいろ検討してくれているので、それをしっかりバックアップしていきたいと考えています。

――ドコモの通信事業は黒字予想だったが実際は減益。どう反転を進めるか?

島田氏
 コンシューマー事業では顧客基盤を強化することがひとつの大きな競争になるでしょう。そのうえでスマートライフのビジネスをしっかり伸ばしていきます。法人事業については加入電話の移行の影響が出ていますが、法人事業全体では着実に伸びています。しっかりそれを吸収して、利益を確保していきたいと思います。

 スマートライフと法人事業でしっかり稼いで、それを支えるコンシューマー事業を今よりも改善させていきたいと考えています。

――NTT法見直しの議論について、全体への受け止めを聞きたい。

島田氏
 ユニバーサルサービスをどうするかが大事。顧客視点と未来志向な考え方が必要と考えています。モバイル通信が今の常識。最終的には人口のあるエリアはモバイル通信できる環境にしていくというのが求められています。どうユニバーサルサービスをモバイルでカバーするかというかたちにするべきだと思います。

 モバイル回線が提供されているエリアはそれを固定電話として使う、それ以外のところに光回線を引けば2035年の赤字負担が30億円くらいと一番安くなります。もうひとつの選択肢として、モバイルですべてカバーするということも提示していて、それは年間で60億円くらいの赤字負担になります。

 しかし、モバイル網の整備とともに赤字も減っていくと思いますので最終的にそういうかたちに移っていくべきなんだろうなと思います。途中の過程においては今、モバイルがあるエリアはモバイルで、それ以外を光でカバーすることでユニバーサルサービスを確保するということもあると思います。

 公正競争環境では、基本的な業務範囲の規制についてNTT東西のビジネスは日本の情報通信のインフラの基礎となる部分で、しっかり維持していく必要があります。そのためには効率化に支障が出ないよう形が望ましいです。インフラ維持や高度化は自由度を持ってやらせてほしいと思います。

 外資規制についてはいろいろな意見があることは理解しています。しかし諸外国では、基本的には個別の規制を強化しているということがあり、特別法を整備している国はほとんどなくなっています。個別の対応を強化する方向性で考える必要があるのではないかと思います。

――地域通信事業ではどうコスト削減していくのか

島田氏
 固定電話の面です。今のユニバーサルサービスで代替して使いやすい高度なサービスに移行していただくことが原則。2035年には固定電話の設備は限界が来ます。今(加入者数は)1200万くらいに減ってしまっています。しかし、申し込みがあれば1週間くらいで設置しなくてはいけません。

 日本中どこでも設置する体制を維持するのはコストがかかりますし、600億円ほどの赤字にもなっています。赤字だから辞めたいわけではありません。しかし、サービスの高度化などを考えたときに無駄な投資や費用をかけるよりも新たなサービスにお金をかけるほうが望ましいと思っています。

 電話帳など利用が少ないサービスは終了していきます。ユーザー対応もチャットボットなどで人が対応するより早く対応できるシステムも入れていきます。電報もどこかのタイミングで終了させていく方向で公的なところで話を進めていくべきと思っています。

――ドコモのARPUが今期3910円と下がっている。過去と比べても下がり具合が大きいがirumoの影響か? 純増数が落ちている原因も教えてほしい。

島田氏
 要因はirumoの販売数です。他社対抗のために戦略的に出したのでしっかり販売していきたいです。ARPUが下がる要因ですが、直近ではeximoの選択肢も非常に増えています。そこを強化していくことでARPUを上げていきます。

 eximo ポイ活はARPUを上げるひとつの大きな手段です。外で映像を見るなどeximoやahamo 大盛りのようなニーズが高まってきてるんだと思います。そちらを使ってもらい全体のARPUを戻していきます。できれば今年度中に反転したいと思います。

 顧客基盤に着目しています。ドコモはずっと顧客基盤を減らしてきた歴史がありますので、私としてはそろそろ限界だろうと思っています。シェアをしっかり守るような対策を打っていかないと行けないと思います。マーケティングの強化、ユーザーニーズに合わせた対応で顧客体験を上げていきます。

 通信品質も大きな要素です。前田社長も山手線を回っていて、通信品質を自ら見ています。今度また行くと言っていましたけども。名古屋や大阪に副社長など自ら行ってチェックし始めましたので、我々も期待が非常に高まっております。通信技術とともにマーケティング施策を強化することでユーザー満足度が上がり、顧客基盤が拡大すると思っています。

――楽天モバイルは影響していないのか?

島田氏
 それは、競合他社とそんなに変わらないと思っています。

――ahamo ポイ活の現状は?

島田氏
 おかげさまで順調に進んでいます。d払いやdカードをお使いではない方も加入しており、そういう意味ではこれからの利用増が期待できると思います。eximo ポイ活も始まっており決済手段をさらに使われる方々が入ってくると思いますので、加速すると思っております。

――各社ともにSIMのみ契約しているユーザーの解約率が高いというが影響はあるのか?

島田氏
 SIMのみ契約は(通信会社を手軽に)変えやすいというところがあると思います。そのため流動性が比較的高いのではないでしょうか。特段そこに特徴的なことがあるという認識はないです。

――ahamoの端末買い替えの店頭での実施や量販店の強化など、これまでのオンライン強化の流れから変わったのか?

島田氏
 両方あると思っています。オンラインも強化しますし、ahamoの端末買い替えはやはり“モノ”なので見ながら選びたいというニーズがあるんだと思います。ahamoのオンラインが基本というのは原則として強めていきたいです。

 しかし、きめ細やかなユーザーニーズに対応していくところは「ahamoだから家に端末を送って自分でセットして」というだけでは100%の満足は得られないと思います。端末を手にとって選びたいというユーザーは現実にいますので、それに対してはそう対応していくということで、オンラインとリアルをうまく連携しながら要望に応えていきたいと考えています。